インド-India
【アイラーヴァタ】 Airavata
インドラの騎乗する四本の牙を持つ白象。象の王。世界を支える八象の一頭。乳海撹拌の時に生まれ、その名は「大海から生まれたもの」を意味する。別名にアブラマータンガ「雲の象」、アルカソーダラ「太陽の兄弟」、ナーガマッラ「象の力士」、サダーダーナ「発情しているもの」など。象は雲を生み出す力があるものとされ、インドラはアイラーヴァタを駆って空を翔け、雨を降らせると伝えられる。なお、象という生き物そのものが、原初は翼を持ち、空を飛ぶことができたという。しかしながら、ある時聖仙が説法をしていた木の枝に象がとまり、その枝が折れてしまったため、怒った聖仙が全ての象から翼を奪ってしまったのだとか。
【アグニ】 Agni
火神。火そのもの。その名自体、単に「火」を意味する。天地両界に属する二重出生者。供物を天に運ぶ者。神々と人間の媒介者。リグ・ヴェーダにおける三柱の主要神の一。不死を授け、死後に罪障を浄化してくれる者。ヴェーダ神話では炎の髪、黄金の顎と歯に七枚の舌と双面を持つ赤い体の男として表される。後のヒンドゥ教の神像では、肥え太り、赤い体をして、雄羊に乗った男として表された。『マハーバーラタ』では、あまりにも供物を呑み込みすぎて精力を使い果たした彼が登場するが、その時は神々の敵が棲むカーンダヴァの森を呑み込む事で力を回復したと言われる。
本来、炉の火が神聖化されたものであるが、祭火として燃える火、太陽として輝く火、電光として閃く火などもアグニであるとされた他、果ては怒りの火や食べ物を消化する火など、抽象的な火に至るまで、ともかく火と名づけられるものは全てアグニに結びつけられた。
火の中に投げ込まれた供物は何でも食べる。けれども、好物はグリタ(バターの一種)であり、ソーマも飲む。
【アシュラ】 Asura
アスラ。本来は霊的・神的な力そのものを指したらしい。この名の語源については様々な説があり、「呼吸・生気」を意味する
asu が起源であるとも、「輝く」を意味する svar
から出たともいう。後代ではア・スラ「天ならざる者」(非天)と解釈され、主に神々に敵対する者として描かれる。但し、乳海撹拌の折には、神々と協力して活躍した。なお、これは単体の神に対して使われる事もあるが、通常は種族の名であって、単体の神ではありません。インドラの永遠の敵。
〔参照〕 ヴィシュヌ、ヴリトラ
【アナンタ】 Ananta
世界蛇。その名は「終わりない」を意味する。シェーシャとも呼ばれる。身震いをすれば大地が揺れる。千の頭を持ち、これをもって自らの躯の上で休むヴィシュヌに天蓋としてさしかけた。その形象から、おそらく本来はキングコブラではないかと推測される。クリシュナの異母兄バララーマはアナンタの化身であるそうです。普段は水界の深淵が住処のようですが、巨体をおくべき場所といえばそういう処が一番適しているんでしょうなあ。各劫(カルパ)の終わりには被造物を破壊する猛毒の火を吐くと言われています。ちょ〜な人が核兵器と結びつけそうだな(^^;。
【アプサラス】 Apsaras
「水のなかで動くもの」「雲の海のあいだを行くもの」であり、本来は水の精。インドラの天界に住む天女でもある。プラジャーパティの分解された体から生まれたとも、乳海撹拌の時に生まれたとも、あるいは鳥たちの母であるバーシーから生まれたとも云う。踊りがうまく、と〜ってもセックスアピールが強いらしい。異族であるはずのガンダルヴァとも通婚する。
どんな姿にも変身できるのだが、最も好むのは水鳥の姿らしい。英雄達や、苦行中の聖者を誘惑する。また、輝く車に乗せて戦死者をインドラの天国に運ぶ。
後にはガンダルヴァともども、森の樹木、特に聖木であるニヤグローダ(バンヤン)、アシュヴァッタ(菩提樹)、ウドゥムバラ(憂曇華)に棲むと云われるようになった。
〔参照〕 ウルヴァシー
【インドラ】 Indra
デーヴァの代表たるものであり、神々の王者。天空の主。雨と雷霆の支配者。旱魃を招いた竜ヴリトラまたはアヒを殺した者。アシュラと永劫にわたって戦い続ける者。二頭の赤い馬に牽かれる黄金の戦車を駆る戦士であり、時に象アイラーヴァタに乗った姿でも表される。その臨場に際しては空に虹が現れるという。神々の英雄であり、軍神であり、ヴァジュラを放って悪魔を撃ち懲らし、アーリア人を保護する者。こう並べると大変偉い神のように見えますね。
しかしながら、この神はたいそうな乱暴者でもあるんですな。しかも無節操。たとえば、ウシャスの車を壊す。スーリヤの車輪を奪う。暴飲暴食する。ついには聖仙ゴータマの妻アハリヤーを誘惑しようとしたため、その罰として体に千の女陰を開かれるというもの凄く恥ずかしい目にあったりしている。この女陰は後に眼にかわりますが、それでもだいぶグロい姿ですな。また、そんな醜悪な姿のために「女陰を持つ者(サヨーニ
Sayoni)」とも呼ばれます。さ〜ら〜に、この罪がもとでランカー島では魔王ラーヴァナに虜囚の辱めをうけたとも言われるので、随分と高い代償だったものです。
〔参照〕 インドラジット
英雄神たる由縁はいろいろ伝えられていますが、最も名高い功績はヴリトラを斃した事でしょう。それがどれくらい勇敢な行いであったかは、ヴリトラの項目を参照して下さい。
そのわりに、悪魔ナラカースラに傘と、母神の耳飾りを奪われた時は自分で取り返す事ができなかったらしく、クリシュナに奪還を依頼したりしています。しかも、せっかくクリシュナがそれを果たしてくれたというのに、帰途パーリジャータの小枝を折り取ったからといって、他の神々を巻きこむ大喧嘩をしているのです。
