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■『竹取物語』の夢■ 序章 アイするココロ 第一章 突然現れた 第二章 完全なる拒絶 第三章 原初の感覚 第四章 歌ではなく…… 第五章 かわいいかぐや姫 第六章 滑稽な人間 第七章 モナリザの心 第八章 破滅 第九章 連れ去る力 終章 離れていても…… top page 岩田澄人 古文単語チェック |

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さて、次の求婚者は、「
石上麻呂足は、かぐや姫に手紙を書いて息絶えた。
かぐや姫に「心」がたしかに宿った一瞬だ。 でも、それは、ぼくたちのいう「心」じゃない。 ぼくたちの世界では、たとえ興味がなくても求婚者が自分のために死ねば、かなりのショックだ。 そうじゃない。 「すこしあはれ」。 「あはれ」。この、「かわいそう」でも「愛してる」でも「さみしい」でも、すべてのこころの動きを表す「あはれ」ということば。 でも、「かわいそう」でも「愛してる」でも「さみしい」でもない、ことばでは言い表せないようなこころを表す「あはれ」ということば。 ぼくは、この瞬間、かぐや姫は、きっとモナリザと同じ表情をしていると思う。 それまで、ステンドグラスの絵のように、絵とは何かの観念を描くためのものだった。話型が、「心」を描くのではなく、何かの観念を描いているのと同じように。しかし、レオナルド・ダ・ヴィンチがはじめて「心」を書いた。レオナルド・ダ・ヴィンチの筆で、はじめて人の表情にこころが宿った瞬間。 そのこころは、はじめてのこころにふさわしく、「かわいそう」色も「愛してる」色も「さみしい」色もしていない、透明な色をしている。 そう、人は、モナリザのほほえみの謎を解明しようとする。でも、読みとれない。焦れば焦るほど、謎は深まる。結局、モナリザのまわりをぐるぐる回っているだけだ。それと同じように、私たちはかぐや姫の「心」を読みとろうとする。しかし、やはりかぐや姫にたどりつけない。まるで、五人の貴公子のようにね。 生まれたての虫のように 透明な「心」。 かぐや姫は、「かわいそう」と思ったわけでも、「愛してる」と思ったわけでも、「さみしい」と思ったわけでもない。 もっとその前の 生まれたての「心」。 人間と人間がこころを通じ合わせた瞬間だ。 |