Last update : 22, November, 1999.

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ブロッホ:ヴァイオリン・ソナタ集/リディア・モルドコヴィッチ&ジュリアン・ミルフォード

特選
1曲目、「ニーグン」の冒頭を聴いただけで、並みの演奏でないことを感じさせます。モルドコヴィッチのヴァイオリンは実にスケールの大きな充実した演奏を聴かせてくれます。そして、ピアノがまた、実に素晴らしい。自然でスケールが大きくデリケートな演奏を聴かせてくれ、単なる伴奏にとどまらず、演奏のクオリティに大きく寄与しています。

このディスクの最大の聞き物は「神秘の詩」ですが、これは他の演奏をはるかに凌駕する超名演です。通常、この曲の演奏時間は、20〜23分程度ですが、この演奏は27分26秒にも及びます。冒頭から、限界とも思えるくらいの遅いテンポでヴァイオリンが弾き始めます。普通、このような曲をかなり遅いテンポでやると、たいてい集中力が持続せず、だれてしまう傾向にあるのですが、この演奏では全くそのようなことはなく、一つ一つの音の意味がくっきりと浮かび上がってくるように感じます。そして、絡んでくるピアノが実にデリケートで美しい。開始直後の短いカデンツァの部分などはまるでバッハの無伴奏作品を聞いているような感覚になります。そして、中間部のグレゴリオ聖歌の静謐な美しさ、そして寂寥感は絶品です。とにかく、全体を通じて凄まじい集中力を感じさせ、決して飽きさせない素晴らしい演奏です。なかなか、この曲にはいい演奏が少ないのですが、これは文句なしの超名演です。録音も優秀です。

以前は、The Weilerstein Duoの演奏を好んで聞いていましたが、このディスクに出会ってからは、他の演奏ではほとんど満足できなくなってしまった感があります。ただ、あまりに密度の濃い演奏のため、あまり初心者向けではないかもしれません。他の曲も極めて高い水準の演奏で、この1枚でブロッホの室内楽の核心を知ることができるでしょう。

モルドコヴィチによる他の作品の録音が切望されます。無伴奏組曲などは超名演を聞かせてくれるのではないでしょうか。しかし、これだけ素晴らしい演奏でありながら、ほとんど注目されていないというのは、全く残念としかいいようがありません。最近では、このディスクは入手困難になりつつあるようでカタログからも消えてしまいました。まだ多少は市場に出回っているとは思いますので、早めに入手することをお勧めします。

Akinori Itoh, Nagoya, Japan, 16, August, 2000

 

ブロッホ:室内管弦楽作品集/アマデウス室内管弦楽団

特選
ブロッホの室内オーケストラの作品を集めた1枚。まず感じるのが、録音のクリアーさも相俟って、たいへん明るい音だということです。「シェロモ」などのようなエキゾチックな色彩感とはずいぶん趣を異にしており、「シェロモ」や「ニーグン」しか知らない人が聞くと、ずいぶん意外に思われるでしょう。

この中で注目すべきは、「コンチェルト・グロッソ第1番」と「コンチェルティーノ」です。「コンチェルト・グロッソ第1番」は第1楽章がかなり遅いテンポになっています。私見では、特に遅いテンポである必然性はあまり感じません。通常のテンポで演奏した場合、近代的な響きに聞こえますが、テンポを落とすと、ややそれが薄らぐような気がします。しかしながら、後半の2つの楽章はたいへん素晴らしく、第3楽章の中間部のヴィオラのソリの美しさとコーダの昂揚、終楽章のフーガの圧倒的な躍動感など、この曲の魅力を最大限に引き出していると言えます。「フーガ」では、スタッカートで弾かれる8分音符による躍動感の高まりとスケールの大きさは最高です。

また、「コンチェルティーノ」では実にすがすがしい音楽を聞くことが出来ます。小さな作品ながら、大変強い印象を残す演奏です。「コンチェルト・グロッソ第2番」も古典的な優雅さを感じさせてくれます。

演奏と録音がともに非常に優秀でたいへん満足できる1枚です。

Akinori Itoh, Nagoya, Japan, 16, August, 2000

 

エルネスト・ブロッホ:ヴァイオリンとピアノのための作品集/ラティカ・ホンダ・ローゼンベルク & アヴナー・アラッド

推薦
ブロッホのヴァイオリンのための室内楽作品を全て収録した2枚組セット。ソナタ2曲に関して言えば、例えば、リディア・モルドコヴィッチの「神秘の詩」のような超名演と比較してしまうと苦しいものがありますが、水準以上の演奏だと思っています。

一方、無伴奏組曲と小品はとても魅力的です。正直なところ、無伴奏組曲について、割と最近まで、この曲の良さが分かりませんでした。ハイマン・ブレスやメニューインの演奏を聞いて、ようやくこの曲がわかってきて、この演奏を聞いて心底感動しました。バッハの一連の無伴奏作品に通づるというこの曲の真髄を感じました。

ブロッホのヴァイオリン作品はいづれも素晴らしい作品で、コンチェルトを除く、その全てをこのセットで堪能できるというわけですが、これは廉価版のため、たいへん安い価格となっています。録音もたいへん優秀で、トータルで考えても、持っていて損はないでしょう。

Akinori Itoh, Nagoya, Japan, 4, January, 2001

 

フランク:チェロ・ソナタ、ブロッホ:シェロモ/ Krystof Lecian & Jan Niederle

「ピアノ伴奏版のシェロモ?しかもライヴ?色彩感あふれるオーケストレーションが魅力のこの曲をピアノ伴奏版でやる価値があるのだろうか?」というのが、このディスクの存在を知ったときに思ったことでした。しかし、実際に聞いてみて、それが全くの誤りであることがわかりました。これは、管弦楽版とは別の「もうひとつのシェロモ」といえるでしょう。はじめて聴いたとき感じたのは、管弦楽版とはやや印象が異なり「神秘の詩」に近いものを感じました。特に前半の抑えた表現がデリケートで神秘的な雰囲気を漂わせています。しかし、なんといっても、演奏が実に素晴らしいのです。前半は感情過多にはならず抑えた表現をしているのですが、クライマックスになってくると、次第に激しさを増し、実にスケールの大きな演奏を聴かせてくれます。特にピアノが実にドラマティックで見事の一言に尽きます。チェロ以上にピアノの存在感が大きく、この演奏の成功はピアニストの実力によるところがかなり大きいと思います。

ちなみに、ピアノ・パートについては作曲者自身による版がありわけですが、管弦楽版を基にしたピアノ・リダクションであり、このために3段譜表で書かれている個所もかなりありますので、完全に譜面どおり演奏するのはまず不可能です。この録音では、基本的にはこれを使用していると思われるのですが、さらに、オリジナルにはないパッセージがあったり、音を追加したり、デュナーミクに変化をつけたりしているようで、これによって管弦楽版とは違った雰囲気を作り出しています。

フランクもやはりピアノが素晴らしく、かなりの名演で、「ブラヴォー」もかかっています。

このCDは値段もたいへん安く、「シェロモ」が好きな方は一度は聴いてみて損のない一枚といえるでしょう。

Akinori Itoh, Nagoya, Japan, 4, January, 2001


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