ヨーロッパ-Europe

アールキング】 Erl King (イギリス諸島〜北欧など)

  妖精(エルフ)の王、あるいはハンの木の王。死の女神であるヘルの、ニワトコの木の女神である時の夫。

アルダー】 Alder

  ヨーロッパでは広く崇められた聖樹の一種である、黒いハンノキ。川べりや湿地に生えるため耐水性があり、樹皮が赤みを帯びているため、火の力に深く結びつけられた。また、死と復活の象徴でもある。精霊としては、大抵男の姿をしている。夜間、森火事を起こしたりする事がある。 

ヴァンパイア】 vampire (ギリシャ、東欧など)

  ヴァンパイアという言葉の語源についてはまだ定説がない。リトアニア語の「飲む」 wempti 、トルコ語の「魔女」 uber 、セルボ=クロアティア語の「吹く」 pirati などが候補としてあげられている。何をもってヴァンパイアとみなすかについても諸説入り乱れており、血を吸う怪物、夢魔、精気を吸い取るもの、食屍鬼、甦った死体あるいは魂、死霊の類がおおむねこれに含められる。より狭い意味では、だいたいにおいて、血あるいは精気を吸うものをさすようで、食屍鬼や、甦りはしたが血を吸わない死体や死霊は除かれる事が多い。
  古代より、血は反魂術や降霊術において重要な要素であった。生命を再び与える事はいわば生命を創造する事を模倣するものであり、大変大きな力を要した。そのため、豊饒の儀式で生贄の血が用いられたように、死者に血を与える事、あるいは死者が血を飲む事がかりそめの生を支えるのに必要な行為となったと思われる。
  伝承によれば、ヴァンパイアになる条件には次のようなものがあげられる。(1) 聖なる日にみもごられた赤子 (2) 新月や聖なる日に生まれた赤子 (3) 赤い胞衣や歯、余分の乳首を持って生まれてきた赤子 (4) 早すぎる乳離れ (5) 乳離れした後に再度授乳された赤子 (6) 七番目の息子の七番目の息子 (7) 洗礼を受けずに死んだ者 (8) 呪いをかけられた者 (9) 妊娠中塩分の摂取が不足だった母親から生まれた赤子 (10) 妊娠中に吸血鬼から睨まれた母親から生まれた赤子 (11) 自殺した者 (12) 妖術師や魔女である者 (13) 狼が殺した羊を食べた者 (14) 罪人や不道徳な生活をしていた者 (15) 罪深い状態のままミサに出た者 (16) 人狼 (17) 吸血鬼に殺された者 (18) ロシアの大平原の風が吹きつけた死体 (19) 猫やその他の動物が跳び越えた死体 (20) 死体に影を落とした場合 (21) 適切な葬式をしなかった死体 (22) 横死した者 (23) 殺された者 (24) 復讐してもらえなかった殺人の被害者 (25) 蝋燭が死体の上を通過した場合 (26) 兄弟が夢遊病である場合 (27) 溺死した者 (28) 死体を埋めるのに用いたロープが盗まれた場合 (29) (ルーマニアなどの一部地域で)仰向けに埋葬された死体。
  女、特に処女の血を好んで吸う、十字架と大蒜、鏡を嫌い、影がない。蝙蝠や霧に変身する。自らが葬られた場所の土から離れる事ができず、棺桶の中で日中は眠る。こういった通俗的なイメージはブラム・ストーカーの『ドラキュラ』に発し、ハリウッド映画で更に広められた。また、神話や伝説、民間伝承に登場する吸血の怪物や、それらに取材した初期の文学作品はおおむねこの怪物を女として描いているが、ブラム・ストーカー以後、吸血鬼(の親玉)を男の怪物として描く事が一般的になった。
 『吸血鬼ドラキュラ』 ブラム・ストーカー(創元推理文庫F)

ウィッカーマン】 wickerman (ガリア)

  ドルイドが生贄を入れて焼くのに用いた、人の形をした柳の檻。何故柳が用いられたのか? それはおそらく、柳が月の女神の生木であったからではないかと考えられる。また、柳の枝は冥界で身体を守る役目も果たした。更に、賢女は柳の樹皮を薬として処方した。これにはサリチル酸(アスピリン)が含まれており、リューマチや熱病の薬として用いられたのである。魔女の使い魔となる魔力のある猫も、柳から生まれると信じられていた。

