『俺と僕で何?』


第七拾伍話 アスカ、特大パフェに挑む


ヘロウ、ミサト。元気してた?

そ、ほかのところもちゃんと女らしくなってるわよ。

見物料よ。安いもんでしょ。

フ〜ン、冴さえないわね。

違うのはカラーリングだけじゃないわ。

惣流・アスカ・ラングレーです。よろしく。

ハロー、シンジ。グーテンモルゲン。

あんた、バカ?ファースト・チルドレンに決まってるじゃない。

あんた今日からお払い箱よ。

これはね、決して崩れることのないジェリコの壁。

ひっど〜い!!冗談で言っただけなのに、ホントだったの!キスしたのねっ!

エーッ、修学旅行に行っちゃダメェ!?

私の場合、胸だけを暖めれば、少しはオッパイが大きくなるのかな?

あんたにこの前の借りを返しかないと、気持ち悪いからね。

ふ〜ん、仲のおよろしいこと。

あんた、そんなことで乗ってんの?・・・ホントにバカね。

お母さんの命日に、女の子とキスするのイヤ?天国から見てるかもしれないからって。

ホラ。内罰的すぎるのよ、根本的に!

このあたしに、お昼なしで過ごせっていうの、あんたは!

あんた達の顔、見たくなかっただけよっ!

何であんたに、こんなこと話さなきゃなんないのよっ!

うるさいわね!ちっともよかないわよっ!よりにもよって、あの女に助けられるなんて・・・あの女に助けられるなんて・・・そんなことなら死んだ方がマシだったわよ!

嫌い!嫌い!みんな嫌い!!だいっキライ!!

だあ〜もぉ〜っ!あんた見てるとイライラすんのよっ!

何も判ってないくせに、私の側に来ないで!

バーカ、知ってんのよ、あんたが私をオカズにしてること。

あんた!誰でもいいんでしょ。ミサトもファーストも怖いから。お父さんもお母さんも怖いから。

私に逃げてるだけじゃないの。

ホントに他人を好きになった事ないのよ!

自分しかここにいないのよっ!

その自分も好きだって感じたことないのよっ!

・・・哀れね。

・・・イヤ。

・・・気持ち悪い・・・。

「はっ!」

目を開けるとアスカの顔があった。

「ユリ、大丈夫?」

「・・・夢?」

「ユリ、随分うなされてたわよ」

夢だったんだぁ。

「寝言言ってた?」

「いいえ、寝言は言ってなかったわよ」

良かった。

「そう。今何時?」

「7時ちょっと過ぎ・・・ちょっと早いけどもう起きる?」

「そうする」

今更眠れないよな。

「ユリ寝汗でビッショリだから先シャワー浴びなさい、あたしは後でいいから」

「うん、わかった。ありがとう」

「別にいいのよ」

『ガラッ』

『ガラッ・・・ピシャン』

『シャーーーーーー・・・』

あんな夢見るなんて初めてだ・・・アスカの事、意識し過ぎてるのかな?

元気だったアスカ。

いつも俺を馬鹿にしていたアスカ。

でも本当は寂しがり屋だったアスカ。

だからチルドレンである事にエヴァに縋っていたアスカ。

それを失って壊れていったアスカ。

最後の最後まで俺を拒絶したアスカ。

・・・。

あれは拒絶だったんだよね?

『・・・気持ち悪い・・・』

何が気持ち悪かったんだろう?

俺が?

首を絞められた事が?

一体何だったんだろう?

