映画「キャリー」「アンタッチャブル」「ミッション・インポッシブル」等の監督で、
最新作では「ファム・ファタール」が話題のブライアン・デ・パルマが1974年に撮った作品です。
私は15年位前に深夜TVの[異常心理探求]という特集でこの映画と初めて出会い、以来大、大、
大好きなロック映画のひとつとなりました。もちろん、デ・パルマ監督作品の中でも一番好き
です。「オペラ座の怪人」の物語を現代に置き換えて考えられたタイトルですが、元々はローリング・
ストーンズの映画「ギミー・シェルター」を観た監督がインスピレーションを得て作られたものだ
そうです。ストーリーを簡単に説明すると、才能はあるが気の弱いソング・ライターの主人公
(ウィリアム・フィンレイ)が音楽業界の大者、スワン(ポール・ウィリアムス)の卑怯な
罠にかかって自作の曲を横取りされ、あげくに顔の半面をつぶされてしまった。悪魔的なスワンの仕打ちに
耐えかねた彼は仮面をかぶった怪人と化して、
スワンの野望を賭けた一大事業”パラダイス劇場”のこけら落しの舞台を破壊すべく復讐を企てる・・・といった
ものです。陰影に満ちた哀しいお話ですが、登場するアーティスト達の設定がユーモアいっぱいで
楽しいのと、パフォーマンスそのものにも目を見張るものがあり、ロック・ファンには
たまらないのです。物語の進行とともに
登場する3つのグループ、”ジューシー・フルーツ”は’50年代風R&R、”ビーチ・バムズ”は
ビーチ・ボーイズのパロディ、そして”アンデッズ”はキッス風メイクの70年代ロックと、
それはそれは遊び心に溢れています。しかも、この3つのグループは全部同じ3人の人物
(振付担当のハロルド・オブロングを含む)が演じているのだから驚き!
他にもミートローフを文字ったと思われる”ビーフ”なる個性豊かなシンガーも
出てきます。また、歌手志望のヒロイン、フェニックス(ジェシカ・ハーパー)のファッションは
ジャニス・ジョプリンを思わせるようでもあります。この映画の最も素晴らしい
ところは、アンデッズがオープニングを務める”パラダイス”ステージの撮影にあります。
ドキュメントものではなく映画のために作られた設定で、このようなロック・コンサートの熱気と興奮を
リアルに伝えてくれる映画は、他にはないと思います。撮影カメラも観客の視点を中心に置かれて
おり、ステージを見ていても他の観客の頭や手などが大いに視野に入ってしまうという、実にリアルな描写
がされています。観客のエキストラは「ショーを見せる」という条件で集められたそうですから、
この熱気は当然といえば当然かもしれません。アーティスト達の色を反映したオリジナルの曲もそれぞれ良くて、ポール・
ウィリアムスの才能が充分に堪能できる作品でもあります。ところで私はこの映画のLDとDVDを
それぞれ所有しているのですが、LDの方はモノラルの原音を擬似ステレオに加工したもので、
音が薄っぺらく表面的にしか聞こえなくて、これが全然良くありませんでした。これでは
モノラルの方がまだ良いです。DVDの方はそのあたりが
少しは改善されているような感じがします。画面も一段とキレイでした。でも、実はLDには
DVDにはない、デ・パルマ・フリークス・チャプター
とでも呼ぶべき大変マニアックなシーン・チャプターが付いているのです!デ・パルマは
ヒッチコック・マニアとしても知られていますが、いろんな映像トリックを使ったシーンや隠れネタが
チャプターごとに解説付きで紹介されています。
これは結構捨てがたいアイテムです。正にデ・パルマ監督の映像マジックの集大成
であり、ロック・ファンとしての一面も見せてくれる貴重な作品でもあります。今ではすっかり
メジャーになってしまった監督、このような冒険に溢れた映画を今後期待するのは、無理な
ことなのでしょうか・・・・?<2003.10.16>