『俺と僕で何?』


第伍拾六話 二人のリリス


「おはようございます」

「おはよう、シンジ君」

「本部へは何時に行くんですか?」

「集合時間は13時になったわ。レイとフェルにはまだ確認してないけど。私は今から先に行ってるから、レイとフェルが起きたら一緒に来てくれるかしら?」

「はい、わかりました」

夕べのうちにアレンジしたのかな。

じゃあ午前中は修学旅行の課題でもしてよう。

課題も終わったし、そろそろ本部に行こうか。

・・・

「綾波、そろそろ本部に行こう。昼飯も本部で食べてしまおうと思うんだけどいいかな?」

「いいわ」

「フェルもそれで良い?」

「あ〜い。了解だよ〜」

「じゃあ行こう」

綾波はラーメン、フェルはスパゲッティミートソース、俺はカツ丼を食べている。

「シンジ〜、課題は終わった〜?」

「ああ、午前中に済ませたよ」

「あ、いいなあ。フェルはまだだよ〜。憂鬱だな〜。レイは終わったの〜?」

「わたしも終わっているわ」

「あ、いいなあ」

「フェルは午前中何してたんだ?」

「フェルはテレビ観てた〜」

「じゃあ仕方ないな。今日帰ってからやるか、明日やるしかないな」

「あ〜ん。シンジぃ〜」

「見せないよ。自分でやらなきゃ為にならないだろ」

「ねえ、レイ〜」

「碇君に同じ」

「ちぇっ。みんな冷たいよぉ・・・シクシク」

「さあ、時間だからそろそろリツコさんのところに行こう」

「了解」

「あ〜い」

「あとは加持君だけね」

「あいつは遅刻っしょ」

ミサトさんが吐き捨てるように言った。

「まだ時間前よ」

と、リツコさん。

「だって加持は遅刻の常習犯だもの」

「それはデートの時の話しでしょう?仕事になれば別だだと思うわよ」

「あら、この会合って仕事だったの?」

「・・・微妙ね」

こんな休日にチルドレンが三人も本部に来て父さん達に怪しまれないのかな?

「ねえ、リツコさん?」

「なに、シンジ君?」

「こんな休日にチルドレンが三人も本部に来て父さん達に怪しまれないんですか?」

「ああ、その事なら後で話しをするわ」

「わかりました」

(ガチャ・・・バタン)

「よっ!皆さん、お待たせ。俺が最後かな?」

「あんた、遅いわよ!」

「あれ?集合時間には間に合ってると思うんだけどな」

「そういうもんじゃないでしょ!」

「ミサト・・・なにカリカリしてんのよ、貴方は。・・・ま、いいわ。みんな集まったから早速始めましょう」

「今日は何の話しをするの、リツコ?」

ミサトさんが聞いた。

「今日はシンジ君が見た夢の話しとそれに対する渚君の夢判断について。それについてみんなの意見を聞かせてもらいたいのと、あとはみんながこれまでに考えた事や収集出 来た情報なんかを聞かせてもらいたいわ。あ、それとこの部屋の目と耳は殺してあるから心配はないわよ」

「わかったわ」

と、ミサトさん。

「了解した」

とは、加持さん。

「じゃあ、シンジ君」

「はい」

「シンジ君が見た夢の話しをしてくれるかしら。渚君の夢判断については私から話すから」

「わかりました」

俺はみんなに俺が修学旅行で見た夢の話しをした。

そしてリツコさんがカヲル君の夢判断について話した。

・・・

「なかなか衝撃的な話しじゃないか、シンジ君」

加持さんがまず第一声を放った。

「信じがたい話しよね。・・・あ、駄洒落じゃあないわよ、これは・・・」

言わなきゃ気がつかないのに・・・ミサトさん。

「碇君の魂がリリス?わたしもリリス・・・碇君とわたしは同じなの?」

綾波が動揺している。

「同じじゃあないわ、レイ。同じリリスでもその存在した世界は別物なんだから。それよりも渚君の話しが信用出来るかどうか・・・まずはそれが肝心だわ。加持君はどう思う?」

