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第7章
〜予兆〜
「ねぇ…今叫び声がしなかった?」
フレッシュとシャランラの2人はシリアスな雰囲気をぶち壊す情けなくとても苦しそうな叫び声を聞きとった。
そんな怪しい叫び声を聞いたフレッシュはシャランラに問い掛けた。
「…した。…すっごい情けない叫び声がね。ていうかまだ聞こえない?」
シャランラはそう言うと、スッと立ち上がりその叫び声をしっかり聞き取ろうと耳を澄ませた。
フレッシュもどこか聞き覚えのある声だなと思いながら腰を下ろしたまま耳を澄ませた。
だが誰の声だが分からない………………………………。
二人が耳を澄ませた数秒後叫び声は悲しい断末魔のように途切れた。
「ねぇ、ただ事じゃないんじゃない?今の叫び声…、」
シャランラはフレッシュの方に目を向けて同意を求めた。
フレッシュもそう思った。
まさか、またさっきの男性が…?
ふと嫌な予感が二人の脳裏をよぎった。
シャランラはとても心配そうな表情を浮かべた。
そんな様子の彼女に気付いたフレッシュは、
「まだ断定するのは早いんじゃない?とにかく叫び声がした所に行ってみよう?」
と立ち上がりシャランラに優しく言った。
優しく微笑む彼を見つめながらシャランラは首を縦に振った。
そして二人は叫び声がした方に駆けていった。
一方…
「どうちたんじゃ!?カトー!!!」
おにぎりを口にした途端その場に倒れこみピクリとも動かなくなったシャドーに老人は戸惑った。
「カチョー〜!!?」
そんなあたふたしている爺さんの元にフレッシュとシャランラが駆け寄った。
「ハァハァ…あっ!お爺さん今の叫び声、何があっ…ってシャドーッ!!?どうしたの!?」
その場に横たわるシャドーに気付いたフレッシュは、すぐに彼を抱き抱え老人に尋ねた。
「おークラッシュ!大変なんじゃ〜!見知らぬ小僧がヤギ小屋に落ちとった入れ歯を振り払い金魚を人質にしていきなり倒れたんじゃ〜!」
相当混乱しているためか何を言っているのか分からない。
「お、落ち着いて!」
フレッシュはやんわりとした口調でそう彼に告げた。
内心この人の証言じゃあてにならないとフレッシュは思い他に目撃者が居ないか辺りを見渡した。
が、どうやら爺さんしかその場に居なかった。
シャランラはまたケイが…?と不安に思ったがシャドーのそばに少し大きめのバスケットがある事にに気付いた。
「あれ、これって…??」
何か心当たりのある様子の彼女に気付いたフレッシュはシャランラに目を向けた。
「…?どうしたの?」
「え?いやぁ…さっきあなたの母親に渡されたバスケットに似ているなぁと思って…、」
しどろもどろとした口調で語るシャランラを見てフレッシュは、顔面蒼白になった。
「え゛?母さんから?」
ま、まさか…!?
フレッシュはそう思いながらシャドーに目をやった。
彼の苦しそう様子を見て、…あの人の料理なら十分有り得る…と思いながらも、シャランラに目をやり、
「…そ、それで、か…母さんから渡されたバスケットは…?」と尋ねた。
「…ごめん…さっきまでは持ってたけど気付いたら…、」
シャランラは気まずそうにフレッシュから目を逸らした。
「………えーと、お爺さん、コレ…どこで拾ったの…?」
フレッシュは気を取り直して老人に尋ねた。
すると、
「ん?わ、ワシのスリーサイズ!?パラッシュ!プリチィーな顔をしてなんて破廉恥な!……まぁ…どうちても知りたいなら教えてやらん事はないが…、」
老人は頬を紅潮させながら言った。
「どこで拾った?」
さすがのフレッシュも苛立ちを覚えたのかキツめの口調(半ば脅し)で老人に尋ねた。
「あ〜?」
彼は耳に手を添えながら、フレッシュの話を聞いた。
「あ〜!あのバスフットか!」
やっと、会話が噛み合った。
「そりは…、」
老人は得意げな表情を浮かべて答えようとした。が、
「は、はっ…ぶはぁぁぁっくっしょい!!!!!」
またくしゃみをして入れ歯が勢い良く飛んだ。
「モガモガ…モガモガ!!」
何をほざいているのかすら分からない。フレッシュは彼に頼った自分の愚かさに気付いた。チラとバスケットに目をやると中に手紙らしきものが入っている事に気付いたフレッシュはそれを手に取った。見れば…、