とはいえ、同情すべき点もないわけではありません。インドラの母アデティは、彼を千年の間みごもっていたのですが、ついに生まれ落とすと神々の嫉妬から守るためにインドラを棄ててしまいました。しかも、父親であるプラジャーパティ・カシュヤパまで我が子に敵意を抱いていたといいます。このため、インドラは全ての神々に顔をそむけられたまま、ヴィシュヌの友情を得るまで、苦労して世の中を放浪しなければならなかったのです。
いずれにせよ、広く信仰された神であり、様々な別名を持ちます。マヘーンドラ(偉大なるインドラ)、マガヴァーン(惜しみなく与える者)、ヴリトラハン(ヴリトラを殺したもの)、ヴァジュラパーニ(ヴァジュラを手にする者)、メーガヴァーハナ(雲に乗る者)、ディヴァスパティ(天空の主)、プランダラ(都市を破壊する者)などです。
スヴァルガ天に住み、アマーラヴァティー市を都とし、ヴァイジャヤンタ宮を構えます。アイラーヴァタの他にウッチャイヒシュラヴァという名の馬も持ち、ヴァジュラの他には剣と弓をもって戦います。
【インドラジット】 Indrajit
ランカーの魔王ラーヴァナの子、間接的にシヴァの子とされ、本名はメーガナーダすなわち「雲の咆哮」といいます。雲が吼えるんですからそういう天候は一つしかないでしょう。雷鳴の精なのです。ラーヴァナが天界でインドラと戦った時、勇戦してとうとうインドラを捕らえました。このため、「インドラに勝利した者」インドラジットと呼ばれるようになったのです。雷の支配者と雷鳴の精が闘ったわけですから、その時の天気はさしづめ大雷雨だったに違いありません
(^^;。
インドラを解放するのと引き替えに、ブラフマーから不死を獲得しました。なお、彼の持つ怪力はシヴァに授けられたものだと云われています。
【ヴァジュラ】 Vajra
金剛杵。「宝石」「稲妻」「男根」。インドラの武器の名で、鍛冶神トヴァシュトリによって作られました。定期的に研ぐ必要があったといいます。アブローッタ(空から生まれたもの)の他多くの別名で呼ばれます。
なお、人の名として用いられた事もあり、アニルッダとスパドラーの子、あるいはダイティヤの王女ウーシャーの子がこの名を持ち、クリシュナに命じられてインドラプラスタの王となりました。
【ヴァスキ】 Vasuki
ヴァースキ。ナーガの王。パーターラと呼ばれる地下界を治めている。またその都の名はボーガヴァティーといいます。プラジャーパティ・カシュヤパとカドルーとの間に生まれたもの。という事は、インドラの異母弟にあたるようです。アムリタを求めて乳海を撹拌する必要が生じた時、撹拌棒とするマンダラ山を回転させるためにヴァースキを綱として用い、山に巻きつけて両端を神々とアスラ達がそれぞれ持ったのです。痛そう……。また、七ナーガの一体として世界を支えるものでもあります。
【ヴァルナ】 Varuna
古いアスラの代表。アヴェスターにおけるアフラ・マズダーに対応するもの。女神アディティの子。大変に変幻自在であり、空の神、風の神、川や海の神であり、また、季節の神、法の神、死の神でもあった。ヴァルナの護持する天則(リタ)と掟(ヴラタ)によって大自然と祭祀、人間の秩序が保たれているわけです。通常は男の姿であるにしても、両性具有、あるいは女の姿をとる事もあった。天空から見下ろして厳しく人間を監視し、掟に背く者は容赦なく罰する一方、悔悟する者は許し、多くの医薬をもたらして人間を守る存在でもありました。
水と密接な関係を持ち、特にインドラが勢力を持った後代ではこの性格が強められて水と海の神として崇められるようになります。すなわち、海の真中に住み、世界中の河と大海を従え、月とともに満ち欠けする存在となったのです。また、プラーナ神話では司法神の性格を失い、世界の八守護神の
一柱として西方の守護神となりました。
アディティプトラ(アディティの息子)、アーディティヤ(アディティの息子)、アパームティ(水の王)、ローカパーラ(世界の守護者)など多くの別名を持ちます。
【ヴィシュヌ】 Visnu
シヴァと並び、ヒンドゥ教の最高神。宇宙を維持し、修復する者。宇宙にあまねく存在する者。ヒンドゥ教で最も人気のある神。ヴェーダ神話では太陽の光り輝く作用を神格化したものでした。天、空、地を三歩で闊歩する者ですが、ヴェーダ神話ではこれといった特徴はなく、ブラーフマナ文献から大きな勢力を持つようになります。様々な化身(アーヴァターラ
avatara)をもってしばしば人の世の邪悪を祓ってきたと言われます。たとえばもう一柱の人気ある神、クリシュナも重要な化身の一つです。古代の王衣をまとった青黒い色の美青年として描かれ、四本の手に法螺貝、円盤、棍棒、蓮華を持ちます。また、その乗り物はガルーダです。また、ナーガの王アナンタを寝椅子とし、その頭がつくる天蓋の下で寝みます。ヴィシュヌ自身がアナンタと呼ばれる事もあるので、あるいは同一視されていたのかもしれません。
ヴァイクンタ天を住居とし、ガルーダを乗物としています。四本の腕には法螺貝(パーンチャジャニャ)、円盤(スダルシャナまたはヴァジュラナーバ)、棍棒(カウモーダキー)、蓮華を持ち、シャールンガという弓とナンダカという剣で武装しています。
アチユタ(不死者)、チャトゥルブジャ(四つの武器を持つ者)、ムクンダ(解放者)、パドマナーバ(蓮華の臍)、ヤジュネーシャ(供犠祭の主)などの別名を持ちます。
〔参照〕カルキ、クリシュナ、シヴァ、ラーマ、ナーガ
【ウシャス】 Usas
ヴェーダ神話に登場する暁の女神。その名は「輝く」を表す
us から派生し、曙光を神格化したものです。従って、太陽に先立って現れ、人間や動物を目覚めさせ、祭祀を始めさせる女神という事になります。
