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3章

 

〜カントッチョ舞踊団〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マンイーターのお陰でルナリアに着いたフレッシュ一行だが、辺りはすっかり暗くなっていたので今夜は宿で休む事にした。

 

「念願の便所や〜♪」

ポカリは宿屋の階段を軽やかに上った。

「…あいつよく走れるよな…。」

シャドーはゆっくりと階段を上りながらフレッシュに言った。

「う、うん…。」

怪我をしているフレッシュは傷に響かないよう静かに階段を登った。それを見て、

「…ごめん。」

シャドーは突然謝った。フレッシュはその意味が分からなかった。

「どうして、シャドーが謝るの?」

「…その、マンイーターに攻撃を…した事に…。」

「…気にしてたの?別にシャドーが謝る事ないよ。勝手な行動したの俺の方だし。むしろ俺が謝るべきだね。ごめん、勝手な行動して心配かけて。それと今日シャドーが言ってた『仲間が傷ついてるのを黙って見てられない』って言葉、嬉しかったよ。ありがとう。」

フレッシュは優しく微笑んだ。シャドーは心底嬉しかったが表に出さない様努めた。

「…でも…俺、モンスターであれなんであれ出来れば戦いたくはない。」

フレッシュは足を止めた。

「…力で抑えても何の解決にもならないから、って…綺麗事だよね。第一勇者科の人間がこんな事言ってたらダメだよね。」

フレッシュはまた笑った。どこか悲しげな笑顔だった。シャドーは何も言わずにただ黙ってフレッシュの話を聞いた。遠くから便所のジャーと流れる音がした。暫くして、

 

「…戦うのが好きなヤツが勇者に向いてるのか?僕は、そうは思わない。…いいじゃないか。モンスターを傷ける事が可哀想だと思う甘い考えの勇者が一人ぐらい居ても…。」

「シャドー…。」

フレッシュは顔を上げた。

「何より相手の事考えられるのはフレッシュの良い所でもあり悪い所だからな。…まぁ僕は…フレッシュのそういう所、嫌いじゃない…。」

シャドーの本心の言葉にフレッシュはぱぁっと表情を明るくした。

「ありがとう。シャドーはやっぱ優しいね。」

励ましてくれたことにフレッシュはお礼を言った。

「優しい…?」

信じられないという口ぶりで彼は返した。シャドーは、今まで誰かに゛優しいね゛なんて言われたことがなかった。何より自分に優しさなんてものは必要なかったから…。

「うん、シャドーは優しいよ。」

フレッシュは優しく微笑んだ。敵をためらわずに攻撃するようなヤツのどこが優しいのだろう?とシャドーは思った。が口にはしなかった。

「今日はシャドーに助けて貰ってばっかりだね。本当にありがとう。」と言った。

「…フン…。」

嬉しいくせにシャドーは恥ずかしいのかただ一言だけ言った。そして二人は階段を登り部屋に入った。今日の疲れを癒やすために…。

 

二人が部屋に入った直後。すぐ隣の部屋から何者かが出てきた。変わった髪型をしたかなりがたいの良い上半身裸の…男性?

「決ーめた。やっぱ久々の里帰りだし、奮発してエステでも予約しとこっと♪」と言うと階段を軽やかに愛らしく降りていった。この男性は…もしかしなくても…。でも今の疲れきったフレッシュ達には気付けるはずもなかった。

 

 

 

―――その晩。

 

「フゥ…。」

シャドーは眠れなかった。なぜなら隣の部屋からするいびきとポカリのいびきのせいで。頭を掻きながら寝ていてもやかましいポカリを呆れた目で見た。ポカリは毛布をはねとばした。寝相までも悪い彼女を見てシャドーは舌打ちをしながら毛布をかけた。すると、

「う〜ん…シャドー…。」

ポカリは口を開いた。シャドーは起きたのかと思った。がどうやら寝言らしい。ホッとしながらも何で、自分の名前を言うのだろうと心のどこかで淡い期待をしながらも自分のベットに戻った。すると、

「シャドー…す…、」

ポカリはまた寝言を言った。ドキドキしながらシャドーはポカリを見た。

「ス…き…」

彼の顔が赤くなった。

驚いた、まさか、でも悪い気はしない。むしろ…、とそんなこと考えていたら、

「焼きポテチ…食うたやろ…!あれうちのやで!許して欲しかったらみんなの前で尻文字せぇ…ムニャムニャ…。」と言いながら彼女は寝返りを打った。

シャドーは一気に冷め、期待で膨らんだ気持ちは穴が開いたかのようにシューとしぼんだ。

この女に、一体何を期待していたのだろう…。やっぱこいつは、ムカつくバカ女だと彼は改まって実感し、今日のことを忘れるため彼も眠りにつくことにした。

 

