Hero growth picture diary story
第6章
後編
〜弁当は母の味〜
―――変な鍵を見つけたシャドーは不思議そうにそれを拾いあげマジマジと見つめた。
一体、何の鍵だろう?
シャドーの家の鍵ではないのは確かである。
それに鍵があったとしても無意味だなぜならドアに無数の釘が打ってあるから…。
シャドーは、あの変態教師の物だろうか?と思いながらそれを見つめた。もしそうなら土の中に埋めようと考えた。すると…、
「お〜い!」
遠くから何かがやってきた。シャドーはその声のする方に目を向けた。その声の主はいつかの爺さんだった。何か持っている。彼はどんどんシャドーの方に駆け寄った。
「お〜いプラッシュ!」
相変わらずのボケっぷりである。どうやらシャドーをフレッシュと勘違いしている模様…。シャドーはひとつため息をついて彼の間違いを指摘した。
「…プラッシュじゃなくフレッシュだよ。第一僕はシャドーなんだけど。」
爺さんに目を向けて言った。すると爺さんは、
「おぉ〜そうじゃった♪パトラッシュだったのぉ〜。」とにこやかに返した。『ッシュ』しか合ってない…。
シャドーはもぅ指摘するのは止そうと思った。
「ん?主…パトラッシュじゃないな。」
爺さんは目を細めマジマジとシャドーを見た。
「…だからさぁ、さっきからそう言ってるだろ…?」
心底疲れると思いながらシャドーは鍵を握りしめたまま腕を組んで答えた。
「パトラッシュはお前の様なムッツリな顔をしとらんぞ!お前は誰じゃっ!!」
「誰がムッツリだっ!!!」
「怪しい奴め!警察に突き出してやる!」
爺さんは懐から携帯を取り出した。
「もすもす?」
「お、おい!?ど?どこに掛けてんだよ!?」
シャドーは慌てた。
「あんた、本当に僕だけ分かんないのかよ!?」
彼の言い分からよるとその爺さんは、フレッシュ、ポカリ、シャドー3人の共通の知り合いらしい。だがなぜかシャドーだけ記憶の片隅にもいないよう…。
「あーもじもじ?」
彼はシャドーの言い分を無視するかのごとく携帯に話しかけた。
「…なんで覚えてないんだよ…。」
シャドーは悲しそうに言った。情を引こうとしている様…。すると流石の老人もハッとしシャドーに目を向けた。
「…お前、まさか…。」
シャドーを思い出したのだろうか?
「ブラッドさんが痛く可愛がっておる…デヘちゃんか?」
デヘ(デメ)ちゃんとは、シャドーの家で飼っていた金魚の名前である…。確かにブラットが可愛がっていた。去年天に召されたが…。
「なんで金魚なんだよっ!!」
シャドーは怒鳴った。
「いや!デヘちゃんはもっと目が飛び出るようなビックな目をしとったぞ!お前は誰じゃ!」
また振り出しに戻った。
「だから……もう良いよ…。」
シャドーはもぅ相手にするのを止そうと思いその場を去ろうとしたが、
「あ〜もちもち?連続食い逃げ犯が儂の目の前で逃走中早急に逮捕を!場所は…。」
爺さんは本当に掛けている模様…。
「だからあんたは一体どこに掛けてんだよ!それに誰が連続食い逃げ犯だよっ!」
これは無視することもできない…。
「なんじゃ?ウルサイ奴がじゃの〜!名を名乗れっ!」
「だからさっきからシャドーだって言ってるだろっ!!」声を張り上げた。
「…ゲドー?はてどこかで聞いた覚えが…。」
爺さんは考え込んだ。そして、
「おぉ!そういやブラッドさんの所にアホでナメクジの様にウジウジとした暗い弟子の名がそんな名じゃったのぉ〜。」
手のひらをポンと叩いた。
「お前がそれか!久しぶりじゃ〜。」
「…てめぇ…やっぱ死にたい様だな…。」
シャドーはピクピクしながらつぶやいた。まぁとにかくシャドーの事を今度はちゃんと思い出したらしい。爺さんは、
「久々の再会じゃ!よし!これをやろう!」
と言うと持っている物をシャドーに差し出した。
「何だよ?コレ…?」
爺さんがシャドーに差し出したのはちょっと大きめのバスケット…。
「知らん。儂のヤギ小屋に落ちていた。」
「あんた!そんな不審物をよこすなよ!!」
もっともな意見である。
「じゃが中はとても旨そうなお弁当じゃゾ!」
そう言いながら爺さんはバスケットの中をシャドーに見せた。確かに彼の言うとおり、中はとても美味しそうなお弁当だ。タコさんのウィンナーに鳥の唐揚げ、綺麗な黄色い卵焼き…それから可愛い形のおにぎりが綺麗に並べられていた。
「これ…誰かの弁当だろ!」
シャドーはすかさず突っ込みを入れた。
「儂のヤギ小屋に落ちておったから儂のもんじゃ♪」
爺さんはむちゃくちゃな理屈を述べた
「さぁたんとお食べ。」
と言うと彼はシャドーに卵焼きを食わせようとした。
「食うかよっ!!」
心底嫌だったからシャドーは本気で怒鳴りそれを振り払った。すると卵焼きは地面にぐちゃと崩れた。
「…そんなに怒鳴る事ないじゃろ…。」
それにびっくりしたのか爺さんはしょんぼりとそしてとても悲しいそうにつぶやいた。
「いや…儂が悪いんだな…スマンのぅ…久しぶりに会えた事が嬉しくてはしゃぎすぎてしまった…。」
今さっきシャドーを思い出したばかりのくせに彼は涙を流しながら言った。
「こんなオイボレは早くお迎えが来るのを待つしかないのぅ…。」
シャドーは心からそれを願った。だが涙を流す老人と黒いローブを身に纏った目付きの悪い少年を周りが見たら絶対悪者扱いされるのはシャドーである。
「な、泣くなよ!僕が悪者みたいだろ!」
焦った口調で彼は言った。が爺さんはいっこうに泣き止まない。彼の不安は見事的中した。近くにいたおばさん方がそれを見てヒソヒソと耳打ちをした。罪悪感を感じたシャドーは、
「わ、分かったよ!食うよ!だから泣くのやめろ!」
思わずそう言ってしまった。
「本当か♪やっぱジャドウは優ちいのおぅ。」
爺さんはパッと明か明かりが灯ったかの様な表情をした。とてもさっきまで涙を流していたとは思えない彼の表情を見て騙されたとシャドーは思った。が、そんな爺さんの表情を見たおばさん方は安心した表情を浮かべてその場を去った。
「ほれ!心行くまで召し上がれ。」
爺さんはシャドーにおにぎりを渡した。シャドーはそれに目をやった。
一口ぐらいなら…見た目は普通だし、別に毒じゃないんだから…と自分に言い聞かせそれを口に含んだ。
「ねぇ…今叫び声がしなかった?」
フレッシュとシャランラの2人はシリアスな雰囲気をぶち壊す情けなくとても苦しそうな叫び声を聞きとった。