「俺か?・・・俺は信用していいと思うね。と言うよりも信用せざるを得ないんじゃないか?他に拠るべの菅がないからな」

「それだけ?」

「それに渚君についてはこの前の使徒やセカンド・インパクトの話しもある。話しの内容には一貫性があるし、ただの作り話とは思えない程の信憑性もあると感じるんだがな」

「加持君の意見はわかったわ。ミサトはどうかしら?」

「あたしぃ?あたしは・・・正直言って良くわかんないわね。頭が混乱しちゃってて・・・ただ渚君自体は信用の置ける子だと思うわ。それに彼がわたし達を陥れる理由も価 値も思い付かないし・・・信じていいんじゃないかしら、その話し」

「そういうリッちゃんはどうなんだい?彼の事信用してるのかい?」

「私はこの状況ではとりあえず信用せざるを得ないと言うのが正直なところかしら。この前の話しに因れば、渚君は前回のレイ、いえ、リリスに頼まれてリリスのスケジュー ルに従って色々と動いている訳よね。もしそれ自体が作り話ならばどう仕様もないんだけど、それを信用するなら彼の話しも信用していいんじゃないかしら?それは即ちレイを信用する事でもあるから 」

「成程ね」

加持さんが相槌を打つ。

「レイはどう思う?」

ミサトさんが綾波に話しを振った。

「わたしは・・・わたしは信用していいと思います」

「その根拠は?」

「その根拠は彼がわたしにわたしの前回の記憶をくれたからです」

「そっか」

「フェルはどうかしら?」

「え?フェル〜?」

「そうよ。貴方はどう思うの、渚君の話しを?」

「う〜ん」

フェルが悩んでいる。

「リッちゃん」

「なに、加持君?」

「フェルはこの前の歓迎会の時の彼の話しを聞いていないだろ?だからその話しもしてあげないと判断出来ないんじゃないかな?」

「歓迎会の話しって何〜?」

「あ、そうだったわね。じゃあ私から簡単に説明するわね」

リツコさんが歓迎会の時にカヲル君が話した事をざっと説明した。

・・・

「と言う訳なの」

「ふ〜ん」

「渚君のそれ等の話しを総合して、フェル、貴方はどう思う?」

「使徒についての話しはホントだよ〜。フェルは使徒やってた時の記憶あるもんね〜」

「そうだったわね」

「だから渚君の話しも全部ホントなんじゃないかな〜」

「これで決まりだな」

「何仕切ってるの、加持。何が決まったのよ?」

「何がってだから、渚君の話しがホントだって事さ」

「そう考えていいみたいだわね。シンジ君は何か意見がある?」

俺?

「俺はカヲル君には嘘を突く理由はないと思いますから」

「わかったわ。じゃあ渚君の話しは本当だという前提で話しを進めましょう」

「誰がどう進めんの、リツコ?」

「私が進行役をします。だから皆は各自の意見を率直に言ってちょうだい」

皆異存はないみたいだ。

「まずは皆がこれまでに収集した情報をここで披露してもらうわ。最初に加持君から。質疑応答は適宜よろしく」

「俺がトップバッターか・・・そうだな何から話せばいいのやら」

「じゃあ私から質問していくけどいいかしら?」

「ああ、その方が助かるな」

「ではまず最初はみんなも気になっているでしょう碇司令と副司令達の動向からお願いするわ、加持君」

「了解だ、リッちゃん。まず・・・そうだな・・・俺達がこうして集まって秘密の会合を持っている事だが、碇司令達は会合の存在自体は流石に把握しているな。ただ目と耳を殺しているからその内容までは掴んでいない 」

「でも怪しんでいたりしないの?」

「今のところ内容まで調べようといった動きはない。ま、当事者に訊くでもしない限り調べようもないがな。もっとも訊かれたれた場合に備えてそろそろ皆の口裏を合わせておく必要はあるかも知れない 」