 

 

 

―――翌朝。

 

「おはよう…って隣からするいびきのせいで全然眠れへんかった!!うちの睡眠を妨げるとはええ度胸や!」

顔洗っているフレッシにポカリが言った。ただでさえ寝起きで機嫌の悪いポカリは腕をまくり部屋を出た。

きっと怒鳴り込む気だ。

フレッシュは慌てて後を追いかけ止めようとした。が、もう手遅れだった彼女はその部屋の前に立ち文句を言いながらドアを叩いてていた。

 

「ちょっと!!あんたのいびきのせいでうち全然眠れへんかったで!睡眠不足は美容に良くないってみのもん子もゆうてたで!ちょっと!聞いとる出てきいや!!」

 

その光景を目の当たりにしたフレッシュはもうどうするも事できなかった。あまりのうるささにシャドーも廊下に出てきた。

「…何やってんの?あいつ?」目をこすりながらシャドーは聞いた。彼はまだかなり眠たそうな様子だ。

「…あっ、…おはよ。実は、」

フレッシュは、一部始終を話した。

「…寝不足?一番真っ先に寝てたあいつが?…ふざけんなよ。」と苛立った口調で言った。

昨夜のポカリの寝言(それからいびきも♪)と隣からする莫大ないびきのせいで、シャドーは全く眠れなかった。寝不足のせいで青白い肌がさらに不健康そうな色に見えた。

でもこれ以上騒ぐのはまだ寝ている方の睡眠を妨げるとフレッシュは思い、ポカリを止めようとした。そんな時、

 

「あんたらここでなにしてんの?」

 

真新しいシーツを持ったおばさんがポカリに話しかけた見るからに宿屋の従業員だ。

「フゥ〜、ちょっとおばさん今からそこの部屋の掃除しなくちゃならないんだから、どいてくんない?」とシーツを床に置き彼女は自分の腰を叩いた。

「掃除!?つぅー事はおらへんの?」

ポカリはおばさんの方に顔を向け迫力満点に聞いた。彼女の迫力に圧倒されながらもおばさんは、

「えぇ、ちょっと前に出てったわよ。」と答えた。

「そんな〜!なぁそいつどんなヤツやった?」とポカリはおばさんに聞いた。それを聞いたフレッシュはすかさず、

「ねぇ…ポカリそんな事聞いてどうする気だよ?」と口を挟んだ。ポカリはフレッシュの方を向き一言。

「決まってんねん!一言文句や!うちの睡眠ジャマしよって!!」と拳を強く握った。

シャドーは、ポカリにその台詞をそっくりそのまま返したかった。

ポカリはフレッシュの注意を聞かなかったことにし、またもおばさんに聞いた。

「そうねぇ〜どんなヤツかって聞かれても…ねぇ〜ここの部屋の方でしょう?えーと確か…、」

おばさんはかなり困惑した表情をしながら考え込んだ。やはり一日にたくさんの客を見ている為かすぐには顔が出てこない様。

「じゃあ性別は?男?女?」

ポカリは質問を変えたこれならすぐ答えられるだろうと思った。が…、

「えっ、…そーいえばこの部屋の人って…あら?あれは一体、どっちなのかしら?」

おばさんはさらに、困惑した表情を浮かべた。いくら何でも性別くらいは分かるだろう。ポカリはイライラした。

「なんかあるやろ?特徴とか?」と言うと、

「特徴…、あっ!そういえば変な髪型をしていたわね〜、こーんな風にこんもりしていたわ。」とおばさんは手で、そいつの髪型を表現した。手の動きからしてどうやらリーゼントだというのが分かった。でもそれだけじゃまだ情報は足りない。ポカリはさらに聞いた。

「あと…そうねぇ〜、多分性別は男性だと思うわ。…でも口調や仕草が妙に…。でも男だというのは確かよ。何せ上半身裸だったから。」とおばさんが言ったのをフレッシュとシャドーは聞き逃さなかった。そして二人は小声で話した。

