『俺と僕で何?』


第六拾参話 遊園地、再び


(ピピピ・・・ピピピ)

ん・・・。

ここは?

そっか・・・新しい部屋だ。

今日は遊園地の行くんだったな。

・・・ちょっと気が重い、かな。

隣りのベッドを見る。

綾波はまだ寝ているのか。

今は7時半。で、集合時間は9時20分。

家を8時40分に出れば充分間に合う。

まだ早いけど綾波を起こすか。

「綾波」

声を掛けるだけじゃ起きないか。

「綾波」

綾波の肩を揺する。

「・・・んーん」

「朝だよ。起きて、綾波」

「あ、うん・・・碇君?」

綾波の目が開いた。

「綾波、起きて。今日は遊園地だよ」

「あ、碇君」

「目が覚めた?」

「うん、おはよう」

「おはよう、綾波。シャワーを浴びて着替えたらリツコさんの部屋で朝食にしよう」

「わかったわ」

・・・

シャワーを浴びたのはいいんだけど・・・着替え、何にすればいいかな?

遊園地だからやっぱり下はズボンがいいのかな?

(コンコン)

「綾波?」

「うん」

「いいよ、入って」

(カチャ・・・バタン)

「碇君、着替えた?」

「いや、何を着てこうか悩んでいたところなんだ」

綾波はポロシャツとキュロットスカートに着替えていた。

「まだ着替えていないの?」

「うん。何を着たらいいかわからなくて困ってるんだ」

「わたしと同じでいいって」

「リツコさん?」

「そう」

「わかった」

昨日整理した衣類から綾波が着てるのと似てるのを探す。

・・・あった。

着替える。

うん、これなら短パンみたいであんまり抵抗感がないや。

財布なんかの小物はポシェットに詰めて肩に掛ける。

「どう、おかしくない?」

「ううん、とっても似合っているわ」

「そう?」

「うん」

「じゃあリツコさんのところに行こうか」

「うん」

「あら、まるで姉妹、いえ、双子みたいね、貴方達」

「そうですか」

「シンジ、可愛い〜。」

「フェルったら駄目じゃない」

「ん、何が〜?」

「シンジじゃなくてユリでしょ」

リツコさんがフェルをたしなめる。

「あは、まだ慣れなくって・・・。似合ってるよ、ユリ〜」

「ありがとう、フェル」

「じゃあ朝食にしましょう。今日はフェルが作ってくれたのよ」

・・・

朝食はクロワッサン、スクランブルエッグ、ソーセージ、サラダ、オレンジジュース、コーヒー、紅茶。

典型的なコンチネンタルブレックファーストだった。

「フェルって洋食派だったんだね」

「そういう訳じゃあないんだ〜。こっちの方が作るのが簡単だっただけだよ〜」

「でも凄いわ、フェル。わたしには出来ないわ」

と、綾波。

「ありがと〜、レイ」

フェルが照れてる。

「「「いただきます」」」

「どうぞ召し上がれ〜」

美味しい!

フェルも頑張ってるんだな。

「家は何時頃出るの?」

リツコさんが聞いた。

「8時40分で間に合います」

俺が答える。

「ユリちゃんの女の子デビューね」

「そうですね」

確かにそうなんだけど、そんなに明るく言わないで欲しいな。

「自分のプロフィールはちゃんと覚えた?」

「多分大丈夫です」

「あんまり緊張しないで楽しんでらっしゃいな。折角の遊園地なんだからね」

「はい」

9時10分に遊園地入口に着いた。

「おはよう」

まだ洞木さんしか来ていない。

「おっはよう〜!」

元気なフェル。

「おはよう」

綾波。

「おはようございます」

やっぱり少し緊張するな。

「あら、こちらは?」

洞木さんが聞く。

「シンジの従兄妹だよ〜」

フェルがフォローしてくれた。

「そうなの」

「あの・・・碇シンジの従兄妹で碇ユリと言います」

「へえ、碇君に従兄妹がいたのね。知らなかったわ。あ、わたしは洞木ヒカリ。学級委員長をしてるからみんなは委員長って呼ぶけどヒカリって呼んでね」

「はい」

「ところで碇君は?」

「シンジは松代帰って来れなくなって今日は来れないんだよ〜。せっかく一日延期してもらったのにごめんね〜」

またまたフェルのフォロー。

「仕方なわよ、仕事だもの」

「その替わりって訳でもないけどユリを連れて来たんだよ〜。」

「そうなの」

「おっはようさん!」

「おはよう」

「おはよう」

トウジとケンスケ、カヲル君だ。

「おはよう」

「おはようございます」

アスカとイスラも。

「おはよう」

洞木さん。

「おっはよう〜」

フェル

「おはよう」

綾波。

俺も挨拶しなきゃ。

「おはようございます。初めまして。碇シンジの従兄妹で碇ユリと言います。シンジが松代から帰って来れなくて替わりに来ました。せっかく一日延期していただいたのにごめんなさい 」