若く美しい娘で、着飾った踊り子であり、赤い馬あるいは牛の牽く車に乗っています。夜の女神であるラートリーの姉妹であり、太陽神スーリヤの恋人です。
【ヴリトラ】 Vrtra
その名は「障碍」を意味する悪蛇です。何の障害かというと、山の中に水を堰き止めて旱魃や悪天候を起こす、つまり水を妨げるものなのですね。この山は、雲に擬せられます。また、冬の体現であるという意見もあります。
蛇神なのですが、黄色い眼と漆黒の体を持つ鬼神の姿もとります。インドラを斃すために、プラジャーパティ・カシュヤパあるいはトヴァシュトリによってこの世に生み出されました。といっても、女の胎を借りず、祭火の中から現れたのです。産んだというより、異界から召喚されたという感じもしますね。また、バラモンに属する者でした。悪蛇なのにバラモン(-_-;)。悩まされますが、悪蛇というのが、インドラやその仲間の神々から見た場合である事を考えれば、納得できなくもないでしょう。父(?)は神であり、祭火から生まれたのですからね。
インドラに匹敵する者として誕生したのですから、大変な力の持ち主でした。プラーナ神話ではインドラはこれを懼れ、一旦は自らの権力の半分を与えるという条件で講和します。そして、美女ラムバーを差し向けてヴリトラを誘惑させるのでした。ラムバーは首尾良くヴリトラを籠絡し、な〜んでも言う事を聞いてくれるんなら、結婚してもいいわっ、と切り札を出します。ヴリトラはあえなくこれにひっかかってしまい、バラモンには禁じられているスラー酒を口にするはめになって、酔いつぶれてしまい、そこをインドラのヴァジュラで殺されてしまうのでした。これは……卑怯すぎる……。尤も、これによってインドラはバラモンを殺した罪に問われる事になりました。
なお、『マハーバーラタ』ではこんな奸計ではなく、正々堂々と二者が激しい戦いを繰り広げ、天地を震撼させるのですが、ついにヴリトラが口を大きくあけた隙を狙ってインドラがヴァジュラを撃ち込み、斃したという事になっています。こうでなくてはいけませんね。
アスラ、アスラシュレーシュタ(アスラのうちでも最上の者)、ダイティヤ(ディティの子、すなわち悪魔)、ダイティヤパティ(ダイティヤの王)、ダーナヴァ(悪魔)、スラーリ(神々の敵)、ヴィシュヴァートマン(万物の中心)といった別名があります。
【ウルヴァシー】 Urvasi
大変に美しいアプサラス。ただのアプサラスも非常に美しいのですから、その中でも美しいとなれば、言語を絶する美人だったに違いありません。プルーラヴァス王の妃となり、王を愛欲に溺れさせました。
【カーマ】 Kama
カーマデーヴァ。愛欲の神。その名は「欲望」「意欲」を表す。何かをなそうとする意志の力であり、幸福を追求し、欲望を充足させるものでもあります。後代、愛欲の神としての性格が強まりました。美しい青年で、砂糖黍の弓に蜜蜂を連ねた弦を張り、花を飾った(または、花でできた)5本の矢を持ち、従者としてアプサラスを引きつれています。
修行中のシヴァを欲情させようとしたため、シヴァの第三の眼によって焼き殺されてしまうのですが、妻であるラティの願いによって、肉体を持たぬ真の愛情をあらわす存在として生まれ変わる事を得ました。しかしながら、これは相当に気の毒な話です。というのは、その時に暴れていた魔物ターラカを退治できるためにはシヴァの子だけであるとされており、そのためには最初の妻サティーを失い、まだ子供のなかったシヴァになんとしても結婚してもらわなければならず、カーマはサティーの生まれ変わりであり、修行の世話をしていたパールヴァティーにシヴァの注意を向けさせるためにその権能を働かせたからです。修行は大切なものでしょうが、どうも、インドの神や聖仙は、修行の邪魔をされると、理由もたださずに問答無用で罰を与えたりするようです。もしかして、カルシウム足りてないのかも。 〔参照〕 カルティケーヤ
アナンガ(肢体のない者)、アビルーパ(美しい姿の者)、ディーパカ(興奮させる者)、カラーケーリ(愉快なもの)、マーラ(殺戮者)、ムヒラ(惑わす者)、シャマーンタカ(平和を乱す者)、サンサーラグル(輪廻の世界の師)、クスマーユダ(花で武装した者)、ティタ(火)、スマラ(記憶)など、多くの別名を持っています。
【カーリー】 Kali
シヴァの妃。「光(ウマー)」「黄色、または輝く(ガウリー)」「山の娘(パールヴァティー)」「世界の母(ジャガンマーター」「近づきがたい者(ドゥルガー)」「凶暴なる者(チャンディー)」「恐ろしき者(バイラヴィー)」など多数の異名を持ち、それぞれの名の時には表す側面が異なります。カーリーの名自体は「黒き者」「時」を意味します。
原初、シヴァとカーリーはブラフマンを二様に人格化したものであったという。タントラが出現するとカーリー崇拝が盛んになりました。カーリーの名のもとで、彼女は魅惑的な衣裳をまとい、高価な装飾品にあわせて切断された腕でできた帯と髑髏を繋いだ首飾りを身につける。また、その舌は口から垂れ下がっています。左の二手で血塗れの剣と生首をつかみ、右手は信徒に祝福を与えます。すなわち、喜びと苦しみをともに手にしているのがこの女神といえるでしょう。
但し、カーリーはヴェーダ神話には登場していません。また、出生自体、神の両親を持つわけではないのです。本来のシヴァ神妃であるドゥルガーが魔神シェムバとニシュムバの兄弟を討伐する時、怒りのために真黒になったドゥルガーの顔から、飛びだしてきたのでした。この時のドゥルガー同様怖ろしい顔をして、剣と縄を武器として持ち、肩には頭蓋骨の輪をかけ、虎の皮を身につけた獰猛な姿でした。魔神の軍に襲いかかってシェムバたちの手下であるチャンダとムンダの首を取ったのを手始めに、大殺戮を繰り広げたのです。従って、当初はドゥルガーの分身であり、ドゥルガーに仕えるものであったのですが、後により大きな力を持った女神としてドゥルガーを凌いでしまったのでした。〔参照〕 ドゥルガー