・・・。

でも今回のアスカは前回のアスカとは違っている。

これもアスカの可能性のひとつなんだろうけど・・・。

このアスカが前回の記憶を持ってるとは思えないんだけどな。

でも気になる言葉・・・『バカシンジ』・・・。

う〜〜ん、即断は出来ないし面と向かっては聞けないよな、やっぱり。

もう少し様子を見よう。

今日は通常待機だし。

昼休み、定番の屋上昼飯会。

「こん週末はなんぞ予定があるんかいのぉ、せんせ?」

トウジがシンジに言った。

「いや、特にないけど。訓練もテストもなかったよね、綾波?」

「ええ、全チルドレンとも予定はない筈よ」

「ケンスケはどないかのぉ?」

「俺も特には予定ないけど・・・何かするのか、トウジ?」

「昨日の雪辱戦や」

「トウジも懲りないねぇ。何回やっても無駄だよ」

と、すげないケンスケ。

「昨日はスパロボやったけど今度はストファイで勝負や!」

「今時2Dかよ、古いんだよな、トウジって」

「わしはストファイのほうが得意なんじゃい」

「俺はいいよ。でもストファイじゃあタイマン勝負だよな。シンジと渚はどうするんだ?」

「週末って今日じゃ駄目なのかい?」

「今日はちょっと用事があるさかい明日か明後日がええんやけどな」

「俺はどっちでも構わないぜ」

と、ケンスケ。

「僕もいいよ」

「じゃあ僕も」

カヲル君とシンジもいいみたいだ。

「ほな土曜日10時に現地でええか?」

「了解」

「いいとも」

「わかった」

男性陣の土曜日はゲーセンで決まり、か。

女性陣は適当に話題を廻している。

アスカは洞木さんと、フェルはイスラと喋る事が多い。

俺は男性陣の会話にも耳を傾けながらアスカの言動に注意を向けている。

「アスカは射手座だから今日の運勢ラッキーだってテレビで今朝やってたわよ」

「ヒカリは水瓶座だったわよね。そっちはどうだったの?」

「普通だって」

「そっかぁ・・・ユリは何座?」

「シンジと一緒、双子座」

「へぇ、シンジと一緒なんだぁ」

「うん」

「まさか誕生日も一緒とか言わないでしょうね?」

あちゃー。

「そのまさかなんだけど」

「ええーっ!誕生日一緒なのぉ!」

「凄い偶然ね・・・」

「あはは・・・」

笑って誤魔化すしかないよね、この安直過ぎる設定は。

「フェルとイスラは何座か知ってる?」

「フェル達は乙女座だよ〜」

「そうなの。ユリの双子座も今日はラッキー、乙女座は要注意だったわ」

「ヒカリって星占いとか信じる方なの?」

「盲目的に信じてるって訳じゃないけど女の子としては一応気にはなるわ。アスカはどうなの?」

「あたしはそういうのってあんまり気にしないわ」

「ユリはどう?」

洞木さんが俺に振ってきた。

「わたしは占いはあんまり信じてないけど世の中には今の科学だけでは説明し切れない事があるとは思う・・・わよ」

「たとえば?」

「そうねぇ・・・幽霊とか輪廻転生とか」

「輪廻転生って何?」

とは、アスカ。

「輪廻転生って言うのは、人間というのは魂があって死んでもまた別の人間として生まれ変わる事を繰り返ししている、って言うやつ。アスカは聞いたことないの?」

「ああ・・・そういう事。それなら聞いた事あるわ」

「わたしも。前世の記憶とか覚えている人がいるってテレビでやってたわ」

前世の記憶・・・そうだっ!

前回の記憶って、言い換えれば前世の記憶とも言えるよね。

その線で攻めてみようかな?

アスカの目線に注意して言う。

「誰か前世の記憶みたいなのを夢に見たとかした人いる?」

「うーん・・・よくわかんないわ。大体夢なんて目が覚めたら忘れてる事が多いもの」

とは洞木さん。

アスカは特に動揺してないみたいだ。

「フェルは?」

「フェルは夢に見るよ〜」

あ!しまった!

「へぇ、どんな夢なの?」

アスカが興味を持ったみたいだ。

「フェルは夢の中では使徒なんだよ〜」

あちゃ〜・・・やっぱりねぇ。

「ふーーん、あんたの夢って変な夢ねぇ。大体その輪廻ってぇのは人間だけとかじゃない訳ぇ?」

と、アスカ。

良かったぁ、突っ込みがなくって・・・。

「必ずしも人間とは限らないみたいよ。さすがに使徒って言うのはどうかと思うけど・・・。わたしはそういうのって見た事ないからよくわからないわ」

と、洞木さん。

「イスラとユリはどうなのよ」

「わたしは夢自体あんまり見ない方だから・・・」

と、イスラはうまく逃げた。

「わたしもイスラと一緒かな」

と、イスラに便乗する俺。

「えっと・・・アスカはどうなの?」

と、何故か遠慮がちに言う洞木さん。

「あたしもあんまり夢見ないから」

アスカも・・・そう来たかぁ。

カヲル君が見せたって言う夢の事をアスカが話したのはシンジだから俺が知ってるのは拙いし・・・。

この作戦は失敗かな?

