悪魔-Demon
【アガシオン】 Agathion
使い魔。真昼にのみ小鳥や獣、魔物の姿をとって出現する。また、瓶や金属製の護符、魔法の指輪などに入り込む事もあるという。
【アガレス】 Agares
又はアガロスとも。ソロモンの七十二霊の一。魔界の東の領域を治める大公。召喚時には鰐などの生物に跨り、腕に大鷲をとまらせた老人の姿であらわれる。召喚者に言語の知識を与える。また、地震を起こすことができる。
【アスタロト】
竜に跨り、鎖蛇を手にした美しい天使の姿をとる。但し、ひどい悪臭が伴う。また、黄色い小さな二本足を持つ煉瓦色の蛇の姿をとる事もあった。本来はパレスティナで崇められた地母神アスタルテであるが、その豊饒儀礼を批判したユダヤ人がその名を歪めてアシュタロトまたはアシュタルテとし、中世、とうとう性別まで男に転換されて魔界の公爵におとしめられてしまった。
魔界の主計長官であり、天使達が堕天した時の一部始終を話してくれる事ができ、諸学問を徹底的に教授する事も可能で、四十の軍団を率いる。過去と未来についても精通している。
【アスモダイ】 Asmodeus,Asmode
「裁判官」。雄牛と人間、雄羊からなる三つの頭を持ち、蛇の尾と鵞鳥の足を備え、炎の息を吐く。竜に跨り、軍旗と槍を手にしている。時に、サマエルあるいはイヴを誘惑した蛇と同一視される事がある。修道女や若い女にとり憑いて淫乱にさせるもの。本来はペルシャの神アエシュマ
Aeshuma であったろうと思われる。
アスモダイを祓うためには足をしっかりと踏みしめ、その名を明確に呼ばなくてはならない。
また、召喚者には「星回りの指輪」を与え、人の目に見えなくなる術を教え、幾何学、算術、天文学、工芸を教授する。財宝の在処についても詳しいので、宝をみつけるよう強制する事もできる。七十二の軍団を統率する。
ラファエルの仇敵にあたる。
【アドラメルク】
「炎の王」。もとは座天使であった。鷲の翼と獅子の体を持ち、顎髭をたくわえた男の姿で表される。騾馬、あるいは孔雀の姿をとる事もある。アッシリアの町セファルヴァイムで崇拝され、その祭壇では子供が焼かれたと云われ、燔祭にされた生贄と同一視される。
魔界の尚書長であり、王の衣裳部屋係であり、上院の議長でもある。
【アバドン】 Abaddon
黒い煙に満ちた底なしの坑に棲む悪魔の王。この名は原義的にはヘブライ語の「彼は殺した」を意味する
abad
に由来するようだが、通常は「破壊者」であるとされる。また、ギリシャ語のアバトン
abaton(坑)から転訛したとも言われる。アバドンのギリシャ語名であるアポルオンは明白に「破壊者」を意味する。魔王としてよりむしろその住処たる坑と同一視されやすい。ちなみに、この坑には鍵があり、最後の審判で第五の御使がラッパを吹く時、地上に墜ちる星にそれが与えられる。
アバドンの配下であり、この坑に棲んでいるのは金の冠と長い髪を戴いた人間のような顔を持つ蝗型の魔物で、蠍のような毒針つきの尾を持っている。軍馬に似た形とも言われ、金属的な胸甲と翼を持っているので、蝗型というのは厳密には間違いかも。いや、細部を集めていくとどんどん蝗からかけはなれていく……ように思えるので。ちなみに、こやつらに名前はないようです。また、一体ではなく、群をなしています。ここらへんが蝗なのか?