【ガネーシャ】 Ganesa
シヴァの息子。「群衆の主」。障害を取り除き、智慧を授ける権能を持ち、重要な事業の開始にあたり、また、書物の巻頭で祈念される。四手と独牙を持つ象頭で布袋腹の黄色い色をした男として描かれ、鼠に跨るか、あるいは鼠を伴っている。また、蛇の帯を締めている。四手にはそれぞれ貝殻、円盤、棍棒、睡蓮を持つ。本来は完全な人の姿であったが、母パールヴァティの沐浴を覗き見する者がいないよう見張るように命じられた際、父であるシヴァに対してさえそれを妨げようとしたため、首を刎ねられてしまったという。夫だから覗いてもいいのか、そこらへんは何ともいえないけど、首を刎ねてしまう方もちょっといただけませんねぇ(^^;。当然、母神が逆上してしまったので、慌てたシヴァが通りすがりの象の首をかわりに与えたのです。をいをい、象はどうなるんだ。傍迷惑な事です。牙が一本しかない理由もちゃんと説明されていまして、今度は父シヴァの眠りを妨げないように見張っている事を命じられたところ、斧を持つラーマが入って来ようとしたのでした。勿論、ガネーシャはラーマの前に立ちふさがるのですが、その斧が、シヴァ自身によって授けられたものである事を見てとるや、自分の牙にその一撃を受けたというのでした。孝行なのか、愚直なのか……よくわかりません。おおもとは先住民によって災厄と疫病の神として祀られていたものだといいます。
【ガルーダ】 Garuda
ヴィシュヌを運ぶ聖鳥。身体は白面金身の人間で、頭と嘴、赤い翼と爪は鷲。ブラフマーあるいはその孫にあたるカシュヤパ仙とヴィナターの間に生まれました。ガルーダが生まれた時、兄アルナの呪いによって(またはヴィナター自身がナーガとの賭けに負けたため)、母ヴィナターはナーガとその母であるカドルーの奴隷となっており、天界のアムリタをとってくる事なしには解放されぬ事になっていました。そこで、母を救うために天界に赴いたガルーダは、神々と闘ってアムリタを奪いとります。最後にヴィシュヌと闘う事になりましたが、ついに勝負はつかず、アムリタと高い地位を得るのと引き替えにガルーダがヴィシュヌの乗物となる契約が結ばれたのでした。 また、このような経緯から、ナーガの仇敵でした。〔参照〕 スパルナ
【カルキ】 Kalki
ヴィシュヌの化身の一。名前は「白馬」を表します。カリ・ユガの終わりに出現し、悪と不道徳、不法を滅ぼして正義と道徳(ダルマ)を復興し、サティヤ期の法に従うと云われています。別名ニシュカランカ。
【カルティケーヤ】 Karttikeya
「クリッティカー(昴)と結びついているもの」を意味する名前で、軍神スカンダの事です。また、戦争に適するとされた10〜11月はこの神にちなんでカールッティカ月と呼ばれました。軍神として広く信仰された神です。
シヴァが火に注いだ精液がガンガーに受け入れられる事によって生まれたといわれます。また、シヴァとパールヴァティとの間に生まれたとも云います。クリッティカーに育てられました。弓矢を手にし、孔雀に乗った姿で表されます。
マハーセーナ(偉大なる戦士)、セーナーパティ(戦士の王)、グハ(神秘的な者)、シャクティダラ(槍を持つ者)、ターラカジット(ターラカの征服者)などの別名を持ちます。
【ガンガー】 Ganga
最も聖なる三つの聖河のうちガンジスの化身たる女神。当初ヴィシュヌの妃であったが、後に譲られてシヴァの妃となりました。河としてはヴィシュヌの足の指から流れだし、聖仙バギーラタによって旱魃に終止符を打つため地上に降ろされますが、その勢いで破局を招かぬためにシヴァの髪の毛によって流れが和らげられています。この河の水はあらゆる罪障を浄めるとされています。
ガンガーは一度、人間と結婚した事があります。それは、ヴァシシュタ仙の上を飛ぶ非礼を犯した罪で人間に生まれなければならなくなったヴァスという八人の悪鬼の願いをいれ、その母となるためにした事でした。美しい女としてシャーンタヌ王の前に現れたガンガーは、求婚されると、何をしても決して咎めないという条件のもとにそれを受け入れ、悪鬼たちとの約束通り次々に人間として彼らを産み落とし、産むはしから天界へ戻れるようにガンガー河へ放り込んでしまいました。八人目が生まれた時、たまりかねたシャーンタヌがそれを止めようとしたため、約束を破ったとなじってガンガーはその子供ともども去ってしまいます。なお、ヴァスとの取引は、こうして母となるかわりに、後に自分が産む八人の子供にそれぞれ一つづつ力を与えるというものでした。
【ガンダルヴァ】 Gandharva
天界の楽師。黄金の翼を持つ鳥。ヴァルナの使者。空中や水の中に棲む精霊です。太陽、虹、月、ソーマ、雲などを神格化したものだと云われ、それらに深い関わりを持ちます。ヴェーダ神話ではソーマの番人を務め、アプサラスを妻とし、後代インドラの宮廷に楽師として仕えるようになりました。但し、女のガンダルヴァもいます。例えば阿修羅王とインドラが仇敵となった原因は一人の大変に美しいガンダルヴァの乙女でした。
天空を自在に飛ぶ事ができます。頭には八角の角があり、体は赤く逞しい。女好きで肉欲の強い浮気者でもあります。このため、親の許可を得ず秘密にした結婚をガンダルヴァ婚と称するほどでした。また、処女の守護神でもありました……浮気者を守護神にしていいのか
(^^;?
