『俺と僕で何?』


第伍拾九話 初めての試合


リツコさん、今日は早いな。

「おはようございます」

「おはよう、シンジ君」

あれ?

「朝食の用意が出来たからレイとフェルを起こしてくれる?」

今日は俺が朝食当番だったのに。

「はい、わかりました。済みません、朝食作ってもらっちゃって」

・・・

「「「いただきます」」」

「はい、召し上がれ」

「今日はテニス訓練とシンクロテストがあるから忘れないでね」

「はい」

「は〜い!」

「・・・了解」

綾波とフェルといつもの通学途上。

「碇君・・・」

「何、綾波?」

「昨日は本部で何してたの?」

「ああ、リツコさんとちょっとね」

「ちょっとって何?」

「あ、いや・・・色々と検査とかしてたんだよ」

どうしたんだろう、綾波・・・珍しいな、そんな事聴くなんて。

それに俺は何でこんな事言って誤魔化さなきゃいけないんだよ?

「・・・そう」

「それがどうかしたの?」

「いいえ・・・ならいいの」

・・・。

ごめん、綾波。

何か言わなきゃ。

「あの・・・綾波」

「何?」

「綾波は最近実験とかしてるの?」

「最近は少ないけど、実験は続いているわ」

「そうなんだ」

綾波は俺が言ったのがダミープラグの実験の事だって判って言ってるんだよな。

「それがどうかしたの?」

「あ、いや、ただ何となく・・・」

「その辺はリツコさんが考えてくれていると思うわ」

確かにそうだよな。

「ねえ、実験って何の事〜?」

ああ・・・フェルは知らないんだ。

「うん、零号機の実験だよ」

ごめん、フェル。

「ふ〜ん・・・」

ダミープラグ・・・この実験はいつかは失敗させなきゃいけないんだろうな。

まあ、その辺はリツコさんがちゃんと考えているんだろうけど・・・。

今日の弁当は久しぶりにリツコさんが作ってくれた。

でもリツコさんは何で今日朝食と弁当を作ってくれたんだろう?今日は俺の当番だったのに・・・。

「碇!」

「あ、何、ケンスケ?」

「何さっきからぼーっとしてるんだよ、飯も食わないでさ?」

「いや、そんな事ないよ」

「ならいいけどさ。じゃあ今の惣流の話し聞いてたか」

え?何の話しだ?

「あんた、ホントにボケボケっとしてるんじゃないわよ!」

「ああ、大丈夫だよ、アスカ」

「またみんなで週末にどっかに行こうって話ししてたんじゃない」

「あ、うん、そうだったよね。うん」

「で、あんたは?」

「俺が何?」

「あんたバカぁ?あんたがどこに行きたいかに決まってるでしょうが!」

「ああ・・・遊園地なんてどっかな?」

「あんたねぇ・・・それは一昨日行ったばっかりじゃないの。はあ・・・あんたに聞いたあたし達がバカだったわ。こいつは無視して話しを進めましょう。で、ヒカリはどこ行きたい?」

「わたしはハイキングがいいかな?その・・・この前も行ったけど今度は違う所で」

「うーん、そうねぇ」

「俺は新横須賀がいいな」

ケンスケが言った。

「新横須賀に何があるのよ?」

「今度あそこに国連軍の太平洋艦隊が来るんだよ」

アスカの肩が震えてる。

「・・・あんたねぇ、あたしら女の子が軍艦見て一体全体喜ぶとでも思ってるの?」

「だってかっこいいぜ」

「あんたは無視!」

「ケンスケはマイナーなんじゃ。わしはみんなでフィットネスクラブなんてええんやないかと思うで」

「却下!大体一見でこんなに大勢行ける訳ないじゃない」

「ほな惣流はどこに行きたいんじゃ?」

「あたしは・・・あ、レイはどこに行きたい?」

「わたし?」

「そうよ」

「わたしはみんなと一緒ならどこでもいいわ」

「はぁ・・・あんたってば、張り合いがないわねぇ」

「だから惣流はどこに行きたいっちゅうんじゃ?!」

「あたしはショッピングがいいわね!」

「はぁ?ショッピングやと?」

それは行きたくないな。

「何が悲しゅうてショッピングなんや?わしは嫌やで!そんなん皆で行くもんやないわ!買うたいもんもあらへんさかいにな」

確かに。

「でもみんなの希望がバラバラじゃないか。これじゃあ決まらないよ」

俺は正直な感想を言った。

「うーん、困ったわね」

「何でまたみんなで出掛ける事になったの?」

「シンジ・・・。」

「え、何?」

「やっぱりあんたは人の話しを聞いてなかったのね。」

「だから何でだよ?」

「ヒマだからよ!」

はぁ?

