魔術師−Magi

アグリッパ】 Agrippa

  15世紀半ば頃、ドイツのケルンに生まれた隠微学者。また、神学者。アグリッパ・フォン・ネッテスハイムと名乗ったが、この姓はケルンの創設者の家名を勝手に拝借したものと考えられている。『オカルト哲学』という大著をあらわし、肉体に対する精神の優越性と支配力について述べた。これは、ヨーロッパのオカルト思想に大きな影響を与える事となった。
  この時代のカバラ学者や隠微学者の例に漏れず黒魔術師であるという噂を立てられ、黒い犬の使い魔を連れていると言われた。

アポロニウス】 Apollonius

  テュアナのアポロニウス。1世紀、古代ローマ(ネルウァ帝時代)に現れた魔術師にして予言者。鳥と話す事ができ、魔術の儀式などを用いて蠍のように有害な動物や、邪悪な霊を追い払う事ができた。ローマで非常な名声を博したが、セウェルス帝の寵愛を喪い、ついにセウェルス帝はアポロニウスを裁判にかけ、魔力を封じるためにその髪を切らせたが、アポロニウスの姿はどこへともなくかき消すように見えなくなってしまった。テュアナではアポロニウスのための寺院が作られ、崇敬された。

マグヌス】 Albertus Magnus

  アルベルトゥス・マグヌス。ドイツのシュヴァーベンに13世紀初め頃生まれた。聖ドミニコ会に所属する修道士であり、一時はラティスボナ(レーゲンスブルク)司教をも務める。自然魔術を信じ、錬金術も行った科学者。人間と自然の間に心霊的な繋がりがあるという主張をした。植物、石などに魔術的な力を認め、それらについて詳細に記した。また、アリストテレスの研究者でもあった。錬金術(化学)上のさまざまな発見を成し遂げたとされている。また、魔術と占星術を用いて、言葉を話す真鍮製の人造人間を作成したと言い伝えられている。
  1622年列福され、1932年ピウス11世により列聖された。

カリオストロ】 Count Alessandro Cagliostro

  18世紀に、シチリアに生まれた魔術師にして錬金術師、霊媒師。本名はジュゼッペ・バルサモ。若くして才能を発揮し、呪術と錬金術が盛んだったマルタ島で学び、カバラとピュタゴラスについて研究を深めた。後にカリオストロ伯爵武人であった祖母の名を拝借し、アレッサンドロ・カリオストロ伯爵と名乗るようになる。ヨーロッパの様々な宮廷で活躍し、名を高めた。自らは多くの裕福な後援者を得、貧民には巨額の金を与え、また、多くの病人を無料で治療した。
  敵も多く、有名な「王妃の首飾り事件」に連座する事となり、イギリスへ、更にローマへと流転するが、最後に宗教裁判の結果死刑を宣告された。但しこれは教皇ピウス六世によって終身刑に減刑された。
  獄死したとされているが、死後も生きて地上を漂泊しているという噂が根強く欧米やロシアにまで流布した。

ゴッツカルク

  ゴッツカルク・ニクラーソン。アイスランドの司教で、黒魔術師と言われた伝説的な人物。金のルーン文字で書かれた赤い子牛革の本とともに埋葬された。後にその本を手に入れようとした学士ロフターが魔術合戦を挑んだが、村人たちが打ち鳴らした教会の鐘の為果たせず、死せる司教は再び地の底にその本とともに沈んだ。

シモン】 Simon Magus

  魔術師シモン。サマリア出身のグノーシス主義者。物体移動、空中飛行や動物などへの変身をする事ができ、ネロから宮廷魔術師の地位を得た。後にシモンの魔術を打ち破ろうとした聖ペテロと魔術による試合をしたが、その際、空中浮揚を行った時、聖ペテロの祈りによって力を喪失し、地上に落ちて死んだ。

