ブライアン・デ・パルマ監督とサカモトが手を組んだ作品第一弾である。デ・パルマは
私の好きな映画監督のひとりで、彼の映画はヒッチコックを好んで引用しているという
撮影法やトリックなどを
ふんだんに取り入れて、遊び心たっぷりに観る者を楽しませてくれる。この「スネーク・アイズ」は
彼の作品の中ではあまり評価されていないようなのだけれど、私はお気に入りなのである。
ポイントはいくつかあって、まずニコラス・ケイジ扮する市警察の
刑事リック・サントーロは金次第で世渡りするような汚職デカである。善玉も悪玉も演じ分ける
ことの出来る、ニコラス・ケイジにぴったりな役柄ではないだろうか。その人物像が
いかにもで、痛快な演技が魅力的なのだ。それから、デ・パルマ監督が得意とするスプリット・スクリーン(画面が
二つに分かれて同じ光景を違う角度から映して同時に進行させる)の手法や、冒頭のボクシングの
試合が行われる会場のような、パノラマ的な風景を絶妙のカメラ・ワークで見せているのが、
明らかにデ・パルマファンを意識した作品で嬉しいのだ。圧巻なのは、13分ものあいだノー・カットで
ステディ・カムにより撮影したシーンがあり、えも言えぬ緊張感が観ている側にも伝わってくるのである。
ただ、ストーリーの方は・・・なんだか展開が甘くてビシッとこないのである。ゲイリー・シニーズの
ような悪役顔がワルだったとしても意外性がないし、結末もなんだか物足りない。デ・パルマは
脚本作りにも関わってたみたいだけど、原案はプロの作家に任せた方がいいのでは、などと思って
しまった。ただ、エンド・クレジットが流れ終わってからのミステリー・シーンに興味を
そそられて、何度となく観る破目に陥ってしまった。
さて、音楽の方は、
サカモト自身がニューヨーク・フィルを指揮したという壮大なスケールの演奏で
サスペンスを盛り上げてくれる。サカモトの曲、特に映画に関しては特徴的なフレーズを
繰り返し使うのが多くて、この作品もドラマチックなコード進行でシンプルなメロディを支えている。
メイン・テーマはどこか物悲しい響きの、でも希望の光も差し込んできそうな綺麗なナンバーだと思う。借金のために
八百長試合をするベテラン・ボクサーがクローズ・アップされる場面では、ストリングスが彼の複雑な
心情を、憂いを含んだ調べで表現している。
99年に発表された
"BTTB"(Back To The Basic=原点回帰)というアルバムに、メイン・テーマである"Snake Eyes"のピアノ・ヴァージョンが
収録されている。「シェルタリング・スカイ」や「嵐が丘」のような曲と同様に、
ピアノで演奏するとより楽曲の良さが浮き立つ感じだ。<2005.9.8>