日本-Nippon
【アクトガミ】 Akuto 阿久刀神
柳田國男によれば、阿久津(悪津)、すなわち川沿いの湿潤な土地または川の氾濫によって運ばれる水底の土などと関連が深く、河川の際で通行の障害となるものの力をあらわした神ではないかという事です。
【アシナガ】 Ashinaga 足長
禁裏の有名な屏風に「荒海屏風」なるものがあり、そこには異様に足の長い人物と、異様に手の長い人物とが、網を用いて宇治川漁をしている様子が描かれているという事です。しかも、焼失するたびにもう一度複製されるのだとか。普通、なくなってしまったらそれはそれとして新しい図の別の屏風を置いたりするものではないでしょうか。何故そこまで手間をかけるのか? もしかすると、土蜘蛛のような、手や足が異常に長い先住民/妖魅と何か関わりがあるのかも、というのは考えすぎでしょうか。
また、手長足長という名の巨人が諏訪明神の家来として伝えられています。ダイダラボッチ、デエラボッチのような手足の長い巨人であるとも、足が短くて手の長い手長と、手が短く足の長い足長という二神があって、湖中の魚貝をとるのに足長が手長を背負って水中を漁ったとも云われます。
もうひとつ、手長足長という悪鬼の伝説が鳥海山にあります。長くこの山に巣くい、人々を苦しめていたのですが、蔵王権現により祈願調伏されたとされています。
手と足を名に持つ双神としては、他にクシナダヒメの両親である足名椎、手名椎もあげられるでしょう。
〔参照〕 手長
【アナジ】 Anaji 穴師
南の方から吹く風(地方によっては差違有り)、またはその風の神の事です。主に海上や海辺で、祟りをなす神とされ、その風が吹いてくるとされる山に祀られているようです。
【アラハバキ】 Arahabaki 荒脛巾
関東から東北にかけて見られる客神。つまり、神様は神様ですが、独立した神社に祀られていたりはしないのです。他の神社に一緒に祀られていたり、間借りさせてもらっているような形で名前を見る事ができます。おそらく、大変に古い神なのでしょう。蝦夷に信仰されていたものなのかもしれないですね。
【アラミサキ】 Aramisaki
不慮の死を遂げたなどで、祀ってもらえなかった霊が怨霊となったもののようです。風とも関係があり、この風にあたったり、取り憑かれたりすると、病気になってしまいます。
【アラミタマ】 Aramitama 荒魂
物事に対して激しく活動する神霊、あるいはその状態を指します。勇猛、剛毅などに通じる活動状態ばかりでなく、通常の範囲を超えて過剰に働く力をも示します。また、死んだばかりの死者の霊魂を指す場合もあり、そのような場合は祟りをなす可能性がある危険なものです。〔参照〕 ニギミタマ
【イッポンダタラ】 Ippondatara 一本蹈鞴
片足神の一種です。この神にはいろいろと種類があるのですが、イッポンダタラと呼ばれる場合は奈良県十津川の近辺に、年の暮れに現れるものを指します。これは本来、神事に携わる者の足を傷つけたという記憶が残ったものだと言われていますが、イッポンダタラで興味深いのは、名前にタタラという言葉が含まれている事ですね。タタラは鍛冶に用いる道具ですが、鍛冶と神と片足(もしくは片足が悪い)という特徴は、ギリシャ神話のヘパイトスなどにも当てはまります。もしかすると、イッポンダタラも鍛冶の民と深い結びつきがあるのかもしれません。また、このような片足神は、しばしば片目でもあります。多くはイッポンダタラと同じく、神というより妖怪になってしまっています。
もとは、背中に笹が生えた猪笹王という大猪の亡霊であるともいいます。猪であった時に、鉄砲で目と足を傷つけられたために、こんな姿の妖怪になったと伝えられているのです。
形としては、柱に血のように赤い眼と足が一本だけついた形で、ひらりひらりと宙返りをしながら、雪の上に足跡を残します。十二月の二十日だけ、山の中に姿を現します。
【イツマデ】 Itsumade 以津真天
飢えたまま見捨てられた人の霊が変化したものだといい、獣とも鳥ともつかぬ、異様な姿をしていて、飢餓に苦しむ人を見捨てた相手につきまといます。
【イヌガミ】 Inugami 犬神
狼や山犬をさす場合と、一種の式神をさす場合があります。狼または山犬の場合は、山神の使いとして崇敬されますが、式神の場合は、厭われます。この式神は、体の長い白犬、あるいはいたち、てんのような形の獣の姿をしていると思われ、特定の家系に憑依したり、使われたりします。これらの家系は犬神筋と呼ばれ、敬遠されるようです。犬神がついた家は、福運に恵まれるという話もあります。
【イバラギドウジ】 Ibaragidouji 茨木童子
酒顛童子の眷属です。女の姿でいた時、羅生門で渡辺綱に正体を見抜かれて腕を切り落とされ、後に綱の乳母に変身してこの腕を取り返しに行きました。名前の由来については良くわかりません。茨木は薔薇の仲間の樹ですが、現在の栽培種の薔薇より、野薔薇の仲間と言った方がいいでしょう。山野にあるもの、という事で茨木を名乗ったのか、それとも花の美しさが関係したのか、それとも棘がある事がポイントだったのか……女に変身した事といい、ちょっと女臭い鬼です。
【ウシオニ】 Ushioni 牛鬼
山奥の淵などに住む、一種の鬼です。人食いなので注意が必要です。木挽き(きこり)は、のこぎりの32番目の歯を、「鬼切りの歯」としていて、これがあるぞ、と言えば牛鬼を追い払う事ができるようです。
【ウブ】 Ubu 産神
ウブはお産の事らしいです。ただのウブでは産神か産女かわかりません(^^;。産神(ウブガミ)は出産の前後に赤子を護ってくれる神です。出産は穢れと通じますから、概して穢れを嫌う日本の神としては凄く変わり者。でも、いてくれないと困りますね。また、子供が産まれた時に、その一生の運命を定める神でもあるようです。
産女はウブメと呼びます。妊婦が死んだ場合、しばしばこの産女になりますので、一種の死霊ですね。夜道などにあらわれて、通りかかった男に赤ん坊を抱いてくれと頼みます。これを引き受けると、どんどんどんどんどんどん重くなっていくのですが、その重さに見事耐え抜いた場合は、怪力や金銀を授かる事もあります。
【ウワバミ】 Uwabami 蟒蛇
ウワバミは蛇の異称です。ハム、すなわち噛む事からきているといいます。また、とりわけ大きな蛇をオロチと称します。蛇と霊が結びつく事は日本全国枚挙にいとまがありません。水辺の蛇神は蛇体のまま、あるいは後に龍神の形で水神として崇められ、三輪山の神のように山の神である事もあり、また、神霊でなくとも、恨みや激情のあまり蛇になる説話も数多く伝えられています。最も有名なものとしては清姫があげられるでしょうか。異類婚としても例が多く、全国津々浦々で蛇の男や蛇の女が人間と通婚しています。この場合の蛇たちは、おおむね、淵や池、沼などの水底に棲んでいる事が多いようです。
更に、白蛇のように神使として崇められているもの、鼠をとる生き物として農家の守り神的役割を担っているものもあります。一方、鍛冶の民のトーテムの一つでもあり、金属(財宝)との結びつきも強く、招財の力を持っているとみなされる事などもあるようです。
