ユダヤ-Judea
【アザゼル】 Azazel
「神の使者」。その名は「除去」あるいは「遠くへ去る」事を意味します。シリア起源で、贖罪の日に生贄の山羊を受けとる神です。旧約聖書では、人々の罪を負って荒野に追い払われる贖罪の山羊、いわゆるスケープゴートです。
但しイスラムでは魔王の名(イブリース)とされていました。また、中世には魔王の一人に数えられています。隠微学では十二枚の翼と七つの蛇の頭を持ち、その頭ごとに二つの顔を持つ姿で表されます。また、アザゼルはもともと強力な熾天使で、人間にいろいろな知識を伝えるために地上に降り、後に堕落したエノクの堕天使の二人の長の片割れであったという伝承もあります。
【ケルプ】 Kerubh
正しくはケルブ。本来はバビロニアの聖獣。鷲の翼、獅子の脚、雄牛の頭、蛇の尾を持つ事で四大元素を体現します。エデンの園の門や天の玉座、聖櫃をおさめる幕屋などを守護しています。
〔参照〕 ケルビム
【ゴモラ】 Gomorrah
ソドムとともに殷賑と頽廃を極めた死海南部の町。『創世記』19章で語られているところによれば、どうやら男色なども普通に行われていたようで、そのため、男色を表す言葉として
sodomy が発生しました。伝説はもっぱらソドムを舞台に展開しますが、神の使者が町に入っても住民が悔い改める事がなく、ロト以外に善人が発見できなかったため(一夜で何ができるというのだ)、翌朝天から降りた火と硫黄によって焼き滅ぼされてしまいます。
寡聞にして、これ以外にゴモラの名を持つものはみつかりません。しかしながら、硫黄と火は地獄につきものである事(キリスト教時代になると、悪魔はたいてい硫黄の臭気と共に出現するようになります)は想起すべきでしょう。また、神の敵たる魔王はしばしば竜あるいは蛇と呼ばれます。ゴモラというモンスターは外伝〈ラストバイブルII〉のドラクル族として登場するのみですが、以上のような事から、地獄に棲む竜としての悪魔がモンスターとなったものと考える事は可能かと思われます。
なお、コラン・ド・プランシーは『地獄の辞典』中でゴモリーという悪魔について述べています。竜や蛇種とは関連なさそうですが、名前は近似ですので、そちらも参照してみて下さい。
【サロメ】 Salome
ヘロディアスの娘。ヘロデ王を喜ばせるために七枚のヴェールの踊りを披露し、その報償に洗礼者ヨハネの首を所望したと聖書に伝えられています。
しかしながら、その原型はおそらく、代王の死と、女神の冥府降り、そして復活をあらわすものだったでしょう。一枚一枚取り去られるヴェールは、冥府の七つの門の前に女神が一つずつ脱ぎ捨てていった衣裳を表すのです。サロメという名はシャローム、すなわち平安に通じ、エルサレムの神殿に仕える巫女をさしていたと考えられるのです。また、ヨハネが殺される時に斬首された事は、エーゲ海からレバント一帯で生贄を殺す時に用いられていた方法と同一です。
【ディブク】 Dybbuk
人間に憑依する悪霊、とりわけ、強力な悪魔祓いを行わなければとり憑いて離れない悪霊の事です。初期には病人にとり憑くものとされていましたが、後に、罪業のため新しい体に生まれ変わる事ができず、とり憑く相手を探している邪霊であると考えられました。もしとり憑く事ができずにいると、他の邪霊から苦しめられるためです。また、一説によれば正しく埋葬されなかった者がディブクになるとも云います。
人間の体から出ていく場合は足の小指を通り、その時小さな血の孔を残していくそうです。
【ベヒモス】 Behemoth