エレンスゲ】 erensuge (バスク)

  または、イラウンスゲエガンスギア(egansugia)とも。洞窟に棲む竜の一種で、空を飛ぶ事が出来る。好んで乙女を食べる。しばしば、頭を七つ持っている。黄身がない特別な卵から生まれたといわれ、そのためか、不思議にも、額に卵をぶつけたり、卵で一定回数叩いたりすると、この竜は死んでしまう。

オベロン】 Oberon (フランス〜イギリス)

  15世紀のフランスの散文ロマンス『ボルドーのユーオン』に登場する妖精王。これは13世紀頃の武勲詩を原作にしているので、こちらが初出かもしれない。これが次世紀にイギリスへ紹介され、妖精王の名前として広く定着した。子供の頃に邪精に呪いをかけられたため、三歳の子供くらいの背丈をした美しい若者だと云われる。まやかしの技に長け、人間を誘惑するので、話しかけられても絶対に返答してはいけないとされているが、誠実に応対すれば良い結果が得られるかもしれない。
  オベロンとは古高地ドイツ語で妖精王を意味するアルベリッヒ Alberich が原型であるが、異説に、ルネサンス初期に使い魔を指した言葉、オーベロン Auberonまたはオベリコム Oberycom であるとも云う。

ガーゴイル】 gargoyle

  教会などの樋口に彫刻された怪獣。鬼瓦と同じく、悪鬼を祓う役目を負っているが、その原型は貶められた異教の神であるとも云う。すなわち、冥界と関係の深い豊饒の霊であったものが、征服されて新しい神に隷属したものである。

カリカンツァロイ】 (ギリシア)

  深い洞穴に棲んでいる小人で、年がら年中、地と空を支える樹を切ろうとしています。でも、その樹は切るそばから復元してしまうので、絶対に切り倒す事はできないのです。

クエレブレ】 cuelebre (スペイン)

  弾丸も跳ね返す堅い鱗で覆われた竜で、二枚の皮翼と二本の脚を持っていますが、名前そのものは、蛇という意味のスペイン語 culebra から派生したものです。森、洞穴、泉、海などに棲み、金髪のシャナという名前の妖精を守っている場合があります。喉にだけは鱗がないので、ここがクエレブレの弱点です。年を取ったクエレブレは必ず海へ行き、海中に棲むとされているようです。

クラーケン】 kraken (ノルウェイ他)

  海魔。大蛸とも、海蜘蛛とも。更に、魚の山と呼ばれる事もあるらしい。島のように巨大で、多数の肢らしきものを持つ形の魔物と考えられている。もしも、船の下の水位が突然浅くなるなら、それはクラーケンがいる徴である。その付近には常に鱈が豊富にいるとされ、豊漁が期待されるが、水位が下がり続けるようならクラーケンが目覚めて上昇してくる兆候であるから、急いで逃げ出さなくてはならない。
  クラーケンが海面に姿を現すなら、その腕は漁船など容易く沈めてしまう力を持っているので危険である。また、クラーケンが海底に戻っていく時も、大きな渦を作るため、同様に危険であるとされる。

グレムリン】 gremlin (現代イギリス)

  第二次大戦直前、空軍が発展し始めた頃から、英国空軍を発祥として誕生した妖精。名前はインド北西の国境地帯に在った爆撃基地の飛行隊に由来すると言われる。すなわち、grim(憂鬱な)及びその基地にあった唯一の娯楽本であったグリム童話集のグリムに、ビール飲みを意味するフレムリンという言葉をかけあわせたものだと伝えられる。当初は、飛行機に発生する機械的な故障やトラブルがグレムリンのせいだ、と言われたのだが、後に飛行機だけでなく全ての機械にその影響力を拡げるに至った。尤も、コンピュータのソフトについては、”バグ”におされているかもしれない。いずれにせよ、悪戯好きな性格である事は間違いないと思われる。
  なお、飛行機に空のビール瓶を積んでおくと、その悪戯を防ぐ事ができると云われていた。