「ねぇ…上半身裸ってまさか…、」青ざめながらフレッシュが言った。

「…フン…上半身裸の男なんてゴロゴロいる…第一探しているヤツがそんな変態であってたまるか。」と言いつつ内心、フレッシュと同じ予感がした。何よりあの変態の友人だし…十分あり得る…と思った。でも、それを認めたくなかったから打ち消そうとしていた。だが明らかに動揺しているのがバレバレである。

「…そうだ!名前!」

フレッシュはナルシーの友人の名前を知っている事を思い出した。そしてポカリに色々と質問されているおばさんに、

「あの、その部屋に泊まっていた方の名前って教えて貰えませんか?」フレッシュは礼儀正しく尋ねた。すると、

「名前?えーと確か、ハンバーグ、じゃない…何だったかしら?確かジューシーそうな名前だったわ〜、あら〜?ホント何だったかしら?ここまで出ているのにねぇ〜。」ともどかしそうに言った。それを聞いたフレッシュはもう聞かなくても分かっていたが念のために、

「ステーキ…とかいう名前では?」と聞いた。

「そう!それよ!!あ〜スッキリしたわ♪」

まるで知恵の輪が解けたぐらいスッキリとした表情でおばさんは言った。

「そういや、その人から変わった花を貰ったのよ〜チューリップとかいう花。珍しいでしょ〜。」

良いながらバルコニーの方にあるプタンターを指差した。

 

リーゼントで上半身裸のオカマ…。やっぱナルシーの友人だからまともな人ではないと二人は実感した。

「なんやここにおった人がうちらの探した人やったんや!?なぁなぁその人どこいったかは分からへん?」

ポカリはおばさんの服の裾を引っ張った。

「悪いんだけど客がどこに行ったまでは把握してないわよ。そんなに気になるんなら情報屋に行ってみたら?その人に関する情報があるんじゃない?もういいかしら?」と言い彼女はその部屋に入った。

 

 

そんなワケで3人は情報屋に向かった。

 

 

――――「この辺りって話だけど…あ、アレかな?」

 

と三人はとある建物の前までやってきた。

建物自体は普通なのだが、いたるところに薔薇が咲いていて少々毒々しい。

 

「みんなのおメメのオアシス…情報屋ナルちゃん☆…やって!」

ポカリは口に出して看板を読みあげた。

「スッゲェ…イヤな予感がする。」

シャドーが静かに言った。隣にいたフレッシュも、

「やっぱりシャドーも…?」と青ざめた表情で言った。フレッシュとシャドーは入りたくないなぁと心底思った。けどそういうワケにも行かないので覚悟を決めて中に入ることにした。

 

「失礼します…。」

ドアに付いていた鈴が店内に鳴り響いた。店内は薄暗く人が居る気配が全くない。フレッシュ達は誰も居ないのかなぁと思いながら辺りを見回した。怪しげな本や洋皮紙がたくさん置かれた机を見つけたシャドーは汚いと思いながらも近くにあった本を手に取った。すると…、

 

「勝手に人の物に触らないで貰えますか?」

とどこからともなくナルシーが現れ彼の耳元でそう囁いた。ナルシーの突然の出現にシャドーはビクッとし、持っていた本を落としてしまった。床に打ち付けられた本はガシャーン!とまるでガラスか鏡が割れたような音がした。いやよく見るとそれは本の形をした鏡。ナルシーはそれを見て、

「あーあ、やっちゃいましたね?だから触らないでって言ったじゃないですか。」と静かに怒りながら言い本の形をした鏡の破片を拾った。

「へ、変な事するからだっ!!っつーかあんた教師だろう!?何でここに居るんだよ?学校は?」とシャドーは耳を抑えながら怒鳴り散らした。

「クスクス…君に会いたくて…。」とシャドーに近づいた。シャドーは思わずギョッとした。それを見ていたポカリは青ざめた表情を浮かべた。

「クスクス…冗談ですよ本業はこちらなんで…学校は…クスクス。」笑ってごまかした。

学校は何なんだよとシャドーは思った。が口にする前にフレッシュが、

「あの、先生…それなら、そのステーキに関するもっと具体的事な教えて貰えますか?」と尋ねた。

「クス…かしこまりました。」と不気味に笑いながらも彼は怪しげな本がびっちり並んだ棚に手をやり、

「えーとステーキ…あ、あった。」カルテのような厚さの本を取り出し淡々と読みあげた。

「身長は195a体重は内緒♪年齢は35歳のおとめ座★花の独身。彼氏募集中♪大好物は甘いもの全般、特に苺のケーキには目がない。カラオケでよく唄う歌はモーニング娘及びハロプロ系。趣味はお菓子作り・編み物・掃除・ショッピング等♪今欲しいものは彼氏OR旦那とワンちゃん。」

フレッシュとシャドーは説明を聞きながら、これは確かにステーキの情報だが、完全にただのプロフィールだと思った。すると、ナルシーは突然読むのを止めた。 何かあったのだろうか?

