『俺と僕で何?』
第伍拾七話 全種目制覇
朝か・・・今日は月曜だけど、修学旅行の最終日が土曜日だったからその振り替えで学校は休みなんだよな。
今日は何しよう?
フェルは課題をやるんだろうし・・・綾波は暇なのかな?
そうだ!平日なんだからみんなを誘って遊園地でも行こう!きっと空いてるに違いないよな。
・・・とりあえず起きないと。
・・・
七時過ぎか・・・まだみんな寝てるみたいだ。
リツコさんはネルフだろうから朝食の用意でもするか。
・・・
八時になったのに珍しくリツコさん、起きてこないな。
・・・
(コンコン)
「リツコさん」
(・・・)
(コンコンコン)
「リツコさん、もう八時過ぎてますよ!」
(ゴソゴソ)
ん、起きたのかな?
(・・・)
ダメみたいだ。
(コンコンコン)
「リツコさん、開けますよ!」
(ガチャ)
「リツコさん?」
「あ、うーん・・・シンジ君?」
「さあ起きてください。珍しいですね、リツコさんが寝坊するなんて」
「ああ・・・ちょっと夕べは夜更かししちゃったのよ」
「もう朝食の支度出来てますから顔洗って来てください、ご飯にしましょう」
「ええ、わかったわ。ありがとう」
「二度寝しないでくださいね」
「ふふ、大丈夫よ」
(バタン)
さて、と。綾波とフェルはどうしようかな?
・・・一応起こしてみるか。
・
・
・
「「「いただきます!」」」
「どうぞ、召し上がれ」
「シンジ君達は今日は学校お休みなんでしょ?」
「ええ、振り替え休校なんです」
「いいわね。何するの?」
「そうですね、遊園地にでも行こうかと思って」
「アスカ達も誘って?」
「ええ、みんな課題が終わってればいいんですけど」
「え〜ん。フェル、まだ終わってないよ〜。フェルも行きた〜い!」
「課題はどうするの?」
「帰ってからやる〜」
「そんなんで大丈夫なのか?」
「何とかなるよ〜。だからフェルも行く〜」
「わかったよ。綾波は大丈夫?」
「ええ、大丈夫だわ」
「オッケー。じゃあアスカ達に電話してみるね」
・
・
・
(トルルルル、カチャ)
「はい、葛城です」
イスラだ。
「碇だけど、おはよう」
「あ、おはようございます、シンジさん」
「朝早くにごめんね。ところでイスラはもう課題は終わってる?」
「ええ、終わってますよ。それがどうかしたんですか?」
「いや、だったらみんなで遊園地にでも行かないかなと思ってさ」
「いいですね、行きます!」
「アスカはどうかな?」
「アスカさんはまだ寝てるんですよ」
「そうなんだ」
「アスカさんも課題は終わっている筈ですから多分大丈夫だと思いますよ。後で聞いておきます」
「うん。時間はどうする?」
「十時に現地でどうでしょうか?」
「いいよ。じゃあ現地でまた」
「はい」
(ガチャ)
次はカヲル君だな。
(トルルルル、カチャ)
「はい、渚ですが」
「おはよう。シンジだけど。」
「やあ。おはよう、シンジ君。どうしたんだい?」
「うん。今日は学校が休校で平日だし、みんなで遊園地でも行かないかと思ってさ」
「いいね。もちろん行くよ。僕は遊園地は初めてなんだよ」
「良かった。じゃあ現地に十時だから。カヲル君、場所分かる?」
「多分大丈夫だよ。ありがとう。じゃあ十時に現地で」
「うん。じゃあね」
(ガチャ)
カヲル君、遊園地行くの初めてなんだ。
あと誰を誘おうかな?