【アビス】 Abyss
この名は字義通り「奈落」を意味し、深淵の化身、あるいは深淵そのものを体現する。すなわち大地あるいは冥界の支配者としての太母神の特質である、地下の暗い場所、死者の国、測りがたいもの、謎、智慧、貪欲な獣の住処などの特徴を備える。
【アブラクサス】 Abraxas
本来はバシリデス派(*)により、至高の存在の名として用いられ、グノーシス派では365アイオン(光を発する源)すなわち36万5千年(現世の存続期間として定められた年数を表したもの。また、天国、宇宙にみなぎる精霊、邪悪を祓う太陽、直接口にしてはならない神の名の体現。
* バシリデス派とは、2世紀のバシリデス
Basilides の教えを守る一派で、キリストの秘密の名を識る事を目的とした。言うまでもなく、名とは事物の本質であり、力そのものである。
護符として(通常は)卵形の石の上に描かれた姿は、寝ずの番を意味する鶏の頭部、言葉と精霊を表す人間の胴、用心の象徴である蛇の足、叡知の盾と力を意味する鞭を手にし、宇宙を巡る太陽の四つの精気を象徴する四頭の白馬に牽かせた戦車に乗っている。
かなり早い時期に魔物へ降格された。とはいえ、魔除の目的で石などに刻まれた事を考えると、邪悪な存在にまでは至らないのかもしれない。このような魔除そのものがアブラクサスと呼ばれる事もある。魔物としてのアブラクサスは雄鶏の頭と蛇の下半身をして、鞭と盾を持った姿で描かれる事が多い。
【アポリオン】
アポルオン。「破壊者」。堕天したアポロである蛇体のもの。天上にある太陽に相反する黒い太陽でもある。アバドンの別名。
【アミィ】 Amy
魔界の大総裁。魔界では炎に包まれた姿をしているが、召喚された場合には人間の姿をとると云われる。三十六の軍団を支配する。占星術その他の諸学問を教える事ができ、魔神に守られた財宝を暴く事もできる。また、良い使用人を提供する事もできる。
【アムドゥシアス】 Amduscias
これは英語読みに近い。ラテン語として発音するならアムドゥスキアスの方が近い。ソロモンの七十二霊の一。魔界の公爵の一人。二十九の軍団の支配者。一角獣の姿で現れ、オーケストラなしで甘い音楽を奏でる事ができる。但し、召喚された場合には人間の姿をとる。木々はアムドゥスキアスにお辞儀すると云われるので、植物に対する支配力があるのかもしれない。魔術師に使い魔を与える。
【アモン】 Amon
大侯爵。狼の胴、蛇の尾、梟に似た頭と犬に似た歯を持ち、口から炎を吐く。人間の姿をとる時は胴のみが人間になるという。四十の軍団の支配者。悪魔のうちで最も強靱で、過去と未来に通じ、気が向けば仲違いした友人との仲裁をしてくれる事もある。
【アラストール】 Alastor
懲罰を与える悪霊、もしくは怨霊。特定の家系に何代にもわたって祟る事がある。転じて、中世以降は魔王の処刑人となった。
【アリオク】 Arioch
その名はヘブライ語で「獰猛な獅子」を意味する。復讐を司る悪魔と言われる。この名をアリオッチと読んだ場合、SFファンには大変なじみ深いかもしれない。すなわち、エルリックの後見者であった混沌の神の名がアリオッチであり、この綴りなのだな。
【アンドラス】 Andras
ソロモンの七十二霊の一。魔界の侯爵。天使の体と鴉あるいは梟の頭部。剣を持ち、黒狼に跨って現れる。徹底した破壊者。気に入った相手には敵を殺す方法を教える。不和や喧嘩を煽る事を好む。三十の軍団の支配者。
【インキュバス】 Incubus
これまた英語読み。インクブス。横たわるを意味するラテン語
incubo に由来し、悪夢そのものと同一視される事もある悪霊。眠って夢みている女との交接に耽る事がその存在目的である。相手は必ず女でなければならない。男相手には別の同類があたる。〔参照〕
サキュバス
スクブス(サキュバス)が入手した男の精液を用いて、交接相手の女を妊娠させる事がある。こうして生まれた子供は魔物か、あるいは魔物的な資質を多く持つ人間となる。たとえば、アーサー王の顧問として有名なマーリンも、そのようにして生まれたものだという説がある。