「ヒマだからって・・・でもシンクロテストとか入るかも知れないじゃないか」

「基本的には休日は待機任務だけよ。あんたそんな事も知らないの?」

そうなんだ。

「うん、知らなかったよ」

「仕方ないから各自明日までに気の利いたアイデアを持ち寄る事!いいわね!」

えー・・・遊園地でいいじゃないか。

今日はここで早退だな。。

「シンジ!行くわよ」

「わかってるよ。行こうか」

「久々のテニスだが今日は軽くウォーミングアップした後、試合をする」

「わ〜い!」

試合か、初めてだな。一応ルールは覚えたんだよな。

「いよいよあたしの実力が発揮出来るわね」

「Aコートにシンジ君、渚君、アスカ、レイちゃんが入ってウォーミングアップの後で6ゲーム先取で試合をしてくれ。Bコートには残りのイスラ君、フェル君が入って基礎練習だ 」

・・・

アスカ、ウォムアップから張り切ってるなぁ。

カヲル君も巧いや。

「じゃあシンジ、トス!」

「あ、じゃあラフで」

アスカのラケットがくるくる回る。

(カランカラン・・・)

「残念、スムースだわ。サーブを貰うわよ」

「じゃあコートはこっちを貰うよ」

と、カヲル君。

各自コートに散った。

アスカからのサービスだ。

カヲル君の方が巧いので、フォアサイドが俺、カヲル君はバックサイドにした。

「よろしくお願いします」

「「「よろしくお願いします」」」

アスカのファーストサーブ。

(スパーン!)

うっ!クロス、深い!

・・・届かなかった・・・。

「ふっふっふっふ。いきなりエース・・・悪いわね」

あんな速いサーブなんて取れないよ・・・。

「フィフティーン、ラブ」

今度はカヲル君のリターンだ。

(スパーン!)

アウトだ!

「フォールト!」

アスカのセカンドサービス。

(スパン!)

今度はセンター!

(スパーン!)

カヲル君のリターンがアスカのバックに沈んだ、ナイスリターンだ!アスカはサービスダッシュしている。

アスカのボレー。げ!ストレートに俺の所に来たよ!

(パコン)

何とかロブで返す。

(バッキーン!)

アスカの強烈なスマッシュが俺の所に・・・取れない。

「サーティ、ラブ」

カヲル君が俺に近寄って来た。

「シンジ君。惣流さんはシンジ君を徹底的に狙う積もりみたいだよ」

やっぱりそうなんだ。

「どうしたらいいの?」

「だからこっちはレイちゃんには悪いけどレイちゃん一人狙いでいこう」

「でも俺にはそんなコントロールはないよ。返すだけで精一杯なんだからさ」

「なーにこそこそやってんのよ!早く構えなさいよ!」

アスカが文句を言っている。

「結果はどうでもいいんだよ。狙う事が大事なんだ」

「わかった」

「じゃあそう言う事で」

ごめん、綾波・・・。

「サーティ、ラブ。行くわよ!」

(スパーン!)

「フォールト!」

ラッキー、セカンドだ。

(スパン!)

良し!真ん中だ・・・これなら打てる!

綾波に向かって!

(パコン)

俺の打ったボールは綾波のバックの横を抜けて・・・入った。

綾波は・・・無反応だった。

「こら、レイ!少しは反応しなさい!」

「何、アスカ?」

「今のボールよ!ちゃん手を出しなさいって言ってんのよ!」

「わたしは初心者。あんな球は取れないわ。アスカが取って」

「あたしだって取れないわよ、サービスダッシュしてんだから」

「なら止めれば」

「くっ・・・もういいわよ。今度はちゃんと取るのよ!」

「取れれば取るわ」

「サーティ、フィフティーン。」

(スパーン!)