グレモリー】 glamour,glamarye

  妖精と人の中間的存在。たとえば、妖精から特別な贈物を受けた人。その異界的特質はしばしば性的な魅力を強く異性に及ぼし、他人を意のままにする。

グレンデル】 Grendel (アングロ=サクソン)

  残酷かつ残忍な怪物。国境や曠野、沼沢地ばかりか砦の周辺までうろついて人々を悩ましていたが、英雄ベーオウルフによって斃された。

コカトライス】 cokatrice (中世)

  あるいは、コカトリス。バシリスクの英語名。原義はラテン語の「踏む女」 calcatrix であるといわれる。これがフランス語経由で英語に取り入れられた。また、俗説では雄鶏 cock と結びつけられ、雄鶏が生んだ卵あるいは雄鶏が孵した卵から生まれた怪物で、その凝視を浴びたものは石化するか殺すといわれる。恐怖を与えるものの象徴として紋章などにも用いられた。

ティターニア】 Titania (中世)

  オヴィディウスがディアナを表すために用い、これが後にシェイクスピアの『真夏の夜の夢』にあるように妖精の女王の名前となった。本来はティターン族の女神又は女王という事を意味する。その意味では、テミス、ガイア、レアなどの別名でもあり、後にオリュンポスの神々の神話に吸収されていったものである。妖精の女王としてのティターニアは、いわばそれらの古い太女神の残光のようなものなのかもしれない。
  『真夏の夜の夢』では夫であるオベロンと、さらってきたインドの王子である少年をめぐって諍いを起こした。そもそもティターニアのものであった少年をオベロンが横取りしたのがいけないのだが、このために妻の機嫌を損じたオベロンはいろいろと画策しなければならなくなる。どうみてもオベロンはティターニアの尻に敷かれており、女性上位のこの関係は古代の太女神たるティターニアの面目をある意味でそれなりに保っているのかもしれない。

ドラゴン】 dragon

  鰐のような頭、四つ足、棘の生えた長い尾、二枚の皮翼を備えた巨大な爬虫類。ギリシャ語で「鋭く見つめるもの」を意味する言葉から派生した。大抵は宝を守っており、しばしば生贄として人間、特に処女を求める。また、湖や海、泉、池、井戸に棲み付く。口からは毒のある息を吐くため、周囲の植物は枯れ、生き物は死に絶えてしまう。更に、口から火を噴く事も出来る。
  なぜか、ドラゴンは乳を好んで飲む。また、しばしば尻尾が弱点である。たとえば、力の源である井戸の水に常に尻尾を浸している事で不死身になっているなど。
  ドラゴンの心臓を食べると獣や鳥の言葉がわかるようになったり、ドラゴンの血を浴びると不死身になる事がある。

バーベガジ】 barbegazi (フランス〜スイス)

  アルプスに住む山小人。おそらく、その名前は「霜の髭」を意味すると思われる。ところが、その名にふさわしく、バーベガジは最初の本格的な雪が降る頃に姿を現し、暖かい季節には夏眠してしまう。実際、摂氏零度以上の気温の時にバーベガジを見るのは大変稀であるらしい。彼等の豊かな髪や髭には厚く氷が貼りついている。男女いずれも、白い毛皮の服を着ている。そのため、一見してどちらの性に属するのか見分ける事は難しい。大きな足をしていて、スキーかかんじきを着けている。そして、目にもとまらぬ速さで雪の上を駆け抜ける。穴掘りも得意で、自分が隠れるだけの穴を雪に掘るのには、ほんの数秒もあれば事足りるほどだ。普段はマーモットのような囀り声で話すが、アルペンホルンのような不気味な号声を用いて、遠くの仲間と意思を伝え合う事もできる。
  バーベガジは地底に洞穴を作って住んでおり、その入口は峰の近くに、氷柱を用いて隠されている。人間との関わり合いについては幾つかの説がある。ある山人は、セント・バーナード犬はしばしばバーベガジの助けを得ていると信じているし、またある者は、雪崩の発生をバーベガジが知らせてくれるという。但し、バーベガジ自身は雪崩に乗って山の斜面を下るのがお好みのようなのだが。けれども、山人が山の高みに到底留まれないような低い気温の時や、雪嵐の時にしか姿を見せない事を思えば、バーベガジの生態のほとんどが知られていないのも無理からぬ事であろう。