この時に犠牲者である女に注がれる精液は、シニストラリの説に従えば、通常の男女が交接でとりかわすものよりも大量で究めて濃厚、非常に温かくかつアルコール分に富み、漿液を全く含まないという。
【ヴィネ】 Vine
正しくはウィネ、であろう。ラテン語ではVの文字はUの音に置き換えられる。ソロモンの七十二霊の一。黒馬に跨り、蛇を手にした獅子として現れる。召喚者のために防御用の塔を建て、嵐を起こし、他の者が建てた壁を破壊する。過去と未来を問わずあらゆる隠された物事に通じている。他の魔術師の名を明かしてくれる唯一の霊でもある。この場合の名とは、真の名を指す事は言うまでもあるまい。
魔界では大王であり、伯爵でもある。十九の軍団の支配者。
【ヴェパル】 Vepar
ウェパル。セパール Separ とも。魔界の公爵。人魚の姿で現れる。商船を導き、あるいは人間に毒のある傷を与えて苦しめる。この傷は悪魔祓いによってしか癒すことができない。二十九の軍団の支配者。
【ヴォラク】 Volac
魔界の大総裁。天使の翼を持つ子供の姿で、双頭の竜に跨って現れる。三十の軍団の支配者。惑星の位置と蛇の隠れ家について詳しい。
【ウコバク】 Ukobach
炎に包まれて現れると言われる魔物。ベルゼブブの命に従って、魔界の釜に油を入れる仕事を受け持っている。
【エリゴール】 Eligor
又はアビゴル。ソロモンの七十二霊の一。槍と旗と笏を持つ騎士の姿で現れる。隠された財宝をみつける力を持ち、召喚者に愛をもたらす。愛。……それってなに?
【オールドワン】 The Old One
字義通りには「古き者」。どれくらい古いかというと、この世の創造されたのとほとんど同じ頃に生まれた。いるのかそんな奴? いるとも。主立った天使がそうだ。そして、中には後に神に敵対して堕天した者がいるわけだ。魔王ですね。これがオールドワンと呼ばれるのです。
というのも、名前というものはそれ自体魔力を持ったもので、あだやおろそかに扱ってはいけないものです。これが神や悪魔の名前ともなれば、尚更。みだりに用いれば、どんな災厄があるかわかりません。そこで、いろいろな言葉で言い換えられます。そのひとつが、これというわけです。
【オセ】 Ose
エノクの堕天使の一。ソロモンの七十二霊の一。魔界の大総裁。優美な巨豹。人間の姿でも現れ得る。人間を望みのままの姿に変える力を持つが、変身させられた人間はその事に気づかない。人間に妄想や狂気をもたらし、王や皇帝になったと思わせる。隠されたものや秘密を探りだす。神学に通じ、召喚者や崇拝者を諸学問に秀でさせる事ができる。
【オーカス】 Orcus
英語読み。オルクスと書きたいものである。冥府の事。また、鉄の歯を備えた巨竜としても表される。
【オーク】 Orc
16世紀には人喰鬼を指したが、17世紀には海の魔物を指すようになった。あるいは、ラテン語の orca すなわち鯨にこの名前は由来しているのかもしれない。S・フォスター・デイモンはこの説をとり、オークを南洋の鯨とみなしている。但し、ブレイクはこれを更に複雑な象徴として用いた。すなわち抑圧された愛から転じた暴力であり、革命を擬人化したものを表させている。更に、J・R・R・トールキンの『指輪物語』により、ファンタジーに登場する怪物としてより一般的になった。
【オリアス】 Orias
ソロモンの七十二霊の一。魔界の侯爵。巨大な馬を駆る獅子として現れる。その尾は蛇であり、また、手にも二匹の蛇を持つ。召喚者に何の努力も研究も要求する事なく占星術を教える。また、人間を召喚者の求めるどのような姿にも変える。敵からの愛顧を得る力をも備えている。三十の軍団の支配者。
【オロバス】 Orobas
