馬の話は馬に訊け 【06.03.30記】

個性派集団オダギラー いかす馬名をマッテルゼ!

オレハマッテルゼ。なんてイカした馬名なんだ。断じて「俺、嵌ってるぜ」ではない。背中で哀愁を誘う「俺は待ってるぜ!」である。映画のタイトルならしっくりくるのは分かる。だが、これを馬の名前にしてしまうのセンスに恐れ入るではないか。長いコートを身に纏い、波止場の杭に脚をかけてポーズを決める"オレハマッテルゼ"。「♪この野郎、かかって来い! 最初はジャブだ…左アッパー…。畜生、やりやがったな、ボディだ、チンだ。ええい面倒だい。この辺でノックアウトだい!」 たった8文字でこれだけの妄想を与えてしまうとは凄い。

先日の高松宮記念でノアノハコブネ以来、21年ぶりのGT制覇を果たした小田切有一オーナー。その独特のネーミングセンスは強烈な印象の"名馬名"を残してきた。熱狂的なファンからは、個性的な所有馬はオダギラーと呼ばれて愛されている。私が初めてオダギラーを意識したのは、ラグビーボールだったと思う。過去の成績表を見て「馬なのにボールかよ!!」と突っ込んでしまった。その後、友人から「小田切さんはニバンテという馬名を申請したが落とされた」とのエピソードを聞いた。理由は逃げ馬にしてアナウンサーに「先頭はニバンテ」と言わせたいからって、最高じゃねーか!

その後もアサキチ、イトマンノリョウシ、オジサンオジサン、ガイドブック、ソレガドウシタ、ドングリ、ヒコーキグモ、メロンパン、ヨロコビノサイフなど、一度聞いたら忘れられない名前をこれでもかと連発してくれた。現役馬ではデンシャミチ、ナゾ、カゼニフカレテといった馬もいる。個人的に最も秀逸な馬名のひとつだと感じたのがロバノパンヤである。ユニコーンSでウイングアローの2着など、ダートのオープンでバリバリとやっていた馬だ。そんな走る芸術品とも形容されるサラブレッドがロバであり、しかもパン屋なのだ。まさにキゼツシソウ、 オミゴトデスである。

小田切さんの所有馬は100頭を大きく越えるが、その一頭一頭に個性的な名前を考えるのは並大抵のことではないだろう。冠号に父母の名前を足して機械的に申請するような、愛情の欠片もないことは決してしないのだ。ゴロゴロという馬は投げやりな感じに受け取る人もいるかもしれないが、母がノロノロだと聞けばオダギラーの深淵さが分かろうというもの。ノロノロの子どもがゴロゴロ…。亀から猫へ昇格である。ゴロゴロは二代目もいる。再指名するほどのこだわりがあったのか。ちなみにゴマメノハギシリの息子はナーンチャッテ。二代続けてオチを完成させたわけだ。

オダギラーにはどこか温もりがある。オレハマッテルゼの姉をご存じだろうか。 JRAで初めて「ヲ」を使ったエガオヲミセテである。馬券で負けても笑顔を見せて。姉もステキな名前だ。GUを2勝するなど一線で活躍していた同馬は、愛らしい名前もあってファンも多かった。しかし、放牧中、牧場の火災に巻き込まれて悲運の死を遂げた。意気消沈した音無厩舎に小田切さんが預けたのがゲンキヲダシテ。ちょっと泣けてくる。そして6年後、オレハマッテルゼは姉の為しえなかったGT勝利をオーナーと音無師にプレゼントした。きっと天国の姉も笑顔を見せてくれたに違いない。

>>参考サイト「それいけ! 小田切馬」



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