「おい?他には?」

すかさずシャドーが聞いた。まさかそんな下らない情報で終わりなわけないよな?と思った。ところが…、

「終わりです!情報料として一人ずつ5万円をよこしなさい♪」と、にこやかな口調で言い手を差し出した。その手をバシとシャドーは叩き、

「誰が払うかっ!!」と怒鳴り散らした。

「…冗談だろう?本当にそれで終わりなの?」とフレッシュは呆れたという感情と不安がが入り交じった口調でナルシーに尋ねた。すると、

「あ、そうでした!!肝心な事を忘れてました。」とナルシーは何かを大切な事を思い出した様。フレッシュはホッとした。今度のはまともな情報だと期待した。が「そういえば、彼外見とは裏腹にかなりの恐がり屋さんで真夜中に一人でお手洗いに行けないんですよ。あと眠る時にはクマのぺーさんのぬいぐるみがないと怖い夢を必ず見ちゃうとか、」と得意気に言った。それを聞いたフレッシュはナルシーを頼った自分がバカだったと思い、がっくりと肩を下げた。下らない情報しか言わないナルシーにシャドーはとうとうキレ、

「もういいっ!!それ貸せ!」と彼が持っていたカルテを無理矢理奪い取った。

何か、ちゃんと役立つ情報がそこにあると思い汲まなくそれを調べた。が…、肝心の家族構成の欄に大きな醤油のシミが垂れ落ちていた。そいつのせいで何が書いてあるのか分からない。シャドーは怒りで震えながら、

「おい…?これはどうした?」と凄んだ。彼は「はい?」と軽く言いながらシャドーが示す欄を覗きこんだ。

「あぁそこですか?うっかりしていたもので♪エヘ、やっちゃったんですよ。昨日、」彼は明るく言った。

「昨日…なら覚えてるだろう…。」

シャドーは怒鳴り散らしたいのを我慢しナルシーに尋ねた。が、彼は自信満々に「全く!」と返した。シャドーの手に黒い雷がバチバチしていた。今にも放つ事が可能である。それを見てフレッシュは慌ててシャドーを止めた。もぅここに居るのは時間の無駄だとフレッシュは思い、勝手にナルシーの本を読んでいるポカリに「もうここ、出よう。」と言った。彼女は本を持ったまま立ち上がった。3人はドアノブに手をかけた。すると町の方から何やら楽しそうな音楽が聞こえてきた。

「クスクス…そういえば今日は大人気の舞踊団が来ていましたね。良かったら見て行きなさい。もしかしたら彼の事が聞けるかも知れませんよ。」と不気味に言った。

なんで、舞踊団がオカマの事を知っているんだろうと疑問に思いながらもフレッシュ達は情報屋を後にした。

ナルシーはポカリが自分の本を持ったまま出たのを見逃さなかった。

「あの娘、私の写真集を…、フッ…私の美しさが凝縮されたあれを手に取るとはなかなかの目を持ってますね。仕方ない、それは君に差し上げましょう。」

誰に言っているのか分からないが一人で楽しそうに笑っているナルシー。とそこへドアが突然開き、さっきの本が投げ込まれた。

「あれ、ポカリ?さっきの本は?」とフレッシュは尋ねた。

「ん?あれ?おもろぅないから返した。それより踊り見ようや!」ポカリは無邪気に言った。シャドーはそういう気分ではなかったがフレッシュは悪くないと思った。イベント事は好きだったし、違う町の踊りがどんな物か興味があったから。フレッシュはシャドーに、

「ねぇ、行ってみない?踊りでも見たら気分転換になるし。」

と優しく言った。シャドーはフレッシュに踊りを見ようよと誘われたことの方が気が晴れた。

「あぁ…。」

とうなずき広場に向かったここに着いた時は夜だったから分からなかったがルナリアはかなり活気に満ちていた。至るとこに出店があった。まるで祭りのように感じたがルナリアは普段からこんなに賑やかな様。広場には沢山の人が居た。ナルシーが言っていた舞踊団は貝殻のステージに居た。大人気な舞踊団の為人が沢山集まっていて歩くのが一苦労だった。

 

「フレッシュ!シャドー!こっちや〜。」

ポカリが二人を呼んだ。どうやったのかは謎だがちゃっかりと前に置いてあるイスを三人分確保していた。二人はあまり深く考えない様にし席に着いた。すると丁度良いタイミングで司会者が現れ話を始めた。

「えー、カントッチョ舞踊団のパフォーマンスもこれでフィナーレ!最後はやはりこの方に締めて頂きましょう!」と司会者がそう言うと周りの男性が喜びの声を上げた。

何だろう?この異常な盛り上がりは…?

