アラブ-Arab

アリラト】 Alilat

  ナバテア王国で信仰されていた女神。四面の石が、その顕れとして崇拝されていた。アスタルテやイシュタルの影響が強く見られ、ドゥスラと呼ばれる息子神を伴う。メッカのカアバ神殿に祀られている黒石も、本来はアリラトの象徴であったと考えられる。

イフリート】 Ifrit

  性悪のジン。イフリートと通称されるが、バートン卿はアイフリットと発音するのが正しいと述べている。女性形はアイフリッターである。スレイマン(ソロモン)によって瓶に封じ込められたり、逆に美女を筺や地下室に閉じこめたりした。但し、バートン卿によれば、善悪の二種類があるという。かれらは密閉された狭い空間に縁があるように思われる。魔力があり、いろいろなものに変身できるが、狡智では人間に及ばない。出会っても落ち着いて頭を使えば、命を落とさずにすむかもしれない。

グーラー】 Ghulah

  女のグール。大抵墓場に棲んでいる。美人で、人間の男と結婚する事もある。その場合、人間の食べ物はほとんど食べず、夜になると墓場に出向いて屍体をあさるわけだ。勿論、たまたま通りかかった運の悪い男を獲って喰う事もある。それにしても、をい、いつ寝るんだ。あまり睡眠は必要ないのかも……。なお、しばしばグーラーはラミアに擬せられる。

グール】 Ghul

  食屍鬼。つまり屍体を食べる悪鬼。でも、あまり男は出てこない。出てくるのは大抵女の方。女性形はグーラーとなる。

ジニー

  女のジン。但し、本来はジンニヤーが正しい。

ジン】 Djin,Jinn,Ginn,Jin

  ジニー。妖霊。人間より前に火から創られた種族。最初の二人の名はマリットとカリットであった。イスラム教時代に入ると、天使より下位である上、人間が創られると、人間よりも下位に置かれたものとされた。このため、中には人間を敵視しているものもある。異説に、人間の女に惑わされたイールートとマールートという二人の堕天した天使がジンの祖先となったともいう。また、イスラム教徒であるものと、そうでないものとがいる。しばしば、人の住まぬ屋敷や井戸に棲むが、秘境的な土地に宝玉を鏤めた宮殿や都をかまえている事もある。このような場所では、人間と同様の社会を営んでいる。おおむね、人間より遥かに巨大であるが、様々に変身する事ができる。また、空を飛ぶ事ができるが、人間がそのようにして運ばれている時にコーランを唱えると、その通力が失せてしまう。彼等は、しばしば天界を窺おうとするが、あまり近づくと天使によって射殺されてしまうという。鉄が嫌いなので、ジンを避けるには「ハディード(鉄)、ハディード」と唱えれば良い。
  その姿は人間とさして変わらぬものから、火のような眼と炭のような色の体をした醜い巨人にいたるまで、いろいろに描かれるが、女である場合は大抵美人である。
  一説によれば、ジンの王はカフ山(世界を取り巻いている高山)に住むマリク・カトシャンであり、その下に養子のアブド・アル・ラーマンと、回教徒であるジンを統べるバクタヌスがあり、その他のものどもは七十二人の王に治められているが、それらの王はいずれもそろってスライマンと呼ばれている。ジンの最後の王はジャン・ビン・ジャンであり、彼こそがアダムの前に膝をつく事を拒んで手下ともども討伐されたのであった。