インド-India

アチェリ】 Acheri

  病気をもたらす少女姿の幽鬼。特に子供が狙われます。山頂に棲み、夜になると谷間に降りてきて、ぞっとするような声で人を死に誘う歌を歌い、小鼓を打って踊りながら得物の上に影を投げかけるのです。この影に触れると、病気になってしまうわけですね。赤い糸を首に巻いておくか、赤い衣服や赤い飾り玉を身に着けるとアチェリを避ける事ができるといいます。

ア・バオア・クー】 A Bao A Qu

  綴りを見るに、”バオ”と”ア”の間も中黒で区切る必要があるのではあるまいか。ラジャスタンに棲む妖怪。この地方はジャイナ教が盛んだという事で、ア・バオ・ア・クーが棲んでいるのもジャイナ教関係の建築物である「勝利の塔」。人間の影に大変敏感で、いつもは最初の段で眠っているのに、もしも誰かが塔に入って階段を登り始めるなら、その踵にくっついて螺旋階段の外側を登っていくのだとか。しかも、最初は半透明の曖昧な体であったものが、最上段に近づくにつれて青みを帯びた色と輝きを増し、形も完全なものになっていくといいます。無論、最上段に達すれば完璧な姿になれるわけですが、伝えられるところによるとそこまで達したのはただ一度で、塔を登る者がそこを降りるやいなや、再び最初の段に転がり落ちてしまうのです。不定形っぽい存在ですから当然かもしれませんが、全身でものを見る事ができるといいます。

ヴィディヤーダラ

  ヒマラヤ山中に住む、シヴァに仕える神族。神通力(ヴィディヤー)を持つ(ダラ)者という意味です。一種の天人だと言っても良いでしょう。シヴァの家来であり、神通力があるという以外は、普通の人間とあまり変わらない日常を送っているようです。

ヴェータラ】 Vetala

  ヴェーターラ。起屍鬼。屍憑鬼。人の死骸にとり憑く悪霊。当然、墓場に棲んでいる。色は炭のように黒く、長身で長い頸。雄牛のような脚。梟の目と驢馬の耳を持つ。これを使役して死人を動かす呪法があり、ヴェーターラ呪法と呼ばれる。召喚方法は次の通り。
  人骨の粉で地上に曼陀羅をえがき、四方に人血を満たした容器を置く。次に、目的の屍体を人の脂で作った蝋燭で囲み、これに点火する。更に髑髏の中に血を満たし、花輪や香とともに供える。ヴェーターラが供犠に満足すれば呪法は成功するが、満足しない場合は術者がとって喰われてしまう。良い子は真似をしないように( ・・)/。
  なお、香としては人間の眼球を燃やすのが良いとされ、供犠には人間の肉が必要となる。最悪、自分の肉を切り取って差し出さなければならないので、召喚する場合はほんっと〜に覚悟が必要です。やっちゃ駄目だよ。
  このヴェーターラですが、石の中に棲む場合もあります。特にデカン高原では村の守護霊ともみなされ、赤く塗った石の中にいると云われています。

チャコーラ】 Cakora

  シャコの一種(鳥・Perdix rufa)。月光を食べる鳥だと言われています。

チュレル】 Churerl

  産褥で死んだ女の幽鬼。また、不浄な儀式で死んだ女の悪霊。また、デワリ祭の期間中に死んだ妊婦。もともとは、顔を下に向けて葬られた低いカーストの者の幽霊を指したといいます。そのせいか、足の向きが普通の人間とは逆についており、口を持ちません。あるいは、垂れ下がった乳房、鋭く長い歯、分厚い唇、黒い舌、ぼさぼさの髪を持ち、体の全面が白く背面が黒い姿をしています。美女に化けてごみごみした場所に現れ、若い男を誘惑してとり憑きます。一旦とり憑くと、老人になるまで離れません。また、特に親族に対して強い悪意を抱くと云います。
  チュレルになりそうな女の死体を埋葬する時は俯せにして埋めるか、墓穴に石や木の棘を一緒に埋めたり、両手の指全てに小さな釘をねじ込み、足先は鉄の環で固定します。また、死んだ場所に芥子の種を播くと死後の変容を防ぐ事ができるとも云います。最も良いのは、糸の玉と一緒に火葬する事で、死霊は糸の玉を解き続けるのに忙しく、家族の事を忘れてしまうと伝えられています。

ピシャーチャ】 Pisaca

  食屍鬼。不潔で大変に醜い悪鬼。執拗で愚か。火葬場に現れ、夕暮れ頃から活動し始めます。呪法を使って呼び出されると、傷を治したり財宝をもたらしたりする事もあります。ブラフマーによって創り出されたとも、怒り(クローダー)から生じたとも云い、ヴェーターラ同様屍体にとり憑きます。但し、これはある種の薬草や呪文(マントラ)で除く事が可能です。とはいえ、ピシャーチャを見た者は九ヶ月以内に死んでしまうので、注意が必要ですね。
  自在に姿を変え、また、見えなくなる事もできます。欠伸をする時には口を覆うか、指を鳴らして悪魔除けをしないと、ピシャーチャに入り込まれる事があるそうです。

マカラ】 Makara

  鰐(クロコダイル)、鮫、海豚などの姿をとるという海の怪物。河、湖、マカラーヴァーサ(マカラの住処)と呼ばれる海などに住んでいて、水の神としてのヴァルナ及びガンガーの乗物として仕えます。呪力も持っているとか。
  アシタダンシュトラ(黒い歯を持つもの)、ジャラルーパ(水を形とするもの)といった別名を持ちます。

ラクシャーサ】 Raksasa

  ラークシャサ。夜になると出没する悪鬼で、邪悪な存在です。火のように光る眼と大変長い尾を持ち、墓場の屍体の中に棲みます。また、新生児にとって最も危険な存在です。ブラフマーの足から生まれたともプラスティヤ仙から生まれたとも、またカシュヤパ仙とカシャーの間に生まれたともいい、『ラーマーヤナ』ではブラフマーが河を創った時にその守護者としてラークシャサを創ったと物語っています。様々な動物や人間に変身する事ができ、祭祀を妨げる者でもあります。
  アヌシャラ(殺戮者)、サンディヤーバラ(黄昏に力を持つ者)、イシュティパチャ(供物を盗む者)、ラートリチャラ(夜中に出没する者)、ヌリチャクシャ(食人鬼)、ラクタパ(血を飲む者)、パラーダ(肉食性の者)、マリナムカ(黒い顔の者)など、様々な別名で呼ばれます。