・
・
・
結局、トウジとケンスケ、あと洞木さんも一緒に行く事になった。アスカも行けると連絡があったから総勢九人の大部隊になっちゃったな。
「碇君、そろそろ行きましょう」
「そうだね」
「わ〜い!遊園地、遊園地だ〜!」
・
・
・
「これでみんな揃ったね」
「ええ、全部で九人ですわ」
イスラが確認してくれた。
「みんなチケットは買った?」
「「「はーい!」」」
「買ったよ〜」
「大丈夫」
「買いましたわ」
「俺も」
「ワシはまだや」
「もう、鈴原ったら。早く買ってきなさいよ!」
「わかったからそないに怒鳴るなや、イインチョ」
・・・
「さて、と。まずは何から乗ろうか?しかし九人は多いよな。なんだったら二手に分かれないか?」
ケンスケが提案した。
「空いてるから九人一緒でも大丈夫なんじゃない?」
アスカがそれを一蹴する。
「そうね。空いてるんだし、折角だからみんなで一緒に回りましょうよ」
洞木さんがアスカを援護する。
「じゃあ多数決で決めようぜ」
ケンスケが粘る。
・・・
結局みんなで一緒に回る事になった。
・・・
本当に今日は空いている。人気のジェットコースターも空いていてトウジは続けて四回も乗っていた。俺も二回乗ったけど四回はないよな。
でも洞木さんはそんなトウジに律儀に付き合っていたんだ。トウジも洞木さんの気持ちに気付いてあげればいいのにな・・・。
「碇君」
「何、綾波?」
「その・・・」
「どうしたの?」
「・・・コーヒーカップに乗りたい。」
「コーヒーカップ?」
「うん。」
「いいよ。乗ろう」
「ありがと。」
「俺達コーヒーカップに乗るけどみんなは?」
「はあ?コーヒーカップぅ?あんたったらお子ちゃまねぇ」
「別にいいじゃないか。アスカは乗らないの?」
「あんた等の邪魔する程無粋じゃないわよ。ゆっくり二人で乗ってらっしゃいな」
アスカったら何言ってるんだ?
「そんなんじゃないよ!」
「ワシも遠慮しとくわ」
「わたしも」
「僕も」
「俺も」
「わたしも遠慮しておきますわ」
「じゃあフェルも乗らない〜」
みんな・・・なんなんだよ。
「碇君、早く行きましょう?」
「あ、うん。じゃあ行こうか」
「ええ」
・・・
綾波と二人きりでコーヒーカップに乗っている。
「碇君、楽しい?」
「うん、楽しいよ」
「そう、良かった」
「綾波も楽しい?」
「ええ、楽しいわ」
「そう、良かった」
コーヒーカップを二人でゆっくり回す。
ゆっくりとコーヒーカップが回る・・・ゆっくりと。
・
・
・
「さあ、飯や飯や!」
「もう、鈴原ったらこんなとこでもそれなんだから・・・」
洞木さんが嘆く。
園内のカフェテリアで昼食を採る事になったが、なんとなく女子と男子がそれぞれで別々のテーブルになった。
俺はサンドイッチ、カヲル君もサンドイッチ、ケンスケはカレーライス、トウジはなんとカツ丼とラーメンだ。
「午前中でも大分乗れたねえ」
カヲル君が言う。
「そうだね。やっぱり平日で空いてるのが良かったね」
俺が応える。
「俺は久しぶりにみんなのプライベートな写真が撮れて嬉しいよ」
「そう言えばえらいぎょうさん撮っとったなあ。そないにぎょうさん撮ってどないすんねん。ワシは買わへんぞ、そんなもん」
「売り付ける積もりなんてないさ」
「ほなどないすんねん?」
「みんなに分けるよ、日頃の感謝を込めてね」
「そら殊勝なこったなあ」
「なんだよ、嫌見かよ・・・」
「ちゃうちゃう、関心しとるんや。お前にも感謝の気持ちがあるんやな、とな」
「まあいいさ」
ケンスケ、みんなの写真で相当儲けているんだな。
「ねえ!みんな食べ終わったぁ〜?」
フェルだ。
「ああ、こっちはもう終わっとるでぇ」
「じゃあ早く行こうよぉ〜!」
フェルは張り切ってるなあ。初めての遊園地で嬉しいんだろうな。
「おう。ほな後半戦行こか」
・
・
・
「もう大体乗り物は乗り尽しちゃったな」
と、ケンスケ。
「いや、ここにある施設は全部回ったと思うよ」
カヲル君が園内の案内図を見ながらそう言った。
そっか・・・しかしいくら平日で空いてるとは言え、全種目制覇出来るとは思わなかったな。まだ三時半過ぎだよ。
・・・疲れたけどね。
「どうするの?」
洞木さんが聞く。
「フェルはまだまだ乗りた〜い!」
「フェルは修学旅行の課題がまだ終わってないだろ。早く帰ってやった方が良くないか?」
俺はそう言ってフェルに当面の問題を思い出させた。
「ぶ〜」
「じゃあここで一旦解散にして後は各自の自由にしましょうよ」
洞木さんが委員長らしくそう提案した。
「そうだな」
「いいんじゃないの」
「賛成!」
「みんな異議なし?」
ないみたいだ。
「解散する前にみんなの集合写真を撮らせてもらえないかな?」
・・・
居残り組はアスカ、イスラ、トウジ、ケンスケ、洞木さん。
俺と綾波はフェルが可哀想だから一緒に帰る事にした。
カヲル君も疲れたと言って先に帰った。
「あ〜あ・・・もっと乗り物乗りたかったなぁ〜」
フェルがぼやく。
「仕方ないじゃないか。課題はやんなきゃいけないんだから。フェルが今日までやらなかったのが悪いんだろ?」
「ぶ〜」
「フェル。わたし手伝うわ」
「わ〜い!ありがとうね、レイ」
綾波も甘いなあ・・・。
・
・
・
途中で買い物をしたので家に着いたのは五時少し前だった。
当然リツコさんはまだ帰って来ていない。
「今晩の夕飯の支度は俺がするから、綾波はフェルの課題を見てていいよ。あ、風呂だけ入れてくれるかな?」
「わかったわ。ありがと、碇君」
「ありがとね〜、シンジ〜」
さて、今晩はハンバーグにするんだ。
綾波が肉を食べれるようになったから献立の幅が拡がって助かるよな。
・・・
(ザクザクザクザク・・・)
(トントントントン・・・)
玉葱のみじん切り。
(トントントントン・・・)
ニンニクのみじん切り。
(トントントントン・・・)
挽き肉も一応叩いて。
(クチャクチャクチャクチャ・・・)
挽き肉と玉葱とニンニクを混ぜて、こねて。
(パッパッパッパッ)
胡椒。
(パラパラパラ)
塩。
(クチャクチャクチャクチャ・・・)
またこねる。
(パンパンパンパン・・・)
で、空気抜き。
ハンバーグの下拵え完成!
