その他-Et cetra

アナトミー】 anatomy

  解剖を意味する言葉。人体解剖は、科学より宗教の方が力が強かった時代、悪魔の技として嫌われたものでした。

オーガ】 Ogre

  キリスト教の競合者であった異教の救世主であるオーディンに与えられた名、イグル(恐ろしき者)から派生した言葉。「人喰鬼」。

オリバーくん】 Oliver

  発見されたミッシングリンク。すなわち、進化論的に人間と猿の間に存在すると仮想された生物とされ、染色体が人間と猿(チンパンジー)の中間だと言われた。昭和40年代に、テレビなどで話題となった。

ゴースト】 ghost 亡霊

  この言葉は guest と同根です。「客」という事ですね。日本でも自然に行われている事ですが、仏壇などに供え物をして、死んだ祖先や死んだ家族にこれを食べてもらいますね。これと同じく、食事に先立って捧げられる供物を食べに客として来る先祖の霊が、ゴーストだったのです。また、客として訪れる亡霊の歓待を怠った場合には、当然亡霊の怒りが見舞う事になっているのでした。

コープス】 corpse 屍体

  人間を構成するもののうち、いわゆる肉体と呼ばれる部分で、人間をこの世に繋ぎ止めている要素。従って、死んだ後も霊魂あるいは霊魂の一部がこの世に残っている場合は、そのよりどころとなります。当然、それで良い場合と悪い場合があります。後者は、死霊や屍体そのものが悪霊や怪物となって周辺に迷惑を及ぼしますので、屍体の取扱には注意が必要です。埋葬する場合は、正しい手法と正しい祭祀をし、墓もきちんと祀らないといけません。また、いろいろな理由で屍体が死後に動き出さないよう、特定の姿勢をとらせたり、手足を縛ったり、口に何かを詰めたりする事が様々な地域で行われました。
  事故や災害で死んだ人や、殺されて屍体を遺棄された人などが幽霊となって祟る場合も、大抵はきちんと葬式がなされていないためです。祈祷を上げたり、屍体を探しだして正しく埋葬したり、供養したりすれば祟りがおさまる例が多い事でもわかる通りです。
  なお、埋葬される前の屍体はユダヤその他の伝統ではしばしば不浄なものとみなされましたが、ある種の託宣を下すとされている場合もあります。たとえばケルトなどの俗信では、殺害された者の屍体は、殺人者が近寄るとその傷口から血を流すと云われました。また、そのような屍体やその血のついた屍衣に触れる事のみが、殺人者が故人に負わされた傷を癒す事もあったようです。
〔参照〕 ミイラ

ジャイアント】 giant 巨人

  ジャイアント、という言葉の語源はギリシャ語のギガンテスですが、ギリシャ神話に求めるまでもなく、巨人そのものは世界中の神話や伝承に登場します。共通点としては、いずれも原初の世界に存在していた事、しばしば創世に関係する事でしょうか。巨人の体が世界の材料にされる事もあれば、巨人が何かをした事によって世界が(あるいは世界の一部……たとえば山)が作られる事もあります。また、世界各地の巨石建築も、これらの巨人が建設したものだとしばしば言い伝えられています。巧みな建設者であり、石工であり、鍛冶屋である例は枚挙にいとまがありません。
  神や秩序に逆らう者であり、逆に、それらが暴虐であった時に、よるべない民を守る者でもあります。この意味では、巨人とは混沌を代表する者であるとも言えるでしょう。

シャドウ】 shadow 影
シェイド】 shade 影

  影は、しばしば、霊魂や霊魂の一部とみなされます。あるいは、形だけでなく実体が持つ本質をも写しているものだと考えられるのです。逆に、魂を持たぬものは影を持てない事もあります。このため、吸血鬼などの怪物は鏡に姿が写らないのだと説明されます。また、中世には悪魔と契約を結んで魂を喪った者も、影がないと信じられていたようです。また、実体と強く結びついているものですから、影を傷つける事はその影を持つ者に危害を加える事でもありました。
  死霊が影のような存在であるとされる事も古代にはしばしば見られました。エジプトやギリシャ、ローマ、古代メソポタミアなどでは冥界に入った死者は影のような存在になりました。
  現代では写真などのフィルムにのみ捉えられる影もありますね。いわゆる心霊写真などです。電波の世界にもある種の影があります。これらは、実体を持たずに忍び寄る白い……ではなくって、実体を喪って影だけになっているものか、あるいは実体を持つまでに至らない存在なのかもしれません。