ソロモンの七十二霊の一。魔界の王族。駿馬の姿で出現する。また、コラン・ド・プランシーによれば人間の胴体を持つ馬。過去、現在、未来のいずれにも通じ、召喚者のいかなる質問にも答える。どのような嘘でも見破る事ができ、また、召喚者に地位と勲功をもたらし、敵対者と和解させ、威厳と好意を与える。二十の軍団の支配者。
【ガープ】 Gaap
あるいはゴアプ、また、タプ。エノクの堕天使の一、ソロモンの七十二霊の一。魔界の大総裁にして偉大な王。六十の軍団の支配者。四人の王を伴った人間の姿で正午に現れる。大いなる支配者。堕天した能天使。両当事者間に憎悪又は愛情を誘発させ、未来を予言し、召喚者を瞬時に移動させる備えをし、不可視性を授ける。エノク文献では西の二王の一人。
【カイム】 Caim
エノクの堕天使の一。ソロモンの七十二霊の一。魔界の大総裁。三十の軍団の支配者。召喚されると鶫(つぐみ)の姿で現れる。魔界随一の詭弁家であり、いかなる論戦にも負ける事がない。人間の姿をとる場合は、細いサーベルを持ち、炎に包まれている。あるいは、孔雀の尾を持つ人間の姿である場合もある。鳥の言葉、すなわち秘教的には秘法を知る者の言葉に通じており、波音の意味をも知る。召喚者には動物の言葉を含め、あらゆる言語を教える。
【ガミジン】 Gamygyn
エノクの堕天使の一。ソロモンの七十二霊の一。魔界の侯爵。三十の軍団の支配者。小さな馬、あるいは驢馬の姿で現れる。人間の姿をとる時は、しわがれた声で学問を論ずる。どのような質問にも答え、召喚者に命じられた事を全てやり遂げるまで留まり続けるが、海で死んだ者、煉獄のカルタグラ区に留められている者を出現させる事に長けていると云われ、とりわけ招魂術の知識を得るために召喚される。
【ケルベロス】 Cerberos
ゼウスの支配下では冥府の入口を守る霊犬であったが、キリスト教時代には魔界の侯爵とされた。三つの頭を持つ犬、あるいは鴉の姿で現れ、しわがれ声であるが雄弁で、しかも慇懃である。十九の軍団の支配者。召喚者に美術を教える。〔参照〕 ギリシア神話におけるケルベロス
【ゴモリー】 Gomory
魔界の公爵。公爵冠を頂いた女の姿で、駱駝に跨って現れる。現在・過去・未来に通じ、隠された財宝の在処を探り当てる事ができる。二十六の軍団を支配する。
【サキュバス】 Succubus
例によって英語読み。スクブス。女の姿をした夢魔。眠って夢みている男に添い、精液を吸い取る。名前自体、その行為に由来している。スクブスが吸い取った精液はインクブス(インキュバス)によって女に受精される。あるいは、この二種の魔物は両性具有か、自在に性(と役割)を交替する事のできるものなのかもしれない。
【サタン】 Satan
その名は「敵」を意味すると言われる。すなわち神の敵なわけであるから、事実上神に匹敵する力の持ち主であったと考えられる。キリスト教、また、そこから派生した天使学では、本来熾天使の長の首位であったものが、己れの力に慢心して(神と等しいものと思い上がって)神に背いたとされている。実際、結果的には失敗に終わったとはいえ、一度はサタンと神の軍勢が戦を行うところまでいったのだから、決して根拠のない驕りとは言えなかったであろう。
熾天使としてのサタンは、十二枚の翼を持っていた。また、グノーシス派にとっては、世界の創造主(デミウルゴス)である。
〔参照〕 メタトロン、ルシファー
【サタナエル】 Satanael
「神の敵」。すなわちサタンの別名。
【サリエル】
月に狂った天使。カナアンの女神官に月の運行や月による潮の干満について教え、彼女らの魔法を助けたため、神の不興をかった。天から堕とされる前に、自ら天を立ち退いたといわれる。
【シェムハザ】
エノクの堕天使の二人の長のかたわれ。人間の女に誘惑され、性的な関係をもった事で堕落した。
【シトリー】 Sytry