フレッシュは思いながら周りの様子を見回した。

「始まるで!」

ポカリの声でフレッシュはステージに目を戻した。いつの間にか司会者は居なくなっていた。すると、かすかだか音楽が聞こえた。さっき聞こえた音楽とは違い綺麗でしっとりとした感じの音色。あんなに騒いでいた周りも今は水を打ったかの様に静かだった。皆何が起こるのだろうとステージに釘付けだったから。するとステージの上から一枚の薄い布が舞い、ステージの中央に優しく降りた。それ以外は何も出てこない。誰もが見入った、すると薄い布から一本のすっきりとした腕がしなやかに出てきた。そしてゆっくりと一人の綺麗な踊り子が現れた。観客の殆どが息を飲んでを彼女を見つめた。フレッシュはハッとした。あの人は!と思わず席を立ちそうになった。が今立ち上がったら周りの男性の反感を買うと思い彼は留まった。だが…

 

「バーックション!!!」

 

まるで落雷が落ちたかの様なバカデカいくしゃみが広場全体になり響いた。あまりのくしゃみのでかさに楽器を演奏していた舞踊員がびっくりして音を思いっきし外した。観客の目は一気にステージからくしゃみをしたポカリに移った。 

 

「アハハハ。やってもうた。」

彼女は笑いながら頭を掻いていた。だが演奏が止んでしまった為か、周りが少しずつザワつき始め舞台が壊れかけた。どうやってこの場をやり過ごそうかとフレッシュは必死で考えた。シャドーは他人のふりをしようと思った。そんな時、先ほど布から現れた踊り子がステージの中央に立ち軽く咳払いをした。観客は彼女に気付き、目をステージに戻した。すると彼女は演奏がないにも関わらず一人で舞い踊り始めた。もう少しで収集が着かなくなる程だった。ザワつきがピタっと止み誰もが踊り子に釘付けになった。

あんなハプニングにも一切動じず即興で踊る彼女に、フレッシュは素直に凄いなと思った。

「(あかん!もうここにはおられへんシャドー!フレッシュ!ここ出るで。)」

とポカリは小声で言いながらこっそりと席を立った。誰のせいでこんな目に合わなきゃならないんだよとシャドーは腹の中でつぶやきながらも席を静かに立った。すると、

「(…?フレッシュどうした?)」フレッシュが着いて来ない事にシャドーは気付いたフレッシュは彼女の踊りに魅入っていた。二回ほど、シャドーが彼の名前を呼びフレッシュは我に返った。まだ見ていたかったけど仕方ないと諦め、彼もこっそりと席を立った。何度も彼女を見ながら。幸いフレッシュ達が席を立った事に観客は気付かなかった。うまく逃げきれると3人は思った。が、

 

「おっと、さっき営業妨害(くしゃみ)した奴等だな。」

と舞踊団の人に捕まってしまった。 くしゃみをしたのはこのバカ一人なのに…とシャドーは思った。

「ちょっと一緒に来て貰おうか。」と言うと、フレッシュ達はカントッチョ舞踊団の楽屋裏に連れていかれた。予想外のハプニングが起きたにも関わらずそれを一人で見事乗り切った女性に観客は割れんばかりの拍手をした。

 

舞台は彼女のお陰で大成功した。そんな拍手を楽屋裏で聞いているフレッシュ達3人。フレッシュはこれからどうなるんだろうと不安に思った。シャドーはかなりイライラしていたこんな目に何で僕が巻き込まれなきゃならないんだと言う事と、何よりそんなくしゃみをした等の本人がスースーとのんきに寝ている事に。呆れた目では彼女を見た。ポカリはコックリコックリと首を揺らせシャドーに寄り掛かった。フレッシュはこの場をどうやって逃げ切ろうと考えていたからそれには気付かなかった。シャドーは焦った。ポカリの髪からシャンプーの香りがしたのにドキマギした。

