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広辞苑や他の辞典も引いてみましたが、「しょう」の漢字はどちらでも
同じ意味のようです。
い−しょう【衣裳・衣装】
(1)衣と裳(モ)。きもの。衣服。
(2)俳優・踊子などの演技の際に用いる衣服。舞楽・能では装束という。
〜広辞苑 第四版より〜
テレビ業界、芸能舞台では「衣裳」の字をよく見かけますが、
しかしこの(1)から私には、「衣(ころも)と裳(も)」は、源氏物語の世界の
女性の成人式「裳着の儀」を彷彿させます。
なので、バロックダンスの場合、自分は「衣(ころも)を装う」から
『衣装』の字を使おうかな〜と思っています。
***
上の文を書いて以後、このことに触れた図書に出会いました。
「装」は当用漢字で、「裳」の方は古代漢語ではスカートの意味だったとか。
それよりもむしろ「衣服」との違いに焦点をあてたことに興味を持ちました。
「衣裳」の字は、「舞台衣裳」や「花嫁衣裳」のように、あらかじめ限定された
目的が具体的である衣服に使われており、単に身体を覆うのではない。
物である「衣服」を着用する動機に着用者の固有の作為が加わると、
物が事を起こして「衣裳」になるのではないだろうか。目的が明確に
限定され、作為的に着用される「衣服」は「衣裳」といえるだろう
とのことです。なるほど。
舞台衣裳、花嫁衣裳などは目的が限定される非日常な「衣裳」だが、
日常でも「勝負服」などはもう「衣裳」となる、とな。なるほど。
(「舞台衣裳の仕事」 加納豊美著 カモミール出版 より)
確かに、いま私が作ろうとしているのは18世紀フランス宮廷の貴族の
日常着ですが、彼らにとってみれば王族の前での舞踏会は社交上の
勝負の場であり、勝負服だったと言えます。当時からも「衣裳」かぁ。
「衣装」or「衣裳」からちょっと逸れましたが、興味深いお話なので
ご紹介しました。
さて、皆さんはどちら派?

街中のショーウィンドウで見かける花嫁衣装のドレス。
これを着て踊れないかな?って思いましたか?
やってみたことはありませんが、いくつかそぐわない点があります。
まず、様式が違う。といっても今は沢山のデザインがあるから、
中にはバロックやロココを意識したデザインもあるかもしれません。
でもせっかくステップも音楽も当時を再現しているのですから、
ちぐはぐな衣装で踊りたくないですよね。
そして花嫁衣装は、踊ることを前提に作られてはいません。中のパニエも
固くガサガサうるさいですし、後ろに長く引かれたトレーンは、ステップを
踏むたびに絡まってくるでしょう。花嫁衣装はしずしずと歩くか、じっとして
いるのに向いています。
では、博物館の資料を手に入れ、そのまま再現すると・・・
我々日本人は胴の平べったい体型をしていますし、当時の女性のように
毎日コルセットでウエストを締め上げたりしていません。
下着もいまの時代のものとは違います。
1人1人の体型に合わせたオートクチュール(オーダーメイド)では、
服に体の方を合わせて詰め込む必要はありません。
衣装を着て踊る時は発表会か何かで、たいてい踊りのことで頭がいっぱい
です。衣装は身体にぴったりフィットし、少しも不安なく踊りに専念できるように
万全の体制でステージに上がりたいと思います。
文化思想の違い
上述の書籍「舞台衣裳の仕事」に詳しく書かれていました。
「直線で構成される和服」
和服の基本はフリーサイズ。(中略)自分の体や動作を着物に添わせて
いくことで和服はかっこよくなる。事象に対して敵対しないで、自らが
寄り添って行く東洋の美学や文明の中に和服の形態もあるのです。
「曲線で構成される洋服」
洋服は身体のサイズにぴったり合っていることが伝統としての
かっこよさです。個々の寸法に合わせて作るものです。あくまでも
自分に引き寄せて、相手を変えていこうとする西洋の合理性の
なかに洋服の形態もあるのです。
また、密着しない衣服のあいまいな身体のラインで想像を
かきたてるのが東洋のセクシーであり、膨らみや窪みを強調し身体の
ラインを直接的に訴えるのが西洋のセクシーだそうです。
現代日本人にぴったりフィットさせるために
随分悩みましたが、日本の洋裁の本を手に入れて考え、
私は文化式原型成人女性用を基本に型紙を起こすことにしました。
この原型は日本の成人女子の標準的な体型に適合するように作られていて、
ウエストフィット型になってるのがポイントです。
洋裁の基本原型には、文化式とドレメ式がありますが、なぜ文化式にしたか
というと、たまたま最初に手にした本が文化の本だったからです。
でもそれだけに拘っているわけでもなく、その後作った男性用衣装は、
上着が文化、ベストがドレメ、ブラウスとキュロットは囲み製図といった具合に
バラバラになっています。(囲み製図は原型を使わない)
原型をアレンジする−現代服との違い−
皆さん、いま腕を上げてみて下さい。大抵の服は脇の下から裾まで
縫い目があります。肩の上にもありますね。
しかし歴史的資料を見ると、この位置には合わせ目の線がありません。
前身頃と後ろ身頃の境目が無いのではなく背中に寄っています。
袖付けの位置もいまより後ろです。ぐっと胸を張る感じ。
服飾造形の基本概念がいまとは違うのでしょう。
しかしなるべく当時の考えは尊重して残していきたいです。といっても、
どのくらい寄っていればいいのか、どんな基準だったのか、さっぱり分かりません。
写真や図版をみて、自分の体型も考えながら見当を付けます。
ちなみにバロック時代の服にはダーツはなかったそうです。
材料、素材、道具
忠実な再現ではありませんが、私は素材にポリエステルなどの化繊を使うことは
許されないことだとは思いません。またミシンを使って縫うことも。
忠実に復元された古楽器に、現代の素材を使うことは音質が変わってしまう危険が
あるため十分注意が必要ですが、化繊の衣装がバロックダンスの真価を打ち消して
しまうとは考えにくいです。
同様にファスナーを付けたりもします。それは当時の貴族のように着つけの際に
身の回りのお世話をしてくれる人が居るわけでもない状況で、少しでも早く着替えを
すませ、ステージの準備をするのに役立つからです。
しかし前のページや上にも書いたように、再現衣装からは思わぬところで当時の習慣が
偲ばれます。これから研究を進めるうちに、私の考えもいろいろ変わるかもしれません。
・「Patterns of Fashion 1」 Janet Arnold著 QSM社
・「Patterns of Fashion」(1560-1620) Janet Arnold著 QSM社
・「華麗な革命」展図録 京都服飾文化研究財団
・「HISTORICAL FASHION IN DETAIL The 17th and 18th Centuries」
Avril Hart and Susan North著 V&A Pablications出版
・「服飾造形の基礎」 文化服装学院編
・「舞台衣裳の仕事」 加納豊美著 カモミール出版
・The Costumer's Manifestoのウェブサイト http://www.costumes.org/
©Sapporo Baroque Dancers 2004-2007