【エビス】 Ebisu 恵比須、恵比寿、夷
元来は、漁民の神様です。海から流れ着いたものを「エビス」と呼び、福をもたらすものとして祀ったのです。エビスになるものは種類を問わないようで、時には水死人さえエビスとして祀られます。漁民の神ですので、航海安全の神でもあり、また、商売繁盛の神ともされるようになりました。また、後に七福神に数えられるようになりました。天海僧正が定めた七福神では、「律儀」を表すとされているようです。
【オオクチマガミ】 Ookuchimagami 大口真神
秩父の三峰山の神である白い狼です。山神の使いだとも言われています。日本武尊がこのあたりで道に迷った時、この白い狼が出てきて道案内をしたと伝えられています。
【オキクムシ】 Okikumushi お菊虫
麝香揚羽の幼虫(広義には揚羽の幼虫)をお菊虫と呼びます。これは、麝香揚羽の幼虫が蛹になる直前まで、黒地にに白の斑紋を散らし、臭角は短く、多くの突起を持ち、また蛹も、黄褐色で背中部分に朱色の斑点が散るという特異な姿をしており、特にその蛹が立木に縛りつけられた女の姿を連想させるものとしてこのように呼ばれるようになった、といいます。でも何故お菊なのか。お菊といえば、番町皿屋敷の幽霊を思い出しますが……。
説話では苛められた婢が井戸に投げ込まれて稲を害する虫となり、お菊虫と呼ばれるようになったといいます。揚羽類は稲にはつかないはずですから、だとすれば前述の虫とは全く別のものという事になりそうです。他に稲を害する虫となった怨霊に、佐倉宗五郎の霊などもあります。公家や僧侶、武士ならぬ身では恨みを呑んで死んでも虫にしかなれないのでしょうか。
ところが、このお菊虫について、折口信夫や広坂朋信が面白い推理をしています。井戸に投げ込まれた事により、お菊虫は水とも関係があるわけで、古代の田の神への生贄の儀式が変形されて伝えられているのではないかというのです。そうなると、お菊とは豊作(と、そのために必要な水)を願って田の神・水の神に捧げられた乙女をあらわし、これがうまく祀られないと害虫の形で祟るという事になるのかもしれません。
〔参照〕 菊理媛
【オシラサマ】 Oshirasama 御白様
東北地方で民間に信仰される神。桑で作られた男女一対又は馬の首、姫の首などを刻んだり描いたりして、布で包んだものが御神体です。現在は蚕の神とされ、イタコに司祭されていますが、本来は家の守護神であって、御神体は憑代であり、主婦によって司祭されたのだろうと考えられています。御神体は毎年新しい着物を重ね着されていくので、どれも大変着ぶくれています。
【オトヒメ】 Oto-hime 乙姫
本来は、兄姫(えひめ)、つまり年上の姉妹に対する妹姫、あるいは末姫を指す言葉です。また、年若く美しい姫を指す事もあります。固有名詞になっている有名な乙姫といえば、浦島伝説の乙姫と、説教「信徳丸」の乙姫ですが、ここで登場する乙姫は龍と関係が深いところから、前者であると考えられます。
中国では伝統的に海底に住んでいる龍は男ですが、日本では女に決まっています。乙姫の原型も、おそらく、豊玉比売なのでしょう。乙姫は竜宮に住んでいて、魚や亀といった水族を治めており、その竜宮では(おそらく玉手箱を作る事ができる乙姫の力によって)時間の流れが地上とは異なるという事だけがわかっていますが、竜宮の主ならば乙姫も龍のはず。いずれにせよ、水族の長が龍身である可能性は非常に高いといえます。但し、豊玉比売は鰐の姿だと言われていますけれども。
【オニ】 Oni 鬼
醜怪で大力の妖怪。中国では「鬼」は死霊を表しますが、日本では特に関係はありません。なのに何故鬼の字を当てたのでしょう。オニとは「隠(オン)」の転訛であるという説や、オは「御」、ニは尊敬や畏怖を表す言葉だという説もあります。日本書紀には鬼神(あしきかみ)、邪鬼(あしきもの)などが登場しますが、これらは妖怪というよりは大和朝廷にまつろわぬ民をさすらしいです。一般的に、毛深く、尖った爪と歯もしくは牙、そして角を持っている姿で表されます。さらに通俗的には、虎皮の褌をして鉄棒(かなぼう)を持っていたりします。他に、節分の時に追い払われる追儺の鬼もありますが、これはむしろ一種の疫神で、ここで言う鬼とは違うものじゃないかと思います。
ところで、何故鬼は虎皮の褌をして、角をもった姿で描かれるのでしょう。これは、方位にまつわる信仰で鬼門、すなわち鬼がいる(来る)とされた方位が丑寅とされた事に由来するようです。鬼の居るのが丑寅なので、牛のような角を持ち、虎皮をまとっていると想像されたのですね。
【おにじょろう】 Oni-jorou 鬼女郎
字義通りに見るなら、鬼の女郎。鬼は鬼として、女郎はどうとるべきでしょう。一般的にみられるように一種の遊女、蓮っ葉な女と考えるべきか、それとも転訛する前の上臈であると考えるべきか。単に鬼のような女という考え方もありそうです。とはいえ、女の鬼、すなわち鬼女というものは昔からいろいろと記されてきています。渡辺綱に腕を切り落とされた羅生門の鬼や、鈴鹿御前、紅葉などのように、最初から鬼として登場するものもあれば、恨みがつのって鬼と変じたものもあります。ゲーム上での絵をみますと、どちらかといえば後者であるような気もします。日本でも、非常に長く女は男に劣るものとして低く扱われてきています。これは現在でも完全に解消したとは言えないでしょう。歴史的に古くから積もり積もってきた恨みが、いつどのように噴き出すかは誰にもわからぬ事です。もしかすると、男が女に投げかける言葉が、駱駝の背を折る一本の藁になるやもしれません。御注意あれ。
【オバリヨン】 Obariyon
山道などで夜、いきなり人の背におぶさってくる怪異を指します。オバリヨンとは「おぶわれたい」という意味で、生まれる前に死んでしまった子供、死産だった子供の霊が化けたものだと言われます。足にまつわりついてくる事もあります。
【オロチ】 Orochi 大蛇、尾呂霊
大きな蛇の事ですが、「峰(お)の霊(ち)」を意味するという説もあり、中国から日本に至るまで、蛇身のものが山に棲む例はたくさんあります。日本だと、さしづめ三輪山や伊吹山の神などが有名でしょうか。 〔参照〕 蟒蛇
【オンモラキ】 Onmoraki 陰魔羅鬼
中国伝来の妖怪です。一種の屍怪で、死んだばかりの屍が化けたものです。形は鶴のようで、目は凄まじく光り、色は黒く、羽ばたきしながら高い鳴き声をあげます。なぜか、寺に安置されている新仏が十日ほどたったところで化けてしまうようです。名前の由来としては、魔羅、すなわち悟りを妨げる鬼と、日本語の鬼(陰も古くは鬼の事です)が結びついたものだなどと言われています。
【ガシャドクロ】 Gashadokuro ガシャ髑髏
丑三つ時にガシャガシャと音をたてながら現れる、巨大な髑髏です。のたれ死にをした人の髑髏が幾つも集まったもので、人食いの妖怪です。但し、この妖怪は、村上健二の『妖怪事典』によれば近年創作されたもののようで、佐藤有文の『日本妖怪図鑑』にのみ掲載されているということです。