 

だんだん楽屋裏が賑わってきた。至るとこでお疲れと声が聞こえた。そんなやりとりの中、

「さっきのヤツラは?」

「はい!こちらです。」

と言う声が聞こえた。どんどん足音が近づいた。フレッシュはドキドキしたシャドーも違う意味でドキドキしていた。ドアが勢いよく開きその音にポカリは目を覚ました。顔を上げた瞬間、シャドーの顎に直撃した。当たったところが悪かったのだろうか?二人はかなり痛がっていた。

「痛〜!!何すんねん!このバカ!!」

ぶつかった頭を抑えながらポカリはシャドーに怒鳴った。フレッシュは何があったのか分からなかった。シャドーは顎を抑えながら、

「…お前のそういう無神経な所がマジムカつく…!」と冷ややかにつぶやいた。身に覚えのないポカリは、

「はぁ?うちが何したっちゅーんや!?」と三人の人間が入ってきた事にも気付かず喧嘩を始めた。

 

「おい!お前ら、自分の立場が分かんないのかっ!?」

さっきフレッシュ達を捕まえた若い男が二人に怒鳴った。イライラしているシャドーはそいつを睨んだ。

「…うるせぇなぁ。つーかたががくしゃみごときで演奏が止まるなんて、ここの舞踊団も大したことないね。」

シャドーに図星を突かれた男はカァッと赤くなった。

 

「うむ、確かにお主の言うことも一理あるのぉ。」

穏やかな雰囲気漂う一人の老人が優しく言った。さっきの男は悔しそうに老人を見た。でも口には出さずに我慢した。どうやら老人はここで一番偉い人の様。そんな彼の近くにさっき一人で踊りきった女性もいた。銀色の髪に薄紫の布を羽織った綺麗な女性。流石の二人も彼女の事は覚えていた。

「あっ、うちがごっつババしたかった時におうた人や!」ポカリは彼女を指さした。老人はババとは何じゃ?と疑問に思いながらも彼女に、

「知り合いかね?」と尋ねた。すると彼女は、

「別に。ただ昨日森で会ったぐらい。」と静かに言った。

この時フレッシュは何で彼女は昨日森に居たんだろう。と疑問に思った。そしてナルシーが言っていた言葉を思い出した。“彼(ステーキ)の事が聞けるかも…”という言葉を。でも情報提供者があれだしなぁ…、とフレッシュは思い言うのを止めた。

「楽長!確かに演奏を止めたのは自分の未熟さのせいですが彼らが、くしゃみをして営業を妨害したのも事実です!」と男は言った。

「やはりそれ相応の罰がっ!!」

男は個人的にシャドーに罰を与えたかった。

「うむ。そうじゃの、…お主の気持ちも分かるが、たかがくしゃみごときで罰というのちと可哀想な気ががするのぅ…。」と髭をいじりながら言った。

「そうや!可哀想やろ!それに営業妨害ってただくしゃみしただけやん!あんなん生理現象やで!それにまだババじゃないだけええやろ!」とポカリが口を挟んだ。ババの意味が何となく老人は分かってきた。

「ちなみにどんな罰を考えておるんじゃ?」と老人は男に聞いた。

「はい。彼等にヤツ等を捜させようか…と。」と男はフレッシュ達に目をやりながら言った。

「うむ…。」

「そうすれば自分達はこちら(舞踊団)に専念できますし、」そう言うと、

「ちょっとっ!!あいつ等の捜索はあたしがやるって言ったじゃない!」と隣の女性が口を挟んだ。

話の内容がよく分からないがこれ以上やる事が増えるのは絶対にゴメンだと3人は思った。

「なぁ〜ホンマに堪忍してや!うちらかて学校の課題でステーキ探さなぁアカンのや〜。とがめなら謎の生命体S君(シャドー)が全部受けるから、うちとフレッシュは堪忍してや。」

