ペルシア-Persia
【アールマティ】
「敬虔」。アフラ・マズダの娘。アムシャ・スプンタ(不滅の聖性)といわれる大天使の一柱で、アフラマズダの次に位置するものであり、女神の中では最高の位を得ています。起源としては地母神的な性格を持つものの、後にはその役割をアナーヒターに奪われ、女性の徳目を管轄するようになりました。ゾロアスター教では地表界を支配するとされています。
【アカ・マナフ】
「悪しき意思」を意味し、ウォフ・マナフと対立関係にある。アカ(悪しき)の最上級を冠してアチシュタ・マナフと呼ばれる事もあります。倫理に対立する悪を体現しているもので、アンラ・マンユの使者として悪しき想念を人々の心に注ぎ込む役割を果たします。
【アジ・ダハーカ】
「竜ダハーカ」を意味し、蛇王ザッハークを指します。三つの頭と三つの口、六つの眼を持ち、強力な魔術の使い手でもあります。アンラ・マンユによって創り出され、ありとあらゆる暴虐の限りを尽くしました。最後にファリードゥーンによってデマヴァンド山の洞窟に鎖で繋がれました。
【アフラマズダ】 Ahura Mazda
アフラ・マズダ。オルムズドとも。原初、創造神である「時の老婆」ズールバンより生まれた双子神の一人。太陽の神。光を体現するもの。アフラという名は、当初は女性名であったと考えられるのですが、男性神として表されます。これは、中世以降、王達がアフラ・マズダと同一視されるようになったせいかもしれません。ところで、双子の片割れであるアンラ・マンユの表記が「アンリ・マンユ」となっているのなら、何故アフラ・マズダは「アフラ・マズダ」と分けて書かれないのでしょう? どちらかに表記法を統一して欲しいものです。
この名は「知の主(神)」を表し、アフラ・マズダが(為された善悪の)一切を知る者である事を示しています。勿論知るばかりでなく、それに応じて賞罰を下します。具象世界を創造し、アシャと呼ばれる天則を司る者でもあり、これらの点でヒンドゥー教のヴァルナに対応しています。
【アンリ・マンユ】 Angra Mainu
この読み方がどこから出てきたのか。謎である。むしろ、アンラ・マンユ、アンラ・マイニュ、アングラ・マインユなどと表記される方が普通ではなかろうか。原初、「時の老婆」たるズールバンからアフラ・マズダと共に生まれ、これに対立する存在。光に対する闇を体現するもの。「大いなる蛇」、また「暗闇の神」。
アフラ・マズダに対立する存在、すなわち「魔中の魔」であり、死、虚偽、凶暴さなど全ての悪しきものを創造し、支配しています。その創造行為も、アフラ・マズダの行為に即座に対立する形で行われました。例えば、アフラ・マズダが国土を創れば、アンラ・マンユがこれを害する生物と冬を創るといった具合ですね。
無知なる者、すなわちこれから起こる事を予測し得ない者でもあります。このため、アンラ・マンユは最後に自らが滅亡する定めである事を知らず、悪を為し続けるのです。
【ウォフ・マナフ】
名前の意味は「善なる意思」で、アムシャ・スプンタ(アフラ・マズダの次に位置する大天使)の一柱です。ウォフ(善なる)の最上級を冠してワヒシュタ・マナフとも呼ばれます。神の教えを人間に教え伝える事と、為された行為の善悪を記録して審判がなされる時の証拠として残す役目を負います。また、動物界を保護します。
【ウルスラグナ】
あるいはバフラームとも呼ばれる勝利の神。アムシャ・スプンタに次ぐ聖的存在であるヤザタ(天使)の一柱です。強い風、黄金の角を持つ雄牛、黄金の飾りをつけた白馬、鋭い歯と長い毛を持つ俊足の駱駝、鋭い爪をした野猪、十五歳の輝かしい若者、大鴉、美しい野生の雄羊、鋭い角を持つ雄鹿、黄金の刃のある剣を持つ人間など、様々な姿に変身します。その大鴉の羽はそれを持つ者を襲う敵の呪いを撥ね返します。戦う両軍の間に四枚の翼を広げてウルスラグナが降り立った時は、最初にこの神を崇めた方が勝利をおさめます。