【カッパ】 Kappa 河童
カワタロウ、ガタロ(河太郎)、スイジン(水神)、スイコ(水虎)、エンコウ(猿猴)など、いろいろな呼び方があります。おおむね5〜7歳くらいの子供程度の体格で、手足の指の間には水かきがあり、背中には亀のような甲羅、頭には皿があり、髪はおかっぱで振り乱しています。頭の皿には水が入っていて、この水が河童の力のもとです。
北関東や東北の一部では、左甚五郎が東照宮の建造を手伝わせるために呪いをかけた木っ端が、造営の終わった後、川に流され、「人の尻でも食え」と言われたところから河童になったといいます。ここにもある通り、河童は、人の尻子玉を抜くと言われ、抜かれた人は最期ににへらっという感じで笑うし、これで死んだ人は尻に穴が開いているのだそうです。
また、河童はしばしば馬を川に引きずり込みます。牛を引きずり込む事もあります。
河童が好むものはキュウリなので、キュウリを食べて川へ行くと引かれるとも言うし、天王の祭またはお盆までは、川など、水辺に行くと引かれやすいとも言います。キュウリののり巻きの事をカッパ巻というのは、ここにちなむのでしょう。反対に、ふくべ(夕顔の実)を嫌うと言われる事が多く、これを食べたり、持ったりして行くと、河童よけになるそうです。もうひとつ河童が好きなものは、相撲です。なかなか力が強いので、河童と相撲をとる時には、まず深くお辞儀をして、相手にもお辞儀を返させれば、頭の皿から水がこぼれるので、力が抜けてしまうといいます。また、あらかじめ仏前にあげたご飯を食べておいたり、手に唾をつけておくといいとも言われます。
河童が非常に嫌うものは、金気です。住処に金属のものが沈んでいるだけで、苦しむのです。なかでも刃物は大変に嫌います。西日本、ことに四国では、鹿の角を同様に嫌うようです。
また、河童の天敵は、猿なのだそうです。猿が河童を嫌う事ははなはだしく、河童さえ見れば、猿は必ず襲うそうです。
河童の腕は、左右が繋がっているといい、片方の腕を見た目の倍の長さに延ばす事ができます。これは、特に、夏冬で川と山に居場所を替えると言われる地方での特徴です。ちなみに、山へ行った時は、ヤマワロと呼ばれるのです。
スイジンという別名がある通り、日本でも代表的な水の精の一種であり、しばしば竜宮が特定の淵で膳・椀を貸すと言われているのと同じく、河童も、膳・椀を貸す事があります。
また、多くの地方で、河童が便所で女の尻を触ろうとして腕を切られたという言い伝えがあり、切られた腕を返してもらうかわりに、血止め接骨の妙薬(傷薬)を伝授します。また、毎日魚を持ってくるという約束をする事もあります。この場合は、魚をかけておくと言われた場所に金気のものが来ると、魚を持ってこなくなります。また、絶対に腕を返してやらなかった場合は、家運が傾いてしまうようです。悪さに対する仕返しとはいえ、あまり無慈悲なのも考えものですね。但し、証文変わりに切り落とした腕を取っておいたという話が九州の方には幾つか伝えられていて、この腕をつけた水を飲むと、その夏は水難を逃れられるといいます。
【カブソ】 Kabuso
川獺ではないかと思われる妖怪です。大きさは仔猫くらいで体の色は黒く、短い前足と、先の方が太い尾を持っていて、夜道を行く人の提灯の火を消したり、人間を化かしたりします。美女に化けたり、人を石などと相撲をとらせたりするそうです。
【ギバ】 Giba
箱根から伊勢のあたりまで、街道に出没した魔物です。アブくらいの大きさをした玉虫色の馬に乗った緋色の着物の女で、魔物になる前は、馬の皮剥をなりわいとする非人の家に生まれた娘だったのだそうです。
ギバは晴れたり曇ったりする初夏の日に、つむじ風とともに空からひらひらと舞い降りてきて、馬を驚かせます。ギバに会った馬は、細い糸のような赤い光を発してたてがみを逆立て、竿立ちになって三べん右回りにまわり、倒れて死んでしまうのです。
これを防ぐためには、関東では馬の耳を切ったり、緊急の場合は噛みついたりします。箱根以西では、刀を抜いて馬の行く手に斬りつけたり、半天を馬の頭にかけて無理矢理左に回し、針を馬の尻尾の上の骨に打ち込むのだそうです。こうすると、馬が助かるといいます。
【キュウビノキツネ】 Kyubi-no-kitsune 九尾狐
10世紀にあらわされた「延喜式」(宮中の儀式などについて詳細に解説したもの)によれば、九尾狐は神獣とされています。赤褐色、つまり普通の狐色であるとも、白狐であるともされていたようです。白い鹿などと同じく、天皇の治世がよろしく、世が平穏繁栄している時にあらわれる瑞獣として扱われていたわけです。これが、江戸時代あたりに玉藻前の伝説が定着して、悪狐と同一視されるようになっていったようです。しかしながら、知識人の間ではあくまでも玉藻前伝説とは俗説であって、九尾狐が悪狐である事を否定する人もいました。
〔参照〕 中国の九尾狐、玉藻前
【クグツ】 Kugutsu 傀儡
本来は莎草(くぐ)と呼ばれる草で編んだ霊物を入れる容器で、海人の持ち物でした。これを持つ人をクグツと言い、また、その部族に属する女もクグツと言われ、遊女を兼ねる事もあったようです。これがだんだんと形代である人形を指すように転訛したのでしょう。人形自体、洋の東西を問わず、呪術に用いられてきましたし、人の姿を写すところから、良い意味でも悪い意味でも霊的な容器になりやすいものです。ゲーム中に登場したクグツはマネキンかアンドロイドのような形をしていますが、材料や作り方が変わっても、その特質は変わらないのでしょう。〔参照〕クグツシ
【クシミタマ】 Kushimitama 奇魂
ニギミタマから分化した神霊の状態で、全ての事を知る叡知に満ちた神霊を指します。
【クダ】 Kuda 管狐
クダギツネ。飯綱(イヅナ)ともいいます。おそらくは室町期くらいに登場した飯綱使いによって広められたもので、憑き物の一種ですが、一面、使い魔と言えます。キツネというからには霊狐の一種かとも思えますが、一説に鼬のような生物であるともいい、実はさだかな形がわかりません。主人である呪術師の持つ竹などの管に封じ込められており、自在に使役されます。小さく、人の目には見えないともいいます。これが憑くと託宣や占いができる様になり、富貴になりますが、去れば貧困になるといい、また、他人にとり憑かせて相手を不幸にする事も可能です。また、管狐に憑かれた人は、生味噌しか食さないとか。
略してクダとも言われますが、これは竹筒の中で飼われているために呼ばれたものだとか。当然、実在の獣である狐そのものより小さく、鼬に似ているともいわれます。また、紡績に使う管(くだ)に似ているか、それくらいの大きさしかないので、管狐と呼ぶのだともいいます。
長野県の伊奈郡を中心にみられました。
【クダン】 Kudan 件
人間と牛の間に生まれた妖怪。中国地方から九州にかけて出没します。顔は人間、体は牛という姿で、生まれるとすぐに疫病や災害、あるいは豊作の予言をし、予言し終わるとすぐに死んでしまいます。この予言は、はずれるということがありません。件の絵図を貼ったり、身につけておくと、家内繁盛、厄よけのお札になるとも言われます。