また、シュトリ、あるいはビトル。エノクの堕天使の一。ソロモンの七十二霊の一。魔界の王族。七十の軍団の支配者。グリフォンの(という事は、つまり鷲の)翼が生えた豹、あるいは様々な野生動物の頭を備えた有翼の美しい人間として現れる。また、エノク文献によれば、豹の顔を持ち、グリフィンのような翼を持つ。愛と情欲に関わる事全般に関連する魔力を持ち、召喚者の前にどのような女性でも裸体で出現させる事ができるという。
『月光の美獣』 嬉野秋彦(スーパーファンタジー文庫)
【シャックス】 Shax
ソロモンの七十二霊の一。スコックス Scox、チャクス Chax とも。魔界の公爵兼大侯爵。三十の軍団の支配者。鳥、特に嗄れた声をした鸛(こうのとり)の姿で召喚者の前に現れる。召喚者のために金を盗み、隠された財宝の在処を知らせるほか、命じられれば人を唖、盲、あるいは聾にする。但し、口先では忠実を誓っていても、シャックスは嘘つきであると言われる。三角陣に封じられている時のみ、超自然的な事柄について真実を明かし、守護者のいない財宝の在処を教えると云われる。馬や金を盗み、1200年後に、命じられた時だけそれを返却するというあ、誰に返すというのだろう。もとより、馬の方は生きているとは思われない。
【セエレ】 Seere
ソロモンの七十二霊の一。有翼の馬に跨る長髪の男として現れる。瞬きするだけで、どのような事でも行えるという。
【ストラス】 Stolas
ソロモンの七十二霊の一。魔界の王族。七十六の軍団の支配者。梟、あるいは鴉の姿で現れる。人間の姿をとる事もできる。召喚者に薬草や石の効能、及び占星術の知識を伝授する。
【ダゴン】 Dagon
ペリシテ人の崇めた半人半魚の姿をした神であるが、キリスト教時代には当然の如く悪魔とみなされた。豊饒の神としての残滓をとどめているのか、魔界の宮廷でダゴンはパンの製造と管理を司っていると云われる。〔参照〕 ペリシテ人の神としてのダゴン
【デカラビア】 Decarabia
ソロモンの七十二霊の一。通常、召喚円の中に五芒星という生命のない形で現れるが、召喚者が願うなら人間の姿をとり得る。植物や石に隠された力について伝授し、鳥の形をした使い魔を与える。
【デプス】 Depth
深み。深淵。〔参考〕 アビス
【ナイトメア】 Nightmare
夢魔。mare とは、古英語で「霊」を指す。従って、本来は夜の霊であったはずだが、後代になってこの言葉が雌馬と誤解され、馬の姿をしているもの、あるいは馬に跨った魔物と考えられるようになった。インキュバス、サキュバスと同一視される事もある。しかしながら、雌馬の姿をした夢魔の原型は、デメテルやリアノンなどの雌馬の女神であるかもしれない。
【ニスロク】
アッシリアの神から派生した悪魔で、神であった頃は不死の樹の守護者の一員であったが、魔界の料理人頭とされ、不死の樹の実で料理の味つけをするようになった。権天使の支配者たる事をもくろんだ事がある。大きな鷲の頭を持つ。
【ネビロス】 Nebiros
魔界の侯爵であり、少将。また、軍事総監。十九の軍団を支配する。鴉の姿で現れる。しわがれた声で、雄弁術や社交術、語学を教える。また、金属、植物、動物の特性を教示する。未来を予言する事もできる。
【パイモン】【ペイモン】 Paymon
エノクの堕天使の一。ソロモンの七十二霊の一。地獄の王。二百の軍団を支配する。輝かしい冠を戴き、一瘤駱駝に跨り、多数の廷臣に囲まれた姿で大きな唸り声とともに現れる。ルシファーに対して極めて忠実。召喚者にあらゆる芸術と科学について教え、また、望むがままに名誉を与える力を持つ。エノク文献では西の王の一人とみなされる。
【バエル】 Bael
バアルの数多い異称から来たのであろう。エノクの堕天使の一。エノク文献では東の王。六十六の軍団の支配者。蟾蜍と人間と猫の三つの頭を持つ姿で現れ、しわがれた声で話す。戦に強く、召喚者や崇拝者は奸計を巡らす才能を授けられ、また、目に見えなくなる術を教授される。ヴァイエルは、バエルを魔界の最初の君主と見なしている。
【バジリスク】 Basilisk