う、丁寧言葉になっちゃったよ。

「ほう、シンジの従兄妹かいな。わしは鈴原トウジや。よろしゅうにな」

「よろしく、鈴原君」

「しかしシンジも難儀やのう。休日なのにゆっくり遊園地にも行けんのかいな」

「俺は相田ケンスケ。よろしく。シンジにも似てるけど、どっちかって言うと綾波に似てるな」

う、ケンスケ、鋭いな。伊達に写真は撮ってないか・・・。

「よろしく、相田君」

「あたしはアスカ、惣流アスカ・ラングレーよ。よろしくね」

「よろしく、惣流さん」

「アスカ、でいいわよ。あたしもユリって呼ぶから。いいでしょ?」

「いいですよ」

「でもシンジに従兄妹がいるなんて話し聞かなかったけど今迄どうしてたの?」

「昨日、第二東京から引っ越して来たんです」

「へー」

なんか怪しさ大爆発って感じだよな。

「来週から学校にも行くからよろしくね」

「学年は?」

「2年です」

「じゃああたし達と同じじゃない。ならそんなに丁寧な言葉使う必要はないわよ」

「わかった」

「ねえ〜早く中に入ろうよ〜」

フェルが待ち切れないみたいだ。

「まずはジェットコースターね!」

なんだかんだ言ってアスカも張り切ってるな。

「わ〜い!ジェットコースターだ〜!」

さすがにこの前と違って平日じゃないから混んでるな。

・・・

ジェットコースターに始まり午前中で結構乗れた。

「そろそろお昼にしましょうよ」

と、洞木さん。

「よっしゃー!」

「今度は違うところにしないか?」

と、ケンスケ。

「そうね。中華なんてどう?」

とはアスカ。

「いいね」

と、カヲル君。

・・・

総勢9人の大所帯だったけど、さすがは中華、9人座れるテーブルがあった。

俺の右隣りはレイ、左隣りはケンスケだ。

「君の事はなんて呼べばいいのかな?」

「碇でもユリでもどっちでも構わないけど」

「じゃあユリさんでいいかな?シンジも碇だから紛らわしいからね」

「いいよ」

「注文はあたしとヒカリに任せてくれない?」

「いいよ」

「オッケー」

「みんなもいいわね?」

みんな異存はないみたいだ。

「じゃあそういう事で。料理が来る迄ユリへの質問コーナーにしようか?」

「はい!」

「はい、相田」

アスカが仕切ってる。

「ユリさんとシンジはどういう関係なんだ?」

「シンジの母親が俺の、いや、わたしの母親の妹なんで、シンジと俺、あ、わたしは従兄妹になるんだ」

「へー、ユリって自分の事を『俺』って言うんだ」

あ、つい・・・まあ仕方ないか。そう決めたんだし。

「うん、普段はそうなんだよね。おかしい、アスカさん?」

「別におかしかないわよ、珍しいには違いないけど。それに、さん付けはいらないわ。アスカ、でいいわよ」

「わかった、アスカ」

「良く出来ました、ユリ」

「はい!」

「また相田?まあいいけど」

「ユリさんの誕生日は?」

「6月6日だけど」

ケンスケ、そんなのわざわざメモってどうするんだよ?