更に、アプサラスともども狂気を引き起こすものでもあります。それを治療するため、供犠がなされました。
ナーガの仇敵であり、一時はその領国や財宝を奪い尽くす勢いでした。
【キンナラ】 Kimnara
人間の体と馬の頭部を持つもの、あるいは馬の体と人間の頭を持つもの。カイラーサ山の上、クヴェーラの国に住む楽師、歌い手で、ガンダルヴァと共に天楽を奏でます。ブラフマーの爪先から生まれたとも、カシュヤパ仙の子であるとも云われます。別名をアシュヴァムカ(馬の顔をした者)といいます。
【キンナリー】 Kimnari
キンナラの女です。
【クヴェーラ】 Kuvera
富の神。太鼓腹を突きだし、財布と棍棒を手にしています。ヴェーダ神話ではヤクシャ、グヒヤカ、ラークシャサなど邪悪なものの長とみなされていました。地中に眠る財宝や宝石の主です。また、ラーヴァナの兄弟として南インドとランカー島を領有していたとも云われます。後者はスリランカで、宝石の産地として古くから知られているところですから、ここでもやはり宝石と縁が深い事になりますね。
数千年の修行の末、ブラフマーより不死と護世神(ローカパーラ)の地位を与えられました。プシュパカという、自在に空中を行く乗物を持っています。また、シヴァの友としても知られます。
クタヌ(醜い体を持つもの)、ダナパティ(財宝の主)、ヤクシャラージャ(ヤクシャの王)、マユラージャ(キンナラの王)、ラークシャセーンドラ(ラークシャサの王)、ラージャラージャ(王の中の王)イーシャサキ(シヴァの友)などの別名を持ちます。
【クリシュナ】 Krsna
ヴィシュヌの化身の一。「黒き者」。特にヴィシュヌの権能のうち、宇宙の維持に関連が深い。ヴィシュヌによってデーヴァキーという女性の体内にいれられた一筋の黒髪をもととして、人間の子として生まれました。ところがマトゥラーの王位簒奪者カンサの破滅をもたらすものとして予言されていたため、素性を隠して牛飼いナンダの養子として育つ。とはいえ、生まれは争えぬもので、若い頃から怪力で知られ、予言されたカンサの討伐をはじめ、様々な冒険を重ねました。また、乳搾り娘ラーダーとのロマンスでも有名です。冒険のほとんどは『ラーマーヤナ』の中で語られています。ここでは、クリシュナはパーンダヴァ族の王子アルジュナの戦車を駆る御者であり、友でもあります。
実在の人物の神格化で、歴史上の人物としては紀元前7世紀くらいにマトゥラー地方にヴリシュニ族の一員として生まれました。後に同族の間に、バガヴァット(至上者)と呼ぶ太陽神を中心にしたクシャトリヤ向けの通俗宗教を広め、生前から半ば神格化されてバガヴァットと同一視されるようになったようです。
神としても大変に人気があって、ヴィシュヌ信仰は実はクリシュナ信仰を通して広まったほどでした。インドラに対していろいろな悪戯をしかけては怒らせていましたが、ついにはインドラもクリシュナの力を認め、ウペーンドラ(インドラの次に生まれた者)の名を与え、弟分として認めるようになります。
【サラスヴァティ】 Sarasvati
最も古くから崇められた三つの聖河の一つ、サラスヴァティー河の化身。特にヴェーダ神話では河の中で最上のものであり、女神のうちで最上のものであるとされています。当初はヴィシュヌの、後に譲られてブラフマーの妃。またはブラフマーの光輝より生まれ、その美しさゆえにブラフマーに求愛されて逃れ得ず、その妃となったとも云います。この交わりから、人類の始祖となったマヌが生まれました。
初期アーリア人の中心地ブラフマーヴァルタの境界であり、その浄化力をもって人々を祝福する河の女神。ブラーフマナ文献ではヴァーチュ(言葉)と同一視され、音声、学問、音楽、智慧、弁舌に対する力をあわせ持つようになりました。サンスクリット語及びそれを書き記すためのデーヴァナガリー文字を創った者でもあります。
左手に書物、右手に数珠を持つ姿か、より多数の腕で縄やヴィーナ(琵琶に似た楽器)を持つ姿、また、両手でヴィーナを弾く姿で表されます。
【シヴァ】 Siva
ヒンドゥ教の三大神の一柱で、熱烈に信仰されました。ヴィシュヌの化身の一つでもあり、特にその破壊的な側面を強く受け継いでいます。初期の段階でヴェーダ神ルドラを吸収しました。名前は「吉祥」を意味しますが、これはヴェーダ神話ではルドラの尊称として使われたものです。シヴァの一部となったルドラの権能として、まず、暴風雨の神であり、雷光や雷鳴をもって破壊をもたらします。その反面、医薬を施しす賢明で寛容な神でもあります。リンガ(男根)信仰と深い関わりがあり、シヴァは火焔を放つリンガから生まれたとも云います。このため、リンガはシヴァの象徴とみなされるのです。
四手、四面、三眼を持つ端正な男で、特に額にある第三の眼は一切の被造物を破壊しうる、燃えあがる光線を放射します。身にまとう虎の皮と首に巻きつけた蛇は、彼に嫉妬する聖仙に刺客として送り出された動物から得たトロフィーであるとか。別名を「恐ろしき者(バイラヴァ)」、また「舞踊手の王(ナタラージャ)」。その神妃はパールヴァティとされるが、他に、ヴィシュヌから譲られたガンガーも妃です。まぁ、一夫多妻ですから……。シヴァはその長い髪によってガンガー、すなわちガンジス河の力強い流れを和らげているのだということです。シヴァの乗り物は乳白色の雄牛ナンディです。