(ピピピッ・・・ピピピッ)
あ、風呂が沸いた。
と・・・後はサラダとスープだな。
(ピンポーン)
あ、リツコさんかな?
(ガチャ・・・バタン)
「ただいま」
やっぱりリツコさんだ。今日は早かったんだ。
「おかえりなさーい」
「ただいま、シンジ君。レイとフェルは?」
「フェルの部屋でフェルの修学旅行の課題をやってます、綾波が手伝うって」
「そうなの。じゃあ着替えてくるわね」
「はい。お風呂も入ってますから良かったらお先にどうぞ」
「ありがとう。でも食事の後にするわ」
「わかりました」
・
・
・
「「「いただきまーす」」」
「はい、どうぞ」
・・・
「シンジのハンバーグはホントに美味しいよね〜」
「そうね」
「碇君のハンバーグは美味しい」
「みんなありがとう。そう言ってもらえるとお世辞でも作った甲斐があるよ」
「あら、お世辞なんかじゃないわよ。こんなに美味しい料理が食べられるんだったら前回もシンジ君と同居していれば良かったわ」
「それは褒め過ぎですよ」
「謙遜も度を過ぎると嫌味になるわよ。まあいいわ。ところで今日は何してたの?」
「今日はみんなで遊園地に行ったんだよ〜」
「そう。それは良かったわね。今日は平日だから空いてたんじゃない?」
「うん。だからアトラクション全部回れたんだ〜」
「それは凄いわね。フェルは遊園地は初めてだったんでしょう?」
「そうだよ〜。とっても楽しかった〜。また行きたい」
「レイもシンジ君も楽しめた?」
「はい。楽しかった」
「ええ」
ん?
何で綾波は赤くなってるんだろう?
「遊園地なんて久しく行ってないわね」
ここは突っ込んじゃいけないんだろうな・・・。
「リツコさんも遊園地なんて行くんですか?」
あ、綾波が突っ込んじゃった。
「あら、私だって若い頃には行ったわよ」
「誰とですか?」
おいおい、綾波さん。
「それは秘密ね」
さすがはリツコさん、大人だな。
そろそろ話題を変えなくちゃな。
「ところでフェル、課題は終わったの?」
「うん、後少しで終わりだよ〜。レイが手伝ってくれて助かっちゃった〜。ありがとね、レイ」
「そんな事はないわ。それ程手伝ってはいないもの・・・」
もしかして綾波照れてるのかな?
・
・
・
風呂は命の洗濯、って前にミサトさんが言ってたけど、確かに気持ちいいよな。
でも・・・詰まらない事を考えてしまう事もある。
俺は一体どこまでが本当の俺なんだろう?
これまでの過去の記憶の大部分は前回のもう一人の『碇シンジ』のものなんだよな・・・。
さっき俺の料理を褒めてくれたけど、それだって前回の『碇シンジ』の記憶のなせる技かも知れないんだ。
言ってみれば、俺と『僕』が混ざり合ってしまったのが今の碇シンジなのかも知れない。
一体俺の魂はいつこの身体に入り込んだんだろうか?
自分自身に自覚がないから分からないや。
別の世界のリリスの魂・・・その魂はその世界でどんな肉体に宿っていたんだろう?何故その時の記憶がないんだろう?
その世界にも綾波はいたんだろうか?いたなら綾波がリリスだから、俺の魂はその世界の綾波に宿っていたのかな?
そうすると、この俺に魂が移った後のその世界の綾波は今どうなっているんだろうか?
