アステカ-Aztec
【アトラトル】
矢の神、水の神。葦で作った投げ矢を持ち、それは決して折れる事がない。また、アトラトル自身、水のように柔らかい為、傷つく事がない。ケツァル鳥(復活の象徴)の姿をとって現れる事がある。
【イスプステケ】
逆さまについた鶏の脚と、鋭い爪を持つ鬼。冥府への道で旅人(死者)を襲い、ずたずたに引き裂こうとするもの。
【イシ】
ジャガーの神。
【イツトリ】
犠牲のナイフの神。
【イツパパロトル】
黒曜石の蝶。すなわち、永遠で不滅のものとなった魂を象徴する女神。イツラコリウキの伴侶。
【イツラコリウキ】
曲がった黒曜石のナイフの神。氷と盲目、冷酷と頑迷の神。溶岩の上を歩く者。テスカトリポカ、あるいはテペヨロトルと同一視される事もある。最も不活発な状態にあるものを司る。盲目ゆえに、あらゆるものを無差別に襲う。邪悪と災厄の神。
五色の羽毛の玉となってコワトリクエを身ごもらせた。コワトリクエとともに、オメヨカンに住む。コワトリクエの子供達が攻め寄せてくると青い盾と投槍を手にし、すっかり戦の装いをして飛びだしてきて、唯一子供達の裏切りを母に知らせに来たアウィトリカクを除き、全て撃ち殺してしまった。その体をひと揺すりすると、蛇のような形の電光が迸ったという。母親の名も蛇と関係があるので、ウィツィロポチトリも蛇と関係が深いのかもしれない。
太陽神、軍神、狩猟の神。名前は「蜂鳥の左足」を意味する。太陽が死滅する事のないように闇を追い払うもの。なお、ナワ人にとっての蜂鳥とは、肉体の枷から解放された至福の魂を象徴している。
時々、人間の供犠を求め、通常は戦争の捕虜の心臓が捧げられたが、特に大切な場合は高貴な身分の者が生贄とされた。
【ウエウエコヨトル】
踊りの神。
【ウェウェテオトル】
「年老いた神」。火を司るもの。頭や背に火桶を乗せた、顔に皺のある老人の姿で表される。古代アメリカ大陸最古の神の一人であり、52年周期の終わりに、古い火を消し、新しい火を点す重要な役割を果たす。
【エヘカトル】
風の神。乙女マヤウエルを得て、人々に「愛」というものを教えた。また、マヤウエルとの結びつきによって、エヘカトルは柳の木に変身した。また、おそらくは、天上と地上を結ぶ役割を果たす者でもある。
【オマカトル】
歓楽の神。黒と白で体を彩り、花模様の縁取りがある衣をまとう姿をとる。もしも祭祀を間違えるような無礼をすると、厳しい罰を下す事で知られた。例えば胃の病を送るといったような。
【オメテオトル】 Ometecuhtli
オメテクトリ、またはシトラルトナック。名の意味は「二つの物事の主人」。「中心にいるもの」「環の中にいるもの」。この世の出来事の遥か彼方に存在するもの。物事の二面性の支配者であり、しかして両性具有。万物の源。男と女、光と闇、秩序と混沌、肯定と否定など、対立する二者が合一して内包されている。つまり、二つのものを一対として均衡をとっているとも言える。天国へ通じる階段のてっぺんに座っている。
【ケツァルカトル】 Quetzalcoatl
より原語に近い形ではケツァルコアトルか。その名前は碧の羽を持つ鳥ケツァルと、ナワ語で蛇を表すコアトル(マヤ語でいう蛇、「コ」とナワ語の水「アトル」から合成された言葉)から作られ、従って、水・蛇(大地)・鳥という三つの要素を内包している。トルテカの王または神。「羽毛ある蛇」。呼吸を与える者。おそらくは風の神。同時に金星及び太陽とも同一視される。更に、人間の創造主。死の国ミクトランから持ち帰った骨に彼が自分の血をそそぐことで人間が生み出されたという。火をもたらした者。また、実際に人々を指導し、王として治めた文化英雄でもある。テスカトリポカの敵対者。この敵から贈られた女と飲酒に耽溺したため、ついにケツァルコアトルは王位を追われる事になる。最後は海岸で弔いの薪を積み、その上に登って火の中でで自刃した。灰からは珍しい鳥が飛び立ったと言われるが、蛇の筏を組んで東方へ漕ぎ去ったという異伝もある。また、その心臓は遺骸が焼かれた後も残って空に飛び上がり、金星になったという。