出た!

「フォールト!」

(スパン!)

カヲル君のリターンはロブで綾波の頭を抜けていった。

アスカがカバーに回る。

アスカのロブ。

(チョコン)

あ!

カヲル君の誰もいない所へのドロップショットが決まった。

カヲル君、巧い!

「・・・レイ」

「何、アスカ?」

「あんたちゃんとカバーしなさいよ!」

「何を?」

「あたしがあんたのカバーをしたんだから、あんたはサイドチェンジしてあたしのカバーに入るんでしょうがぁ!」

「そうなの?そんな事わたし知らない」

「なんですってぇ!」

アスカが怒ってる。

「まあまあアスカ、レイちゃんは初心者なんだし、しかも試合は今日が初めてなんだから、仕方ないさ」

「加持先輩」

「だからひとつひとつ教えてやってくれ。それも上級者としての努めだからな」

「はい、加持先輩がそう言うなら」

アスカ・・・態度が全然違うじゃないか。

「サーティオール」

「さあ、本気でいくわよぉーっ!おりゃーっ!」

(ガギョン!)

わ!スピンサーブだ。

くっ、跳ねるっ。

取れないや・・・。

「ナイスサーブだよ。ドンマイ、シンジ君」

アスカ、今までは本気じゃなかったんだ。

「フォーティ、サーティ!次っ!・・・おりゃーっ!」

(ガギョン!)

センターぎりぎり!

(スパーン!)

カヲル君、クロスにナイスリターンだ!

 

(スパン)

アスカのボレーがまた俺の所に来た。

取れる!

綾波の上にロブだな。

(パコン)

良し!巧く打てた。

え?

(バキョーン!)

・・・。

「ゲーム。コートチェンジね」

アスカのスマッシュがセンターに決まった。

余りにも速くてカヲル君も俺も全然反応出来なかった。

「惣流さんは本気でやってるみたいだね」

「うん。アスカ、本当に巧いや」

俺とはレベルが違い過ぎるよ。

綾波は一度もボールに触らなかったし・・・。

「まあ練習なんだから気楽にやろうよ、シンジ君」

「そうだね」

自分のベストを尽そう。

・・・

結局、アスカとカヲル君はサービスキーブ、綾波と俺はサービスブレークで、6−5で俺達が勝った。

本当なら2ゲーム離さなきゃいけないんだからイーブンなんだけど、今回は6ゲーム先取だからな。

「なんなのよぉ・・・こんな事ならリターンを取るんだったわ」

アスカが負け惜しみを言った。

「まあ引き分けだね、惣流さん」

「ふん。まああんたが巧いのは判ったわ」

「ありがとう」

・・・

その後、俺とフェル対レイとイスラで試合して6−5で俺達の勝ち、アスカとイスラ対カヲル君とフェル6−3でアスカ達の勝ちとなった。

「どうだい、初めての試合の感想は?」

加持さんが聞いた。

「なかなか思ったようにボールが打てないですね」

俺は正直な感想を言った。

「まあ乱打と試合の球は違うからな」

「面白かったよ〜」

と、お気楽なフェル。

「みんなの足を引っ張っちゃって申し訳なかったですわ」

あくまでも控え目なイスラ。

「ほとんどボールに触れなかった」

とは綾波。

「まあ初めてなんだからそんなものさ。じゃあシンクロテストが控えているから今日はここまでにしよう。みんなお疲れ様」

「今日はどんな感じ、シンジ君?」

リツコさんの問掛け。

「特に変わりはないですね」

シンクロテストと言っても俺のシンクロはみんなとは違うんだよな。コアを必要としないエヴァへの直接シンクロ。

「わかったわ。じゃあ上がっていいわよ」

だからエヴァの中に居る筈の母さんを感じる事はない。

「わかりました」

「着替えが終わったら検査室に行って、検査が終わったら私の研究室に来てちょうだい。私がいなくても中に入れるようにしてあるから」

「はい、わかりました」

検査室では、採血、採尿、採便、採毛、心電図、レントゲン、CTスキャンとかをやられた。

(コンコン)

「リツコさん?」

・・・いないのかな?

