サカモトのサントラ・ワークの全てはこの映画から始まった、とでもいうべき彼が携わった映画音楽の中でも記念碑的な作品。
デヴィッド・ボウイや自らの出演などで非常に話題になり興業的にもヒットしたし、
何よりもメイン・テーマである"Merry Christmas Mr. Laurence"のメロディーは、サカモトが独自に切り開いてきた
アジア的な響きを持つ音階と、エターナルな
美しさでもって一般大衆をも魅了した。
でも私は、なんというか、この映画にはいまいち入り込めなかった。元々戦場を舞台にした
物語が好きでないのと、あの大島渚独特の感性というか美学に共感できないのだ。各シーンも
意図的にかかなり突飛なカットで進んでいくし、私にとっては今も馴染みにくい映画だ。
しかし、音楽は違う。私はサントラよりもピアノ曲にアレンジしたアルバム"Coda"の方を
よく聴くのだけれど、このころのサカモトって、次から次へと湧き上がる才能を持て余していたんじゃないだろうか、
というくらいに、小曲だけどおそろしく完成度の高い作品が集まっている。「バタヴィア」「発芽」「種子と
種を蒔く人」「理性を超えて」「種を蒔く」どの曲もとてつもないエネルギーと生命力に溢れていて、
「A Brief Encounter〜短い出会い」などは2台のピアノで力強さと繊細さをそれぞれに表現した
優れた作品だと思う。
最も好きなのは「Last Regrets〜最後の後悔」で、不思議に神秘的な旋律が心地よくて、よく
自分でもピアノで弾いてみたりした。
この"Coda"というアルバムの元ネタは"Avec Piano"というカセット・ブックにあり、Coda=終章
というタイトルには、「戦場のメリークリスマス」の音楽ばかりに長い間付き合わされたサカモトが、
「戦メリ」はもう終わりにして次に進みたい、という気持ちが込められていたそうだ。
しかし、サカモトは今でもコンサートではこの曲を必ず演っている。大ヒットから月日が経って、
名曲「戦メリ」を客観的に受け入れられるくらいに、ふっきれているのであろうか。<2005.9.8>