「蛇の王」。字義的には「小さな王」。王冠を戴く蛇。このため、ギリシャ語で王を著す
basil が名前の由来となった。邪眼を持ち、その視線は猛毒を放って相手を殺すという。ヨーロッパには古くから額に宝石を持つ蟾蜍(ひきがえる)の民間伝承があるが、むしろ中近東に伝えられる蛇の王又は女王が原型であるかもしれない。また、一説ではゴルゴンの髪はバジリスクであるという。
月経中の女の髪を地中に埋めると蛇又はバジリスクになると中世には信じられていた。これはウォーカーによれば、男性には見る事が禁じられていた月経の秘儀に関係するという。
プリニウスによれば、その姿は頭に王冠の形をした輝く斑点のある蛇であるが、中世ヨーロッパでは鶏冠と黄色い羽または鱗、広い翼、蛇の尾を持つ四本足(異説では八本足)の鶏であり、尾は先端が鈎のように曲がっているか、もう一つの鶏の頭をしている。
砂漠に棲むというより、棲んでいる場所を砂漠にしてしまう。また、バジリスクが口をつけた川も、何世紀にもわたって毒性が消える事はない。但し、鼬だけはこの怪物に抵抗し、戦って倒す事さえできる。また、バジリスクは鏡で自分の姿を見ると自らの眼差しに打たれて死んでしまうという。
バシリスクの発生に関する説話は幾つかの種類があり、既にあげたように女の髪を地中に埋めるというものの他、糞の上に産み落とされた鶏卵が蛇か蟾蜍によって孵化されたものがバシリスクにあんるというものなどが見られる。
【ハッグ】 Hag
「醜い老婆」。本来は魔女や女妖術師を指す言葉として用いられた。古英語で魔女を意味する haegtesse に由来する言葉。であるから、無論固有名詞ではない。しかしながら、本当にそれだけなのか? そうではない。北欧でオーディンに予言を与えたのは鉄の森の老婆、すなわちハッグであるアングルボダであった。鉄の森は「供犠の場所」であり、古北欧語での haggen は「ばらばらに切断する事」、つまり生贄をばらばらにして聖なる大鍋に入れ、予言を行う事に通じる。haegtesse は更に遡ればギリシャ語の hagia と同根であり、これは「聖なる」を意味する。この言葉はヘブライの Hokhmah 、あるいはエジプトの heq-maa,すなわち智慧と法と呪文を司る女神と関係がある。無論、この女神はヘカテーとほとんど同一のものである。魔女というものが、本来は賢女である事を考慮しなければならない。
【バフォメット】 Baphomet
おそらくはマホメットが転訛したもの。またあるいは、グノーシス派が智慧の女王である女神メティスの洗礼を表す
Baphe Meteos
からきたものとされる。中世、中近東やイスラム世界に関係の深かった組織の中で言及されるようになった。たとえば、聖堂騎士団はバフォメットを崇めたという謂われのない非難を浴びせられて破滅した。現在では、バフォメットは魔女(witch)たちが崇める山羊頭で両性具有の偶像を指す。
サイクスはまた、この言葉の語源をギリシャ語で五芒星形の一種を意味する
baphemetous に求めている。また、ゲティングスは中世ラテン語で天を意味する
baphus の転訛である可能性を示唆している。
【バラム】 Balan
かつては主天使であった。魔界の王。四十の軍団の支配者。人間と雄牛と雄羊の頭を備え、蛇の尾を持つ。爛々と光る眼をして、角の生えた裸体の人間の姿をとり、腕にはハイタカをとまらせている。声はしわがれて荒々しい。過去・現在・未来に通暁している。召喚者には様々な策略や、姿を見えなくする方法を教える。
【ハルパス】 Halpas
あるいはハルファス。ソロモンの七十二霊の一。魔界の大伯爵。二十六の軍団の支配者。鳩の姿で現れる。また、鸛(こうのとり)の姿をとるとも言われる。やかましい声で話し、性質は好戦的。戦争を起こし、剣で罰するために召喚される。
【バルバトス】 Barbatos