鳥と蛇、十字、そして燧石が象徴とされる。鳥は雲、蛇は雷光、十字は風、燧石は雷槌を表すものと考えられ、従って雷雨の神としての一面も持っていたと考えられる。またさらに、リントンはウェマク(強き手)という別名がある事から、地震を司る面もあったのではないかと推測している。
〈ハルマゲドン・バスターズ〉 嬉野秋彦(スーパーファンタジー文庫)
ケツァルコアトルの妹。テスカトリポカの策略により、美酒に酔って、(おそらくは兄ケツァルコアトルと)肉欲に耽溺してしまい、堕落した。ケツァルコアトルはその結果に悩み、自ら葬送の火に、死に装束で身を投げて燃え尽き、その心臓は鳥に運ばれて、空で金星になったと伝えられる。だが、ケツァルペトラトルのその後については語られていない。
【コヨルシャウキ】
コワトリクエの娘。コワトリクエが謎の妊娠をした時、母が私生児を産む事の恥辱を懼れて、母を殺す企みをし、兄弟を唆した。四百人の兄弟を率いて母の住む山に向かってきたところを、武装して飛びだしたウィツィロポチトリに撃ち殺され、兄弟ともども空の星となる。
【コワトリクエ】 Coatlicue
名の意味は「蛇女」。地母神。五人の月の女神の一人。雲の蛇たる狩猟神ミシュコアトルの妻にしてウィツィロポチトリ、ケツァルコアトルなど神々の母。但し、ウィツィロポチトリは羽毛糸の玉のようなものを懐にしまっておいた事から起きた。夫による懐胎でなかったため、これは四百人の子供達から、家名を汚すものとして怒りをかった。そこへ、ウィツィロポチトリが完全武装した姿で胎内から飛び出し、敵対的な兄姉の多くを殺したのだという。
手足には鈎爪があり、乳は垂れ、その上に人間の心臓と手首を繋いだ首飾りをかけ、蛇のスカートをはいている。また、人肉を常食としている。
【シウテクトリ】 Xiuhtecuhtli
火の神。巨大な火の柱で表される。死者の国ミクトランの炉から燃え立ち、地上の全ての炉を通り抜け、天界にまで達する。このように地上と異界との絆となっているため、死者の魂が大地に溶け込むのを助ける力も持つ。
【シタラトナク】
天に住む神の一柱。
【シタリニクエ】
天に住む神の一柱。銀河の女神。
【シペ・トテク】
「皮を剥がれた神」。青春と豊饒の神であり、人身供犠を司る。別名、ヨピ。金銀細工師の守護者であり、プルケ(竜舌蘭から作る蒸留酒)の神でもあった。また、泉の神とも呼ばれた。
【ショチケツァル】
花の女神。
【ショチトナル】
冥府への道で旅人(死者)を襲う鰐。跫音を聞きつけると大きく口を開けて飛びかかってくる。
【ショチピリ】
花の神。また、ギャンブルの神でもある。マヤウエルの夫。この場合の「花」は、マヤウエルが発見したとされる酒(プルケ)の原料となるものであり、広い意味では、薬草を指すようだ。
【ショロトル】
明けの明星としての金星。ケツァルコアトルと双子の神。地上に生まれた最初の人間が死に絶えた時、新たな人間を生み出すため、その材料となるべき人間の骨を冥界へ取りに行った。おそらくは、犬の姿をしており、死や埋葬と関連のある神だと思われる。
【シロネン】
トウモロコシの女神。おそらくは、シンテオトルの配偶者。
【シワコアトル】
顔の半分が赤く、半分が黒く塗られている女神。白ずくめの衣裳をまとっている。男たちに、鋤と背負い紐タンプラインを与えたもの。夜っぴて泣きわめき、戦争や惨めさを予言するもの。
【シンテオトル】
トウモロコシの神。
より正しくはチャルチウクエイエ。「翡翠のスカートの女」。トラロクの妻、ケツァルコアトルの母であると云われる。世界の創造にあたり、天上に橋をかける役割を果たした。大雨で洪水を起こし、人間を魚に変えて泳がせた。
供犠の神。
【チャンティコ】
火の女神。
【ツィツィミトル】
マヤウエルのお目付役だった老婆。風の神によってマヤウエルが連れ去られた時、その後を追って、その化身である花の咲く枝を滅ぼしてしまった。
