新宿御苑のサクラ

勝木俊雄
出版のお知らせ
このHPをもとにした冊子「サクラウォッチング 新宿御苑の桜」を新宿御苑内で販売しております。
目次
新宿御苑は東京都の新宿区と渋谷区にわたって位置し、面積58.3haと都心の公園としては極めて大規模である。江戸期に信州高遠藩主内藤氏の屋敷があったこの地には、明治になると西洋式の近代農業を発展させる目的で内藤新宿試験場が設置された。その後宮内省の新宿植物御苑、そして1906年に新宿御苑となり花卉園芸の研究に大きな役割をはたした。現在では環境庁が管轄する国民公園として一般に公開されている。
この新宿御苑には現在およそ1500本のサクラが植栽されている。その多くは‘ソメイヨシノ’であるが‘イチヨウ’や‘フゲンゾウ’など他では見かけることの少ない栽培品種も数多くある。新宿御苑はこうした園芸樹木に長く関わってきたところでもあり、過去に貴重なサクラの栽培品種を収集したこともあった。今でもおよそ70種類の栽培品種が数えられているが、現在の状態を調査して明らかにしておくことは今後の管理運営の為にも役立つ資料となるであろう。また、一般の利用者にとっても有益な資料ともなる。
現在、農林水産省の研究機関である森林総合研究所多摩森林科学園では明治期の栽培品種を中心にサクラ類の保存をおこなっている。その一環として明治期の栽培品種が残されている植物園などで栽培品種の実態の調査をはじめている。
そこで、貴重な栽培品種が数多く残る新宿御苑のサクラに対して、1998年及び1999年の春期に調査をおこなった。およそ1500本のサクラがあるが、このうち2年間で合計172個体の調査をおこなった。
調査の結果、種としては14分類群、栽培品種としては63種類を確認することが出来た。なお、栽培品種の分類については主に川崎(1993)にしたがっているが、新たな見解も入れて整理している。しかしながら、調査はまだ充分ではなく今後に残されている検討課題も多い。調査の途上ではあるが現在のデータを中間報告としてここにまとめた。なお、本報告は原則的に非公開であるので取り扱いには注意していただきたい。
調査にあたっては新宿御苑の町田氏および堀口氏に多大な協力をいただいた。この場で改めて感謝する。
1999.12.07/2002.2.20改
勝木俊雄
調査内容は主に花の観察と標本の採取、及び写真撮影である。こうした調査により得られた結果を森林総合研究所多摩森林科学園のサクラ保存林に植栽されているものと比較することによって、種及び栽培品種の異同を確認した。
調査対象は原則的に新宿御苑内のサクラ類すべてであるが、系統が大きく異なるウワミズザクラとイヌザクラは対象より外した。また、数が多い‘ソメイヨシノ’とヤマザクラ・‘イチヨウ’・‘カンザン’・‘フゲンゾウ’・オオシマザクラ・‘ウコン’・‘ヤエベニシダレ’については数個体を代表として調査した。その他は原則的に全個体調査する予定であったが、種類が不明のものを併せて249個体のうち136個体を調査することが出来た。‘ソメイヨシノ’等も含めると計172個体は観察することが出来た(調査した個体番号)。また、そのうち129個体については花の標本の採取もおこなった。写真も数多く撮影することが出来た。
調査の結果は、別表(確認したサクラの名称)の通りである。種の分類及び学名についてはOhba(1992)にしたがった。栽培品種の分類については主に川崎(1993)にしたがったが、属の変更もあるため、栽培品種の学名の多くは今回新たに再編した。
