リデルハートの講義より

...歴史の流れを急変させるあらゆる事象のなかで、戦争の結果というものは1番偶然性 の低いものである。ここに今まで不当にも歴史で見逃されてきた1つの重要な事実を 発見するのである。

従来歴史家たちが、ドラマの脚本でも書くような調子で運、不運の要素を誇張して、 大衆受けする歴史を書いていたのを放置していたのは間違いである。ポリュビオスは この傾向を2000年以上も前に指摘して、「機会、原因及び関連性についての的確 な考察力を欠く人達は、聡明さと洞察力に基づいて熟慮の末達成された偉大な業績を、 神の加護や運のよさに帰してしまうものだ。」と述べている。
近年、歴史が科学的に論ぜられるようになった以降においても、このような誤りに 陥っているのは歴史家達の戦争無視思想によるものである。多少の例外はあるが、彼 等歴史家達は軍事史執筆者が事実の発見よりも偉業を賛美することに夢中になってい ることを看破し、彼等をして、戦いの結果は1に運命が決するものだということを鮮 やかに描き出すことがうまい叙述屋にしてしまった。これにより彼らは安直に華やか な人気を手に入れようとしたのである。
まだしばらくは、小数意見かもしれないが、実は、歴史に極めて大きな影響を及ぼし た戦争の結果に対して、理性は運命以上に大きく作用してきたのである。創意創案は、 しばしば戦場における勇気以上、ときには天腑の指揮統率力以上のものであるとさえ 見なすべきもので、それを戦闘場裡の一瞬の天来の妙想などと見なすことは空想癖も いいところと言わねばならぬ。より精しくいえば、戦争の結果は長い間かかって育て てきた実なのであって、勝者の事前開発に基づく軍事活動の結果か、または敗者が避 け得たマンネリ化の軍事活動の然らしめたものである。

最近の映画や大河ドラマを見てると段々内容が無くなって行くような気がします。 1930年代に書かれたこの文章が今でも当てはまる一面があるのには驚かされます。


リデルハート... リデルハートの誤解
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