【ゴズテンノウ】 Gozutennou 牛頭天王
牛頭大王。武塔天神。非常な荒神で、このため、素戔鳴尊と習合され、京の八坂神社(祇園社)に祀られています。本来は疫病神で、疫鬼を治めるものでもあります。黄牛の頭をして憤怒の相を見せる、あるいは白牛に跨って矢や宝珠などを手にした憤怒相の神として表されますが、これに反してもともと蛇身である可能性が高いです。例えば、祇園の神は胡瓜の上に蛇の姿で降臨したという伝えがあり、また、金比羅神と同一であるともいわれます。金比羅はまさしく蛇神です。さらに、『本朝神社考』では八坂神社の祭神として牛頭天王、婆利女、毒蛇気神の三柱であるとし、これは婆利女が牛頭天王の妃、毒蛇気神が子神であると考える事ができます。
なお、初なりの胡瓜あるいは瓜は毒があるといい、天王の祭にはこれを川へ流して疫病を避ける習俗が広く行われています。
また、天刑星が地上に墜とされて牛頭天王になったともいい、北海を治めるようになったとされます。陰陽道では牛頭天王は南海の沙渇羅龍王の王女との間に八将神(八王子)を生みだした事でも知られます。この八将神とは大歳神、大将軍、大陰神、歳刑神、歳破神、歳殺神、黄幡神、豹尾神です。
この結婚に関してはもう一つの説話が伝えられています。王女のもとへ行く途中、牛頭天王が宿を求めようとした時、富裕な巨旦はこれを断ったのですが、その兄の貧乏な蘇民は心を尽くして牛頭天王をもてなしたのでした。そのため、牛頭天王はここを去る時、茅の輪を作って家族が身に帯びるように教え、その印のない者は全て討ち滅ぼしてしまったのでした。また、後々疫病がある時は同じように茅の輪を帯びて蘇民の子孫であると証せば、疫病を免れるとも教えました。
【コダマ】 Kodama 木霊
年経た樹木の霊です。しばしば、人間の娘と通婚する事があります。木が切り倒される時には当然木霊も死んでしまいますが、このような木を切り倒すのは容易な事ではありません。一晩たてば切り口がふさがってしまうからです。また、切り口から血のようなものが出る事があります。木そのものも大変固く、一日で斧や鋸の歯がだめになってしまうほどです。このような木を倒すためには、切った時に出た木っ端やおがくずを燃やしてしまわなくてはなりません。
また、切り倒した木の木霊が人間の女を恋い慕っていたり、妻にしていたりする場合は、その女が引き綱に手をかけないと、千人集めても木を動かす事はできないようです。
【コダマネズミ】 Kodamanezumi 木霊鼠
栗色をした小さな山鼠で、背中には火のような模様が3つあるそうです。むごい事に、この鼠は、冬のうんと寒い日に、背中がはじけて死んでしまいます。その時は、ポーンという音がするそうです。
これはなぜかというと、もともとはコダマ連中(連中というのは、グループというような意味です)を名乗っていたマタギ(猟師)たちが、お産を控えた山の神を入れる事を拒んだからだと伝えられています。
ちなみに、猟師の山小屋というのは女性の出入りが禁止で、特に、お産は古来不浄のものとして嫌われてきたのです。なお、山の神のお産を助けた人は、昔から福運に恵まれるとされています。
【コッパテング】 Koppatengu,Konohatengu 木っ端天狗、木の葉天狗
天狗の類では最も低級で、神通力は使えません。芝天狗ともいいます。大きな鳥のようにも見えるようです。群で山中の川の上に現れ、魚をすなどったりします。
【ザオウゴンゲン】 Zaou-gongen 蔵王権現
おそらくは巨石に由来する神で、役行者によって初めて金峰山で祀られ、魔障降伏の権能を持つといいます。全身が青黒く、三つの目を持っています。三鈷杵を持った姿で岩から現れました。後に金峰山が兜率天に関連づけられたため、弥勒菩薩と同一視されるようになって、全国的に伝播しました。
【サカサクビ】 Sakasa-kubi 逆さ首
『稲生物怪録』(いのうもののけろく)に登場する妖物。十六歳の武士、稲生平太郎が友人の力士と百物語をした翌日から三十日にわたり、様々な怪物や妖物と出会い、闘うのですが、その初期に登場したものです。あたりに突然たくさんの青瓢箪がつり下がるなか、女の生首が逆さになって辺りを歩き回ったりぴょんぴょん跳ねたり、平太郎を嘗め回したりしたというもの。なお、女の生首は後の方でも、首に一本の手がついただけのものが登場し、平太郎を撫でまわしたといいますが、同一のものかどうかは不明。
【サキミタマ】 Sakimitama 幸魂
ニギミタマから分化した神霊の状態で、幸いをもたらす恵み深い神霊を指します。なお、少名毘古那は大国主命の幸魂・奇魂でもあるといわれるのですが、このように海から流れ寄ったものが幸を運んでくるという信仰は現代に至るまで沿岸各地で広く信じられており、波間に漂う水死体を手厚く葬ってから福運に恵まれたり、水死者の霊を恵比寿神に祀って福運を招来したりした事が、語り伝えられています。
【ザシキワラシ】 Zashikiwarashi 座敷童
ザシキボッコともいいます。岩手や秋田など、東北の方の家や蔵、稀には学校などにも出ました。3〜7歳くらいのきれいな子供で、赤い着物を着ていたり、丸裸だったりします。たいていは、そのくらいの年の子供にしか姿を見る事ができませんが、家人には見えたり、特定の場所でなら誰にでも見える事もあります。
その家に福をもたらす存在で、座敷童がいなくなると、家運が傾き、座敷童が住むようになると、家が隆盛するといいますので、一種の守り神だと考えられるでしょう。
【ジャキ】 Jaki 邪鬼
字義通りには邪悪な鬼ですが、この場合の鬼は角の生えたオニではなく、大抵はモノ、いわゆる物怪をさすようです。つまり、もっぱら人に悪さをする自然物や器物の霊が邪鬼という事になります。また、羅刹や夜叉といった神話などに登場する悪鬼も、邪鬼と呼ばれる事はあったようです。
【シャチホコ】 Shachihoko 鯱
魚の姿をした水の精です。火難を除けるとされ、お城の天守閣などにその姿が飾られました。
【シュテンドウジ】 Shutendouji 酒顛童子
捨て童子の転訛した名前だといわれます。大江山(異説として伊吹の千丈ヶ嶽)に棲む鬼の頭領で、頻々と京に現れては姫君をさらい、側女にしたり喰ったりしたのでした。また、その配下には茨木童子、いわゆる羅生門の鬼などもいます。ついに、池田中納言の姫がさらわれると、帝が鬼退治を命じて、源頼光らが奇策を用いて鬼達を皆殺しにしました。つまり、神便鬼毒酒なる妖しい酒(これを彼等は途中で手に入れるというか授けられるというかするのですが……)で鬼を酔わせ、彼等が身動きできない間に殺してしまうのです。相手が鬼とはいえ、随分卑怯なのでは……。ちなみに神便鬼毒酒というのは、人間が飲めば百人力となり、鬼が飲めば毒となるという、みょ〜てけれんな酒なのです。もしかして、鬼は人間と生理が異なるのでしょうか?
