| 馬の話は馬に訊け(2001.6.17記) |
◆呆れた無責任行政の競馬潰し
地方競馬のほとんどが赤字に苦しむ中にあって、
大分県中津市営競馬も例外ではなかった。
中津競馬は累積赤字20億円を減らすべく、
様々な経営改善策を打ち出していた。
去年は佐賀競馬、荒尾競馬と日程を調整して「九州競馬」を開催し、
単年度赤字を4億5千万円から1億円に減らして一応の成功も収めた。
馬主にも一層の競走馬の購入を呼びかけ、
再建に光明が見え始めていた。
そんな矢先の今年2月、
鈴木一郎市長は何の前触れもなく競馬場廃止を発表した。
当初は6月末だった期限も反故され、
なし崩し的に中津競馬は閉鎖へ追い込まれた。
「競馬場存続」を公約に掲げながら当選した市長の心変わり
の真相は知る由もない。
しかし、中央のエリート省庁出身の市長には
殺されゆく競走馬の断末魔も、
安い賞金で懸命の努力を重ねてきた関係者の思いも届いていないのは間違いない。
◆許されぬ先例 ルール無視の補償ゼロ
現在、ホッカイドウ競馬、高知競馬などで
競馬廃止が盛んに議論されている。
ホッカイドウ競馬の累積赤字は130億円にも上る。
それでも競馬を廃止できない大きな理由は補償問題だ。
競馬場を廃止すれば、
馬主、調教師、厩務員、騎手などに多額の補償を支払わねばならない。
74年の大阪府・春木競馬場は62億円、
88年の紀三井寺競馬場は25億円の補償が廃止に伴って行われている。
ところが、今回の中津競馬場の場合、
市長は「法的雇用関係」がないことを理由に一切の補償を拒絶している。
中津競馬場の厩舎関係者は150人。その家族を含め400人が
収入を失い、
これまで生活していた厩舎団地からも立ち退きを迫られることになる。
文字どおり路頭に迷うのだ。
一方的な通告だけで
競馬場を即時廃止し、補償も行わない中津市の対応。
こんな乱暴な手法がまかり通れば、
行政側は好き勝手に競馬場など潰すことはできる。
市長のやっていることは
民主主義の手続きを無視した無責任行政にすぎない。
こんな先例を許してはならないはずだ。
◆中津市の違法性を明らかにせよ
中津競馬もかつては49億円もの黒字を市に計上していた。
だが、放漫な競馬運営を続けてきた中津市は、
この時の収益を新たな経営投資にも内部留保にも使うことはなかった。
赤字が続けば廃止も行政の選択肢として
タブーではないと思う。
だが、その場合は行政側の経営責任を明らかにすること、
関係者への適正な補償、改革と議論を重ねた上での決定という
透明性の保たれたプロセス
が必要条件であるはずだ。
今回の中津市の行動はいずれも条件に相反するものばかり。
もし、きちんとした過程を経ていれば、
所属馬の多くも引き取り先を探すことができただろうし、
関係者も新たな職についていたかもしれない。
これほど多くの馬たちも早すぎる最期を迎えずに済んだはずだ。
中津競馬場では今も関係者が補償を求めてデモや署名活動を続け、
訴訟も準備しているという。
中津市長の取った行動の違法性が明らかにされなければ、
現役生活半ばにして殺されていった馬たちも浮かばれることはないだろう。
このまま中津を忘れ去るわけにはいかない。

週刊現代
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