(コンコンコン)

・・・。

いないみたいだな。

仕方ない・・・中で待っていよう。

「シンジですけど・・・入りますよ」

(ガチャ・・・バタン)

喉が渇いたからコーヒーでも飲ませて貰うかな。

(カチャ)

(コポコポコポ)

煎れてから時間が経っているんだろうけど、リツコさんとこのコーヒーは美味しいんだよな。

「ふう」

久しぶりのテニス楽しかったな。

アスカとカヲル君・・・テニスが本当に上手だ。

俺も練習すればあれ位にはなれるのかな?

・・・。

今日はリツコさんこれから何の話しをするんだろう?

昨日のカヲル君の話しの事かな?

まだ俺の中では整理出来ていないんだけど・・・。

(ガチャ)

「待たせて悪かったわね」

「いえ、そんなには待ってないですよ」

(バタン)

「そう?」

「はい」

リツコさんもサーバーからコーヒーを入れている。

「さて・・・今日はサルベージの話しをするわ」

もうその話しなんだ・・・。

「やっぱり前回のシンジをサルベージするんですか?」

「前回のシンジ君をいつまでもこのままの状態にはしておけないもの」

「はあ」

どんな事をするんだろう?

痛くなければいいけどな。

「でもその前に心理的なテストをしたいの」

「どんなテストですか?」

「簡単な催眠誘導テストよ」

「それってリツコさんが俺に催眠術を掛けるって事ですか?」

「そうよ。どうかした?」

リツコさんは催眠術も出来るんだ。

「いえ、リツコさんと催眠術ってなんだか似合わない様な気がして・・・」

「あら、最近の催眠療法は充分科学的な物なのよ」

「はい、すいませんでした。でも痛いのは嫌ですからね」

「大丈夫よ。痛い事なんてしないから」

「わかりました」

「じゃあ早速始めるわよ」

へ?

リツコさんが真ん中の穴にヒモを通した五円玉を取り出した・・・ってマジ?

「リツコさん、それって・・・」

「あら、これは催眠術の必須アイテムよ。知らなかったの、シンジ君?」

知ってるから聞いてるんですけど・・・。

「いえ」

「じゃあ始めるわよ。シンジ君はリラックスして、この五円玉を見つめていてちょうだい」

「はい」

本当にマジなんだ。

リツコさんが俺の目の前で五円玉を左右に揺らせ始めた。

「さあ、貴方は眠くなる。眠くなーる」

リツコさんが呪文を唱える様にそう言った。

・・・

「シンジ君、眠くならないの?」

リツコさんがもう何十回呪文を繰り返しただろうか?

全然眠くならない俺に言った。

「ええ。眠くなりませんね」

「上手くいく筈なのにおかしいわね?」

「すいません」

「シンジ君が謝る事じゃないわ」

「俺って催眠術に掛り難いんでしょうか?」

「確かにそういう人もいるわね」

「もう止めますか?」

「もう少しやってみましょう」

ええー。まだやるのー。

「さあ、貴方は眠くなる。眠くなーる・・・」

・・・

「駄目だわ」

「すいません」

「シンジ君が謝る事じゃないわ」

「はい」

「仕方ないから実験は中止」

「はい」

「今日はこれまでにしましょう」

はあ・・・助かったぁ。

「はい」

「今度は薬を使おうかしら・・・」

ええっ!

