アイヌ-Ainu

アイヌラックル

  天地が創造された後、地上におろされたハルニレの女神から生まれた、肌が赤く、人間のような匂いがする神です。ちなみに、ハルニレは、こすりあわせると火を生じる木として知られているのです。アイヌラックルは、人間にいろいろな技術や知識を教え広める神です。

アツゥイカクラ

  女の肌着が化けたもので、巨大な海鼠の怪です。流木に吸い付いて海に浮かび、通りかかった船を転覆させてしまいます。

アツゥイコロエカシ

  室蘭近海の主です。赤い体をした巨大な化け物の姿をしています。

アッコロカムイ

  または、アツゥイナ(海の木幣)といいます。内浦湾に棲む大蛸の怪で、遠くからでも、その赤い体を見る事ができたそうです。通りかかる漁船は、アッコロカムイに転覆させられてしまいます。礼文華あたりの山に棲んでいた大蜘蛛が海に入って蛸の怪になったという説もあります。〔参照〕 ヤウシケブ

アプトルヤムペウェンユク

  激しい暴風雨を起こす空中の魔物です。この害を防ぐためには、外に篩を置いておくそうです。

アラサラウス

  または、アラサルシ。一本の尾を持った無毛の巨獣。猿、または熊に似た獰猛な獣で、人間を襲います。

イガウ

  睡眠中の人間を窒息させる女怪です。

イコンタビブ

  悪疫を持ち運ぶ魔魚。

イペカリオヤシ

  手だけの妖怪。特に悪さをするわけではないのですが、山野で弁当をつかっていると、背後から手を出して食べ物をねだります。与えると、きりがありません。焼けた炭や石を手に乗せると、逃げてしまいます。

イワイセボ

  山に棲むウサギの怪です。60〜90cmくらいの耳を持ち、鹿のように鳴く鬼のような姿をしています。

イワエチシチス

  「山で呼ぶ者」という意味の名前です。牛のような鳴き声を立てる鳥の魔物です。

イワエツゥンナイ

  山に棲む一つ目の怪物です。どんな障害物でも、孔を作って通り抜け、飛んでしまいます。

イワオロペネレプ

  「岩を破る者」という意味の名前です。鳥の姿をしていて、岩を破壊するほどの力を持っています。もしその声を耳にすると、死んでしまうそうです。

イワサラウス

  六本の尾を持つ大きな獣の怪です。

イワホイヌ

  大きな角と歯を持つ、山イタチの怪です。

イワポソインカラ

  眼球の塊のような姿をしているらしく、人間の様子をうかがって悪さをすると言われています。イワポソインカラは岩を通して人をうかがうそうですが、他に、草木を通して人をうかがうキナポソインカラという妖怪もいます。

ウエンレラ

  「悪い風」。小さな竜巻のような風で、鎌で切りつけると刃に血がついているそうです。

ウレポロクルカムイエカシ

  足の裏が大きい翁神です。この神に祈ると、熊を獲る事ができるそうです。

オキクルミ

  半神的な英雄です。蝦夷の南西部では賢く勇敢な神人とされ、北東部では逆に愚かなものとされています。神に近い傑出した英雄ですが、あくまでも地上のものであるようです。〔参照〕サマイクル

カスンデ

  疱瘡の神と人間の女の間に生まれた人で、父親の性質を受け継ぎ、性格はあまり良くありませんでしたが、偉大な力を持った酋長でした。いろいろな悪行を重ねたので、神々がカスンデを慰撫するために、明けの明星をめとらせたという話があります。
  また、その偉大な力を人々のために役立てた事もあります。パウチカムイのせいで大雪山の神が怒り狂い、地上がブリザードで苦しめられた時、パウチカムイを退治したのがカスンデです。

カムイラッチャク

  「神の火」という意味です。登別には時々不思議な火が見える事があり、それをカムイラッチャクと呼びます。これは、登別の神が悪い病気の流行る事を教えているのだそうです。