【ジュボッコ】 Jubokko 樹木子
多くの死者が出た戦場跡などに生える怪木。通行人をつかまえて血を吸うとされるが、村上健二の『妖怪事典』によれば伝承や古文献には記載されておらず、近年の創作である可能性が高いようです。
【スイコ】 Suiko 水虎
虎のように鋭い爪を持ち、前身が甲に覆われた水の怪物です。大きな河童とも言われますが、河童の仲間は多いですから、本当に水虎が河童の一種なのかどうかはわかりません。また、河童と水虎が同じ地方に棲んでいる事すらあるようです。名前自体は中国から日本に渡ってきたものらしいですが、中国の水虎と日本で水虎と呼ばれているものが同じかどうか、これも不明です。似たようなものを同じ名前で読んだ可能性もあるからです。ひょんひょんひょん、と鳴くと言われます。
【スダマ】 Sudama
「棲み潜む魂」を意味し、霊魂の事です。といっても、人間の魂ではなくて、天然万物に宿る霊ですね。固有の名前を持つほどの力がない群小の精霊です。
【ゼンキ】 Zenki 前鬼(善鬼)
前鬼として最も有名なのは、役行者の護法となった鬼の事でしょう。山中でよく役行者に仕え、身の回りの世話をなしたといいます。柳田國男によれば、吉野の大峯山に棲んだ五鬼という一族が、前鬼後鬼の子孫と称し、古くは山人であったろうという事のようです。また、一方では、もともといろいろな通力を備えていたのだけれども、里人の娘と婚したのがもとで、子孫は通力を失ってしまったとか。
【センコ】 Senko 仙狐
通力を得るほど齢経た狐です。狐は、長く生きるとだんだん尾が分かれてくるそうで、当然、尾が多く分かれているほど強い力を持つ狐という事になります。狐はまた、古くから異類婚もしてきました。といっても、蛇神が正体を隠して女のもとへ通うのとは違い、日本では大抵は恩返しのために女となって訪れ、女房となるのですね。子供ができた後、正体がわかってしまい、身を隠す事がほとんどです。たとえば安倍晴明の母親もこのような狐であったと伝えられています。
仙狐という場合は千年生きた狐で、天狐、空狐、地狐、阿紫霊とともに五社神をなします。毛色は真白の白狐になります。江戸時代頃の四つの狐の階級では天狐に含まれます。
狐が化ける、という話はお隣中国の方が古くからありますが、こちらではより邪な性格が強くなるようです。人を喰うとも伝えられています。
【センリ】 Senri 仙狸
狐が長生して通力を得るなら、狸も負けてはいません。やはり、長く生きて通力を得る事があります。とはいっても、尾は分かれないようですが……。また、異類婚の説話も狸については伝えられていないようです。
【ダイコクテン】 Daikokuten 大黒天
七福神の一人に数えられます。もともとは、インドのマハーカーラ(シヴァ)を漢訳した名前です。本来は破壊の神ですが、仏教に入って福の神となり、日本に渡来してからは、大国主命と混ざり合ってしまいました。天海僧正が定めた七福神では「裕福」を表します。
大黒天は、お寺で厨房に祀られる事が多く、また、しばしば、打ち出の小槌を持ち、米俵を携え、白いネズミを従えた姿で表されます。
【ダツエバ】 Datsueba 脱衣婆
三途の川の岸辺にいて、亡者の着物を引き剥ぐというお婆さんです。
【タマモノマエ】 Tamamo 玉藻前
室町時代の末頃に発生したとみられる伝説で、謡曲『殺生石』にとりあげられ、江戸時代に入ってから『三国妖婦伝』や鶴屋南北の『玉藻前御園公服』、式亭三馬の『玉藻前三国伝記』など、有名な戯作家に次々に題材とされたため有名になりました。
物語は、このようなものです。玉藻前は鳥羽法王の寵姫で、美しい事は美しいものの、大変な悪女でした。これを陰陽師の安倍泰成がみますと、実は天竺と中国でも王宮で一番の寵姫となり、王をたぶらかして国を滅ぼさせた金毛九尾の妖狐である事がわかったのでした。しかもそれは、天地がまだどろどろの状態だった時に噴き上げた毒気が凝り固まってできたものだったのです。正体を見抜かれた妖狐は那須野に逃れ、とうとうそこで石と化しますが、それからも強い毒気を発して、玄翁和尚によって石の中の狐精が祓われるまで周辺に生き物が近づけばたちまち命を落としたといいます。(那須八郎によって退治されたともいいます)。古くは、尾が二またの狐であるとしているものもあり、金毛九尾に固定されたのは後の時代になってからと思われます。尾の数が多いほど高齢で、術力も大きいという説がありますから、これほどの狐には尾の九つくらいは必要だと考えられたのかもしれません。
〔参照〕 センコ
【ツチグモ】 Tsuchigumo 土蜘蛛
北野の塚に棲んでいた四尺あまりの大蜘蛛……といいますから、相当な大蜘蛛ですね。これが源頼光に祟って瘧(おこり)にかからせたのですが、ある晩、七尺くらいもある法師が縄で自分を縛りつけようとしているのに気づいた頼光が、枕もとの名刀膝丸をとって切りつけると、血の痕を残して逃げてしまったのでした。これを辿っていくと塚に潜んでいた蜘蛛がいたので、絡め取って四条の河原に串刺しにして晒したといいます。また、膝丸はこの事を記念して蜘蛛切と名づけられたという事です。
これは謡曲『土蜘蛛』などに語られている物語ですが、これ以外にも土蜘蛛と呼び慣わされていたものがあります。つまり、上代には九州から東北にいたる日本全国に棲んでいたといわれる異類で、穴居し、大和朝廷にはまつろわぬ民の、おそらくは蔑称でした。名のあるものとしては、尾があったという土雲八十建(ツチグモヤソタケル)、背が低く手足は長かったという葛城の土蜘蛛、脛の長さが八束もあり、大力だったという越後の土雲、八掬脛(ヤツカハギ)などがいます。穴居したというところから、もしかすると北野の塚に棲んでいた土蜘蛛も、八本脚の蜘蛛ではなく、こうした異民だったのかもしれませんね。
