ローマ-Rome
【ヴェスタ】 Vesta
ラテン語で読むと濁点がなくなりますから、ウェスタです。炉の女神。その名はサンスクリット語で光を現す「vas」を語源とし、ラテン語では「器」を意味します。各家庭で信心された他、ローマという国家の守護神でもあった。永遠に絶やされる事のない火の中に住むと言われ、この神殿に仕える事には名家の出身でなければ許されず、選ばれた六人のウェスタの乙女は神殿の火と純潔を守らなければならないかわりに大変尊敬された。彼女たちの純潔が穢れた場合、その男も、純潔を失った巫女も、生き埋めにされたそうです。
各家庭の竈にも、それぞれのヴェスタが祀られており、それらの像は、いずれもヴェールをかぶった姿で表されていました。
【キュービッド】 Cupid
これは英語読み。ラテン語の発音に近く表記するならクピド。ウェヌス(ヴィーナス)とメルクリウス(マーキュリー)の間に生まれた息子で、性的衝動を司ります。また、両親の関係から、両性具有であるとも言われます。実際に信仰されていた当時は青銅や象牙、木などで作られた翼のある男根像でしたが、ルネッサンス期には弓矢を持った翼のある赤ん坊の姿にされてしまい、性的衝動ではなく、たわいのない恋や一目惚れを扱う精霊に変化しました。
【サトゥルヌス】 Saturnus
穀物神。名前は「種を撒く」という意味です。12月の七日間に行われるこの神の祭、サトゥルナリアでは、一時的に奴隷にも自由が認められ、大変な馬鹿騒ぎが繰り広られたそうな。これが後に形を変えてクリスマスのお祝いになったのでした。また、土星や土曜日の名もこの神に由来しています。サタンではないのだよ。
〔参照〕 クロノス
【ストリクス】
「泣き叫ぶ者」。梟のような魔鳥で、赤子の腹を割いて内臓を食べたり、あるいは毒のある乳を赤子に吸わせて殺す。
【ダイアナ】 Diana
英語読み。ラテン語の発音に近く表記するならばディアナ。他にディオネとも呼ばれます。「森と月の女神」にして「天界の女王」であり、三相一体の女神のローマにおける名前です。信仰の中心地はエフェソスとネミの森ですが、大変広い地域にわたって崇められていました。但し、ローマによって征服地の地母神がディアナと同一視された事も多々あります。このため、後世ディアナは魔女の女王、魔女の崇める神とみなされました(とはいえ、しばしばディアナ信仰は処女マリア信仰に吸収されもしたのですが)。
とはいえ、ディアナは強力な森の女神であり、獣たちの母にして女王であり、18世紀にいたるまで、ヨーロッパ各地の森を守護していた存在だったのです。
【パレス】 Pales
驢馬神。驢馬の頭をした、男根に似た形の豊饒の精だという説と、ヴェスタ又はパラス・アテナと同一視される女神だという説があるようです。もしかしたら両性具有の神なのかもしれません。パラディオンと呼ばれる神器がシンボルで、これはローマの本質をなすものと言われ、トロイ陥落の時にアイネイアスによって運び出されてきたものだと伝えられています。パレスの祭では祭司たちは驢馬の頭を模した仮面を着けていました。 この神の名前からは、パレスティナ、フィリステア、パラティヌス丘などの地名が出ました。また、その神殿が宮殿 palace の語源となりました。
【フォーン】 Faun
牧神。森の精シルウァーヌス、あるいはギリシアのパーン、また、サテュロスと同一視される。家畜の繁殖を助けるもの。ファトウス
Fatuus「語る人」とも呼ばれ、詩を創始し、神託を授けるものでもありました。ファトゥア
Fatua と呼ばれる地母神ボナ・デア Bona Dea
の夫でもあります。
『パンの大神』 アーサー・マッケン(『怪奇小説傑作集1』『13人の鬼あそび』他所収)
【フォルトゥナ】 Fortuna
原義的には「巡ってくる」を意味する名です。従って、本来は年々歳々巡り来るものとしての太陽を支配する女神であったと考えられます。
ローマ帝国時代に幸運の女神、より正確には、好機の女神となりました。後代になると運勢に関わるものとみなされるようになっていきますが、もともとは良い穀物や家畜を増やす事が権能だったようです。年に一度、1月に行われるフォルトゥナの祭は、奴隷が参加できる数少ない祭の一つであった由。当時は奴隷と囚人が祭に参加する事は、これを穢すと思われていて、禁止されていたんですな。また、ローマ帝国の勝利の女神の一柱でもあり、国家的にも祀られていたのです。中世になると、フォルトゥナは運命の車輪と強く結びつけられます。こうなると、幸運というよりは運勢の女神ですね。それゆえ、賭博の女神ともみなされました。ある時は人を幸運の高みに、次の瞬間には不幸のどん底に突き落とすものとして、俗謡などに歌われたのです。
【フリアイ】 Furiae
フリアエ。復讐の三女神。神の復讐を体現するもの。叱りつける母の象徴。女の権利の守護者。母、または女系の親族が侮辱されたり、殺されたりする時に素早くかけつけて復讐するものです。しかも、迷惑な事に、直接手を下してなくても、下手人をちょっとでも援助したりしようものなら、その人まで漏れなく復讐される事になっていました。無論、知らずにやった事でも言い訳はきかないので、彼女らの呪いを受けないようにするには、細心の注意が必要でした。
【ヤヌス】 Janus
おそらく原型は太古の光の神ディアヌス
Dianus と考えられる門の神。また、周期の神。古き年と新しき年の交替を司り、また、空の扉を開いて夜明けを解き放つものです。従って、一日の最初の時間と、一年の最初の月はヤヌスに捧げられていました。相反する二つのものを体現する神であり、従って死と再生を司るものです。また、ローマの守護神の一柱。その神殿の扉は戦の時は開かれ、平和な時には閉じられる事になっていました。
民間では鳥の姿をした女神カルネア Carnea
(あるいはカルデア)が赤ん坊をさらっていくのを防いでくれるといいました。また、ヤヌスはこの女神の夫でもあります。
【ラルウァイ】 Larvae
ラテン語としてはラールウァエという方が表記として近い。死んだ悪人の霊魂を指す。死んだ善人の魂であるレムレースと対象をなすが、死霊を供養するレムリア祭では等しく両者に供物が捧げられた。後代の悪魔学上は生きている人間に憑依する吸血鬼的な霊、あるいはエクトプラズムの実体化したものを指すようになった。
【レムルース】 Lemures
レムレス。ラテン語で「亡霊達」の事。日本のお盆などのように、年に一度、祖先の霊が子孫を訪れるとされていまして、それらの霊をこう呼んだのです。従って、本来怖いものではなかったのです。