「それってシンジの誕生日と同じちゃうか?」

やっぱり気付いたか。

「そうなんだ。ま、偶然だけどね」

「かーっ!正しく運命っちゅうヤツじゃな」

「従兄妹だけどね」

「相田ばっかりじゃなんだから、あたしから質問。こっちには何時?なんで来たの?」

「両親が仕事で渡米する事になって昨日こっちに来たんだ」

「じゃあ今一人住まいなんだ?」

「いや、実は知り合いの赤木さんて人が住んでいるマンションの隣りの部屋にレイと一緒に住んでいるんだ」

「え。赤木ってリツコの事?」

「うん、そうだけど」

「どうしてリツコと知り合いなの?」

「いや、詳しい事は知らないけど母さんの知り合いみたいで」

これはシナリオになかったな。

「ふーん。で、レイと一緒に住んでるんだ」

「うん。リツコさんのところはもう部屋がなくって俺一人じゃなんだからレイに一緒に住んでもらう事にしたんだよ」

「そっか」

納得してくれたのかな?

「わしも質問ええかいな?」

「いいわよ、鈴原」

「ユリはんはなんぞ特技があるんかいな?」

うーん・・・特技ねぇ。

「あんまりないけど強いて言えば料理かな」

「さよか。しかしユリはんはシンジにも似とるが綾波によう似とるのう」

ぎく。

「そうかな?」

「確かに似てるわ」

う、洞木さんまで。

「おう、食いもんが来たで」

助かった。

・・・

昼食も俺への質問コーナーも何とか無事終わった。

「次はお化け屋敷に行かない?」

なんだかアスカは目一杯楽しんでいるな。

・・・

お化け屋敷は二人乗りなので俺はレイとペアになった。

「碇君」

「何?」

「大丈夫?疲れてない?」

綾波、俺の事を気遣ってくれてるんだ。

「うん、大丈夫だよ。ありがとう」

綾波はお化け屋敷全然怖くないみたいだ。

・・・

最後に観覧車に乗る事になった。

俺とレイ、カヲル君が一緒だ。

「シンジ君、ごめんよ」

実験の失敗の事だな。

「カヲル君のせいじゃないよ」

「でもこんな事になって申し訳ないと思っている」

「いいんだ。どうせシンジか俺のどちらかがこうならざるを得なかったんだから」

「それはそうだけど」

「もう割り切ったから言わないでくれるかな」

「わかったよ」

「碇君は碇君だわ」

「綾波・・・」

「わたしは碇君が碇君である事を知っている。たとえ外見が変わろうとも碇君は碇君だわ」

「そうだね」

そうだ。俺は俺だ。

「レイちゃんは強いんだね。僕はレイちゃんにも謝らなくちゃいけないと思っていたんだよ」

「何故?」

「シンジ君を女の子にしてしまったからね」

「あなたが何を言いたいのかわからないわ」

「そうかい?」

「何?」

「わからなければいいんだ、今はね」

「そう」

俺にもわからないよ。

何が言いたいの、カヲル君?

