* トミー *

トミー LD

1975年イギリス
<脚本・監督>ケン・ラッセル
<音楽監督>ピート・タウンゼンド<衣装>シャーリー・ラッセル
<キャスト>ロジャー・ダルトリー、アン・マーグレット、オリバー・リード、エルトン・ジョン
エリック・クラプトン、ティナ・ターナー、ジャック・ニコルソン、”ザ・フー”他

公開当時の劇場用パンフレット 私にとって[映像の宝箱]とでもいうべき映画です。まだ ロックを聴きかじりの中学生の頃、テレビの音楽番組で紹介されているのを見て、母と連れ立って 映画館へ観に行きました。セリフは一切なし、 全編音楽ときらびやかな映像の大シャワー洪水で、 親子で感動したのです。でもストーリーも痛いほどよく読める。この映画が公開されて10年後に ビデオ化され、大喜びで即LDを買いました。公開当時に一度観たきりで、ビデオ化 までの10年間はテレビでも目にすることがありませんでしたが、 さまざまな場面の映像が頭の中に焼きついていて、記憶に残っていたのには驚きました。それくらい 強烈な作品でした。ザ・フーを全然知らなかった私は、トミー役のロジャー・ダルトリーが プロの役者と思い込んでいましたが、ロックに関する予備知識が全然なくても楽しく観ることが できるのではないかと思います。なにせ脇を固めるのが母親役のアン・マーグレット、義理の父親役の オリバー・リード、医師役のジャック・ニコルソンと、名優揃い。といっても、この映画で 初めて知った俳優ばかりで、ロック入門、映画入門の両方の役目を果たしてくれたのであります。 ケン・ラッセル監督の映像美にこだわる姿勢が、ピート・タウンゼンドの感性と呼応して 傑作を生んだのでしょうか。ラッセル監督は音楽好き、でもロックは大嫌いだったそうで、 プロデューサーのロバート・スティグウッドが映画化権を得てから監督を納得させるまで、 かなりの時間がかかったそうです。

EYESIGHT TO THE BLINDを歌うエリック・クラプトン 宝箱の中でも取り分け好きなのは、幼い頃のトラウマで三重苦を背負ってしまったトミーが、 わらにもすがる思いの母親とともに訪れるいかがわしい新興宗教の伝道師エリック・クラプトンとザ・フーが演奏する Eyesight To The Blind(ここでは、かのアーサー・ブラウンも狂気の司祭を 演じています)と、麻薬の女王ティナ・ターナーが歌い踊り狂って薬物治療を試みる The Acid Queen、そしてピンボールの才能を開花させた トミーがステージで王者エルトン・ジョンに挑む Pinball Wizardのシーンでしょうか。特にこのステージ では、大暴れするザ・フーとエルトンとの共演が圧巻です。どちらかというと、トミーが正気を 戻す以前にまわりで繰り広げられるイベントの方が、麻薬的な見応えがあります。映像化される 前は舞台で演じられたロック・オペラというだけあって、セットやコスチュームは 色彩的にも絢爛豪華です。セリフではなく音楽のみで進行する非現実的世界の中で、目に映る 非現実的な演出は、何年も後にもてはやされた音楽ビデオ・クリップのデジタル感覚を先取りしていたと 言えます。例えば、アン・マーグレットがトミーの診察のためにジャック・ニコルソン医師のところを 訪れる時の衣装など、 とても通院に付き添う母親の格好とは思えないキンキラのスリット入りのタイトなロングドレス (メイクもすごい)。苦悩にあえいで壊したテレビから噴き出る泡、豆、チョコレートの洪水・・・などなど。 そういった非現実が次々に現れ、それぞれの状況を表す記号・象徴として、音楽とともに 目に焼きついていきます。そして、ラストのListening To Youでは、 それまでの虚飾を全て取り払ったかのような美しく、壮大な大自然の中で演じられています。

それにしてもこの映画、これほど衝撃を受けた作品であるにもかかわらず、公開された時は自分のまわりではなんの 話題も聞かなかったように思います。語れるのは、一緒に観に行った母親のみでした。日本では 作品に対する評価が”賛否両論”どころか、”賛否無論”だったのです。でも、最近インターネットを 始めるようになってから、この映画が大勢のロック・ファンから高い評価を受けているということを 知りました。大変うれしく思う今日この頃です。<2003.11.6>

PINBALL WIZARD

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