とポカリは必死で3人に言った。シャドーは、もぅ相手にするは止めた。腹の底でブツブツと文句をつぶやく事で耐えた。

『ステーキ』と言う言葉に女性と老人がピクと反応した。

「あ〜、お主はもう戻って良いぞ。」と老人は男に言った。男は渋々部屋を退出しようとした。

「あっそうじゃ!お主には三ヶ月間舞台に上がるのを禁じる。彼等に罰があってお主にないのは不公平じゃからのぅ。」と老人が言った。

シャドーは良い気味という笑みを浮かべた。男は悔しそうな表情を浮かべながらも何も言わず部屋を出ていった。彼が居なくなって老人は口を開いた。

「いくつか質問するから答えてくれ。お主等が捜しているステーキとはどんなヤツじゃ?」

と3人に聞いた。3人は突然のステーキの話題に顔を見合わせた。

「フゥ…じゃあまず髪型は?」と質問した。

「えーと、リーゼントですが…。」

フレッシュが答えるとさらに老人は続けた。

「そいつはどんな服装をしている?」

「…下は分からないけど上半身裸って聞いた。」

シャドーは呆れた口調で言った。

「最後に肝心の性別は?」

この質問に3人はかなり困惑した。一体ステーキはどっちなんだろう?

「見た目は暑苦しいおっさんらしいんやけど心は十代のピュアな乙女の様なハートを持つ…オカマやな。」とポカリが言った。それを聞いて老人は、

「驚いた、お主等もヤツを捜しているとは…。」と目を丸くさせて言った。

フレッシュの方が驚いた。何に驚いたかって、あのナルシーが言った通りここの舞踊団がステーキを知っている事に…。あの人も少しは使えるんだなぁとフレッシュは思った。

「えっ?おっちゃんらもステーキ捜しとんの?」とポカリが老人に尋ねた。

「うむ、…ちょっとワケがあってのぅ…。」

どう頑張って考えてもオカマと舞踊団は結び付かないとシャドーは思った。

「ほな一緒に捜したらええやん!舞踊団の人達ならぎょーさんおるからすぐ見つかるで!」

とポカリが嬉しそうに言った。フレッシュもこの考えには賛成した。人が多い方が効率が良いし何より、モンスターの言葉が分かる彼女が居れば無駄な戦いをしなくて済むと思ったから。

「うむ…悪い案じゃないのぉ。」と老人は髭をいじった。

「ちょっとっ!舞踊団はどうするの?ただでさえあいつ等が居なくて客入り悪いのに!!」

女性は声を張り上げた。

「うむ。そなたの言い分も分かる。だがら、彼等が見つかるまでカントッチョ舞踊団は休団にしようと思う。今日の舞台が良い薬だった。儂や他の団員は彼等とそなたの実力甘えておる。だが他の団員も決して才能がないわけじゃない。だがら休みの間、儂は新人を育てようと思う。で、そなたには彼等とステーキを探して欲しい。」

と女性の目を見て穏やかな口調で言った。

「何よりヤツとは久々の対面じゃろ?きっとステーキ自身、そなたに会いたがっておるじゃろう。」

と老人は意味深な事を口走った。女性は、

「あたし自身は会いたくないんだけど。」と腕を組んだ。まるで顔見知りな口ぶりだ。

「あのー…ステーキさんとは顔見知りなんですか?」

フレッシュは老人と女性に尋ねた。すると、

「うむ…顔見知りというかステーキは…、」

「ちょっと!」と女性は必死で止めたが老人は話してしまった。

 

「彼女の親じゃ。」

 

フレッシュ達は信じられないという顔をし彼女を見た。

「まぁ正確に言うと命の恩人兼育ての親なんじゃが。」

フレッシュ達は、そんな変態が育ての親でよくマトモに育ったなぁという目で彼女を見た。

 

「…なら話が早い。そいつがどこにいるか分かるのか?」とシャドーが女性に聞いた。すると、

「悪いけど、あいつの事は何にも知らないわよ。一緒に居たって言っても3年間だけだし。それから君、口の聞き方には注意した方が良いわよ。」と女性は冷やかな口調でシャドーに言った。嫌な空気が漂いそうなのをフレッシュはすぐに感知し、

「まぁ同じ人を捜しているならやっぱ一緒に行動しようよ。」と優しく微笑えんだ。

「そうや!一人じゃ危険やで!一人より二人と一匹の方が安全や。」とポカリも微笑みながら言った。一匹って誰の事だよとシャドーは腹の中でつぶやいた。

女性は少し驚いた表情をしながらも笑った。五つぐらい年が離れているとフレッシュは思っていたが、彼女の笑みを見てあどけなさを感じた。

「そうね…一人より二人と一匹の方が安全ね。じゃあ当分の間宜しく。」

と手を差し出しポカリとフレッシュは女性と握手をした。

「そういえば名前はなんて言うの?」

フレッシュが無邪気に聞いた。彼女は一瞬止まった。そしてかなりの小声で、

「…シャランラ…カントッチョ…。」とつぶやいた。

シャドーはそれを聞くなり隅っこにしゃがんでクスクスと静かに笑った。シャランラはそんなシャドーを気も止めずに手を差し出した。

「宜しくね。」

その毅然とした態度にシャドーは顔を上げた。そして名前を笑ってしまった事に罪悪感を感じた。なんて自分はガキなんだろうと。そして彼女の心の寛大さを感じた。彼も手を出し握手をした。だが…。