「どうすんの、リツコ?」

ミサトさんが口を挟んだ。

「そうね・・・今までの使徒戦の分析と反省会って事でいいんじゃないかしら?」

「わかったわ。加持もそれでいい?」

「いいんじゃないかな。さて、次に・・・肝心の人類補完計画だが、これは今のところ計画通りに進んでいるようだ」

「そうね。私もレイの実験を予定通り進めているから。計画を妨害するには、実験を遅らせるかボイコットするかしか私達には手立てがないものね」

リツコさんが現状を説明した。

そうか・・・リツコさんも綾波もダミープラグの実験はやってたんだ。気が付かなかったな。

「計画の妨害は今の時期にする必要はないさ。まだまだ先で充分に間に合う」

「ダミープラグの実験って・・・あんたまだレイにそんな事させてんの?ダミープラグの完成はS2機関とセットで量産型エヴァ、エヴァシリーズの完成を意味するのよ!」

 

「わかってるわ。加持君の言った通り計画の妨害はまだ先でも間に合うから心配ないのよ」

「わかったわよ」

ミサトさんは不承々々だが納得したみたいだ。

「続けてくれる、加持君」

「それから碇司令と冬月副司令の二人が前回の記憶を持っているかどうかだが、そのような気配は今のところ観られないな。前回の碇司令と冬月副司令の二人の最期がどうだ ったのかが判らないから、以前レイちゃんが言ってた条件、まあ仮説には過ぎないが、それに当てはまるかどうかも判らないし、他の条件があるかも知れないからな」

綾波が言ってた、綾波が知っている人間でサード・インパクト前に死んじゃった人の事だよね・・・俺は例外だけど。

「まだ可能性はあるって事か・・・」

ミサトさんが呟いた。

「そう言う事だ。それから最後にゼーレの動きだが、これと言ったものはない。まだまだ使徒戦は先があるから当然と言えば当然なんだが・・・」

「何か気になる事でもあるの?」

 

「あ、いや・・・ゼーレについては渚君にも確認した方が良さそうだと思ったんだ」

確かに。

「それはまた別の機会にしましょう。今日は彼を呼ぶ訳にはいなかったんだから」

「そうだな。ま、俺の方はそんなところかな」

「ありがとう、加持君。じゃ、次はミサト、何かある?」

「あたしぃ?あたしは特に何もないわよ」

「貴方、何も調べてないの?じゃあアスカやイスラについては?何か気が付いた事とかないのかしら?」

「うーん・・・特に・・・ないかなぁ」

「アスカはどうなの、何か変わった様子とか?」

リツコさん、少しイライラしてきたみたいだ。

「そうね・・・喋り方が段々と砕けてきた感じだけど」

「前のアスカに近付いている、って事かしら?」

「そうね・・・最初に来た時は言葉遣いが丁寧でちょっち調子が狂ったのよねー。今は前回まで程ではないにしてもいい性格になってきたわ」

「それって皮肉?」

「やあねぇ、そんなんじゃないわよ。やっぱ、アスカはアスカらしくなくっちゃ。調子出ないわよ」

「で、シンジ君が夢で見たアスカが前の記憶を取り戻しているって事に、何かコメントはないの?」

「うーん。あたしが観てる限りじゃあそんな風には思えないわ。少なくともアスカ自身にはその自覚はないんじゃないかしら。あの娘の率直な性格なら記憶を取り戻したらきっと直ぐにあたし達に話す筈だと思うのよね 」