エノクの堕天使の一。ソロモンの七十二霊の一。魔界の公爵あるいは伯爵。一団の兵士を率いる狩人の姿で現れる。召喚者のために隠された財宝をみつけ、過去や未来の知識を教える。また、生き物全ての声を理解する。
【ビフロンス】 Bifrons
エノクの堕天使の一。ソロモンの七十二霊の一。魔界の伯爵。二十六の軍団の支配者。姿を変えろと命じられない限り、常に魔物の姿で現れる。召喚者に占星術、魔力ある薬草、石、木についての知識を与える。使者の墓の上で蝋燭を灯すらしい。
【フェニックス】 Phoenix
本来は不死の霊鳥であるが、異教の神々と同じく、キリスト教時代に悪魔に貶められた。ソロモンの七十二霊の一。魔界の大侯爵。二十の軍団の支配者。本来の不死鳥の姿で現れ、子供の声で話す。鳥の姿でいる時はその声は旋律的だが、人間の姿をとるときいきい声になってしまう。優れた詩才の持ち主で、召喚者には必ず韻文で返答する。(おそらくは堕天から)千年後に座天使に戻る事を期待していると云われるので、もとは座天使であったとみなされていたらしい。〔参照〕 伝説上のフェニックス
【ブエル】 Buer
エノクの堕天使の一。魔界の議長。悪魔の長官。五十の軍団を支配する。海星(ひとで)の姿をとる。自ら転がりつつ前進する。召喚者に哲学と論理、薬草の効用に関する知識を与え、病を癒す力を持つ。また、良い召使いを紹介する。
【フォルネウス】 Forneus
ソロモンの七十二霊の一。かつては座天使であり、魔界に堕天して侯爵となった。海の怪物の姿で現れるが、命じられれば人の姿を撮る。召喚者にあらゆる芸術、科学、言語の知識を与える。また、敵の愛を召喚者にもたらす。
【フラロウス】 Flauros
フラウロスの誤記であろう。ソロモンの七十二霊の一。魔界の大将軍。二十の軍団を支配する。豹の姿で現れる。召喚者に、他の悪魔に対抗する力を与える。但し、召喚の三角陣の外でこの霊が口にする事は偽りであるという。未来の知識を持つ。要求されれば、召喚者の敵を全て炎をもって滅ぼす。
【ベリアル】 Belial
その名は「無価値なるもの」を意味するヘブライ語から来ている。エノクの堕天使の一。ソロモンの七十二霊の一。最初に創られた天使であると主張する。八十の軍団を支配する。炎の戦車を駆る天使として現れる。耳に快い声でしゃべり、召喚者に高位高官を授けると言われるが、その一方で、召喚者を含め、あらゆるものを欺く。
【ベリス】 Berith
ベリト。また、ベアル、ボルフライ、ボフィなどとも呼ばれる。エノクの堕天使の一。ソロモンの七十二霊の一。魔界の公爵。金の冠を戴き、赤い馬に跨る。エノク文献では赤い馬に騎る兵士である。二枚舌であるが、厳しく命じられれば過去と未来の知識を明かす事もある。また、錬金術の変成の力を備える。
【ベルゼブブ】 Beelzebub
蠅の王。プセルスによれば、これはヘブライ語の「天の神(ベルゼブル)」が歪められたものだという。また、「館の主」を意味するともいう。カナアン人の神であったものが堕天したもの。とはいえ、シリアなどで蠅を神体とする神殿があったのは事実らしい。また、蠅はしばしば世界の各地で魂の具象化とみなされている事には注目しておきたい。すなわち、蠅の王とは魂の王を意味するかもしれない。
【ベルフェゴール】 Belphegor
かつての権天使。バアル・ペオルなるアッシリアの神が原型。中世の伝説によれば、地上に結婚の幸福があるかどうかを確認するため、魔界から遣わされたもの。
【マルファス】 Malphas
魔界の大総裁。四十の軍団の支配者。鴉の姿で現れるが、人間の姿をとる場合は、おそろしくしわがれた声で話す。難攻不落の城や砦を建て、敵の城壁を打ち壊す。良い職人を見出す事を助け、家庭の守護神を授ける。しかしながら、供犠する者をたぶらかすとも云う。
【マンモン】 Mammon
その名はシリア語で「富」を意味する。金、また金銭愛を司る悪魔。
【マルコキアス】 Marchosias