・・・

もう4時になった。

「結構乗れたわね」

「うだうだ言ってた割りにはほんま惣流が一番楽しんどったんやないか」

「来た以上は全力を尽す。あたしのモットーよ」

「さよか」

「そろそろ帰りましょうか?」

「え〜!もう〜?イスラ何か用事があるの〜?」

「別にないけど、もう4時よ、フェル」

「もっと乗ろうよ〜」

「じゃあ後一つだけ乗るかい?」

「さっすがカヲル〜。話しが分かってるね〜」

「で、何に乗りたいんだい?」

「フェルはジェットコースターに乗りたい〜」

「やれやれもう3回目だよ。飽きないんだね」

・・・

「あ〜面白かった〜!」

フェルは大満足みたいだ。

「ほな帰ろうかいな」

「そうだね」

「ああ、今日はいい写真が撮れたよ。また後でみんなに配るからな」

「あんたもマメだわねぇ」

「じゃあ帰りましょう」

「おお、お疲れさん」

「お疲れ様」

「お疲れ様ー」

「じゃあまた。」

「またね〜」

「じゃあ学校で」

「さよなら」

「バイ!」

一旦リツコさんの部屋に寄る事にした。

「ただいま〜」

「ただいま」

「ただい」

「おかえりなさい。楽しかった?」

リツコさんいたんだ。

「うん!楽しかったよ〜」

「そう、それは良かったわね。ユリちゃんはどうだった?」

「何とかなりました」

「そう。ボロは出なかったのね?」

「はい。みんながフォローしてくれましたから」

「良かったわね」

「はい」

「レイも楽しかったかしら?」

「はい。楽しかったです」

「それは良かったわ。じゃあお茶でも入れるから座ってていいわよ」

・・・

「ところで今日は誰が来たの?」

「この前と同じ面子で、俺とレイとフェルの他は、アスカ、イスラ、カヲル君、トウジ、ケンスケそれと洞木さんです」

「そう。で、初対面の感想は?」

「はあ、上手くいったと思います」

「それは良かったじゃない。じゃあ来週から学校に行っても大丈夫ね」

「はい」

「行って良かったでしょ?」

「そうですね。ありがとうございました」

「そうそう、ユリちゃん」

「は、何ですか?」

「学校の制服が届いたの。着てみてくれるかしら?」

「はい、わかりました」

・・・

「サイズは問題ないみたいね。着心地はどうかしら?」

「良く分かりません。こんな服なんて着た事ありませんから・・・」

スカートって足元がスースーして何だか頼りないよな。

「大丈夫。良く似合っているわよ」

「うん。良く似合ってるよ〜、シンジ〜」

「フェル。シンジじゃなくてユリちゃんよ」

「あは、ごめ〜ん」

「似合ってるわ、碇君」

「レイもその呼び方は止めた方がいいわ。シンジ君と紛らわしいもの」

「はい。でも・・・何て呼べばいいんでしょうか?」

「ユリ、でいいんじゃないかしら」

「はい。では『ユリさん』と呼びます」

「ユリちゃん」

「はい」

「予備の制服があるからそっちも合わせてみてね」

「はい、わかりました」

・・・

「じゃあ制服は問題なしね。良かったわ」

あ!そう言えば・・・。

「リツコさん、シンジはどうなってるんですか?」

「まだ眠っているわよ」

「大丈夫なんですか?」

「大丈夫、ただ眠っているだけだから、そろそろ、そうね・・・早ければ明日にでも目を覚ますんじゃないかしら」

「明日ですか」

「だからわたしは明日も本部に行くわ」

「リツコさんは今日も本部に行ったんですか?」

「ええ、午前中だけだけどね」

「明日俺も一緒に行っていいですか?」

「別に構わないけどシンジ君が目を覚ますとは限らないわよ」

「いいんです」

「わかったわ。じゃあ一緒に行きましょう」

「はい」

「ところで今日の夕食の当番はレイだったわね」

「はい」

「よろしくお願いするわね」

「はい」

俺は制服を持ってレイと一緒に一旦自分達の部屋に帰った。

(コンコン)

「綾波」

(カチャ)

「何?」

「今日の夕食だけど買い物行くの?」

「ええ」

「じゃあ一緒に行くよ」

「ありがと」

「もう行ける?」

「うん」

「じゃあ行こっか。」

「うん」

スーパーには着いたけど。

「今晩は何にするの?」

「まだ考えてないわ」

「そっか・・・」

何がいいかな?

「オムライス」

「え?」

「オムライスにするわ」

「あ、ああ、オムライスだね。わかった。材料は分かる?」

「多分。それとサラダとスープ」

「じゃあ任せるよ」

綾波が必要な食材をカゴに入れていく。

「オムライスの具はどうするの?」

「鳥肉を入れるわ」

「そっか」

綾波も大分肉が食べられるようになった。

特に鳥肉なら大丈夫みたいだ。

・・・

「これでいいかしら?」

「うん、大丈夫だと思うよ」

少し心配だったけど材料は綾波一人で買い揃えられた。

「良かった。じゃあレジに行く」

「うん」

オムライスもサラダもクリームスープも全て綾波一人で作った。

「いっただきま〜す!」

「「いただきます」」

「召し上がれ」

一口食べる。

うん、美味しい。

「どうかしら?」

綾波が心配そうに聞く。

「美味しいよ、綾波」

「美味しいよ〜、レイ」

「美味しいわよ。腕を上げたわねレイ」

「そう、良かった」

綾波が嬉しそうに笑う。

綾波のそんな顔はとても素敵だと思う。

「綾波。風呂入ったけど」

今日も一緒に入るのかな?

「わかったわ。碇・・・ユリさんが先に入って」

「うん。・・・綾波また途中で入って来るの?」

「今日はいいの。ゆっくり入って」

「わかっ。」

・・・

(チャッポーン)

今日はやっぱり疲れたな。

でも確かにリツコさんが言う通り学校でいきなり会うよりは今日顔合わせしておいて良かったみたいだ。

今日動いたから身体もほとんど痛くなくなったし。

後・・・気になるのはシンジだけだな。


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