カナアン-Canaan

アナト】 Anat

  バアルの姉妹にして配偶者。しかして処女神。七つの首を持つ罪深い蛇を殺すもの。「天の女王」「山の貴婦人」とも呼ばれる。兜をかぶり、戦斧と槍をもった姿で描かれる戦闘的な女神。夫が自慢の鼻をへし折られて死の神モトの虜となった時、最初彼を返してくれるようにアナトは懇願するのですが、それが聞き入れられないとなると、自ら出かけていって、鋭い剣でモトをずたずたにし、手足を粉微塵にして撒き散らした上、これを焼いて引き臼で挽き潰し、残骸を野原に振りまくという凄まじい復讐をしました。バアルが悪いんだからそこまでやらなくても……と思わぬでもないですが、いやはや。他にアシュラ、マリ、ミリアムなどとも呼ばれ、カナアンさけでなくシリア、エジプト、ユダヤでも崇拝されていました。

ダゴン

  古代の秘伝を授ける神もしくは魚人。ペリシテ人の神で、ガザとアシドドに重要な神殿があった。この名はヘブライ語の「魚(ダグ)」と「偶像(アオン)」から発生しているという。従って、もしかすると本来の名は異なったものだったかもしれない。クトゥルー神話にも同じ名の神が登場するが、明らかにこのダゴンをモデルとしたものと思われる。〔参照〕 悪魔としてのダゴンクトゥルー神話のダゴン

バアル】 Baal

  名前の意味は「主」。ここからわかるように、古くはカナアン地方の神々は皆、こう呼ばれていたようです。後に、それぞれの神の権能が分離されると、バアルは雨と雷と稲妻の神になりました。北部のサフォン山に屋敷をかまえて住んでいます。主神エルの息子とも、海の神ダゴンの息子とも言われます。暑い地方ですから、雨といえば豊饒をもたらすもの、生命の根源になるわけですね。神話では、海の神ヤムを破り、かなり鼻高々になったようで、なんと死を排斥しようとしたのでした。そんな事をされた相手が怒るのは当然で、バアルは死の神モトに殺されてしまいます。その後のいきさつはアナトの項目を参照のこと。

モト】 Mot

  死の支配者。得意の絶頂にあったバアルに、「おまえがいてもいいのは、炎熱の砂漠だけだ」なんてゴーマンかまされたので、そういった不毛の地にバアルを招くと、あっさり殺してしまいました。このため、アナトにさんざんな目にあわされるのですから、復讐もほどほどにしておけばいいのに……という話ではあります。一説に去勢された神とも言われます。すなわち豊饒の象徴たるバアルのマイナス面を表すものでもありますが、アティスのように自ら去勢した神とも近い性質があるのかもしれません。また、土の中で休眠する時期の植物神を表すとも言えるでしょう。

ヤム】 Yamm

  塩水の所有者。どうやら、エルに敵対していたようで、そのためバアルに打ち負かされ、雨と植物の守護神という地位を奪われてしまいます。