前述の他にもアジャ(不生)、アナンタ、バフルーパ(多くの形を持つもの)、マハーヨーギン(偉大なる修行者)、クリッティ・ヴァーサス(皮の衣服を身につけた者)など無数といっていいほどの別名を持ちます。気づいたかもしれませんが、シヴァもまた、アナンタと呼ばれています。蛇を耳飾りや首飾りにしているそうなので、蛇との関わりも相当に深そうです。 〔参照〕 カーマ
【ジャターユ】 Jatayus
ガルーダの子、あるいはガルーダの兄であるアルナの子と言われる禿鷹で、アヨーディヤー王ダシャラタの友です。ラーヴァナがラーマの妻シーターを拐おうとした時、これを救おうとして闘い、一度はラーヴァナの戦車を打ち砕いたものの力つきて斃されてしまいました。
【スパルナ】
ガルーダの別名。「美しい翼」という意味。また、その翼そのものをも呼ぶ。大変に強力で、インドラのヴァジュラですら、防ぐ事ができました。
【ダーキニー】 Dakini
名前は「空の遊歩者」を意味する。性力の化身であり、カーリーの側面あるいはその侍女でもある。老女の姿も、若く美しい女の姿もとる。食人鬼であり、、墓地や火葬場で集会を開くとされた。これは、本来彼女らが死を看取るものであり、葬儀や屍の世話をする権能を持っていた事をあらわすのかもしれない。後に仏教に吸収されると、白い狗に似た獣に乗った女神として表される。日本では白狐とされるが、南方熊楠はこれを本来ジャッカルであると解いた。古来、犬が墓場や墓場と関係のある神に結びつけられてきた事を考えれば、頷ける話である。
【ターラカー】 Taraka
悪魔スンダまたはヤクシャのスケートゥの娘として生まれたダイティヤ女。アガスティヤ仙の怒りにふれてラークシャシー(ラークシャサの女)にされてしまいました。それからはガンガー河とサルジュ皮の合流点近くの森に棲んで、付近一帯を荒らし回りました。そこで、ヴァイシュヴァーミトラはラーマとその弟であるラクシュマナにターラカーを退治するよう命じるのですが、最初、英雄としては悪魔とはいえ女を殺す気持ちになれませんでした。邪悪な力のみを奪い取ろうと試みるのですが、相手の呪力が強いため、なかなかうまくいかず、ラーマ自身はターラカーの二本の腕を、ラクシュマナは耳と鼻を削ぎ落とす事ができただけでした。そこで、やむなく二人はこの女悪魔を遠くから者射殺したのでした。
【ディーバ】 Deva
デーヴァ。神、天。天界に棲むもの。「輝く」を意味するサンスクリットの語根 div から派生した名です。特に『リグ・ヴェーダ』では、様々な自然の要素が神格化されたものや、抽象的な観念が神格化されたもの、特定の技術を象徴する神格などがこの名で呼ばれました。
【ドゥルガー】 Durga
「近づきがたい者」。「一切を包括する者」。18の手を持ち、黄色い色をした美しい女戦士。虎に跨っている。カーリーの側面の一。神々の怒りを体現する。苦行により恐るべき力を得た水牛怪マヒシャを激闘の末斃したと言われる。基本的に母性本能を司る女神であり、それは「近づきがたい者」という名を説明している。すなわち古代オリエントでは育児中の女は「近づきがたい者」であり、男は性的な関係を結ぶ事を禁じられていた事による。女神に守ってもらえる者は、常に女神の子供だけなのだ。
【ナーガ】 Naga
龍とも云われますが、むしろ蛇。ナーガという言葉そのものが「蛇」を意味しています。女神カドルーの子供たちで、人間の顔と蛇の尾、コブラの首を持っています。母の名から、カードラヴェーヤと呼ばれる事もあります。いずれにせよ水の神としての力を持ち、一般的に親愛の情に溢れた種族といえるでしょう。この種族の女性(ナーギニー)は賢くかつ美しく、南インドではしばしば王朝の祖先に嫁いでいるといいます。河川、湖、海などの底にある楽園に棲み、輝かしい宝玉を鏤めた御殿を住居とし、歌と踊りに明け暮れる。その地下界はパーターラ、あるいはナーガローカ(蛇の世界)と呼ばれます。守護神として寺院の入口に彫刻される事も多く、特に、多産を祈願する女性によって寄進されるところから、この方面の御利益があると信じられている可能性もありそう。
おそらくは母権制社会を営み、母系の財産相続を行っていた種族。伝承にはしばしば、地底に棲む蛇の女王とその眷属として登場します。
仇敵はガンダルヴァで、危うく滅ぼされてしまうところでしたが、ヴィシュヌの化身であるプルクツァに保護を求め、王妹であるナルマダーをその妻として与えました。その後、ナーガは隆盛したといいます。 〔参照〕 アナンタ、ヴァスキ
【ナーガ・ラージャ】 Nagaraja
ナーガの王。すなわちヴァースキの別名。とはいえ、ナーガの王は他にもいるので、必ずしも絶対にヴァースキを指すとは限らなさそう。〔参照〕 アナンタ、ナーガ
【ナラシンハ】 Nrsimha
ヴィシュヌの化身の一。人獅子です。すなわち獅子の頭を持つ人間で、悪魔ヒラニヤカシプを退治しました。
【ナンディ】 Nandin