【ツチノコ】 Tsuchinoko 土の子、槌の子
山野に棲む怪蛇です。頭は槌(ハンマー)のような形をしていて、ころころと転がって動くと言います。また、その胴体はビール瓶のように太いとも言われます。凶暴で、色は黒く、人を見ると襲いかかるとも言われます。また、ツチノコを見た者は毒気にあたって病死してしまうそうです。もともとはノヅチと同じものか、関係の深いものだったと思われますが、「ビール瓶のような形の不思議な蛇」として、現在に至るまで、日本のあちこちで目撃譚があります。
【ツトッコ】 Tsutokko 苞っ子
ノヅチやツチノコの一種と思わている怪蛇です。但し、ツトッコに限り、蛇を殺した時に頭を放置しておいたものがこれになると伝えられています。その形も、槌のような形(Tの字型)や、苞(つと)のような形と言われている他、蛇の頭に小さな尻尾がついたようなものとも言われます。
【テッソ】 Tesso 鉄鼠
平安時代の中頃、近江の園城寺という天台宗の寺に、頼豪という高徳の僧がいたといいます。時の白河帝に跡継ぎができる様祈祷し、みごとに皇子が誕生したので、恩賞として三井寺の増築を願い出たのです。ところがこれに延暦寺など有力な寺の妨害があって、とうとう恩賞はないままでした。そうするうちに頼豪は断食修行をして死んでしまうのですが、その後延暦寺に鉄の牙を持つ鼠の妖怪が出るようになり、これが頼豪の怨霊であると云われるようになりました。すなわち鉄鼠です。『源平盛衰記』や『平家物語』でも言及されており、当時としては有名な話だったのだと思います。高徳の僧が怨霊になるというのは解せない話ですが、恨みを持っているとみなされた霊が怨霊として祟る事は当時の常識だったのです。
【テナガ】 Tenaga 手長
本来、給仕人や侍者を指し、神に仕える者を手長と呼んだ例が幾つもあるそうです。しかしながら、手長足長と呼ばれる場合には、手が長く足の短い手長という神である場合があります。
〔参照〕 足長
【テング】 Tengu 天狗
山中でさまざまな怪異を起こすとみなされる一種の山神。激烈な感情と怪力を持ち、空を飛びます。多くは修験者の格好をして赤ら顔、長い白髪、長い鼻か嘴を持つ姿で表されます。ときに神隠しをするといわれますが、この時さらわれた者は天狗の情人や稚児にされるともいいます。稚児といえばあれですが、日本で男色が不道徳なものとされたのはほんと〜に近年の事ですから(^^;。神隠しではありませんが、鞍馬山で天狗の教えを受けたといわれる牛若丸ももしかすると……(アブナい想像)。羽団扇は空を飛ぶだけでなく、風を起こす事もできるらしいので、風の神の一面もそなえているかもしれません。
なお、時代や地方によって、天狗の姿や性質は様々に違います。人を化かす、人に取り憑くなどともされ、今昔物語集には、糞臭がするなどとも記されています。
【トウビョウ】 Toubyou
中国地方の霊蛇です。煙管の羅宇(ラウ。雁首と吸口の間の部分)くらいの大きさ、つまり20数センチくらいの蛇ですね。特定の家に代々飼われていて、子孫に否応なく伝えられます。家長の心を察して、人の目に見えない姿をとって他人にとり憑き、病気にさせてしまいます。これは、その人がトウビョウの持ち主と和解しない限り治る事がありません。
持ち主にとっても結構厄介ですが、殺しても舞い戻ってくる上、あまり怒らせると主人にとり憑いて苦しめる事もあるので、おろそかにはできないようです。クダや犬神筋と似ていますが、それらと異なり、差別視されたり特別視されたりする事はないと云われます。
四国の方では同じ様な霊蛇をトンボガミ、トンベガミ、あるいは略してトンベとかガミなどと呼びます。
【トドメキ】 Todomeki 百百目鬼
ドドメキ。生まれつき手が長く、お鳥目すなわち銭を盗むのが大変上手な女が昔いて、盗んだはしから長い手にくっつき、目となってしまったといいます。これが百百目鬼。水木しげるは、一種の銭の精で、銭の気と女がひきつけあう結果、盗んだという事になってしまったのではないかと推測しています。
【ニギミタマ】 Nigimitama 和魂
静止した状態の神霊、あるいはその状態そのものを指します。荒魂に対して神霊が通常の状態である事を指す場合もあります。また、後にはこの状態からさらに奇魂と幸魂が分化しましたが、本来は荒魂と和魂でひとつの神霊の両側面を表すようです。
【ヌエ】 Nue 鵺
頭は猿、尾は蛇手足は虎で、鳴く声はトラツグミに似ていたという怪物。空を飛び、黒雲に姿を隠す事ができます。近衛天皇や堀河天皇がこれに悩まされました。堀河天皇の時は源頼政が矢で射落とし、うつぼ舟に入れて川へ流したといいます。元来は霊魂を運ぶ霊鳥だったものが、変化して凶鳥になったのかもしれませんね。
【ネコマタ】 Nekomata 猫又
猫も、長く生きたりすると霊力を持つと言われます。また、その時に尻尾が分かれるといいます。後足で歩行したり、人語を解したりします。をを、賢い。行灯の油を舐めるというのは結構言われています。しばしば女に化けます。説話に登場するのは大概、飼主の仇を討つためで、女に化けるのもその手段です。また、人を喰い殺して化けるので、怪物的なのですが、亡き主人に忠実で仇討ちをしちゃうというのは、とってもけなげなのでは?