ジャンク】 junk

  廃品やがらくたの事を英語でジャンクと呼びます。もはや使いものにならなくなった、役立たずのものです。あるいは、単に飽きてしまって、捨てられた品物もあるかもしれません。けれども、それが実際には使えるものであろうがなかろうが、捨てられた時から、それはジャンクになってしまうのです。いうなれば、人の心から忘れられたもの……それがジャンクなのではないでしょうか。
  また、この言葉は麻薬、特にヘロインを指す俗語としても使われます。麻薬中毒者を意味するジャンキー junkie もここから来ているわけです。ゲームではマシンに属するモンスターとして登場しましたが、あれは本当にマシンだったのでしょうか? それとも……。

スカル】 skull 髑髏
ラフィン・スカル】 laughing skull 笑う髑髏

  つまり頭蓋骨の事。頭部というのはそもそも脳があって思考をするところであり、目・鼻・耳・舌といった重要な感覚器官が集まっているために外界の情報を取り込む場所であり、顔があるために個人の識別が最も容易な部位でもあります。このため、頭部の遺物である髑髏は骨のなかでも特に大きな霊力を持つと考えられます。
  当然、ただの骨や骸骨よりも大きな力を持つようで、髑髏が口をきいたり、故人の霊がそこに残っていたりという話がたくさん残っています。髑髏という骨に限定しない場合、英雄の首が祖国の守りとなっている例も、アイルランドのブランや日本の将門のように、枚挙にいとまがありません。
  このため、古代より様々な地域で、髑髏を単体で、あるいは杯やその他の器物に加工してそこに宿る霊力を護符として用いたり、呪術に使用したりしています。
  コラン・ド・プランシーは、19世紀にフランスのオート=マルヌ県であった事として、赤ん坊が殺されてその頭蓋骨が奪われた事件を『地獄の辞典』の中で紹介しています。それによると、犯人のうヴォートランは、子供の頭蓋骨を手に持つと姿を見えなくする事ができ、また、中に蝋燭や油などを入れて角灯のかわりに用いれば、盗人は見咎められずに家宅に侵入する事を得るという迷信を信じていた、と語った由。この力は、絞首刑にされた者の肉体の一部が持つのと全く同じものです。〔参照〕 ハングドマンスケルトンボーンマカーブル

スケアクロー】 scarecrow 案山子

  田畑の作物を鳥から守るためにたてられた人間の模型で、このため洋の東西を問わず、豊饒の神として尊重されました。日本では田の神ですし、ヨーロッパでは嵐の精を追い払う庭園の守護神プリアポスだったのです。
  しかしながら、時がたつうちに案山子の威力はなくなります。見慣れてしまうと、鳥は案山子を怖がらなくなるからですね。従って、案山子は無力さの象徴でもあります。また、イェーツはその様子を老年と結びあわせました。

スケルトン】 skeleton 骸骨

  人間の肉体を支えるもの、その中核となるもの、死骸となった時に通常は最後まで残るもの。それゆえ、しばしば死の象徴として扱われます。世界の様々な地域で、冥府の神や死神、あるいは死霊が骸骨の姿をしているとされています。しかしながらそれだけの用を果たすのなら、髑髏だけでも良いわけです。これに対して、全身の骨がほとんど揃った状態である骸骨が重要であるのは、何らかの力が働けば、肉体同様に動く事ができると考えられていた事でしょう。つまり、筋肉や腱の代替として霊の憑依や魔法の力といったものがあるなら、人間がする動作を行えるだろうというのですね。尤も、骸骨自体が意思を持つ事はないようです。もし意思を持っているように見えるとすれば、それは骸骨を動かしている力に宿るものでしょう。
  骸骨が死の象徴として最もよく図柄も用いられているのは、現代ではタロットでしょう。大アルカナの十三番目の札にあたります。ここでは正位置で死や物事の終焉を、逆位置で再生や物事の新たな始まりを意味します。
  コラン・ド・プランシーは、ピョートル大帝の侍医がリュート(マンドリンに似た楽器)に合わせて標本に使っていた骸骨を踊らせていた話を伝えています。
〔参照〕 スカルボーンマカーブル

