岩手競馬とソフトバンクが提携 最大最後のチャンス活かせ
p>6日、岩手競馬とソフトバンクは、インターネットを通じてソフトバンクが岩手競馬主催の馬券を販売することなどについて合意したと発表した。ネット販売は来年4月から始め、初年度は10億円、将来的には80億円の販売を見込んでいる。岩手競馬は昨年度末で約129億円の累積赤字を抱えており、国内最大のポータルサイト「Yahoo! JAPAN」を持つソフトバンクの集客力を活かして、財政再建の切り札にしたい考えだ。岩手競馬は2007年度の黒字転換を目指す。具体的にはソフトバンクは、岩手競馬のウェブサイトを開設し、出走馬、騎手など関連情報を提供する。岩手競馬の全レースをブロードバンド通信サービス「ヤフー!BB」を通じて ネット中継する。また、岩手競馬専門誌「テシオ」の松尾康司編集長のブログも開かれる予定だ。地方競馬の弱点だった情報不足を補い、購買意欲を高めようというのだ。ネット中継も画質のレベルを一気に向上させてくれるだろう。馬券のネット販売はすでに「D-net」で行われている(10月からはジャパンネットバンクとの提携も始まる)。しかし、岩手競馬における電話・ネットでの売り上げは、全体の3%に留まっており、さらなるファンの掘り起こしが求められていた(JRAは42%)。
民間企業への業務委託は、今年1月に施行された改正競馬法により認められた。これまでライブドアが高知と馬券販売で合意しているが、一向にそのスケジュールは見えてきていない。企業規模や実績から判断すれば、民間委託の実質的な第一号はソフトバンクということになりそうだ。今後、ソフトバンクは他地区でもネット販売を展開していくことも視野に入れている。一方で、改正法で認められた公益法人を自治体と設立して、経営や番組内容に関与していくところにまでは踏み込まないようだ。
従来からネット販売による地方競馬再建に懐疑的な競馬評論家・須田鷹雄氏は、「とにかく『ネットで売ればバラ色』論を額面通りに受け容れることは難しい」と今回の件も評している。その上で「可能性があるとしたら公益法人を作って 競馬のシステムから立て直していくこと」と指摘しているが、この点については須田氏も悲観的な観測をしているように、ソフトバンクがそこまでのリスクを背負うとは考えがたい。ソフトバンクの長期的な狙いは中央を含めた馬券販売を手中に収めることであり、岩手はシステムづくりのテストケースに過ぎない。馬券は多様化するネットレジャーのひとつなのだ。孫正義が赤字の地方競馬を救ってくれるとは努々、思わないほうが良い。
だが、岩手競馬から見れば、これまでにない立て直しの大きなチャンスを得たことは間違いないのも事実だ。大きな投資をして構築した「D-net」は、ユーザー軽視の煩雑なシステムとなきに等しいプロモーションで苦戦している。もし、ソフトバンクが「Yahoo! JAPAN」のコンテンツとして馬券販売を位置づけ、クレジット決済など簡易なしくみをつくることができれば、これまで馬券がネットで買えることなど全く知らなかった多くの人々に、商品を認知してもらうことができる。その中には一度は買ってみようかという人々も出てくるだろう。 1日10億ページビューのポータルサイトに取り込まれるメリットは計り知れない。
ネットでモノを売ることは、さらに当たり前になっていくだろう。 6割がパソコンを使っている団塊世代の大量定年時代も、まもなく訪れる。以前にも指摘したが、こうした新たな層を開拓していくことが、地方競馬の裾野を広げるのに不可欠なことであり、ライトファンをつかむのに手軽なネットは格好のツールだ。問題は岩手競馬という商品の訴求力だろう。いかにして足を二度、三度と運ばせて、固定客としていくのか、打ち上げ花火で終わらせては元も子もない。公益法人の設立など待っていては手遅れになる。岩手競馬はこれを最後のチャンスと捉えて、番組改革、他場や異業種との連携を含めた新たな取り組みを進めてほしい。