フェニックス】 phoenix (古典)

  ギリシア語では phoinix であり、「華麗な色」「椰子の樹」の二つの意味がある。
  秘教的には鳥、木、霊の三つの要素を併せ持つ。金と赤の羽毛を持つ鷲に似た鳥。元来はエジプトのベンヌ鳥が原型とされる。このため、「エジプトの鳥」と呼ばれる事もある。
  通常の食べ物は口にせず、乳香や香草のみを食べ、珍しい香木から巣を作り、五百年(三百五十年、千年、千四百六十年など寿命については諸説ある)ごとに自ら炎の中に飛び込み、灰から再び蘇生する。あるいは、香木の枝を集めてフェニキアの海岸へ赴き、大変美しい声で太陽に向かって歌うと、太陽の炎光によって焼き尽くされるのであるともいう。そして、その遺骸からは虫のような雛が這い出てくるのであった。また、フェニキアという名前はフェニックスに由来するという。
  なお、フェニックスについては面白い特徴が他にもあり、世界に必ず一羽しか存在する事ができず、それは雄であるという。但し、異説に両性具有であるともいう。
  悪魔とみなされる事もあり、ソロモンの七十二霊に数えられている。この場合は耳に快い声をした美しい鳥の姿で召喚者のもとに現れ、詩と文芸を専門とするが、与えられた記号は鳥と全く関係のないものである。〔参照〕 悪魔としてのフェニックス

ブラックナイト】 black knight

  黒騎士。黒く装った騎士です。鎧は金属製で、普通は色を塗られなかったようですから、その上に羽織る陣羽織や兜の飾り、盾などが黒い織物で作られたり、黒く塗られたりしていたものと考えられます。乗馬も黒を選べば完璧です(^^;
  このような黒騎士は、罪を償っている最中であるか、あるいは正体を隠していたいと思っている者でありがちです。つまり、騎士は盾などの紋章によって個人個人が判別できるわけですが、それを真黒に塗っているという事は、自分が誰であるかを意図的に表示していない事になるんですね。また、黒とは喪に服す時の色や、悲しみを表す色であり、同時に、古来、解く事のできない謎を象徴する色としても用いられてきました。
  このように正体を隠して黒騎士となった有名な騎士としては、湖のランスロット卿、『アイヴァンホー』における獅子心王リチャードなどがあげられます。
 『アイヴァンホー』スコット作(岩波文庫)

マカーブル】 macabre (中世)

  「死の」を意味します。この言葉が使われる成語で、最も関係がありそうなのは、やはりダンス・マカブル dance macabre すなわち「死の舞踏」あるいは「髑髏の舞」でしょう。14世紀、ヨーロッパで黒死病が流行すると、その恐怖をはらうために集団的に狂舞する事が始まり、やがて城などで行われる疫病祓いの踊りとなり、パートナーが交互に地上へ倒れ込む動作を含んだ娯楽的な舞踊へと変わり、最終的には髑髏で象徴される「死を想起させるもの memento mori」や、生者と骸骨(死)が手をとりあって踊る図像にかわっていきました。
  カーニヴァルにもその風習は残り、死を象徴する仮面を着けた者は、誰とでも踊る特権を自動的に付与されました。つまり、この仮面を着けた者に手を取られたら、絶対に踊りを断る事はできないのです。死とは何人も避けることができないものである事を意味しているわけですね。
  芸術のテーマとしては更に長く残り、絵画や音楽の題となっています。
  〔参照〕 ボーンスカルスケルトン

ミルメコレオ】 myrmecoleo (中世)

  蟻獅子。聖書がヘブライ語からギリシア語に翻訳される時に生じた誤解から産み落とされた怪物で、中世の動物譚が形をおおむね決定したらしいです。どんなものかというと、顔あるいは体の前半分が獅子で、後ろ半分は蟻なのです。これならまだキマイラのがましというもの。哺乳類と昆虫のあいのこなのですからね。しかも更にナンセンスな事に、これは獅子を父とし蟻を母とするそうです。その上、獅子に似て穀類を食わず、蟻に似て肉類を食わない(うそだ〜)なので、栄養がとれないため、死んでしまうとか。それくらいなら、初めから生み出すなよ(^^;