「夢・・・人間が睡眠中に、あたかも現実の経験であるかのように感じる一連の観念や心像。視覚像として現れることが多いが、聴覚・味覚・触覚・運動感覚を伴うこともある

「あ、綾波・・・」

いたんだ、当たり前だけど・・・アスカに気を取られて忘れてたよ。

「わたしは夢を見ない女。じゃあわたしは人間じゃない?」

「何バカ言ってんのよ。ただ覚えてないだけなんじゃないの?まぁ自分の見た夢を一度も覚えてないってのも珍しいけどさ」

輪廻転生・・・生あるものが死後、迷いの世界である三界・六道を次の世に向けて生と死とを繰り返すこと

「よく知ってるわねぇ、レイ。まさにウォーキング・ディクショナリーね」

「わたしにも前世はあるの?」

アスカの突っ込みを無視して話す綾波。

「あるかも知んないけど覚えてなきゃ意味ないじゃん、そんなの」

「そう・・・そうかも知れない」

「それより今日の帰りどっか寄んない?」

と、アスカ。

「どっかって、どこ?」

と、ヒカリ。

「フェルは甘いもんが食べた〜い」

「他に意見は?」

アスカがみんなを見回す。

特にないみたいだ。

「じゃあ甘味で決まりね。あんた達も来る?」

と、一応男子にも声掛けするアスカ。

「わしは今日はパスや」

「俺も甘いのはちょっと・・・」

「僕も遠慮しよっかな」

「シンジ君が行かないなら僕もパスだね」

「じゃ、男子は全員不参加ね」

目の前にはパフェ。

6人各自の目の前には各々の好きなパフェが並んでいる。

「アスカ、本当に大丈夫なの?」

そう、洞木さんが心配するように、アスカの前にはこの店でも一番大きい特大ジャンボパフェが鎮座ましましていた。

「はん、大丈夫よ。こ、これくらい食べたってあたしの身体には何の影響もないわ」

胸を張って言うアスカだが、若干の同様が見て取れる。

それは普通のパフェの5倍位はあるのだから無理もない。

「無理しないで。何だったら手伝いますから」

と、イスラも心配そうだ。

「ホントに平気だってば。大体フェルだっておんなじもん頼んでるじゃない。フェルの心配した方がいいんじゃないの?」

そもそも特大ジャンボパフェを頼んだのはフェルの方が先だった。アスカはそれに便乗しただけに過ぎない。

他のみんなは普通サイズのパフェだ。

「フェルも大丈夫?」

と、イスラ。

「楽勝だよん。全然平気だよ〜」

「ならいいけど、無理しないでね」

「あい〜」

もっともフェルはもう半分位食べ終わっている。

一方のアスカはまだ四分の一位だ。

「しっかしヒカリは別としてあたし達って男子に恵まれてないわよねぇ」

アスカが突然言った。

「な、なんでわたしは別なのよー」

「だってヒカリにはあいつがいるじゃん」

「あ、あいつ、って・・・」

「今更とぼけてもバレバレなんだからいいじゃん」

「別に鈴原とはそんなんじゃ・・・」

「って、自爆してるしぃ。いいわよねぇ、ほんっと」

あ〜あ、洞木さん、真っ赤になっちゃった。

「アスカさんはどうなんですか?」

と、イスラ。

「あたし?」

「ええ」

「あたしに釣り合う様な男子なんてそうそういないわよ」

「どういう男性だったら釣り合うんですか?」

「そうねぇ・・・」

と、アスカはちょっと遠い眼をして。

「まぁ、あたしより背が高くって頭が良くて運動神経もいいやつかな?」

そんなんいないって、と突っ込みたくなるのを自制する。

「それは・・・なかなかいないかも」

「そういうイスラはどうなのよ?」

「わたしはまだそういう事には興味がないって言うか、そんな感じですね」

「ふーーん。じゃあユリはどうなの?」

え?俺?

「えっと・・・良くわかんない」

「そっか、ユリは奥手ちゃんなのね。じゃあレイはどうなのよ?」

「わたしはあまり男子知らないから」

「それもそっか・・・レイが隠してなきゃ、レイが話してる男子ってシンジか渚、鈴原、相田位だもんね」

「碇君と渚君は同じパイロットなんだから少しは気にならないの?」

と、洞木さん。

「うーーん、いまいちピンと来ないわねぇ。大体ここにいるのはヒカリ以外みんなパイロットよ」

「あ!そう言えばそうよね」

ほんと、そう言われてみればそうだ。

「そそ、だから仕方なく付き合ってるだけよ。クラスの男子なんか目じゃないわ」

本人達がいないからってアスカもちょっと言い過ぎなんじゃないか?

特大ジャンボパフェはフェルは完食、アスカは結局完食に至らず終わった。

アスカの希望もあって夕飯は軽く素麺と天婦羅で済ませた。

宿題を終え、風呂にも入り後は寝るだけだ。

結局アスカが前回の記憶を持っているかどうかは今日のところは判らなかった。

アスカ、気になる異性の話題で加持さんの名前出さなかったな。

どうしてだろう?


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