クトゥルー神話
-Cthlhu Mytholohy
【クトゥルー】 Cthulhu
「水淵のクトゥルー」「来たるもの」「ルルイエの主」。
〈旧支配者〉とも呼ばれる事がある超越的な存在のうちの一つで、外宇宙あるいは異次元などの異界から氷河期の地球に到来したと思われる。従ってその名は人間が正確に発音あるいは表記する事は不能であって、クトゥルーはその試みのうち、日本で最もよく知られた発音/表記にすぎない。他にクスルー、ク・リトル・リトルなど様々な翻訳がある。
海底都市ルルイエに幽閉されており、ダゴン及びヒュドラと呼ばれる海妖、そしてこの二体に率いられる〈深きものども〉といわれる尾のない両棲類に仕えられているため、クトゥルーもまた水妖であるとみなされる事が多いが、実際にそうであるかどうかは不明である。幽閉されているというのが本当であるなら、それが力を持ち得る領域に封印するものであろうか。その現状については『ルルイエ異本』に「ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるう るるいえ うがふなぐる ふたぐん」(ルルイエの館にて死せるクトゥルーは夢見るままに待ちいたり)と記されている。死んでいるが夢みながら何かを待つという状況は、仮死状態や冬眠を連想させるものがある。
クトゥルー信仰は南太平洋や南米の一部原住民の間に散見され、これがオーベッド・マーシュ船長によって合衆国マサチューセッツにもたらされた。特にマーシュ船長の母港であり、その子孫が住む港町インスマスには、人間が〈深きものども〉と通婚して生まれた子孫達がおり、沖合の悪魔の岩礁付近で彼らや仲間である〈深きものども〉の姿を見る事ができるらしい。彼らの目的は、当然の事ながら、封印されているクトゥルーを解放する事だと考えられる。
クトゥルーの姿はおおむね次の通りである。蛸のように、無毛で巨大な丸みのある頭部を持ち、顔面は触手の塊で、鱗のあるゴム状の体をしている。巨大な鈎爪を備えた手。幅が狭く長い翼。
【ダゴン】 Dagon
ペリシテ人の崇めた海と豊饒の神と同じ名前を持つが、それと同一の神格であるかどうかは不明である。あるいは、名前を借りただけなのかもしれない。インスマス沖の悪魔の岩礁に近い海底のイハ・ントレイに囚われている可能性がある海妖で、配偶者はヒュドラ
Hydra
と呼ばれる。こちらもギリシア神話に登場する水蛇と同じ名前を持つが、それと同一のものとは考え難い。
尾のない両棲類だといわれる〈深きものども〉の支配者。従って、〈深きものども〉と通婚した人間たちの合衆国での本拠であるインスマスでも「ダゴン秘密教団」の教会で崇拝されている。
〔参照〕 ペリシテ人の神としてのダゴン、悪魔としてのダゴン
【ニャルラトホテプ】 Nyarlathothep
「猛る使者」「悪魔の使者」「大いなる使者」「カルネテルの黒き使者」「百万の愛でられし者の父」「邪悪なるものの支配者」「這う混沌」「星間を忍び寄るもの」「夜に吠ゆるもの」「顔無き者」「盲目にして顔無きもの」「暗黒神」「暗闇に棲むもの」「秘められしもの」「砂漠の王」「復活の神」「ユゴスに奇妙な悦びをもたらすもの」「ふるきもの」など、多様な異名を持つ。
古代エジプトで崇められた事があるとされ、何となくエジプト風に思われるこの名も、本来のものがまずエジプトで表記された事に由来するのかもしれない。また、エジプト風な表徴とともに人々の前に出現する事もある。それが本当にエジプトと関係した事があるためなのか、人間がそう思っている事を利用してのニャルラトホテプの演出であるかは窺い知れぬ事である。
一説によれば千ともいわれる、様々な姿を持つ。実際の所はほとんどどのような姿も取り得る変幻自在な存在という事だと思われる。無論、そこには人間の姿も含まれるが、大概は浅黒い肌あるいは黒人の姿を好むようである。本体は異名の通り、顔のない存在で、暗闇の中で狂ったように吠え続けるものであると考えられている。
外宇宙から飛来したとも、地球本来のものでもあるといわれ、その出自については一定しない。地球最期の日に、蛇の従者を連れた黒人として砂漠から現れ、訪れた地に死と破壊をもたらすと予言されるが、これまでにも〈星の智慧派〉の教会などに姿を見せている。地妖であり、火妖クトゥグアは天敵であると云われている。
【ヨグソトスJr】 Yog-Sothoth
ジュニアは二世あるいは大に対する小を意味するが、ヨグソトスJrとはいかなるものであるか。ラヴクラフトサークルの作家が紡いだ物語中にはヨグ=ソトースの子は発見できなかったので、ここではヨグ=ソトースについて述べる。
「超ゆるもの」「一つにして全てなるもの」「全てにして一つのもの」「戸口に潜むもの」。
地妖とみなされる超越的存在。但し、地球本来のものではなく外宇宙あるいは異次元のような何らかの異界から現れる。あらゆる時間と空間に接しているとも云われるので、そもそも時空を超越したものなのか、あるいは三次元を超える次元に存在するものとも考えられるだろう。外見は輝く球体の集合体と表現されるが、その通りのものであるかどうかは不明である。
「混沌の外縁」と呼ばれる場所に追放されており、特定の儀式によって召喚する事が可能である:太陽が第五宮に入り土星がそれに三分一対座すなわち120度の角度に位置する時、炎の五芒星を描いて、『ネクロノミコン』無削除版751頁に載せられている「第九の詩」を三度唱えた後、十字架祭と万聖節宵祭を再現する。(『クトゥルー
闇の黙示録』大瀧啓裕編 青心社刊
巻末のリン・カーターによる『神々の系譜』を参照)。残念ながら原文を入手していないため、日本語訳による第五宮が星宮をさすのか、室をさすのかはっきりしない。とはいえ、召喚魔術の通例から星宮の方を指していると考えるならば、第五宮は獅子宮であり、太陽がここに入るのはおおむね7月下旬〜8月上旬だが、これと土星が規定の角度をなすには、土星の位置が白羊宮あるいは人馬宮でなければならない。このチャンスを満たしていたと考えられるのは、近年では1968年8月18日、1988年の8月19日、1997年8月18日であろう。次のチャンスは来世紀まで訪れない。二十年弱に一度という稀な配置が必要となるわけだが、それでも多すぎるという意見はあるかもしれない。
関連サイト紹介