・・・。今更こんなに分からない事を思い付くなんて、さっきのミーティングの時に思い付いていれば質問出来たのにな。
後でリツコさんに聞こうか・・・。
いずれにしても、カヲル君とはもう一度話しをしなくっちゃいけないな。
・・・のぼせてきた・・・出よう。
(ザバァーン)
・・・
「リツコさん、お風呂先にいただきました。綾波もフェルも済ませましたからリツコさんで最後です」
「わかったわ、ありがとう」
「リツコさん」
「何?」
「今度カヲル君と話しをする時には、もし良ければ俺も同席させてください」
「いいわよ。じゃあアレンジ出来たらシンジ君に知らせるわ。あ、それよりもシンジ君がアレンジしてくれるかしら?私はいつでもいいから。その方がいいわね」
「はい、ありがとうございます」
明日にでも聞いてみよう!
「場所は本部の私の部屋にしてね、目と耳が無効になっているから」
「はい、わかりました」
「じゃあ私はお風呂いただくわ。お休みなさい、シンジ君」
「お休みなさい、リツコさん」
・
・
・
カヲル君に聞いておかなくちゃいけない事を整理しておかないとな。
その場での行き当たりバッタリだと、どうしても何か忘れちゃうからな。
そうだ!
恥ずかしいけど早速紙に書いておこう。
ミーティングは明日になるかも知れないから今書こう。
(ガタガタガタン)
(ゴソゴソ・・・)
さて、と。
何からにしようか?
とりあえず思い付くまま書いて、後で整理しよう。
まずは・・・
『リリスの魂はいつこの世界の碇シンジに入り込んだのか?』
あ、そうだ!そもそもからだ。
リツコさんとミサトさんと加持さんとではこの世界に戻ったっていう自覚の時期にズレがあったんだったよな。だから・・・
『今回の世界はいつ始まったのか?』
、と。次は・・・
『今の俺のリリスの魂は元の別の世界ではどんな人間に宿っていたのか?やっぱり綾波なのか?』
『その人間はリリスの魂が俺に移った後どうなったのか?』
あと・・・下らないけど・・・
『俺が料理が出来るのは前回の碇シンジの記憶によるものか?』
『前回のシンジは今どういう状態なのか?』
、と。
『何故俺達四人だけ(?)が前回の記憶を持っているのか?』
カヲル君は例外だよね。
『フェルとイスラはこれからどうなってしまうのか?ずっと人間として生きていけるのか?』
大事な事だよ。
フェルは人間になったのは今回が初めてじゃあないって言ってたから知ってるのかも知れないけど・・・。
それから・・・
『今アダムはどうなっているのか?』
肝心な事だ。
『他にも前回の記憶を持っている人間はいるのか?』
父さん、冬月さん・・・。
『綾波はいつリリスの記憶を取り戻すのか?』
多分これがキーポイントだな。
『この世界が巻き戻されたのは綾波の望みなのか?』
『そうならば綾波は最終的に何を望むのか?』
『何故碇シンジに別の世界のリリスの魂を宿したのか?』
質問はこんなもんかな。
後は・・・出来ればリリスがカヲル君に託したというタスクのスケジュールを教えて欲しいけどね。
まあこんなところかな。
・・・。
カヲル君は何を望んでいるだろう?
綾波は?
前回のリリスたる綾波は何を望んでいたんだろう?
俺は何をしたらいいんだろう?
・・・。
質問を整理したら寝ようかな。
・
・
・
・・・
・
・
・
碇シンジ君。
もう一人の僕。
綾波が望んだ君。
ねえ、君は何が知りたいの?
知らなくていい事もあるんだよ。
知らなくても生きていけるんだよ。
いや・・・知った事で生きていけなくなる事だってあるんだ。
サルベージか・・・。
それは思い付かなかったな。
カヲル君が僕をサルベージするかも知れないのか。
僕はその甘い誘惑に耐えられるだろうか?
・・・。
・・・みんなに逢いたい。
逢いたいよ。
ミサトさん、アスカ・・・綾波。
トウジ、ケンスケ、洞木さん。
リツコさん、父さん。
みんな・・・。
僕は許されるのだろうか?
みんなを傷付けた。
みんなの未来を奪った。
みんなをLCLの海に沈めた。
みんな覚えていないかも知れないけど。
・・・でも僕は覚えている。
だから還れないんだ。
還っちゃいけないんだ。
今はそう思う。
ねえシンジ君。
もう一人の僕。
君が何故呼ばれたのかは僕にも分からない。
でも君は僕の記憶を持っている。
意識していなくても僕の記憶を使っている。
そう・・・君は僕だ。
でも僕は君じゃない。
どうすればいいのかな?
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