フレッド・アステアとジンジャー・ロジャースといえば、スクリーンに数々の
華麗なダンス・シーンを残してくれた、ミュージカル映画史上最も光輝く偉大なコンビですね。’33年の「空中レヴュー時代」
(この映画では準主役になりますが)を始めとして’39年の「カッスル夫妻」でコンビを
解消するまで9作の映画で共演し大成功を収め、当時経営危機に陥っていた所属スタジオのRKO社を
救ったといわれています。「カッスル夫妻」を除く大体の
ストーリーは、アステアがロジャースに一目惚れして追いかけるがつれなくされ、ダンスを踊るうちに
アステアはロジャースの心を次第に掴んでいき、最後はめでたくハッピー・エンドという、
どれも似たようなラヴ・コメディで、どのシーンが
どの映画のだったかな?とよく記憶がごっちゃになってしまいます。
でもそんな中でも一番のお気に入りは、
「コンチネンタル」('34)での”Night and Day〜夜も昼も”
を踊るシーンでしょうか。
今でも愛され続けているコール・ポーターの名曲に乗せて、正に上流階級といった感じの
上品なヘア・スタイルのロジャースが、
女性なら誰でも憧れるようなゴージャスなドレスを身にまとい、リゾート地の浜辺の
風景をバックに二人で優雅なダンスを繰り広げるという、時間を忘れて夢のようなひとときが味わえて、
うっとりと見入ってしまうシーンです。
アステアはロジャースとのコンビ解消後もいろいろな
パートナーと組んで映画の中でダンスを踊りますが、やっぱりこのコンビに勝る相手は現れなかった
ようです。ダンスそのものを見ていると、むしろリタ・ヘイワースやエレノア・パウエルといった
お相手の方がロジャースよりも踊りが巧みで完璧だったりします。でもなぜか、ロジャースのあの
飛切り美人とまではいかない愛らしい顔や、うまく言えない彼女の持つ雰囲気の方が、アステアに
ピッタリきているような感じがします。
と、ここまでコンビの事を書いておきながら、フレッド・
アステアというダンサーの凄さは、やっぱりソロにあると言っておきましょう。二人で踊っていると
どうしても女性側の衣装や美しいシルエットに目を奪われてしまい、サポート側のアステアの動きは
見落としがちになってしまいます。ロジャースとコンビを組む以前に、彼は姉のアデルをパートナーに
ブロードウェイやロンドンの舞台で既に人気を博していましたが、当時はアデルの方が
スターで弟のフレッドは姉の輝きに圧倒されて影に隠れていたそうです。
しかし練習嫌いのアデルに比べて完璧主義だったフレッドは、常に新しい踊りを
求め続けていました。アデルが結婚で引退し、独立してからハリウッドの映画界で
成功したのも、彼の持つそういった
素質があったからこそなのでしょう。そんなアステアも、ハリウッドに移って最初に受けたスクリーン・テスト
では「演技ダメ、歌ダメ、踊りはまあまあ」などと評されたそうです。
激しいナンバーを
踊る時でも独特なしなやかさを感じさせる、彼の外へ、外へと飛び出すようなはじけた動きは、
「まるで骨なしイワシのよう」と絶賛?されたとか。
アステア=ロジャース共演の映画の中にも、素晴らしいソロ・ナンバーが
たくさんあります。
「トップ・ハット」('35)でのえんび服に白タイ、ステッキを持った紳士に扮装した
アーヴィング・バーリンによるタイトル曲”トップ・ハット”や
驚異的なタップを踏む”ノー・ストリングス”、
「有頂天時代」('36)での影と踊るというアイディアを用いた
”ボージャングルズ・オヴ・ハーレム”、
「踊らん哉」('37)での機械音のリズムに合わせて踊る
”バスを叩いて”などなど、実に見応えのあるものばかり。そしてその後も、まわりにある小道具
を使ってそれらに生命を吹き込んだような、秀逸なダンス・シーンをたくさん生みました。
ここに書ききれないほどありますが、特に「レッツ・ダンス」('50)での
ピアノと椅子を使った
”ピアノ・ダンス”や、「スウィング・ホテル」
('42)での爆竹を床に投げつけながら
タップを踏むという”爆竹鳴らして”なんかは、凄すぎです。まだご覧になったことのない方は、ぜひ
観てほしいです。<2003.10.16>