■Necranomicon. ■

クァゥグナール・ファウグン Chaugnar-Faugn

 

  正直言って、この怪物はどうもよくわからない。否、クァゥグナール・ファゥグンを描いているロングの『夜歩く石像』がよくわからないというべきか。ともかく小説に基づいて紹介してみよう。
 クァゥグナール・ファゥグンは地球の混沌期に天空より降り立った、数多くの邪悪な存在のうちの一つである。より偉大な者になるため、彼は他の存在たちを貪り食らい己の力を増したのであった。
 ローマの時代、クァゥグナール・ファゥグンはヨーロッパ、ピレネー山脈の奥深くに、その兄弟たちとすみついていた。自ら創った両生亜人間ミリ=ニグリにかしずかれ、彼らはほしいままに振る舞った。しかしその悪行はやがてローマの知るところとなり、討伐軍が送られた。無論ローマなどクァゥグナール・ファゥグンにとっては何ほどのこともなかったのだが、時間の化身でもある彼は、時の満つるまえにローマを滅ぼすことを望まなかった。そこでクァゥグナール・ファゥグンはあくまでローマと争おうとする兄弟たちと別れて、アジアへとそのすみかを移したのである。
 アジアにおいて彼は「顔の無い異形の者たち(と言っても人間以外という訳ではなさそうだが)」によってかしずかれていたが、やがてマンハッタン博物館の所員の手によってアメリカに運ばれた。そして再び生贄を求めて活動を始めたのである。
 その信者たちの称えるクァゥグナール・ファゥグンは、実に偉大な存在である。時間そのものにすら化身する彼は、過去・現在・未来のすべてを知り、預言する。だがその実体は人格神ではなく、むしろ原初の混沌に近いものである。その分身たる「兄弟たち」と共に君臨するが、永劫の後には彼らを含めた宇宙全てを食いつくし、自ら宇宙そのものになる存在こそがクァゥグナール・ファゥグンなのだ。
 しかしどうもこれは大袈裟すぎるようだ。少なくとも実際にクァゥグナール・ファゥグンの名で活動している者は、生きた岩石からなる体を持ち、生き血をその糧とする怪物に過ぎず、ロジャー・リトルの発明になるタイム・スペース・マシン(笑)であえない最期を遂げる。
 さて最後にクァゥグナール・ファゥグンの姿について書いておく。その姿は象に似ているものの、それより遥かに不快な印象を抱かせる。触手が走り水掻きのついた耳、先端が開いた鼻、半透明の牙、人間に似た腕は厚い両肩から伸び、胸と巨大な腹とが鼻を支える。そしてその全体からは悪の落ち着きと言った雰囲気が感じられると言う。

■Necranomicon. ■