スペクター】 specter 幻霊

  ゴーストのように亡霊の事も指しますが、心に思い浮かぶ怖ろしい何かや妖怪の事も指します。本来は「月の残像」といったような意味があるようです。

ファントム】 phantom 幽霊

  凶兆を告げる幻です。親族や親しい友人の亡霊である事もありますが、必ずそうだというわけではありません。大抵は、出会った人の死を予告する存在です。また、人を脅かす事もあるようで、そのような幽霊から身を隠すには、ヴェールをかけているか、あるいはイラクサとセイヨウノコギリソウを手にするなど、いろいろな方法が民間に伝わっています。

ボーンズ】 bones 骨

  多くの宗教や習俗で、骨、特に生贄の骨を砕くことは厳禁されています。これは、骨が完全な形で残っている事が再生に繋がるからなんですね。例えば、トールの山羊は殺して肉を食べてしまっても、皮の上に砕かずにおいた骨をそっくり置いて、その上でトールがミョルニールを振れば生き返ることができました(一度、農夫の息子チアルフがこっそりと足の骨を一つ割った時は、山羊が生き返ってみるとびっこをひいていました)。また、聖ゲルマニアは食べてしまった子牛の骨を皮の上に置き、祈りを捧げるとその子牛が生き返ったといいます。要するに骨は一種の種であり、そこから再生する事が可能であったのです。
  また、肉体の根幹をなすものとして、骨には生前の意識や霊気が残っているものとみなされました。従って、もしも死者が骨を奪われるような事があれば、大変です。イギリスなどの民話には、墓場から盗んできた骨でスープを作ろうとしていると、夜中にその持ち主が骨を取り返しに来るというものがあったりします。
  更に、人間のものであると動物のものであるとを問わず、骨は薬や占いの道具として世界中で用いられてきました。これも、骨に宿る霊力を援用しようとしたものです。
〔参照〕 コープススカルスケルトンマカーブルミイラ

ポルターガイスト】 poltergeist

  字義通りにはドイツ語で「騒がしい霊」。この名前としては初めてルターが用いたが、現象としては6世紀以来頻々と登場している。いたずら好きであり、しばしば家内の物体を動かしたり飛びまわらせたりする。音を立てる。時に放火魔にもなる。戸外では人に石を投げつける。目に見える姿をとる事はない。現象としては大変古くからみられ、昔は魔女や悪霊の仕業だとされていたようです。近年、この現象は家庭内のストレスからくる精神的に抑圧された子供、特に性的に抑圧されたり思春期で精神的に不安定となったティーンエイジャーが中心となっていると考えられるようになりました。しかしながら、これは必ずしも万人に支持されているわけではなく、精神的抑圧によらないポルターガイストがある、という調査結果も出されています。これによって、ポルターガイストの原因は例えば死霊によるものであったり、生者の無意識的な念動力の発現によるものではないかと考えるグループや研究者もあります。。
  さて、石打の例はヨーロッパ以外にも見られます。たとえば、日本では「池袋の石打」が有名で、江戸時代から明治にかけて、随筆などにしばしば記されています。つまり、池袋の女を下女に雇い入れたり、結婚したりすると、物が動いたり、石が飛んできたりするのだそうな……もしかして超能力者の一族?

マイコニド(マイコニドロ)】 myconid

  お化け茸。菌類を表す myco に、〜似たもの をあらわす oid をあわせてつくりあげた造語と思われます。伝統的な怪物ではなく、どちらかといえば20世紀に映像作品に登場したモンスターというべきでしょうが、茸そのものは、たとえばヨーロッパにおいて、妖精と関係が深く、一方では中米の有名な「聖なる茸」のように、幻覚性物質を含んでいたり、毒物を含んでいたりする事が多く、人間には、畏怖心を憶えさせるものだと言って良いでしょう。