【ジャヒー】 Jahi
ヤヒ。アンラ・マイニュを産み落とした後、これと交わった太母に後代与えられた蔑称。ジャヒーはこの時初めて月経を体験し、世界にこれをもたらしたとされています。月経の源泉であり、従って月とも深い関わりがあります。月経は古代には魔術の源泉とされたものですが、そのため、父権的な社会では穢れとみなされました。とはいえ、ウォーカーはユダヤの神の名のいくつかが、ジャヒー(ヤヒ)の男性形ではないかとも示唆しており、だとすれば、本来は蔑称でなかったものが、後代蔑称として使われるようになったのかもしれません。
【スラオシャ】 Sraosha
名前の意味は「聞く」。何を聞くかといえば、邪悪によって虐げられた人々の叫びを聞くわけです。本来のペルシャ神話で主神のために”耳”の役割を果たしていたのですが、後にゾロアスター教にそのまま取り入れられた由。第三位の聖性を持つヤザタの一柱です。地と天を結びつけるものであり、悪魔アエーシュマの敵であり、従順の象徴でもあるそうな。また、魂が審判される時に立ち会う神でもあります。
【ドゥルジ】 Druj
語源的には「(生を)害する者」ですが、ゾロアスター教では「虚偽」の意味を与えられました。天則を体現するアシャに対立するものです。
後期のアヴェスタでは屍体(ナス)と結びつけられ、不浄を表すものとなりました。ドゥルジ・ナスは死による腐敗を求めて北方から蠅の姿をして飛んでくると云われます。
【ハオマ】 Haoma
植物神。生命の万能薬であり、大地と天の絆。「死の敵対者」。しばしば牛乳などに混ぜて用いられ、これを飲む事は陶酔感を伴うと言われています。また、供物としても重要です。
神としては活気を与える者であり、治癒力を持ち、黄金の眼をした威厳のある姿で表されます。
【パリカー】
魔術を駆使する淫猥な小魔。
【ファリードゥーン】
ザッハーク、すなわちアジ・ダハーカを倒して王となった英雄。ファリードゥーンもまた竜の姿を取ることができたといいます。五百年の間王国を治め、善政を敷きました。
【ミトラス】 Mithra
ミスラ。ミトラスというのはラテン語での名前にあたります。ローマ帝国でもかなり勢力を持っていたのですな。アフラ・マズタの息子とされ、闇を追い払う者、すなわち太陽が昇るのに先立つ光を体現する者です。宇宙の秩序を創造せる二柱の神としてそもそもはアフラと並び立つ存在であったとも言われます。大変古い神で、契約を守護するものとして知られていました。広き牧場の主、戦士の保護者、「戦車を駆る者(ラスアエシュタル
rathaeshtar)」。全てを知り、その凝視の前に隠されるものは何一つない智者でありながら、その好戦的かつ残酷な事も類をみません。ミスラの武器は必殺の矢、巨大な鎚矛、不治の病、そしてウルスラグナと呼ばれる猪です。
後に、ハオマを用いる秘儀で中心的な役割を占める事となり、ローマではむしろミトラを主とするミトラの秘儀として広まります。また、ここからローマの勢力圏一帯……例えばブリテン島にまで拡大しました。ペルシアではなかった事ですが、ローマにおいてはこの秘儀で雄牛が生贄に捧げられました。
ミスラは「征服されざる太陽の誕生日」である12月25日に、太陽神とその母との結びつきにより、また一説には天界の父が下した稲妻によって感応した創世の岩から生まれたといいます。これは羊飼いと、捧げものを携えてきた賢者(マギ)によって目撃されました。また、病人を癒し、盲に視力を与え、足萎えを歩かせ、死者を甦らせました。天に戻る前に黄道十二宮にあたる十二人の弟子と晩餐を取り、これを記念してミスラの信者は十字の印のあるパンの聖餐を取るようになりました。これらの特徴の多くが、後にキリスト教に取り入れられています。