カンナカムイ

  角を持った雷神(竜)です。

キムナイヌ

  キムン・アイヌ。「山の人」という意味の名前ですが、他にキムンクッ(山にいる神)、キモカイック(山においでになる神)、オケン(つるっぱげ)、ロンコロオヤシ(禿頭のお化け)などの別名を持っています。山奥の、エゾマツが茂った暗い場所に住んでいて、人間の三倍もあり、顔を含む全身に長い毛が生えています。また、口からは牙が突き出ています。
煙草が大変好きで、キムナイヌのいる山の中で煙草を吸っていると近づいてきますが、そういう時は、煙草を少しあげれば、何も悪い事はしません。それどころか、荷物が重いなどして困っている時、「守り神さんたち、手伝っておくれ」と言えば、どこからともなくやってきて、手伝ってくれるのです。但し、禿頭の事を口にするとその山は荒れてしまい、勿論力も貸してもらえません。また、キムナイヌは大木を倒したり、木っ端を投げてきたりするといいます。ひどい場合は、殺される事すらあります。どうやら、山の守り神というのが、キムナイヌの正体のようです。
  なお、キムナイヌは人の血をひどく嫌うといいます。

キムンカムイ

  熊の神様です。山犬を一頭連れているという言い伝えもあります。

キムンクル

  山に棲む一つ目の人食い鬼です。アイヌキムンクルという事もあるようです。これは、犬の吠え声のような鳴き声をする山男で、煙草を好むと言われています。

キムン・セタ

  キムナイヌが連れている山犬です。口に石をくわえて投げたりする事ができます。

キラウシカムイ

  鹿の角を持つ神。雷を司ります。人間に幸福をつかわすために天の神の使いとして地上にやって来たのですが、それを自分の功績にしようとしたため、天の神によって有珠山の火口に投げ込まれてしまいました。

クナウ

  カンナカムイの末娘で、霧の女神です。大嫌いなテンと結婚するように父から命じられたため、霧となって姿を隠してしまいました。最後にはみつけられてしまい、カンカンに怒った父神の呪いで、福寿草に変えられてしまいました。

クンツゥカブ

  沙流太の海に棲む、カジキエイに似た魔魚で、この魚を捕まえると、不幸が訪れます。

コタンカラカムイ

  蝦夷の土地を創った神です。天地を創造した男女二柱の神の次ぎに誕生した神ではないかと思います。そのため、続いて生まれたその他の神々の中では、頭だった存在となっているようです。

コチウツナシュグル

  「早瀬の男」という意味の名前で、激流にいる魔物です。

コヌブキオトグル

  「泥中に棲む者」という意味の名前で、川岸を崩す魔物です。

コロトラングル

  「海上に来る者」という意味の名前で、暴風を起こす海の魔物です。

コロポックル

  語義は「蕗の下に棲む人」。トイチセウンクル(土の家の人)、トイセコッチャカムイ(土の家の傍らの神)とも呼ばれています。秋田の蕗なんかは人間の子供が傘に使えるくらい大きいやつもありますが、蕗の下に住めるという事はやはり相当に小さいという事になりそうです。別に人間に敵対的なわけではなく、特に悪戯などをしかけたという話も聞きません。坪井正五郎によれば、アイヌよりも古い北海道の先住民族ではないかという事で、漁や狩りをして生活していたようです。
  言い伝えによると、蕗の下に入ると姿が見えなくなるとも言われます。

サマイクル

  オキクルミの弟です。やはり人々の間に傑出した神人ですが、オキクルミとは常に反対の性格とされています(蝦夷南西部では愚かなものとされ、北東部では賢いものとされています)。

シタクコロクル

  神通力がある人という意味です。文字通り、常人ではなしえないような事ができる人です。

シャクシャイン

  アイヌの英雄です。蝦夷東部の酋長でしたが、そのあたりのアイヌが、松前藩の採鉱のため、川で漁ができなくなった事を不服として松前藩に訴えた時、松前藩側のもてなしの場にでかけていって謀殺されてしまいました。そのため、それを聞いたシャクシャインが首領となり、叛乱を起こしたと言われています。シャクシャインは強大な酋長でしたが、ついには敗れて捕らえられ、刑死してしまいました。

ショキナ

  東の海の果てに住んでいた、巨大な鯨です。口を開ければ、上あごが天に、下あごが海底につかえるほどだったといいます。そばに寄る船は一のみにしてしまうので人間が大変難儀をしましたが、その訴えを聞いた神々のなかで、かわうそ神が退治を引き受け、登別の近くでとうとう頭を切り落としました。