「そんな事までして何をしたいんですか?」

「貴方の中に居る前回のシンジ君にコンタクトしてサルベージについて説明しておきたいのよ」

「どうしてですか?」

「サルベージの成功確率を上げる為よ。被検者の協力があった方が断然良いもの」

成程。

「はあ」

でもリツコさんの薬は何と無く嫌だな。

「じゃあ今日は帰っていいわよ」

「はい」

「私は夕飯は済ませて帰るから。貴方達ももう遅いから本部の食堂で済ませた方がいいんじゃない?」

あ、もう七時過ぎか。

「そうします」

携帯に電話したら、綾波とフェルも何かの検査をしてたみたいで、まだ本部にいた。

で、みんなで本部の食堂で夕飯を済まる事にしたんだけど・・・食堂に行ったら綾波とフェルだけじゃなくて、アスカとイスラ、それにカヲル君もいた。

「みんな遅かったんだね」

「みんなブリーフィングやら何やら色々とあってね、こんな時間になったんだよ」

カヲル君が代表して説明してくれた。

「そうだったんだ」

「宴会だぁ〜!」

宴会じゃないと思うけど、フェルがはしゃいでいる。

「あんた、宴会って、それは違うんじゃない?」

アスカが言う。

「みんなで食事するの、宴会じゃないの〜?」

「あんたは何でそういう発想になるのよ?ただ夕飯を食べるだけでしょうに」

「でも久しぶりにチルドレン勢揃いの食事なんですから、懇親会にはなるんじゃないてすか?」

イスラがフォローする。

「まあ、それはそうかもね」

アスカも同意。

「みんな揃っての食事、それはとても気持ちのいい事」

綾波の訳の判らない台詞。

「そうだね。僕も独りよりもみんなで食べる方が美味しく食事出来ると思うよ。食事はリリンの文化の極みだからね。さあ、食べよう」

カヲル君・・・君の言ってる事も良く判らないよ。

なんだかんだで、家に帰ったのは十時過ぎになっちゃった。

リツコさんはまだ帰っていない。

「碇君、お風呂が沸いたわ。先入って」

「あ、綾波が先入っていいよ」

「碇君が先なの」

「いいの?」

「いいの」

「じゃあ先に入らせてもらうよ。ありがとう」

「うん」

・・・

ああ、気持ちいい・・・。

風呂は命の洗濯って前のミサトさんの言葉。

あれ?

それって前回の碇シンジの記憶だよな、俺が経験した事じゃないよな?

どうだったのかな?

・・・わからないや。

でも、何故か心に染み入る。

どうしてなんだろう?

「本当に気持ちいいや」

・・・

「綾波、出たよ」

「はい。・・・フェル、先にお風呂入って」

「ふぁ〜い。・・・眠いよ〜」

フェル、うたた寝してたのかな。

そうだ!折角だから綾波にも一応聞いておこう。

「綾波」

「何?」

「綾波は何を望むの?」

あれ?俺、何言ってるんだろう?

「わからない、何言ってるの?」

「綾波はリリスの記憶がまだ戻ってないんだよね?」

「ええ」

「リリスは何を望んだんだろうね?」

そうだ、これが聞きたかったんだ。

綾波、ちょっと小首を傾げて考えている。

・・・か、可愛いかも。

「多分碇君の幸せだと思う」

え?

気のせいかな?綾波、少し赤くなってるんじゃないか?

「どうしてそう思うの?」

「だって・・・それがわたしの願いだから」

「そうなの?」

「ええ」

そんな事を面と向かって言われると何だか恥ずかしいな。

「でも綾波はリリスの記憶は取り戻してないんだろう?どうして分かるの?」

「リリスだってわたしだもの。リリスになってもわたしと願いは同じ筈だわ」

「自分の望みはないの?」

「わたしの望むものは碇君の幸せだわ」

「どうしてそうなるのかな?」

「理由なんてない・・・それがわたしの希望なの」

・・・そうなんだ。

「ありがとう、綾波」

「いいの」

「じゃあおやすみ、綾波」

「おやすみなさい、碇君」

綾波には幸せになって欲しいな。

正直言ってダミープラグの実験なんてさせたくない・・・綾波は人間なんだから。

俺は綾波に何かしてあげられるんだろうか?

何かしてあげたい。

「俺の傲慢なんだろうか?」

声に出たよ。

綾波もアスカも前回は酷い目に遭ったんだ。

今回はそんな事にはしたくない。その為にも出来る事はしておきたいよな。

でも・・・俺に何が出来るっていうんだろう?

綾波は俺の幸せを望むって言った。

俺が幸せになればそれでいいのか?

何で綾波はそう思うんだろう?

俺は綾波の幸せを、アスカの幸せを、そしてミサトさんやトウジやみんなが幸せになればいいと、そう願う。

誰だって幸せになる権利はあるんだ。

それはあのシンジだってそうなんだよな。

サルベージか。

それでシンジは幸せになれるのかな?


話 へ  第六拾話 へ

目 次 へ  「創作小説」へ戻る  トップページへ戻る


* 感想をお願いします。