『残さず食べてね♪フレッシュ☆彡ママより』
決定的だった。
「やっぱり…あの人のせいか…?」
フレッシュはため息混じりにつぶやいた。
「シャドー…本当にごめん、またしてもこんなことになるなんて、」
どうやらこれが初めてではないらしい…。
気の毒そうに語るフレッシュを見てシャランラは尋ねた。
「そ、そんなにまずいわけ?」
見た目は普通…いやかなり美味しそうである為に信じれないという口ぶりで聞いた。
そんな彼女の質問にフレッシュは悪夢を思い出したかの様な表情を浮かべながら答えた。
「尋常じゃないんだ…あの人の料理…、」
ポツリとつぶやきながらフレッシュはおもむろにおにぎりを二つにちぎりその中身をシャランラに見せた。
「…ウソ…!?」
彼女は目を丸くしながらそれを見つめた。そこにはタラコや鮭など当たり前の食材は居なかった。
代わりに居たのは卵であるそれも生卵…υ
殻と黄身と白身が海苔と真っ白な米にまとわり付き、見るからに恐ろしい悪魔の味を再現していた。
「シャドー、…本当にごめん…。」
フレッシュはおにぎりをバスケットに戻しシャドーに謝った(そんな場合じゃないだろ)
シャランラはあっけに取られた表情を浮かべながらシャドーに目を落とした。
彼に悪いからずっと我慢していたがシャランラはもう耐えることが出来ず肩を震わせ静かに笑いだした。
「シャ…シャランラ?」
あまりに唐突だったのでフレッシュは戸惑った。
がさきほどまで悲しそうな表情を浮かべていた彼女に笑顔が戻った事に安心した。
フレッシュもつられて優しく微笑んだ。一時でも彼女が笑ってくれるのなら…と思いながら。
―――その頃家に残されたポカリ達はというと、
「…なぁ!?おっちゃん!!どうゆう事や!?その、ディズニーアイランドを世間から存在を隠したって?」
彼女は椅子から立ち上がりステーキに尋ねた。
一編に小難しい事を言われたのでポカリの頭はオーバーヒートしている様子。
「ちょっと〜!もぉ〜誰がおっちゃんよぉ〜?こーんな、可愛いナリしてるのにぃ〜☆彡」
ステーキは頬杖をついて吐き捨てるようにポカリに言った。
「あ、あんたのどこが可愛ええナリや!?でどういう事何や!?」
自分の質問をはぐらかすステーキに心底ムカついている様子。
「やだぁ〜あたしの魅力が分からないなんて不憫な子ね〜。でもまぁ〜お嬢ちゃんに分かって貰いたいとは思わないけど〜。」
さり気なく失礼な事を言うステーキ。ポカリは睨んだが、
「それより、またお嬢ちゃんのお仕事のようよ。」と巧く話をはぐらかし、ドアに目を仕向けさせた。
「?」
ポカリはワケ分からない様子だったがステーキが目を向けるドアに目をやった。
するとフレッシュ達が中に入ってきた。
「あっ!フレッシュ!やっと帰…ってどないした?その手ッ!?」
シャランラを庇った時に作ってしまった手の傷に気付いたポカリは心配そうに聞いた。
「あっ、コレはどうって事ないから…それよりシャドーが危ないかも…υ」
しどろもどろな口調で言いながらフレッシュはぐったりとしているシャドーに目を向けた。
「なっ…シャドー!?どないした?まるで毒でもくろうた症状やな!」
とポカリはシャドーに目を落とすと一言つぶやいた。
そんな彼女の言葉を聞いたフレッシュとシャランラは『毒より質が悪いものかも…』と腹の中でつぶやいた。 すると、
「あら?みんなおそろい?あっフレッシュ♪ママの特製スペシャルランチどうだった?名付けてフローラ幕の内★(フローラ=ママの名前)」
キッチンから諸悪の根源が愛くるしい笑顔を浮かべて現われた。
「母さん…一生食材には触れないで…。」
シャドーを隣の空き部屋に連れベット横にさせながらフレッシュはポツリとつぶやいた。
「えっ!?フレッシュの口に合わなかった?そ、そんな…よぉ〜し作り直しを…」
と袖を捲りあげて彼女は再びキッチンに入ろうとした。
「しなくて良い!…頼むからこれ以上ゴタゴタを起こさないで…」
冷ややかな口調でフレッシュは吐き捨てた。
どうやら本当にムカついている様子。
「…フッ…フレッシュ…ごめんね…ウィンナータコさんよりカニさんが良かったなんてママ…気付かなかったわ、…スーちゃんどうしましよう…フレッシュに嫌われちゃった…グスッ、」