英語読み。言語に忠実にするならば、ベヘモットが近いでしょう。ヘブライ語で「獣」を意味する b'hemah の強調複数形(単数でもあえて複数形を用いる事でその強大なる事を表す)です。巨獣と言われますが、その形は牛か象に近いようです。河馬あるいは象だとも言われます。また、ジェイムズ・トムスンは犀であると想像しました。さらに、ウォーカーはこれをガネーシャに関連づけています。要するに、図体が大きく、牛のように草を食べ、力強い獣なのです。聖書外典によれば、週末の日に、メシアによって捕らえられ、人々の食物とされます。
【メルキセデク】
「義の王」、または「サレム(エルサレム)の王」。神の永遠の祭司であり、両親はもとより、祖先も持たず、生まれた事もなく、死ぬ事もないもの。カバラの伝承では、人類をエデンの園に帰還させるためカバラを地上にもたらした存在とされています。
【モロク】 Moloch
モレク Molech とも。火の神。ソロモン王の時代にユダヤ人達に崇められていた神です。おそらく、燔祭(生贄を祭壇の上で焼くことによって神に捧げる事)と深い関係があります。名そのものは「王」を意味します。初子が生贄として捧げられましたが、この特徴は実はヤハウェも持っているものでした。後に、モロクは火の地獄であるゲヘナと結びつけられました。
【ラハブ】 Rahab
天地が想像される前の原始の海……混沌に棲む怪物、あるいは混沌そのもの。すなわち混沌竜です。『イザヤ書』によれば、原初、神はこの竜を二つに裂いて天と地を分離しました。また、『詩篇』ではエジプトの代名詞とされています。〔参照〕 天使または堕天使としてのラハブ
【ラビ】 Rabbi
原義は「我が主」といったような意味。本来は聖書や口伝について教える人で、生計は別の職業でたてていましたが、中世以降は専門の律法学者となり、ユダヤ人の精神的指導者となりました。キリスト教が支配的だった時代には、しばしば魔術師の汚名を着せられました。
【リリス】 Lilith
その名は「泣きたてる梟」を意味する。曠野に出没し、出産する女や幼児を脅かす鬼女。アダムの最初の妻であり、また異説ではアダムに身を任せる事を拒み、後に魔物たちの母となった。ウォーカーの記述によれば、リリスはアダムが強制しようとした宣教師流の体位、つまりいわゆる正常位(男が上になる体位)を拒み、紅海の畔に逃れて魔物と性交し、毎日百人の子供を産んだ由。このリリスの行動から、ウォーカーは、アダムに代表される遊牧民の侵略に抵抗した農耕民の女(太母)がリリスであっただろうと指摘しています。魔物としてのリリスは、生まれたての赤ん坊を絞め殺して、その血と髄を啜ると言われています。また、出産婦を脅かしたり、眠っている男に働きかけて夢精させたりします。また、リリスは蛇であると云われています。
後の民間信仰では長い黒髪を乱れさせた長身の無口な女として現れます。
【リリム】 Lilin
より正しくはリリンであるかと思われる。アダムとリリスから、あるいはリリスと魔物の性交から生まれた最初の魔物たち。好色な女の魔物で、男性の夢に現れては夢精させたといいます。この時、リリムはウォーカーの言う家母長の体位、つまり騎乗位をとったとか。夜の鬼女とも呼ばれますが、決して醜いわけではなく、それどころか大変に美しく情事に長けています。梟はリリムであるとみなされました。
【レヴァイアサン】
レビヤタン。その名の語源は不明なるも、「裂く」「曲げる」といった意味があると考えられており、また、しばしば「とぐろをまく蛇」と呼ばれます。混沌の竜。鰭から明るい光を放射し、太陽を曇らせます、深淵の大蛇。巨大な鰐(クロコダイル)あるいは蛇として表されます。神の仇敵であり、人間がこれを捕らえて役立たせる事はできないとされています。その理由は「契約」を結ぶ事ができない相手であるから、と説明されます。但し、聖書外典では、週末の日にメシアによって捕らえられ、ベヒモスとともに人々の食物に供されるともいいます。それまでには……食べ頃に……なっているという事なのでしょうか。