「じゃあ貴方はアスカが前回の記憶を取り戻したら必ず私達に話す筈だから気にしなくて放っておけばいい、って言う意見なのね?」

「必ずかどうかはわからないけど、その方向であたしはいいと思うわ」

「わかったわ、ミサト。次はレイ、貴方は何かあるかしら?」

「わたしは特にありません」

「そんな事はないでしょう。仕方ないわね・・・私が質問するからそれに答えてちょうだい。

「わかりました」

リツコさんも大変だな。

「貴方は渚君から前回の三人目とリリスの記憶を貰ったのよね?」

「はい、そうです。・・・でもリリスの記憶は受け取るのに失敗したみたいです。思い出せませんから」

「そうみたいだわね。渚君は、貴方がリリスの記憶を何らかの理由で封印しているみたいだ、って言っていたわ」

「わたしがですか?」

「そうよ。何か心当たりはないかしら?」

「思い当たりません」

「そう・・・じゃあ仕様がないわね」

「すみません」

「謝る事はないわ。いいのよ、貴方が悪い訳じゃないんだから」

「はい」

「フェルはどう、何か話しておいた方がいいと思う事はないかしら?」

「フェルがぁ〜?」

「ええ」

「フェルはねぇ・・・別にないと思うなぁ」

「貴方はさっき使徒の時の記憶があるって言ってたわね」

「うん、そうだよ〜」

「貴方は一体何歳なのかしら?」

「何歳かって言われてもこの世界での年齢なんて判らないよ〜。宇宙の狭間では時間なんて意味ないもんね〜」

「確かにそんなもんかも知れないわね。じゃあこの世界が巻き戻された世界だって言うのは前説明さたけど、その時貴方はそういう認識はないって言ってたけど間、それで違いないのね?」

