「臨床心理士」とは、臨床心理学の知識や技術を用いて心理的な問題を取り扱う「心の専門家」のことです。これまで日本では、このような心の問題に取り組む専門家は、「カウンセラー」「サイコセラピスト」「心理相談員」などの名称で専門的な活動を行ってきました。しかし、このような専門家に対する資格制度の整備が遅れていました。そこで、心の問題に取り組む専門家の資格認定を行うために、心理臨床に関連のある16の学術団体(学会)の総意に基づいて、1988年(昭和63年)に「日本臨床心理士資格認定協会」が設立され、「臨床心理士」の資格認定が開始されました。さらに、この協会は、2年後(1990年)には、文部科学省から公益法人格をもつ財団法人として認められ、2005年現在、13,253名(医師401名を含む)の方々を認定し、文部科学省の実施するスクールカウンセラーの任用をはじめさまざまな領域で活躍しています。
精神科医というのは、医学部を卒業して国家試験を通り、2年間精神科の研修を受けると、日本では精神科医といっていいことになります。日本においては、精神科医は投薬を中心とした医療行為を行うのが主な仕事です。患者さんの症状を聞いたあと、薬を処方するといった薬物療法が中心の精神科医が多いと言われていますが、中には精神療法の訓練をしっかりうけた精神科医もいます。最近では、本格的な精神療法を学ぶためにアメリカに行って精神分析を学んだり、あるいは認知行動療法を学んだりといった精神科医が増えてきています。しかし、一般的には患者さんと50分の精神療法を行っているという精神科医は少ないのが現状です。
一方で臨床心理士の扱う心の問題は幅広く、「心の病気」とまではいえないものも含め、さまざまな問題の相談に乗ります。たとえば、夫婦間の暴力の問題、児童虐待、不登校、摂食障害、引きこもり、PTSDなどなど、今、社会で注目されている現象も含めて、守備範囲は大変広いです。精神科医との違いというと、臨床心理士は、心理検査や心理療法は行えますが、薬を処方することはできません。そこで、精神科医と臨床心理士が役割分担をし、相互に協力しあって患者さんの治療にあたるということが多くなっています。
これまで精神科医の仕事は、統合失調症やうつ病という、二大精神病といわれた病気の治療が中心でした。しかし、最近では、不安障害、境界性人格障害、摂食障害、解離性人格障害の患者さんへの治療も珍しくありません。そのため、精神科医と臨床心理士が協力しあって患者さんの治療にあたるということが益々求められています。
臨床心理士の働く領域は多くの分野に渡り、以下のようなさまざまな職場で活躍しています。
地方自治体が設置する教育研究所・教育センター・教育相談室、大学の心理教育相談室・学生相談室、小・中・高校のスクールカウンセラー、など。
開業心理相談室、カウンセリングセンター、など。
病院(精神科・心療内科・小児科などの臨床心理室)、精神保健福祉センター、保健所、リハビリテーションセンター、など。
児童相談所、女性相談センター、更生相談所、身体障害者福祉センター、児童福祉施設など。
家庭裁判所、少年鑑別所、少年院、刑務所、警察関係の相談室、保護観察所、など。
企業内の健康管理室や相談室、公立職業安定所、障害者職業センター、など