 

ネチョ。

変な感触がした。不思議に思い自分の掌を見るとなんとガムがくっつけられていた。

「仕返し。」

とシャランラはフンと笑いながら言った。シャドーはシャランラに思った事を前言撤回だと腹の中でつぶやいた。

「なぁシャランラはホンマにステーキの事何も知らへんの?」ポカリが聞いた。

「そうねぇ。」彼女は指を口に当てながら考えこんだ。でも経ったの3年間じゃ何の手がかりもないだろう。

「…なんか下に妹か弟がいる様な口ぶりだったような…、ねぇ楽長も何か知らないの?」シャランラは楽長に目を向けた。

「そうじゃな〜、確か故郷はオリマー国だと聞いたが。」と言った。

3人はピクと反応した。

「…じゃがヤツの事じゃ一定の場所にずっと留まるとは思えないから故郷に居るとは断言できん。」と髭を撫でながら言った。

オリマー国といったらフレッシュ達の故郷でもある。あんな変態と同じ出身地かというのを聞いて3人は、マジで嫌だなと思った。そんな時、ドアの向こうからこんなやりとりが聞こえた。

 

「ねぇ〜聞いてよ〜今日踊りさぼってエステに行ったんだけどぉ〜。」

どうやら舞踊団の人らしい。口調からすると若い女の子の様だ。

「うん?何かあったの?」

「それがさぁ〜そこに今時、リーゼントの人がいたの!〜それもオカマ!」

「え〜!マジで?」

「マジマジ!なんか『今日里帰りするから念入りにやって頂戴ね♪』って言ってたよ。」

「いいな〜レアなもの見れて〜。」と大きな声で楽しそうに話していた。この話しを楽長とシャランラが聞いている事に気付かずに…。すると、大胆にもシャランラはドアを開け楽しそうに話している二人組に声をかけた。

 

「随分と楽しそうね?あたしにも聞かせてくれない?」

二人はさっきの話の内容が副楽団長であるシャランラに聞かれた事に焦った。

「あっ副楽長!?いや?その?」

二人組は、困惑しながらしどろもどろとした口調で口ごもった。さっきまでの盛り上がりはどこに消えてしまったのだろう?

「さっき、オカマがどうたらって言ってたじゃない?興味があるの。聞かせてくれないかしら?」

二人は踊りをさぼったことにとがめられると思っていたのでびっくりした。副楽長はオカマに興味があるのだろうか?と一抹の疑問を感じたが二人はしどろもどろとさっきのオカマの事を話した。

 

 

「…フーン。」

「ただそばで聞いただけなのでどこが里帰りかまでは。」と話した。

これでステーキがどこに行ったかが分かった。彼の出身地はフレッシュ達と同じ所だから…。

「って事は、戻らなきゃダメだね…。」

フレッシュはつぶやいた。これを聞いてポカリは、

「え〜また森歩くの?うち嫌や!つぅーかここに来た意味ないやん。」とその場にしゃがみ込んでぼやいた。シャドーも全くだ。という意味をこめたため息を付いた。

 

「無駄じゃないよ。だってここに来たお陰でシャランラに会えたんだし。ねっ?」と無邪気に微笑んで言った。シャランラは嬉しさと恥ずかさのがせいで顔を赤くした。シャドーとポカリもフレッシュのピュアな笑みには勝てなかった。

「それも、そうやな!」ポカリは立ち上がった。

「…フン。」シャドーはさっきの事を根に持っている様。

「まぁこんなメンバーだけど改めて宜しくね。シャランラ。」

フレッシュは無邪気にシャランラを見て笑った。

「…ええ。」と彼女は答えた。

こうしてフレッシュ達にシャランラが加わりステーキ捜しが一歩前進した。

 

だがこの先にフレッシュとシャドーにとって悲しく辛い過酷な運命が待ちわびているとは

まだ誰も知らなかったのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 TO BE CONTINUED…