と少女の様に愛らしく涙を浮かべて彼女はステーキに同意を求めた。
「まぁひどい子ねぇ〜フレちゃんって。でもほら今日のフレちゃん、多い日だから分かってあげてv」
彼はワケの分からないことを母親に吹き込んだ。
「何を言ってるの!?マジで!?」
フレッシュは二人にそう言ったがそんな彼の言葉をあの人が聞くワケもなく、
「え?そうなの!ヤダ〜!ママ知らなかったわ〜今日はお祝いよ!」
「お☆赤飯か?」
何故かクロアが嬉しそうだ。
「えっいやだから…ちょ…待って、」
と言う息子の声を聞かずに彼女はまたキッチンの方に消えていった。
「ほら、これでママは当分出てこない☆彡あたしって頭いい〜♪」
ステーキは親指を立てながらフレッシュに言った。
「……。」
何も言わずにフレッシュはステーキを睨んだ。
「やだ!そんな刺すような険しい瞳で見つめられたらあたし溶けちゃう〜彡」
とステーキは頬を両手で抑えながら恥ずかしそうに笑った。
フレッシュはもう何も言わないでいようと腹に決めた 。
「で?おっさんさっきの話の続きは?」
ポカリはステーキに尋ねた。
「もぅ〜フレちゃんとのコミニュケーションの邪魔しないでよぉ〜!それと、その話は
今日は止しましょう。もう暗いし色々あって疲れたはずよ?お話はまた明日。」
とステーキは人差し指を立てながらフレッシュ達に言い聞かせた。
確かに今日は、色々あった新しい仲間が出来たり捜していたオカマが実の兄だったり、召喚獣に襲われたりプリン姫と同じ症状の男が現われたりと色々な事が、一遍にあり過ぎて皆疲れ果てていた。だからステーキの意見はかなり正論だ。だが何故だろう?あんなオカマに正論を言われてるとかなり腹が立つ…、フレッシュとポカリはそう思った。
「て言うワケでフレちゃんv一緒におねんねしましょう♪」
とステーキは嬉し恥ずかしそうに言った。
「…どういうワケでそうなるの?」
フレッシュは冷ややかな口調で尋ねた。
「もぅ〜女(?)に恥かかせないの!」
話をまったく聞かないステーキにフレッシュはふと、前にナルシーに言われた言葉を今実行しようかな…と思った。
「ちょっと!ダメよ!!フレッシュはママとおねんねするんだから!」
何か怪しいげな食材を持ったままフレッシュのママも話に乱入してきた。
「ちょっと〜ママ!?久々の兄弟のスキンシップ邪魔する気〜?」
「スーちゃんこそ母子の時間を奪うの?」
と睨み合う事3秒。
すると二人は何かを閃いた様子。
『そうよ〜3人でおねんねしましょう!♪』
と結論を出し、満面の笑みでフレッシュに言ったがその時には彼はもぅそこには居なく、既に自室へと戻っていた。
と…まぁそんなこんなで、フレッシュ達の長い長い一日が、更けていきました。
「…シャランラまだ起きとったの?眠れへん?」
―――その晩。
首にタオルを掛け、洗い立ての髪を拭いながらポカリは自分の部屋へ戻ると、シャランラは窓の景色をぽーっと眺めていた。
長い一日の疲れを癒すためシャランラはポカリの家に泊まる事になった。
ただポカリの家に空き部屋は無いため二人同じ部屋で寝泊りする事になったのだ。
「…どないしたん?」
「ん、考え事をしてて。」
彼女は窓の景色からポカリに目を向けながら優しく微笑んだ。
しかし、どこか憂い帯びた表情に感じた。やはり昼間の出来事が気掛かりなのだろう…。
気丈に振る舞っているが、ポカリが部屋に入ろうとするほんの少し前の瞬間、とても悲しそうな表情を浮かべて窓を見つめていたのだ。
そんな様子のシャランラを見てポカリは何て言葉を掛ければ良いのか分からなかった。
人の傷を癒すのが職種の白魔導師科なのにこういった傷の癒し方は分からない、…ただこのままシャランラが仲間から外れてしまう…。そんな気がした。
「なぁ、」
何か言わないとあかん。そう思ったポカリは、
「は、はよ、タイさん、治るとええな!!?」
唐突に大きな声でシャランラに言った。
「え?」
あまりの唐突と声の大きさにシャランラは目を丸くしながらポカリを見つめた。
きっと励ますつもりで言ったのだろう。…だが思いっきり名前が違う。
しかし、ポカリは構わず話を続けた。