【ティトラワカン】
大いなる神。人間の始祖に祭祀を教えたもの。
【テクシステカトル】
法螺貝の螺旋の奥にいる、月の神。もともと、大変見栄っ張りな神で、太陽を作るために選び出されると、四日間の苦行の後、高価な羽、近海、貴石から作った針、赤珊瑚から作った針、コーパル樹脂を供えた。更に四日間の苦行を積み、いざ、太陽となるために火に投身する事を命じられると、与えられた四回の機会をことごとくたじろいで失敗してしまい、結局、予備として同じく苦行を積んできたナナウツィンに出し抜かれてしまった。我が身を恥じて遅まきながらナナウツィンの後に火に飛び込んだ為、テクシステカトルは、月になった。
【テスカトリポカ】 Tezcatlipoca
名の意味は「煙をたてる鏡」。すなわち、魔術師が未来を占うのに用いる黒曜石の鏡に由来する。生命を与え、あるいは奪うもの。戦士の神であり、ウィツィロポチトリと同一視される。更に原初は太陽神でもあり、その座をケツァルコアトルに追われて虎に変身させられたと言われる。狡智に長けたトリックスターでもある。
全体に、制御できない活力を象徴しており、また、日常では庶民の守護者でもある。
もしもこの神に巡り会って、組み打ちで勝つ事ができれば、あるいは神の胸にある扉に手を伸ばしてそれを開き、中の心臓をつかむ事ができれば、何でも願い事を叶えてくれるそうだ。無論神相手に勝つにはなまなかならぬ技と力と情熱が必要と思われるが……。また、敗北した場合の報いは、当然、死となる。
ジャガーによって象徴され、ヨアルリ・エヘカトル(夜の風)、チャルチウトトリン(美しい七面鳥)、イツトリ(黒曜石のナイフ)、ネサワルピリ(断食する王子)、テルポチトリ(若者)などの別名を持つ。黒と黄色の縞模様のある顔をして、大地の神にもぎとられた片足のかわりに煙を吐く鏡をつけ、その鏡の中に世界中の出来事を見る事ができる。
【テペオロトレク】
「獣の王」。地震を司る神。また、谺の神。
【テペヨロトル】
「山の心臓」。地震を司る神。
【トナティウ】
太陽の神。
金星神。「曙の主」。また、シトラルボル(大きな星)。真白な体に長く赤い筋が何本も入っており、両眼のまわりは黒く隈取られ、唇は真紅。また、髑髏の顔をしている事もある。太陽の後について外界に下っていくものとされた。
【トラコロトル】
災いを予言するミミズク。その体からは煙が噴き上がっている。
【トラソルテオル】 Tlazolteotl
これも、より正しくはトラソルテオトルではなかろうか。トラロクの妻であり、女神のうちで一番美しい者でもある。ふさふさとした髪と、豊満な肢体を持っていて、その五体からは光がさすかのように麗しかったと伝えられている。愛欲と奢多の女神。苦行者を悪戯で誘惑したりなど、かなり迷惑なところもある。後にテスカトリポカに奪われた。
不浄の女神でもある。罪人とテスカトリポカを媒介するもの。魔術や罪の浄化と深い繋がりを持つ。また、あらゆる不浄な行為の影に潜むものでもある。また、性に深い関わりがある。テノチティトランではトラソルテオトルに帰依した一般家庭の娘達が訓練され、娼婦として戦士の宿舎に送り込まれたという。この娘達は役目を果たすと、祝祭の後に捕らえられ、儀礼的に殺された。
ヘカーテに似て四つ辻の女神でもあり、トラソルテオトルの神殿はしばしば四つ辻に建てられた。また、月、蛇、コノハズクとも深い関係がある。この神に仕える女神官はシワワテオ
Ciuateteo (いとも高貴な母)、またシワピピルティン
Ciuapipiltin (王女)と呼ばれたが、一説には、これは産褥で死を迎えた女達の霊を呼ぶ名前でもあった。
四つ辻の女神としてトラソルテオトルにつながるものに、箒にまたがり、とんがり帽子以外は何も身にまとわない四姉妹がある。彼女らの名前は、上から順にティアカパン、テイク、トラコ、ショクツィンである。この四姉妹は人を予定の道筋から惑わそうと十字路を徘徊する。