ジョン・ディー】 John Dee

  16世紀、ロンドンに生まれた。数学者・天文学者であり、占星家でもあった学者。エリザベス一世に仕えた占星術師。優れた学者であったが、魔術師としては霊と交感する事ができず、その方面では霊媒の力を借りなければならなかった。黒魔術を使うとも言われたが、中傷であったと考えられる。生存中は世に容れられる事なく、貧窮のうちに生涯を閉じた。

アクィナス】 Thomas Aquinas

  トマス・アクィナス。ドミニコ会に所属する修道士で、名高い神学者。アルベルトゥス・マグヌスの弟子。錬金術を研究し、カバラを応用して魔術を行う事ができた。『神学大全』などの大著をあらわし、ローマカトリック教会の魔術や妖術に対する姿勢に大きな影響を及ぼした。すなわち、魔術や妖術、呪術といったものを、悪徳と結びつけ、邪悪な生活を送っている者が行う業であり、異端であるとみなす基本的な思想を広めた。

ノストラダムス】 Nostradamus

  16世紀の予言者、占星術師。プロヴァンスに生まれた。本名はミシェル・ド・ノストルダム。イタリアからフランスに帰化したユダヤ人の家に生まれ、当初はモンペリエ大学で学び、開業医の免許を得て名医として名をはせた。特に、ノストラダムスはアルコールによる消毒法と独自に調剤した薬により、疫病を効果的に防いだ。後に異端の疑いをかけられ、フランス、イタリアを放浪する事になるが、この間に予言者としての力を身につけたと言われるが、占星術そのものは、大学に進む前、博識な叔父から受けた基礎教育の中に含まれていたようだ。とはいえ、ノストラダムスはこの時期の予言を水晶占いによって得たとされている。それらの予言は、良く知られているように、四行詩の形でまとめられ、フランス語、ギリシア語、イタリア語、プロヴァンス語、ロマンス語、ラテン語などの多様な言語で書き記された。この為、極めて難解なものとなっている。
  ノストラダムスに関してもう一つ注意すべき点は、フランスで魔女狩りが盛んであった時期に活躍していたにもかかわらず、一度も異端者として告発されなかったという点であろう。

パラケルスス】 Paracelsus

  本名をフィリップス・アウレオルス・テオフラストゥス・ボンバスト・フォン・ホーエンハイムといい、15世紀末、ドイツ人医師兼薬剤師の息子としてスイスに生まれた。錬金術師であり、医学者。主として医学博士として活動し、病気の治療には肉体ばかりでなく魂についても同時に扱わなければならないと主張した。
  魔術師と称されるが、実際には、儀式魔術などについては懐疑的な立場を取っていた。パラケルススと魔術との関わりは、もっぱら、民間の呪医が古くから用いていた治療法の良い部分を取り入れ、自らの医療に役立てたところにある。
  錬金術師としては、史上初めて亜鉛について記述した。この分野でも様々な業績を残したが、それらは錬金術の哲学的部分ではなく、化学的部分に属するものである。
  パラケルススの死は謎めいており、崖から突き落とされたとも毒殺されたとも言われている。

ファウスト

  ファウストゥス博士。伝説的な中世の学者で、魔術師。その原形は、15世紀末〜16世紀初めに実在したドイツ人、ゲオルク・ヨハネス・ファウストゥスであろうと言われているが、この人物について語られている事のどこまでが真実であるかは、曖昧である。また、その原形に、いろいろな尾ひれが付け加えられていった事は疑いがない。伝説によれば、より深い知識、若さ、美しい女などを求めて、悪魔メフィストフェレスと契約を結んだ。赤い眼をした犬の姿の使い魔を連れ、酒樽や乾し草の束にまたがって空を飛ぶ事ができた。また、死霊を呼び出す事もできた。だが、最後にはメフィストフェレスがファウストの魂を取り立てに現れ、ファウストの体はばらばらに引きちぎられた状態で、堆肥の山の中に発見された。