エノクの堕天使の一。ソロモンの七十二霊の一。炎を吐く有翼の狼、またはグリフォンの翼と蛇の尾を持つ雌狼として現れる。また、人間の姿をとる事もあり、この時は勝れた戦士で、あらゆる質問に誠実に答える。召喚者の闘争を助ける。
【マンドレイク】 Mandrake
またはマンドラゴラ mandoragora
。地中海沿岸が原産で、短い茎に白股は青の花をつけ、黄色がかった多肉質の実をつけ、根が二又になった植物で、その根はおおむね人間の形をしているとみなされた。魔術の力を持つ薬草であり、引き抜く時には恐ろしい悲鳴をあげるので、これを聞いた者はたちまち死んでしまうという。このため、マンドレイクを採る場合は黒い犬を用いる事が推奨された。時に髭面の小男の姿をした魔女の使い魔をさす。
ピュタゴラスはこれを人間と同型同性とし、アルベルトゥス・マグヌスも性別があるとみなし、またプリニウスは白のマンドラゴラが雄、黒のマンドラゴラが雌であると述べている。また、後にマンドラゴラは絞首刑にされた者の精液が零れる事により、絞首台の下に生えると信じられた。〔参照〕 ハングドマン
性質の類似から、キルケーが用いた薬草も、マンドラゴラと同一視される事がある。
ヘブライ語ではドゥダイム dudaim
と呼ばれ、媚薬として用いられた形跡がある。
【ムールムール】 Murmur
エノクの堕天使の一。ソロモンの七十二霊の一。グリフォンに跨る公爵として現れる。また、魔界の伯爵をも兼ねる。コンドルに跨る兵士の姿をとる事もある。耳障りな声。召喚者に哲学を教える他、強力な招魂術の力を持ち、いかなる霊でも呼び出す事ができる。
【メフィスト】 Mephistopheles
メフィストフェレスの略。「光を憎む者」。かつては大天使であったとされる。狡猾な破壊者。優雅な所作、巧みな弁舌を持つが、後悔の念に苛まれた哲学的な人生観(?)を持つと云われる。ファウスト博士の誘惑者として有名。
【メルコム】 Melchom
財布を持つ悪魔。魔界で公務員の給与支払係を務めると云う。そんな役目の者までいるのなら、魔界も人間の世界とさして変わることがないように思えなくもない。
【ルシファー】 Lucifer
「輝きを広げる」という意味のヘブライ語
heilel が置き換えられ、ラテン語の「炎を運ぶ者
lucifer」となった。サタンと同一視され、後にこれは、サタンが堕天する前にルシファーと呼ばれたものと説明された。これらは暁の明星(ルシファー)を亡くなったばかりのバビロニア王になぞらえるイザヤ書の一節を誤解した事から生じたらしい。また、ウォーカーはルシファーの起源をカナアンの明けの明星神シャヘルに求めている。シャヘルはより大いなる光となる事を求めて逆に天界から落ち、太母である深き窖、ヘレルに落ちた。すなわち大地おの窖に入る天の稲妻=蛇であるとみなしている。
とはいえ、かように光と強く結びつくものが闇の存在であるサタンと同一であるとみなす事は、神秘主義者達に興味深い問題を提起したといえる。
◆ ブラヴァツキーの意見:プロメテウスの火の寓意に比較される。すなわち、神の意に反して人類に文明 (光)をもたらした叛逆の天使。聖なるものから遠ざかった光。
◆ レヴィの意見:人間を堕落せしめんとする悪魔の持つ、地獄の炎からさす光をあらわす。
◆ シュタイナーの意見:真の光たるキリストに対して人類を照らし出す光。闇の時代たる現代の敵対者で あり、光の領域へ人間を引き揚げようとする霊的な人間の支持者。とはいえ、その努力があまりにも過剰であるがために人間の本来の霊的使命を忘れさせてしまう。従って、アフリマンによる堕落への誘い同様、抵抗しなければならない力である。
堕天使、あるいは魔王としてのルシファーは、人類に智慧を与えまいとする神に逆らって、人類に光……もしくはそれに象徴される知識を与えた者である。これをもって、果たしてルシファーが神よりも人類を愛していたのか、それとも別の企みをもってそうしたのか、動機は多様に推測できるのだが。
〔参照〕 メタトロン