その名は「幸せなもの」を意味します。シヴァの乗り物である乳白色の雄牛。カシュヤパ仙と雌牛スラビの子です。シヴァ寺院の正面入口の外には必ずこの神像が置かれます。四足獣の守護者。
【パールヴァティ】 Parvati
処女であるカーリーの相。「山の娘」、また「天界の娘」。但し天界とはヒマラヤを指すところから、実際にはこの二つの称号は同じものだと考えられます。しばしば古代の母なる大地プリティヴィと同一視されました。多数いるシヴァの神妃のうち、ウマーと並んで最も有名なものです。
カーマを焼き殺す事になったシヴァの第三の眼は、パールヴァティの悪戯から生じたと云われます。パールヴァティはヒマラヤで修行するシヴァの世話をしていたのですが、ある時悪戯心を起こして、背後からその両目を塞いでしまったのでした。すると、宇宙の活動が停止し、太陽も輝きを失って辺りは真っ暗になってしまったのです。ところが、その瞬間シヴァの額に焔のように輝く眼が出現し、世界は再び活力を取り戻したのでした。
パールヴァティはシヴァに熱愛されたのですが、それは今に遺る神像にも現れており、パールヴァティは手に何も持たず、シヴァの横に立つか、その膝に座っているものが多いのです。シヴァもまた、寄り添うパールヴァティの露わな乳房を包み込むなど、睦まじい様子を見せています。
【ハヌマーン】 Hanuman
「顎骨を持つ者」の意。猿の勇士。風神ヴァーユ、または風神パヴァナとアプサラスのアンジャナーの間に生まれました。なんでそれが猿になるんだ、という声が聞こえそうですが、アンジャナーの前夫は猿のケーサリンだったそうなので……あまり説明になってませんけど
(-_-;)。ラーマの友。特に、ラーヴァナとの戦では大いに尽力しました。変身する事自在で、体の大きさも自由に変えられ、空を飛ぶ力も持ちます。
丈高く、顔は紅玉のように赤く、大変に長い尾を持ち、岩に坐って吼える声は雷鳴のようであったといいます。
マルトプトラ(風神の子)、ラジャタディユティ(輝ける者)、ランカーダーヒン(ランカーを燃やした者)などの別名を持ちます。
【ハンサ】 Hamsa
純潔かつ神聖な雪白の鵞鳥です。太陽との関係が深く、豊饒の男性原理を象徴します。また、アートマンやプラーナ(生命原理)を象徴するものでもあります。ブラフマーの乗物としても働きました。
【ブラフマー】 Brahma
ヒンドゥ教の三大神の一柱。世界の創造を司るものです。より古くは抽象的な原理としてのブラフマンであり、神々を讃える言葉やヴェーダそのもの、また、そこに内在する神秘的な力を表すものでした。それがウパニシャッドの時代に人格化され、ブラフマーという男性主格を名とする神になったわけです。当初、創造者、最高神として崇められましたが、ヴィシュヌとシヴァへの信仰が盛んになるにつれてそれらの役割は二神に奪われ、相対的にブラフマーの地位は下がりました。従って、時代によってブラフマーの位置は微妙に異なります。
メール山頂上の中央にあるマノーヴァティーという都に住んでいます。その体や意志そのものから、多数の神や聖仙が生まれました。概して四つの顔を持ち、それぞれ水壺、数珠か弓、笏、聖典を持った四手を備え、白い鵞鳥ハンサに乗った姿で表されます。しかしながら、実はブラフマーは五つの顔を持っていたのでした。それはシヴァによって切り落とされるのですが、理由としては、ブラフマーがシヴァに息子となってくれるように頼んだ事がシヴァの怒りをかったとも、ブラフマーがシヴァの最初の妃サティーに横恋慕したためとも、五つ目の顔が現れた時に神威がいや増したため、ブラフマーが傲慢になったためとも云われています。
アートマブー(自ら生まれたもの)、スラジェーシュタ(あらゆる神々より前に存在したもの)、パラメーシュティン(真理の世界に住む者)、ピターマハ(父祖)、ヒラニヤガルバ(黄金の卵を胎内に持つ者)、ローケーシャ(世界の主)、アブジャヨーニ(蓮華より生まれた者)、アンダジャ(卵から生まれた者)など様々な別名を持ちます。
【ブラフマーストラ】 Brahmastra
「ブラフマーの飛び道具」を意味し、ブラフマー専用の武器です。これを投げると、必ず敵を倒して返ってくるとか。ブーメランに似たものかも。
【マハカーラ】 Mahakala
マハーカーラ。「偉大なる時」、すなわち時の主であり死の王でもあるシヴァを表す名です。また、シヴァの十二のリンガの一でもあります。なお、ヒンドゥの天文学ではこの言葉で月と太陽の結婚を表しています。
【マヤ】 Maya
アスラの工芸家であり、技術者です。また、ラーヴァナの妃マンドーダリーの父にあたります。デーヴァギリに住み、同族であるダイティヤだけでなく、人間のためにも働き、パーンダヴァの町を建設しました。
【マルト】 Marutah
単独の神ではなく、暴風雨を神格化した一群の神々を指します。光輝、美、偉大さ、激烈さ、強力さを特徴とする若い神々で、山中に住み、輝く槍を持ち、目映い戦車を駆りました。暴風雨の神であるルドラと雌牛プリシュニーの間に生まれたとも、天上の大海から生まれたとも、風神ヴァーユの子であるとも、またさらに、ダルマ神の妻マルトヴァティーの子であるともされ、その数も文献によって不定です。
