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| 韓国への道 The way to Korea | |||||||||
韓国に行くと決めたとき、私の頭の中に山口県の下関と韓国南部の釜山を結ぶ関釜航路がまず浮かんだ。 男は黙って関釜航路、なのだ。 なんで?と突っ込まれると困るのだが。 そこで時刻表を開いて調べてみる。下関には新幹線は通っていない。新下関という駅で新幹線から山陽本線に乗り換えることになる。 …ならば、いっそのこと下関までは新幹線を使わず、山陽本線だけで行ってみるのもよいのではないかと考えた。いかにも船の旅の序章にふさわしいような気がする。ちょうど私はその頃兵庫県(尼崎市)に住んでいたので、丸1日あれば下関まで行けると思ったし。男は黙って山陽本線、である。 しかしさらに時刻表を見ると、意外に時間がかかることがわかった。山陽本線には昼間は特急・急行の類は走っておらず、普通列車と快速列車を乗り継いでいかなければならない。それに、船の出航時刻である18時の、2時間前である16時までに下関港に来るよう書かれている。駅から港まではそれほど離れていないようだが、方向音痴の私が道に迷うことまで計算に入れると、15時には下関駅に着きたいところだ。そう考えて逆算していくと、少なくとも姫路で一泊しなければならないことがわかった。 ということで、船に乗る前日に旅立つことにする。 1. 旅立ち 出発日は普通に仕事をし、定時後すぐに課長の目を盗んで帰宅。 すばやく着替えてバックパックを背負い、19時頃最寄りの東海道線立花駅へ向かう。きっぷ売り場の窓口で「下関まで…あっ、特急券はいらないっす」という自分が、なんか格好いい。 しかし、まだラッシュが続いている列車の中ではバックパックは邪魔物で、非常に格好悪い思いをする。 姫路には21時過ぎに着く。翌日は始発列車に乗るつもりなので、どうせどこに泊まってもろくに眠ることもできないだろうと思い、駅近くのカプセルホテルに行く。しかしながら、ここでもまた、大きなバックパックがカプセルホテル備付の細いロッカーに入らず、邪魔物になる。やむなく狭いカプセルベッドの中で共に一夜を過ごすことに。
翌朝は5時前にチェックアウトし、一番列車でスタートする。広島あたりまで、列車内ではほとんど爆睡状態で過ごす。 乗換駅で立ち食いそばをすすりながら、まるで学生時代に戻って貧乏旅行をしているような気分になる。今晩の宿も船の二等船室だし。 しかし実際は、単純にソウル往復の格安航空券を買った方が、安上がりなのだ。今回の旅では、JRの下関までの切符と下関―釜山の乗船券を併せて17,000円ほどかかっており、これだけで格安航空券価格÷2といい勝負をしている。加えてカプセルホテル宿泊料とか一日余計に日本にいる分の滞在費(ったって、せいぜい立ち食いそばと缶コーヒーと暇つぶし用の新聞・雑誌くらいだが)とかを考えると、決して貧乏旅行ではないのだ。 …でも貧乏くさいんだな、やっぱり。いい年こいてさ。
下関は、町自体は大きいのだけれども、新幹線が通らないことで時の流れが止まってしまったような感がある。古びた家並みが続く商店街では、ハングルで書かれた商品をしばしば見かけ、あらためて、ここと韓国との関係を思い知らされる。漁港の方へ行くとソープランドが港沿いに建っており、「陸に上がって一発抜いて…」という関係なのだと感じる。 2. そして出国 17時過ぎにフェリーターミナルに戻ると、ほどなく出国手続きが始まる。 といっても、たかだかフェリー1隻分なので成田や関空の混雑と比べると、全くのんびりしたものである。乗客は韓国人の行商のおばちゃんや、軽装の旅行者が主。しかし、大きな荷物を担いだ行商のおばちゃん以外は、喋らない限り誰が韓国人で誰が日本人だかよくわからない。あらためて韓国の近さを感じさせられる。 4月28日という、まさに連休に突入せんとする日にも関わらず、船内は座敷1ブロックに1〜2人程度の入りで、のんびり過ごすにはちょうどよい。
日本を離れる瞬間を甲板に出て海風に当りながら味わう。未だに飛行機があまり好きになれない私にとって、遠ざかる港の光景を見ながらの離日というのは、なかなか風情があってよい。 しかし、いざ出航してしまうと、やることは何もない。座敷のテレビはノイズ交じりのNHKの画面を写している。明日の朝は韓国の放送が見られるのだろうか。 大した揺れもなく、そろそろと進む船の中で、早々に眠りにつく。 夜半過ぎに目を覚ますと、船は停まっていた。既に釜山の沖合に着いているらしい。 だが、釜山着予定の朝8時までは、だいぶ間がある。 これだけ時間に余裕があるのなら、下関をもっと遅い時間に発ってもいいように感じる。しかし考えてみれば、下関18時発・釜山8時着というのは、入管の勤務時間を考慮しているのではないかとも思われる。この船一隻のために早朝・深夜勤務を行うことを考えれば、現状の時刻が適当なのだろう。それに釜山にも、これ以上早く着岸する必要性もあまりないと思う。8時着でも、特急列車に乗れば午後にはソウルに着くことができる。何より今の時代、急ぐ人は船には乗らないのだ。ゆっくり眠れる時間帯で運航してくれたほうがいいに決まっている。 と思いながら、また眠る。それにしても、この道中、寝てばっかりだ。 明るくなってから、おもむろに船は動き出す。釜山の港は、もう見えている。座敷のテレビは、あいにく何も写らない。8時まではまだ数十分あるけれども、やることもないので荷物をまとめて出口の方に向かうと、既にかなりの人が集まっていた。皆、考えることは同じらしい。 定刻に釜山着。そりゃそうだ。あれだけ余裕かましておいて遅れるわけがない。 入国手続きもすんなり終わり、韓国第一歩を踏み出す。 空港と違って港は町の近くにあるため、歩いて市中に繰り出せるのが、またいい。 こうして私の韓国への旅は始まったのだった。
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| (1998.4) | |||||||||
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