「間違いないよ〜」

リツコさん、何時の間にかフェルにそんな説明してたんだ。

「そう・・・じゃあこれ以上聞いても仕方ないわね」

「うん。仕方ないんじゃないかな〜」

「使徒としてこの世界に何回位訪れたのか分かる?」

「この世界もあの世界やその世界もフェルには区別が付かないんだよ〜」

「・・・じゃあ全部で何回位こんな世界に来たのかしら、それは分かる?」

「そんなのいちいち覚えてないよ〜」

「そ、そう」

リツコさん、打つ手なしだな。

「じゃあ今度は俺から質問だ、いいかな、フェルちゃん?」

「うん、いいよ〜」

「今回この世界に来る直前に来たエヴァのいる世界ではどんな事になったんだい?」

「う〜んとね・・・二機のエヴァと戦ってフェルがイスラと二つに分裂して勝ったと思ったらなんか強烈な爆弾で身体を焦がされて暫く自己修復してたんだよ〜」

「それから?」

「ようやく自己修復が終わってアダムを目指してたらまた同じエヴァが二機出てきてやられちゃった。アハハ〜」

「やられるとどうなっちゃうんだい?」

「うん、やられると、また多元宇宙の狭間に弾き跳ばされるんだよ〜」

「で、その後にまたこの世界に来たんだね?」

「そうだよ〜」

「またこの世界に来てどう思ったのかな?」

「なんだか前来た世界に似てるかな、って感じはしたよ〜」

「そうか」

「でも似てる世界なんていっぱいあるから、まさかおんなじ世界だとは思わなかったよ〜。ホントにビックリだよ!」

「ところで今回みたいにヒトになっちゃった事なんて前にもあるのかい?」

「何回かあるよ〜」

「そうなんだ・・・」

だからフェルもイスラもこの状態にあんまり慌ててなかったのか。

「特にリリスには万能の力があるからね〜。フェル達じゃあ逆らえないんだよ〜」

「でも今回君達をヒトにしたのは渚君だぞ」

「渚はタブリス、『自由を司る天使』だからね、そんな事も可能だよね。他の天使とは別格なんだよね〜」

「でもまた使徒になったって事はヒトから使徒に戻る事が出来るって事だろう?」

「うん。ヒトにした天使が望んだりいなくなったり、世界が崩壊したらフェル達は元に戻るんだよ〜」

「そうか。君達はこの世界でヒトとして行きていく積もりはあるのかな?」

「う〜ん・・・どっちでもいいかなぁ。どうせいつかは使徒に戻るからね〜」

「いつかは、って?」

「少なくともこの肉体が滅びたら・・・かなぁ?」

「なるほどね。いや、色々とありがとう」

「いいんだよ〜」

「俺の質問は以上だ。他に誰か質問があればどうぞ」

「質問いいの?」

綾波、珍しいな。

「いいとも、レイちゃん」

「フェル、あなたヒトになって幸せだったの?」

「うん!幸せだと思うよ〜」

「何故そう思うの?」

「だってみんながいるから。みんなと一緒に暮らせるから。独りじゃないから。だから楽しいよ〜。・・・今までは独りだったから・・・」

「そう、わかったわ。ありがとう」

綾波・・・。

「もういいのかい、レイちゃん?」

「ええ、いいわ」

「他にフェルちゃんに質問はないかな?」

「ひとついいかしら?」

「なあに、リツコさん?」

「貴方はATフィールドを今も使えるの?」

「使った事ないけど多分使えると思うよ〜、イスラもね」

「わかったわ。ありがとう」

「いいよ」

「もういいのかい、リッちゃん?」

「ええ、もういいわ」

「じゃあ司会進行はリッちゃんに返すよ。後はよろしく」

「わかったわ。でもここで一旦休憩にしましょう。20分後に再開するわよ」

・・・

いつも一緒にいるからあまり意識してなかったけど・・・フェルは使徒なんだよな。・・・イスラも。

・・・二人ともATフィールドが使える、か・・・。

フェルもイスラも人間になっちゃって、二人がどんな気持ちでいるかなんて考えた事もなかったな。

俺がフェルの立場だったら・・・不安、かな。

・・・

「じゃあ再開しましょう。次はレイの記憶について。レイ、いいかしら?」

「はい」

「レイは渚君から前回の三人目の記憶とリリスの記憶をもらった。でもリリスの記憶は覚えていない。それで間違いないわね?」

「はい、間違いありません」

「渚君は、レイがリリスの記憶を封印しているんじゃないか、って言っていたわ。それについて貴方は特に心当たりはないって言ったわね?」

「はい」

「そう。記憶をもらってからリリスとしての夢とか見る事はないの?」

「いいえ、見ません。・・・わたし、夢を見た事がありません」

「あら夢を見ないなんて・・・覚えていないだけかも知れないわよ?」

「そう・・・そうかも知れませんけど分かりません」

「まあいいわ。ところで貴方もATフィールドは展開出来るのかしら?」

「多分出来ると思います」

「実際に使った事はないのね?」

「はい」

「ならどうしてそう思うの?」

「前回の三人目のわたしが使えましたから」

「わかったわ。リリスの記憶はそのうち時が来れば思い出すかも知れないわ。その時まで待つしかないのかもね」

「どういう事なの、リツコ?」

ミサトさんが口を挟んだ。

「渚君が言ってたでしょう、彼はリリスに頼まれてリリスのスケジュールに従って行動しているんだ、とね。リリスの記憶の封印もリリスのスケジュールのうちなんじゃないかしら?」

「そういう事、か・・・」

「他にレイに質問は?」

俺は・・・思い付かないや。

みんなも無言だ。

「じゃあいいのね。次はシンジ君」

「あ、はい」

「シンジ君は、シンジ君の魂が別の世界のリリスのものだ、って渚君が夢で言ってた事についてどう思っているの?」

「わからないです。そんな実感はありませんから・・・特に俺から話す事や意見とかはありませんよ」

「そう・・・わかったわ。なら他に質問や意見のある人はいるかしら?」

「なあ、リッちゃん」

「何、加持君?」

「リリスって何なんだい?」

「渚君によれば、並行宇宙の全てに存在する者。そしてそれらの宇宙に存在する生命の母たる者ね」

「じゃあアダムはどうなるんだい?」

「渚君によれば、アダムも並行宇宙の全てに存在する者。そしてそれらの宇宙に存在する生命の父たる者なんでしょうね」

「父とか母って・・・それは比喩かい?」

「加持君。この事は渚君が話してくれたんじゃないの・・・貴方この前の渚君の話しの内容を忘れちゃったの?」

「あ、ああ、思い出したよ。自己増殖が出来る出来ないって話しだったよな、確か」

「そうよ。リリスはそのオリジナルは原初の宇宙にあり、他の並行宇宙にいるリリス達はその原初のリリスから分化した者。それに対してアダムは原初の宇宙にあるけど、分 化した宇宙にあるアダムはその宇宙の発生と伴に新たに産まれた者。渚君の話しに因ればそういう事だわ」