【ノヅチ】 Nozuchi 野槌
チは霊の事ですから、字義通りには野の精霊です。また、イザナギ・イザナミが神々を生んだ時に大山津見の次に生まれた鹿屋野比売(かやのひめ)の別名が野椎(のづち)の神であると云われています。鹿屋野比売の「かや」は萱、つまり草の事で、つまり草原の女神なわけですね。
普通の蛇から頭と尾の部分を切り落としたような寸詰まりの形であるとか、槌のような形をした蛇といい、蛇としては随分寸詰まりで不細工です。しかも、道を転がってきて人を襲うというのですから、どこが蛇なんだ〜、と言いたくなります。転がる時はちょうど瓶を転がすように行くのだそうですが、どういう仕掛けか、坂道を転がり登る事もできるとか。みょ〜てけれんですねぇ。そればかりでなく、とんぼ返りをするとか、よく跳ねるなどとも伝えられています。
地方によって、ツチノコ、横槌蛇(ヨコヅツヘビ)、槌蛇(ツチヘビ)、苞っ子(ツトッコ)などという呼び方があります。
【バク】 Baku 獏
同じ名前の動物がいますが、キリンと麒麟が違うように、獏も実在のバクとは違います。その姿は熊に似て、鼻は象のように長く、目は犀のようであり、尾は牛、脚が虎に似て、体には斑点があると伝えられています。ほら、実在のバクとは似ていないでしょう。一種の霊獣で、夢を食べます。ですから、悪い夢を見た時は獏に食べてもらって、禍を祓うわけです。中国では病魔も獏に食べてもらうらしいです。
【ハンニャ】 Hannya 般若
もともとは仏教用語で、悟りに至るための智慧をあらわし、諸佛を生みだした母であるともされるのですが、何故か鬼女を表す能面の名前として用いられ、ここから、日本では鬼女そのものをも意味するように転訛しています。ことに、嫉妬に狂った鬼女に対して使う事が多いように思われます。
【ヒダル】 Hidaru
ひだる神、ダル、ガキなどと呼ばれる事もあります。山中にいて、姿は見えませんが、これに取り憑かれると、急に「だるく」なって、動けなくなってしまうのです。そういう時は、何でもいいから何か食べるか、掌に米という字を書いて、それを飲み込むといいと言われます。但し、魚を好むという話も地方によってはあるようなので、何でもいいから食べるといっても、魚は避けた方がいいかもしれません。
【ヒノエンマ】 Hinoenma 飛縁魔
美しい女の姿で、夜な夜な男の血や精を吸い、取り殺す妖怪です。
もともとは干支の組み合わせ、つまり暦法からきた俗信で、丙と午はどちらも火性であるため、この巡り合わせの年は火事が多いと言われました。また、この年に生まれた女は「夫を喰い殺す」と忌まれました。文字通り取って喰うわけではなくて、男を滅ぼす(ほどに強い)宿命だという事でしょう。つまりは、男を上回ってしまう、男を霞ませてしまう、そういう女になるとみなされていたようです。
【ヒョットコ】 Hyottoko 火男
ヒョウトク。汗水たらして刈った柴(焚きつけなどに使うもの)を、町で売れなかったとか、異様な穴をふさいだ方が良さそうという理由から、竜宮や山の神様に捧げると言って川に流したり穴に押し込んだりすると、そのお礼に、汚らしい小さい子供をもらいます。一般に竜宮童子と呼ばれるものですが、山の神様から授けられた子供がヒョットコです。いつも何もせずに、いろりにあたってばかりいるので、火男(ヒョットコ、ヒョウトク)と呼ばれるようになったのです。
このヒョットコは、火箸でおへそをつつくと、金の粒をひとつ生み出しました。そのまま毎日、節度をわきまえて金を出してもらっていればいいのに、たいてい、欲張りなおかみさん(お婆さん)が、もっと金を出させようとぐいぐい火箸をつっこんで、殺してしまうのです。ヨーロッパ民話の金を産む鵞鳥と同じですね。
ヒョットコは、自分の顔の面を作って台所にかけておけば、家に福運をもたらすと言って死んでしまいます。
【フグルマ】 Fuguruma 文車(文車妖妃)
正式には文車妖妃(ふぐるまようひ)といいます。手紙、特に艶書などの、強い執心が込められた手紙が妖怪となったもので、女性の姿をしています。
【フクロクジュ】 Fukurokuju 福禄寿
福(精神的な幸福)、禄(物質的な幸福)、寿(寿命、肉体的な幸福)を体現した福の神で、七福神の一人に数えられます。天海僧正が定めた七福神によれば「人望」を表すそうです。寿老人ともいい、道教由来の神様で、南極星の化身です。もともとは、人間の寿命を定める神様でした。
【フジムスメ】 Fujimusume 藤娘
歌舞伎、長唄の題で、大津絵から抜け出した娘が藤の枝を持って踊るものですが、六世尾上菊五郎がこれを藤の精と見立て、以来それが踏襲されるようになりました。この由来から、ゲームに登場したフジムスメは絵の怪であるとも、花の精であるとも考えられます。
【ベンテン】 Benten 弁天(弁才天、弁財天)
七福神に数えられる女神です。琵琶を持ち、艶麗な姿をしています。もともとはインドのサラスヴァティーが原形で、技芸の神様とされています。すなわち弁才天なのですが、日本に入ってから弁財天と表記が転化するに従って、富を授けてくれる女神という機能も持つようになりました。天海僧正が定めた七福神の見方では、「愛嬌」を表します。
ところで、七福神には毘沙門天(多聞天)も数えられているのですが、福禄寿と寿老人が実は同一の神であるため、寿老人のかわりに吉祥天が数えられる事があります。毘沙門天は吉祥天と夫婦であるとされているため、弁天はあぶれてしまいます。そのためか、弁天にカップルがお参りすると、別れる事になると言われる事が多いようです。
【ホテイ】 Hotei 布袋
七福神に数えられる神様で、大きな袋を持っています。この袋から、「布袋」を呼ばれるわけです。原形は、中国の禅僧で、契此(かいし)と呼ばれる実在の人です。この人は、いつも大きな袋を持っていたので、布袋和尚というあだ名で呼ばれたのだそうです。天海僧正が定めた七福神では、「大量」を表します。
【マガミ】 Magami 真神
〔参照〕オオクチマガミ
【マメダヌキ】 Mamedanuki 豆狸
主に西日本に棲む化け狸。家の守り神としての性質を持っていて、納戸や酒蔵に棲み着きます。幼い子供くらいの大きさの、白髪の老婆の姿で現れたりします。また、徳島では夜になると山頂に火を点す事があり、この火が見えると必ず翌日は雨になるそうです。本体は犬くらいの大きさの狸に似た獣で、非常に賢いと言われます。広げると八畳敷きにもなる大変大きな陰嚢を持っていて、これを立派な座敷に見せかけたり、頭にかぶって変身したりします。大阪などでは、人に取り憑く事もあったようです。
【ミシャグジさま】 Mishaguji-sama 御社口様
諏訪大社の御柱祭と関係の深いものです。となれば、蛇体であるかもしれず、また、祀られているタケミナカタとの関連も考えられます。さらに、タケミナカタがオオクニヌシの子である事も考えあわせれば、根の国との関わりもあるかもしれません。
【ミズチ】 Mizuchi 蛟