満開期のデータは1998年と1999年の観察記録から判断したので、年によっては大きく異なることもある。新宿御苑のサクラの個体番号は新宿御苑で1990/1991年におこなった調査を元にした台帳から引用した。括弧内に御苑の台帳に記述している名称を付記した。種及び栽培品種の記述は主に多摩森林科学園のサクラ保存林から得られた知見をもとにしているので、開花期など新宿御苑の実態とは異なる場合もある。こうした記述の相違は今後の検討課題としたい。
サクラ類の名称については原則的に以下のような使い分けをした。種や変種・雑種などの分類群についてはカタカナで表記した(ex. オオシマザクラ・エドヒガン)。これに対して栽培植物の分類群をあらわす栽培品種名は‘’でくくって表記した(ex. ‘ソメイヨシノ’・‘イチヨウ’)。また江戸時代の品種のような明確ではない栽培品種名や、天然記念物のような個々の樹の名称は「」でくくって表記した(ex. 「彼岸桜」・「薄墨桜」)。
種の解説では和名と漢字名・学名・満開期・個体番号及び位置図を付記し、解説文を加えた。ただし、その種に属する栽培品種の個体は別個に解説があるので個体番号などは含めないことにした。また、オオシマザクラやヤマザクラ等で雑種の疑いがある個体もあるが、煩雑になるのでとりあえずこうした分類群の解説に個体番号を加えているものもある。さらに取り上げた個体の写真も付け加えている。解説した種の順序は学名による。
栽培品種の解説では種名・漢字名・学名・満開期・個体番号及び位置図を付記し、解説文を加えた。同様に取り上げた個体の写真も付け加えている。
なお、取り上げた個体は全て調査済みではないので注意されたい。
また、末尾に取り上げたサクラの名称による索引を付した。
- 川崎哲也・奥田實・木原浩 (1993) 日本の桜. 383pp, 山と渓谷社, 東京.
- Hideaki Ohba (1992) Japanese Cherry Trees under the Genus Cerasus (Rosaceae). J.Jpn.Bot.67:276-281.
- 大井次三郎・太田洋愛 (1973) 日本桜集. 325pp, 平凡社, 東京.
- 日本花の会 (1982) サクラの品種に関する調査研究報告. 448pp, 日本花の会, 東京.
- 田村仁一・井山審也 (1989) 遺伝研の桜. 89pp, 国立遺伝学研究所, 静岡.
オクチョウジザクラ
カンヒザクラ
ヒマラヤヒザクラ
マメザクラ
ヤマザクラ
カンザクラ
サトザクラ
フユザクラ
オオヤマザクラ
エドヒガン
オオシマザクラ
コヒガン
カスミザクラ
ソメイヨシノ
‘ツバキカンザクラ’
‘カンザクラ’
‘オオカンザクラ’
‘シュゼンジカンザクラ’
‘フゲンゾウ’
‘アラシヤマ’
‘チョウシュウヒザクラ’
‘フクロクジュ’
‘アマノガワ’
‘ヤエサコンノサクラ’
‘ギョイコウ’
‘ゴショミクルマガエシ’
‘ウコン’
‘イチヨウ’
‘イチハラトラノオ’
‘イモセ’
‘バイゴジジュズカケザクラ’
‘コシオヤマ’
‘コトヒラ’
‘マツマエハヤザキ’
‘ヨウキヒ’
‘ウスズミ’
‘エド’
‘ムラサキザクラ’
‘ベンドノ’
‘カンザン’
‘シバヤマ’
‘スザク’
‘タグイアラシ’
‘シラユキ’
‘シロタエ’
‘ケンロクエンキクザクラ’
‘ショウゲツ’
‘スルガダイニオイ’
‘タイハク’
‘ワシノオ’
‘フユザクラ’
‘ベニシダレ’
‘ヤエベニシダレ’
‘シダレザクラ’
‘ジュウガツザクラ’
‘ヒガンダイザクラ’
‘コシノヒガンザクラ’
‘コヒガン’
‘トウカイザクラ’
‘アメリカ’
‘イズヨシノ’
‘シダレソメイヨシノ’
‘ベニヅルザクラ’
‘ソメイヨシノ’
‘ヨウコウ’
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