ユニコーン】 unicorn (古典)

  胴体は小柄な白馬あるいは白い驢馬に似て、額に黒く尖った、螺旋状に畝のある長い角がある。また、この角は先端が赤く付け根は白いとも云われます。目は青。また、山羊に似た鬚があります。頭部は鹿に、足は羚羊に似ていますが、プリニウスの頃には象のような足とも云われました。中世にはだいたい優美な様子に描かれ、乙女の膝に頭を乗せるといい、汚れには耐えられないなど、純潔なイメージが強くなりますが、反面、大変に獰猛で、その角の一刺しは象をも屠ると伝えられています。
  インドに棲むとも、エチオピアの月の山に棲むともいい、いずれにせよライオンの仇敵です。その力は疲れる事を知らず、無敵であり、また、その角は蛇毒や夜の毒気を解毒する事ができます。
  月の象徴とみなされます。また、死を意味するものとみなされる事もあります。

ロイチェクタ】 (スイス・レッチェンタール渓谷)

  冬の悪魔。山羊の皮をまとい(あるいは全身に山羊のような毛をはやし)、騒々しい音をたてて走り回る。冬が終わるとともに、悲鳴をあげながら逃げ去ってしまうらしい。同じ名前で呼ばれる仮面の男たちが、山羊の皮を全身にまとい、鈴を鳴らしながら、祭に日に村を走り回り、最後に村から走り出て行きます。勿論、これは、冬の勢力に春が勝利を収めた事を意味するわけです。

ワーウルフ】 werwolf (東欧〜中欧〜北欧など)

  人狼。人間に変身できる狼、あるいは狼に変身できる人間。大概は後者の事。有名なものとしては、ヴォルズング族のシグムントなど。ある種の薬草を(誤って)口にしたり、魔法がかかった狼皮または人間の皮の帯を(うっかり)用いて変身するようになる。また、両親あるいは母親の性的な罪や子育てに関わる事の拒否(聖職者の私生児であるとか、母親の授乳拒否であるとか)が子供を人狼にするという伝承もある。後年のハリウッド映画によって広められたように、月の相が影響するという説はなくはないが、あまり見られない。
  とはいえ、狼は月の女神とは深い関わりを持っている。たとえばアルテミスは雌狼の姿をとる事があり、ガリアのディアナ信者の多くは狼を崇拝していた。イタリアでは月の女神の日である金曜日が満月であると、この時に戸外で寝れば人狼に襲われるか、人狼になってしまうという俗信が見られた。また、ローマにはルパという狼女神、また先住のサビニ族の崇めた狼女神であるフェロニアがいた。フェロニアの名の意味は「狼の母」であり、その権能は冥府の女神である。また、狼は祖霊とも深く結びついていた。たとえばアイルランドでは狼を祖霊として崇め、その牙や毛皮を護符として身につけていた。また、南スラヴでは新生児が狼の皮でくるまれるか、その中を通された。そのようにする事で祖霊である狼の力を身につけさせたのである。

ワイバーン】 wyvern

  二本足の蛇。通常、二枚の翼を持つ。語源的には中世英語の wivere であり、蝮(まむし)を表す viper と同じ言葉である。

ワイルド・ハント】 wild hunt (北欧〜ドイツ・オランダ・北仏〜イギリス・アイルランドなど)

  タイプ的には二つに分かれる。一つは、安息日を守らなかったり畑を踏み荒らしたために永遠に狩りを続けなければいけなくなった猟師の話。もう一つは地獄に堕ちた霊をひきつれて幻の犬や馬を駆り、空を翔ける猟師の話。大抵、雷鳴などを伴い、夜空を行く事になっている。おおもとは、秋の夜、荒天の時に死者の霊が一時地上に戻るというバルト系の信仰に基づくと思われる。
  また、古い神々や英雄がこれらを率いている事もある。例えばユトランド半島ではオーディン、ノルウェーではシグルト、デンマークではヴァルデマール王、オーストリア・バヴァリアではぺルヒタ女神、ドイツではカール大帝やフリードリッヒ大王などなど。
  狩人たちはおおむね黒い馬や牡鹿などに跨り、引きつれる犬も真っ黒であるという。