水の霊(チ)、つまり水霊の事です。蛟の字があてられますが、これは中国の龍の一種ですね。本来は違うものではないかと思いますが、蛟(コウ)の文字があてられるくらいにはそれと似たものだったのではないでしょうか。すなわち、水底に棲む蛇体もしくは龍神の精霊だと考えられます。
『和漢三才図会』によれば、手足のある三メートル前後の蛇型のもので、全身が鱗に覆われ、胴回りに比べると頭部が小さく、尾の先は肉が輪状になっているとか。〔参照〕 中国の蛟
【モウリョウ】 Mouryou 魍魎
山河の精霊。中央の神々にまつろわぬ、土着の群小の神霊や精霊で、コダマ、スダマなどと呼ばれるものです。後代には、赤黒い体をしえ耳が長く、眼も赤い、三歳くらいの子供くらいの背丈のものとして表されました。〔参照〕 中国の魍魎
【ヤツフサ】 Yatsufusa 八房
言うまでもなく、『南総里見八犬伝』に登場する霊犬です。物語中では、敵の大将の首をとってきた者に姫を与えるという殿様の言葉に従って、見事それを果たした犬が、結局は姫と婚姻するという異類婚から始まって、これを憎んだ殿様が差し向けた家来により、犬が殺されてしまう事、姫の持つ不思議な数珠が飛び散って、この犬の生まれ変わりである八人の勇士の護り石となるわけです。
このように、愛犬であった犬が異類婚を望む話、生贄となった娘を救うために犬が活躍する話は結構例があるみたいです。
とはいえ、八房の原型はおそらく槃瓠(ばんこ)であろうと考えられます。これは黄帝の飼犬で、天帝の使者として働いていましたが黄帝の息女と結ばれました。また、そのためにこの皇女と神犬は深山の岩室に隠れ棲み、孤絶された生活を送らなくてはなりませんでした。皇女は犬の子を産んだとされています。
【ヤコウ】 Yakou 夜行
首のない馬に乗った妖怪。
【ヤトノカミ】 Yatonokami 夜刀神
角のある蛇。これを見ると、家が絶えると言われます。新田などの開拓にあたり、邪魔をしたという話が『常陸風土記』などに古代の説話として残っていますが、結局は朝廷に追われてしまいました。ヤトという言葉は、窪地や谷間をさす言葉ですから、夜刀神とは谷間の神という事になります。山がちな場所では、谷間は水の流れる場所ですから、蛇が棲むにはふさわしい場所であるといえます。また、谷間は里が作られるところであり、従って夜刀神という名は里や家の守護神である事を示していたのかもしれません。いずれにせよ、蛇を家の守り神とみなす地方は今でも残っているそうです。角はないと思いますけどね。
【ヤマウバ】 Yamauba,Yamanba 山姥
若いものは、山姫ともいいます。山の中に棲む女で、しばしば、鬼女のようにも描かれます。古くは山の姫神であったと思われ、非常にたくさんの子供を産み、時には、いろいろな形で、人に福を与える者でもあります。特に、山姥のお産を手伝うと、非常な福に恵まれるようです。また、鬼女としては、子供を取って食おうとして失敗し、かえって命を落としたために、山姥の血が、蕎麦などの山で作付けされる作物の根の、赤くなった証拠として説かれます。
高知の方では、山姥が「おうい」と呼ぶ声が聞こえると、その年は大変豊作になると伝えられています。但し、呼び声に答えてしまうと、命を落としてしまうのだそうです。
現実に、山奥に棲んだ人々のうちの女性が山姥と言われた事もあります。柳田國男が『遠野物語』やその他の著作で述べ伝えたところによると、若いもの(山姫)は色が白く、裸か、木の葉を綴ったような衣を着て、髪は足首に届くほど長く、背が高いそうです。男は、山丈と呼ばれます。 〔参照〕コダマネズミ
【ヤマジョウ】 Yamajou 山丈
山姥と対になるもの。山人の男です。大抵は背が高いとしていますが、資料によっては、逆に、背が小さいものとしている事もあります。非常に速く山中を移動し、力があります。また、相撲と、米の飯やお餅、酒を好みます。これらと交換に、荷物を運んだり、獲物をくれたりする事もあります。
大抵は、木の葉を綴ったようなものをまとっており、体の色は赤く、目は異様に鋭く輝いています。若いものは、ヤマワロと呼ばれる事があります。
【ヤマチチ】 Yamachichi 山地乳、山父
蝙蝠が年経て野衾おtなり、それが更に年を取って山地乳になり、嘴のある獣の姿をしています。サトリの怪の仲間でもあります。人の寝息を吸いに来ます。また、その時、人の胸を叩くとも言います。もし、それを別の人が見れば、息を吸われた人は長寿に恵まれますが、誰も見る者がなければ、翌日に死んでしまいます。主に東北地方に棲んでいます。
【ヤマワロ】 Yamawaro 山童
山の精で、地方によって性格がやや異なります。おおむね共通している事は、子供くらいの大きさである事、毛深い事、人間の焚火にあたりにきたり、樵夫の仕事を手伝ったりする事、敵にまわすと禍を被る事です。胴が短く、手足は長く、裸でいるとも、青い衣をまとっているともいいます。人の言葉を話す事もできます。焚火の爆ぜる音を嫌いますが、これはサトリが同じ音に驚いて人間を懼れたのを連想させますね。
姿などは猿に似ていなくもありませんが、大木も軽々と運ぶという怪力が伝えられていますから、やはり神怪の類でしょう。九州では河童が冬に山へ入って山童になると云われています。
【ユキジョロウ】 Yuki-jorou 雪女郎
雪女、雪娘など。要するに雪の精で、吹雪の中などで道に迷った男が遭遇するといわれます。櫛や笄(こうがい)、簪(かんざし)を髪にさし、白いうちかけをまとった美女あるいは白い襦袢を着たの美少女の姿をしています。凍死する寸前の男を助けてくれますが、その事は堅く口止めされます。その約束を守るかどうか確かめるために、通婚する事もあります。また、男の家まで一緒についてきた場合は、あまり囲炉裏や風呂をを奨めると、暑さのあまり溶けてしまう事もあります。
雪女郎と呼ばれるのは、この種のうち特に磐城地方のもので、旅人が話しかけても返事をしようとはせず、背中を見せると谷底に突き落とすといわれます。
【ライジュウ】 Raiju 雷獣
いたち、猫、中ぐらいの犬に似た獣と言われ、その毛色も赤に近い色から灰色まで、地方によって様々です。要するに、野山にいる獣の毛色と、あまり変わらないという事ではないでしょうか。山に棲む事が多く、風雨が激しい日は元気で、雲が低くなってくると木などから空へ駆け上り、雷と一緒に地上へ落ちてきます。晴天の日は元気がないとも言います。
【ワイラ】 Waira
深い山に棲む妖怪で、毛だか羽毛だかわらかないものに体中覆われ、しかもそこに松脂や泥や雑草までくっついているといいますから、かなり不気味な姿です。鋭い爪があるので、ひっかかれたらひとたまりもなく感染症にかかりそうです(^^;。普段はモグラをとって食べるそうですが、人間を食べる事もあるので、怒らせない方が賢明といえましょう。
【ワニュウドウ】 Wanyuhdou 輪入道
一つだけの車輪のこしきに入道の顔がついた姿の妖怪です。輪入道を見た者は、魂を喪ってしまいます。「此所勝母の里」と紙に書いて戸口に貼り付けておけば、輪入道を避ける事ができるといいます。