「なぁ!シャランラがイヤじゃなきゃうちらと一緒に行こうや!したらタイさんの手がかりになる事も見つかるやろ!フレッシュも絶対ええゆうと思う。」
ポカリはシャランラが腰を掛けているベットの隣に座り彼女の手をぎゅっと握った。
「え?」
沢山つっこみどころはあったのだがシャランラが言ったのはこの一言だった。
「…けどあの黒いヤツの意見は?」
唖然としながら返すシャランラにポカリは真っすぐ彼女を見ながら答えた。
「黒いヤツ?あぁ!シャドー?そんなん平気や!確かにものごっつ性格歪んでるし暗いし妙に細かくて神経質で、運無いヤツやけど困ってる人を放っくほど根は腐ってへん……と思うし、それにシャドーに選ぶ権利も断る権利もあらへんから気にせんでええ。」
得意げに語るポカリを見てシャランラは笑みがこぼれた。
「ふふっ、随分知り尽くしてるんだね?」
突然のシャランラの言葉にポカリはなぜか焦った。
「な、何がや!?まぁシャドーは幼なじみやからな!」
ポカリは顔を赤くしながらそう返した。
「それだけなの?…それじゃあ…、」
「え!?それじゃあって何や!?」
ポカリは慌てた様子でシャランラに聞いた。
「?それじゃあ寝ようかなって言おうとしたんだけど?」
シャランラは意地悪そうに笑いながらポカリに返した。
「な、何や…。そ、そやな、もう遅いし寝ようや!」
慌てた様子でポカリはベットのなかに潜り込んだ。
シャランラも床に敷いた布団のなかに入って部屋の明かりを消した。
「…。」
目が冴えてなかなか寝付けないポカリ。そんな様子の彼女に気付いたシャランラはポカリに声をかけた。
「さっき一緒に行こうって言ってくれたの…嬉しかったよ。あ、ありがとう…。」
照れくさそうにシャランラが礼を言った。
「え?あぁ、かまへんで!」
予想外だったシャランラの言葉にポカリは少し戸惑いながらもシャランラの背に笑顔を向けながら返した。
「…あたし…意地張ってても良い事ないって事を今回の事で分かったんだ…。」
「え…?」
シャランラの背を見つめながらポカリは話を聞いた
「…ケイに対してあたしはいつも強がってばかりだった。弱い自分を見せるのがイヤで甘えてしまうのがイヤで素直になれなかった…。あいつが行ってしまうときですら『寂しいって』一言が言えなかった。なんか馬鹿みたいに意地張ってた…。けど、その時だけでも素直になってればって今になってよく思う。だから…あたしが知ってるケイに戻ったら今度は…素直に自分の気持ちを言いたい。…いつになるか分からないけどね…。」
「シャランラ…?」
ポカリは少し体を起こし彼女に心配そうに話掛けた。
「…心配しないで…。大丈夫だから。あたしはケイを信じたいの…。ううん、信じているから。」
シャランラは強く静かにつぶやいた。
ポカリは、何て言葉を返したら良いか分からずただ黙って聞いていた。
「長くなっちゃったね…。そろそろ寝ないとね。」
そう笑うとシャランラは潜り込む様に布団を掛けて眠りについた。
―――ところ変わって…
「…くっ…!」
一人の男は頭を抑えながらその場にうずくまった。ひどく頭が痛むのだろうか?とても辛そうな様子だ。
点々とした蝋燭の明かりがその男の姿を映し出す。
ダークブラウンの髪を一つに束ね、鼻に切り傷がある男…。そう、昼間フレッシュ達を襲った男だ。
「…苦しいの?」
そんな様子の男に誰かが尋ねた。色気のある声だ。
辺りが暗いからその声の主の姿や顔が良く分からない。
蝋燭の漏れる明かりからうっすらと見えるのは、恐ろしい程長く伸ばした黒髪をしなやかに垂らした…女性。
「そう…苦しいのね?可哀想に…」
と女はそうつぶやいては男の頬を妖しく撫でた。
「くっ!…俺は…」
「良いのよ?無理して前の記憶を思い出さなくても…それより壊したかったものが壊せないって不快よね…?わらわも今そうなの。この国全てが憎いわ…、」
女性は恐ろしい笑みを浮かべながらそうつぶやいた。
「…そろそろ、…お掃除…始めましょうか?」
―――果たして、彼女の言うお掃除とは何だろう?そしてこの先何が待ちわびているのだろうか?それはまだ誰にも解らない。ただ良くないことが起きそうな月夜だ。しかしそんなことは知る由も無くフレッシュ達は疲れきった身体を休める為深い眠りへとついたのであった…。