チロンノップカムイ

  狐の神さま。最高位は白い狐のウパシチロンノップカムイ、次が黒い狐のクンネチロンノップカムイ、普通の赤い狐がチロンノップカムイです。狐の頭は人を守ってくれる守護神になります。

パウチカムイ

  淫らな女神です。裸体で踊り回り、人をたぶらかします。

フリー

  翼ひとつが七里もあり、人や獣はもとより、鯨ですらわしづかみにしてしまう、巨鳥です。土地によって、シュリ、ヒウリ、フレウなどとも呼ばれます。大変美しい羽をしているとされています。

プリカンダカムイ

  「はなはだ粗野な者」という意味の名前です。人食い熊となって現れる山の魔物です。

ペンタチコロオヤシ

  松明をかざして夜道に現れ、人を化かす妖怪です。正体はワタリガラスのようです。

ホヤウカムイ

  湖沼の主。日高から北海道西部に棲んでいます。翼を持った蛇で、尖った鼻を持ち、頭と尾は細く、常にひどい悪臭を放っていて、近寄るだけでも皮膚がただれたり、焼け死んだりしてしまうそうです。ホヤウはアイヌ語で「蛇」を意味し、ラプシヌプルクル(羽の生えた魔力を持つ神)、ラプウシオヤウ(翼を持つ蛇神)、サクソモアイェプ(夏には言わせぬ者)などの別名を持っています。

ミンツチ

  別名、シリシャマイヌ(山側の人)。ミンツチという言葉そのものは、ミヅチから出たものだという説もあり、もともとのアイヌ語ではないのかもしれません。
  ミンツチはアイヌの河童です。海から現れた疱瘡神を撃退するために作られた61体のチシナプカムイ(蓬で作ったわら人形のようなもの)のうち、戦で倒れた60体がミンツチになったのだそうです。魚の主で、漁師に漁運を、猟師には猟運を与える事がありますが、人を水死させる事もあるので、油断はなりません。12歳くらいの子供のような姿とか、禿頭の小さい老人の姿と言われますが、男女の区別はほとんど外見からはできないようです。
  漁の神であるとも言われ、ミンツチがいる川は不漁という事がないそうです。
  ミンツチがすると言われる悪さは、河童と共通点が多々あります。その一方、キムナイヌと共通する性質もあるようです。いずれにしろ、名前を含め河童の影響を多く受けている事が考えられそうです(地方によって、河童の事をミヅチと呼ぶところがあります)。

モシリシンナイサム

  名前の意味は、「別の世界から来たもの」というようなもののようです。
  白と黒のまだらになった、馬ほどの大きさの妖怪で、村はずれの湿地帯などに現れます。その姿を見ると、長生きできず、また、一生不幸に見舞われるといいます。モシリシンナイサムはいろいろな動物に化ける事ができ、道などに出没して人を悩ます事もあります。

ヤウシケブ

  礼文華の山の洞窟にいたという大蜘蛛です。全身真っ赤で、非常に凶暴であったらしく、しばしば村などを襲いました。このため、海の神レブンカムイがヤウシケブを海中に引きずり込み、大蛸に化身させたと伝えられます。
  一方、ヤウシケブカムイという蜘蛛の神が悪い神から人を救ったという昔話もあるそうです。
〔参照〕 アッコロカムイ

ライクルエチカップ

  死人を食べるという妖鳥。

レタル・カムイ

  幌尻岳(日高山脈の最高峰)に棲む白熊の姿をした神。名前は「白い神」という意味になります。また、ヌプリコカムイ(山を領有する神)とも言うようです。この熊を見ると途端に突風が吹きますが、人間は、その風に吹き飛ばされても決して怪我をする事はないのだそうです。また、この神は人間の女と恋愛をしたとも伝えられています。

レタル・セタ・カムイ

  「白い狼神」(セタは犬も狼も指します)。幌尻岳に住む神で、狩りの守り神です。和人の女を神通力によって導き寄せ、妻としました。この夫婦から、狩りの上手な人々が生まれたという事です。

レブンエカシ

  「沖の長老」という意味の名前です。内浦湾に棲んでいて、鯨を一度に八頭も飲み込めるほど大きな怪物だそうです。