「そうだったな」

「他に質問や意見はないかしら?」

「ねえ、シンジ君?」

「なんですか、ミサトさん?」

「夢の中のもう一人のシンジ君なんだけどね。どんな格好をしてどんな感じの子なの?」

どんな感じ・・・か。

「格好は学生服を着ていました。感じは・・・そうですね・・・まず自分の事を『僕』って呼びます。少し気の弱そうな優しい真面目な感じでしたね」

「そう・・・」

どうしたんだろう、ミサトさん。

「どうかしましたか、ミサトさん?」

「あ、いえね、それって前回のシンジ君みたいだな、って思ったのよ」

「前回の碇シンジ・・・俺ではない碇シンジですね・・・」

「あ!・・・別に今のシンジ君、あなたを否定している訳じゃないのよ、勘違いしないでね」

「ええ、わかってます」

ミサトさん・・・前のシンジに逢いたいんだろうな。

「シンジ君にはこれ位でいいかしら?」

「は〜い!」

フェル?

「何かあるの、フェル?」

「うん。今のシンジの中に前回の別のシンジの魂があるんだったら、その魂をフェルやイスラみたいにヒトにしちゃえばいいんじゃないのかな〜?」

それって・・・サルベージするって事?

「シンジ君をサルベージするって言うの?」

「うん。カヲルだったら出来るんじゃあないかな?」

カヲル君か。

「成程ね。試してみる価値はあるかも知れないわね」

「そんな事可能なの、リツコ?」

「ミサト。渚君はフェルとイスラをサルベージした実績があるのよ。素体の問題さえクリア出来れば可能かも知れない・・・」

「素体って・・・レイのしかないじゃない!シンジ君を女の子にするって言うの?」

「この際性別にはこだわらないわ」

「んな事!」

「私達が前回のシンジ君と直接対話出来るメリットは測り知れないわよ!」

なんかリツコさん興奮してるな。

「わ、わかったわよ・・・あんたに任せるわ」

ミサトさん、引いてる。

サルベージかあ・・・大丈夫なのかなぁ?

「碇君が女の子になるの?」

綾波が呟いた。

「まだ決まった訳じゃないわ」

リツコさんが応える。

「でもそいつはいいアイデアかも知れないな」

と、加持さん。

「まあその件の具体化は後で渚君に相談するとして、最後にアスカの記憶の事ね」

「どうするればいいんだい?」

「一度検査をしてみるわ」

「なんのだ?」

「催眠療法でアスカの深層心理を探ってみるのよ」

「成程・・・で、対話式でアスカの記憶を確認する訳か」

「そうよ」

「それってシンジ君にも有効なんじゃないかい?」

「確かに試してみる価値はあるかも知れないわね」

ええっ?俺もぉ?

「俺も催眠療法を受けるんですか?」

「是非お願いしたいわ」

やだなあ・・・。

「わかりました」

・・・仕方ないよな。

「あとは・・・ミサト」

「へ?あたし?」

「アスカの様子に注意しておくのよ」

「あ、ああ、わかってるわよ。何かあったらリツコに報告すればいいんでしょ」

「お願いね」

「ラジャ」

「今日はこんなところかしらね。他に何かあるかしら?」

・・・。

皆無言。

「ないわね。じゃあ散会とします。お疲れ様」

「ふえ〜ん。フェル、今日修学旅行の課題出来なかったよ〜」

「大丈夫だよ。〆切は明後日だし明日は昨日の振り替えで学校は休みなんだから、まだ何とかなると思うよ」

もう課題が終わっている俺はお気楽だった。


話 へ  第伍拾七話 へ

目 次 へ  「創作小説」へ戻る  トップページへ戻る


* 感想をお願いします。