ミイラ】 mummy

  乾燥させることによって(もしくは乾燥した事によって)半永久的に保存可能となった屍体。エジプトのものが最も有名ですが、赤道を中心に、世界的に分布しています。故意にミイラにする理由も、製造法も多岐にわたりますが、まず第一に、遺体をなるべく生前の姿をとどめた形で保存する事があげられます。
  しかしながら、生前の姿をとどめておくだけなら、絵や彫刻でも用は足りるでしょう。あえてミイラにするのは、遺体そのものも、重要であるからですね。ミイラにした遺骸を改めて火葬にするインドなどの風習は別として、ミイラをそのまま保存する理由としては、次のようなものが考えられます。すなわち、生前同様、その人を構成していた魂や魂の一部が宿るべき所として、なるべく生前の姿をとどめた遺体が必要になってくるのでしょう。
  とはいえ、空になった肉体は悪霊にも狙われやすい事は容易に想像できます。また、ミイラに残った魂の一部が、生前のような人格を備えておらず、悪霊化する事も考えられます。更に、もしまだ霊魂の宿っているミイラが他人の手で運び出されたり、毀損されたりすれば、その霊魂は当然そういう事をした者に祟るでしょう。ここから、ミイラやミイラ男をテーマにした様々な恐怖小説や恐怖映画が創り出されました。
  勿論、ミイラを主題にした怪異譚や伝承もあります。たとえば、コラン・ド・プランシーは、『地獄の辞典』の中で、男女のミイラを船で運び出そうとした貴族が船上で激しい嵐にあい、同行していた司祭が祈祷をしたところ、明らかにミイラのものと思われる男女の霊に悩まされ、ミイラを海に投げ捨てたら同時に嵐が止んだという話を伝え、近東の水夫が、ミイラは嵐を招くという俗信を信じていると書き添えています。
〔参照〕 コープスボーンズ

レムリアン】 Lemurian

  字義通りには「レムリアのもの」あるいは「レムリア人」でしょうか。となりますと、沈んだ大陸の三雄に数えられるレムリア大陸が思い浮かびます。レムリア大陸の名は、レムールという生物名に由来しますが、それでは神秘的ではありませんね。ウォーカーはこの大陸の名前を、ラルウァイレムレスと同義である、と述べています。つまりレムリア大陸とは「祖霊の大陸」だというのです。ならば、そこに棲んでいるものは祖霊たちという事になります。彼等が手にしている戦斧は両刃斧(ラブリュス)のように見えない事もありません。父権的な神神に追われた母神の崇拝者はしばしば両刃斧をシンボルに用いていたと言いますから、レムリアンは、衰退した母神崇拝者なのかもしれません。

ワーキャット】 werecat

  ワーウルフとは違い、ワーキャットとは聞き慣れぬ言葉です。猫人間といえば、映画や小説に登場するものはありますが、伝説には見あたらないように見えます。しかしながら、女神であれば、猫や猫属の獣に変身する者はたくさんいます。例えばバステトやイシュタル、ディアナなど。また、猫属に変身するわけではありませんがフレイアは猫の牽く戦車を駆ります。すなわち猫は月を体現する獣であり、それゆえ女神に深い関連があったのです。
  これらの姿が、後代、魔女の使い魔としての猫に残りました。また、魔女がよく変身するものとしても、猫が挙げられる事になりました。

ワードッグ】 weredog

  これまたワーキャット同様、耳慣れぬ言葉です。とはいえ、犬そのものは古来神秘的な意味でも重要な獣でした。狼やジャッカルと同じく、犬は墓場に結びつけられいたため、しばしば死と冥府に関係ある獣とされました。また、普通の犬が人間の戸口を守るように、異界の戸口や門を守るものでもありました。ここから、冥府の入口を守るものとしてケルベロスやアヌビスの姿が生まれてきたのです。
  他方、犬または狼は母親とも深い関係を持っていました。アポロンがそうであったように太女神の獣であるだけでなく、しばしば英雄を育てた獣としても登場しています。このため、後に母権制の社会が廃れ、父権制の社会となった時から犬は蔑まれるようになりました。女を雌犬と呼ぶ事、また、男を雌犬の子と呼ぶ事は、多くの民族の間で侮辱の表現として残っています。また、猫と同じく使い魔とされ、特に魔物や魔女の恋人が黒い犬に変身すると言われたようです。妖犬がいろいろな形で出没するイギリス諸島では、犬に変身する人間や人間が犬に変身する例があります。中近東では魔女の呪いによって犬にされた男の物語が、『千夜一夜物語』などに見る事ができます。
〔参照〕 ヘアリージャック