インドラの友であり、また同盟者で、既に名前の出たヴァーユや、アグニとも深い関係を持っています。
【ヤクシニー】 Yaksini
ヤクシャの女。ヤクシーともいいます。また、クヴェーラの妻であるとも云われます。
【ヤクシャ】 Yaksa
クヴェーラの従者。森や密林、野原などの精霊で、ヴェーダ時代より以前から信仰されていたと推測されます。善良なる者と云われ、富の保持者とみなされます。自在に変身する力を持ちます。
【ヤマ】 Yama
死の神。「統御者」。最初の人間であり、最初に死の道を発見した者でもあって、本来は蒼穹にあって肉体を離れた魂を統括する者でした。死者の友。後代、死者を裁く者に変化し、人間の過ちを罰するようになりました。索縄と棍棒で武装し、野牛に跨った姿で描かれます。また、彼が住む死の王宮への道は神犬サラマーから生まれた四眼を持つ二頭の犬に護られています。この犬たちは、人界を歩き回って死ぬべき者をヤマの世界に導く役割も果たします。
ヤマの都はヤマプリーあるいはサンヤミニーと呼ばれ、鉄の城壁で囲まれ、四方に門があります。その内側には百の街があり、旗や花で飾られ、そこでは祖霊たちが永遠に幸福な生活を送っているのです。死者はここへ導かれて祖霊と合一するのでした。
ヤマは、他にムリティユ(死)、カーラ(時)、アンタカ(最後の者)、シャマナ(消滅させる者)、ピトリパティ(祖霊の主)、プレータ・ラージャ(死者の王)、ダルマラージャ(正義の王)、ビーマシャーサナ(怖ろしい法)、パーシン(縄を持つ者)などの別名を持っています。
【ラーヴァナ】 Ravana
驢馬の頭を持つ魔王。ラーマの妻シーターを奪ったランカー島のラークシャサの王。ブラフマーへの帰依者でありながら、ラークシャサの中で最も邪悪な者。クヴェーラとは異父兄弟にあたります。厳しい苦行により、あらゆる神々や悪魔に対して決して敗れる事のない魔力を身につけていました。
十の頭と二重の腕、銅色の目と月のように輝く歯を持ち、雲か山のように大きな姿をしていました。ラーマに恨みを持つ妹にそそのかされてシーターを拐い、ランカーに連れ帰ったため、大戦争が勃発します。そして結局はラーマによって一族ともども滅ぼされたのでした。 〔参照〕 インドラジット
【ラーフ】 Rahu
「捕らえる人」の意。日蝕や月蝕と関係します。ダーナヴァすなわち悪魔であり、神々が乳海撹拌をしてアムリタを手に入れた時、神に変装してその中に入り交じってアムリタを盗み飲みました。太陽神スーリヤと月神ソーマに見破られ、ヴィシュヌに首を切り落とされるのですが、その首は天空に跳ね上がり、大声でわめいて、日月と戦いを繰り広げ始めたのです。つまり、ラーフが日や月を飲み込んだ時が蝕となるわけですね。
普段は天の南西に棲み、八頭の黒い馬に牽かせる戦車で空を翔けます。三十二の彗星(ケートゥ)の父でもあります。
アブラピシャーチャ(天空の悪魔)、マハーグラハ(大いなる捕獲者)などの別名を持ちます。
【ラーマ】 Rama
ラーマチャンドラともいいます。ヴィシュヌの化身の一。『マハーバーラタ』の主人公である英雄。ランカー島(スリランカ)の魔王ラーヴァナの脅威を防ぐため、アヨーディヤー国の王子として生まれる。ヴィシュヌからダシャラタ王を通じてその妃たちに分け与えられた甘露により、量的には異なるものの神的な資質を備えた異母兄弟を持つ(兄弟のうち、最も多くその資質を持つ者がラーマ)。初期の冒険で愛する妻、シーターを得ますが、その後父王の妃の策謀により、14年間国を追放される事となりました。〔参照〕 ヴィシュヌ、ハヌマーン、ジャターユ、ターラカー、ラーヴァナ
【ラクシュミ】 Laksmi
その名は「幸福」を意味します。蓮の女神。運の女神。また、農業の女神。ヴィシュヌの妃であり、その力の源泉。紅睡蓮の上に立つ、蓮華の眼をし、蓮華の衣をまとい、左手にも蓮華を持つ蓮華色の豊満な乳房をした女性として描かれます。また一方、宇宙が再生する時にブラフマーを生み出す黄金の蓮華でもあり、この宇宙母胎としてのラクシュミは「世界の母(ローカマーター)」の異名を持ちます。更に、「海より生まれし者(ジャラディジャ)」とも呼ばれました。
【リブ】 Rbhu
優れた技術を持つ巧みな工匠で、リブクシャン、ヴァージャ、ヴィブヴァンの三神からなり、通常複数形でリバヴァと呼ばれます。アシュヴィン双神の戦車やインドラの二頭の栗毛の馬などを創った他、ヴェーダ神話における最高の工芸神トヴァシュトリの作った神杯を四個に作り替える事すらやってのけました。本来は人間として生まれたのですが、その技があまりに巧みであるために、ソーマを飲んで不死の存在となる事を許され、神々に加えられたといいます。
【ルドラ】 Rudra
「咆哮する者」。ヴェーダ時代以前に存在した神。赤い躯を持つ。また、トリヤムパカ(三人の母神に属する者)とも呼ばれる。ウォーカーはこれらの事から、ルドラが、三相一体の女神のため皮を剥がれた生贄の象徴たる神であったと考察している。これはすなわち、死んで豊饒をもたらす神である事をも意味する。