【トラルテクトリ】
大地の神。
【トラロック】 Tlaloc
アステカ以前のトルテカ時代から信仰された雨の神。雲、雨、稲妻、そして山の湧き水を司る。また、トラロックの支配する楽園、水と霧の国トラロカン
tlalocan には落雷と水害、ハンセン氏病、伝染病で死んだ者が迎え入れられるという。ここにはトウモロコシやかぼちゃ、グリーンペパー、トマト、豆などが常に豊富に実り、人々はここで楽しく遊びながら4年を過ごしてから現世に生まれ変わる。おそらく中央アメリカで最古の神と考えられる。房のような髭と輪で囲まれた大きな目を持つ。
マヤではチャック、トトナカではタヒン、ミシテカではツァウイ、サポテカではコシーホという別名で知られる。
【トラロッケ】
トラロックの配下である善良な小人。トラロカンの管理者。
【ナナウツィン】
皮膚病を患っていたため、軽蔑されていた神であったが、太陽を作り出すためにテクシステカトルのいわばスペアとして選び出され、四日間の苦行の後、火を焚き、3本のずつ束ねた9本の緑の葦、乾草と自分の血を塗った竜舌蘭の棘、自分の体からとった瘡蓋を供えた。更に四日の苦行を積み、テクシステカトルが失敗してから、火に投身する事を命じられてそれに従った。これによって、ナナウツィンは太陽になった。
【ナナワトル】
皮膚病、ことに癩病を司る神。また、太陽がこの世になかった時、ナナワトルが太陽を呼び起こすための生贄に捧げられた。
【ネシュテペワ】
冥府への道で旅人(死者)を襲う鬼。空中に灰を投げ飛ばして雲のようにあたりを覆い、真暗にしてしまう。
太陽の神。
【マヤウエル】
愛の化身、または花の女神。飲物の女神。エヘカトルによって目覚めさせられ、地上へ連れ去られた。共に、二つの大枝を持つ樹に飛び込み、風の神は柳に、マヤウエルは花の咲く枝に変身するが、マヤウエルの枝は、追ってきたツィツィミトルとその仲間によってばらばらにされてしまった。後に、本体に戻ったエヘカトルによって野に葬られたマヤウエルの亡骸から、酒(プルケ)の原料となる植物、竜舌蘭が誕生した。
亀の玉座に座る出産と幸運の女神でもある。多くの場合、マヤウエルは亀と蛇とともに甲羅または貝殻の上に座った形であらわされる。マヤウエルの夫はショチピリ。
地下を治める女神。
ミクトランとも。名前は「死者の国の首長」を意味する。冥府の神。戦闘で死んだ者、生贄になった者、お産で死亡した女、雨と水の神がもたらす病気で死んだ者、雷に打たれた者、自殺した者、溺死した者以外の死者は全てこの神のもとに行く。髑髏の頭部を持ち、手にも頭蓋骨か骨を持っている姿で表される。
【ヤカテクトリ】
前を行く神。鼻の神。(指導的な)商人階級、ポチテカによって崇められた。
【ラ・リョローナ】 La Llorona (合衆国南西部〜メキシコ、フィリピン)
スペイン語で「泣く女」。ラテンアメリカ式の発音ではラ・ジョローナかも。殺された我が子を探して夜に彷徨い歩く幽霊。特に、失くした子供を探して歩き回っているうちに死んでしまった女の幽霊。また、何らかの理由で我が子を殺してしまった女の幽霊とも云われる。
おそらく、シバコワトルあるいはチウアコワトル、トナンツィンとして知られる女神の物語が元になっていると考えられる:白い衣をまとい、肩に揺籃を担いで現れ、女達の間にその揺籃を残していくのだが、その中には子供ではなく、供犠用の短剣が入っており、女神は泣き叫びながら街中を歩き回ると、最後は湖の中に消えたという。
ラ・リョローナとして現れる時は白又は黒の服をまとい、長い黒髪を垂らした蠱惑的な姿で、長い爪(時には鈎爪)を持っている。無貌であったり、馬か蝙蝠の顔を持っている事もある。通常は真夜中に堤や人気のない通り、森の中などに現れるが、日中に現れる場合もある。寂しい場所で男達を誘惑し、ときに若者を餌食とする事もある。
その姿を見た者は一年以内に死ぬか、不運な目にあうと云われる。