「『竹取物語』の夢」




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■『竹取物語』の夢■


序章
アイするココロ


第一章
突然現れた他人(ひと)



第二章
完全なる拒絶



第三章
原初の感覚



第四章
歌ではなく……



第五章
かわいいかぐや姫



第六章
滑稽な人間



第七章
モナリザの心



第八章
破滅



第九章
連れ去る力



終章
離れていても……






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『竹取物語』の夢>序章 アイするココロ




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 誰もが、小さい頃、お母さんやお父さん、おばあちゃんやおじいちゃんに、絵本で読んでもらったことがある「かぐや姫」。
 実は、今は昔、それはそれは遠い昔、このくにに「愛する心」というものが、生まれた物語だったんだ、と思う。かすかに、かすかに、なんだけどね。……
 『竹取物語』。
 西暦九〇〇年前後に書かれたらしいんだ。『源氏物語』の百年くらい前。その『源氏物語』で紫式部が、『竹取物語』を「物語の出で来はじめの祖」(「物語の元祖」)と呼んでいるように、最古の物語文学だ。
 だから、文体は、後の物語文学に比べて、ちょっと硬くて稚い感じがする。
 作者は、六歌仙の一人・僧正遍昭(そうじょうへんじょう)とも紀長谷雄(きのはせお)ともされるんだけど、詳しくは不明。無名の学者の卵だったかもしれない。何しろ、この時代、まだ「物語」なんて立派なジャンルはなかったんだから、「○○さん、『竹取物語』を発表!」みたいに大々的にできたわけじゃない。
 まぁ、いずれにしても、野山で竹を採り、竹で農具を作っていた職人に伝わる口承伝承をもとに、当時の知識人が作品として整えたようだ。
 ……その小さな出来事が、日本史の教科書には載っていない一つの「事件」になった。
 ぼくは、日本史の教科書の年表に、こっそりと、こう書き入れたい気がする。
 「このころ、日本の片隅でそっと『愛する心』が生まれた」ってね。

 今は昔、竹取の翁といふものありけり。野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり。名をば、讃岐の(みやつこ)となむいひける。その竹の中に、本光る竹なむ一筋ありける。あやしがりて寄りて見るに、筒の中光りたり。それを見れば、三寸ばかりなる人、いとうつくしうて居たり。
【現代語訳】今は昔、竹取のお爺さんという者がおったそうな。野山に分け入り竹を取り、いろいろなことに使って暮らしておったのじゃ。お爺さんの名は、讃岐の(みやつこ)といったそうな。お爺さんが取っておるたくさんの竹のなかに、根もとがぴかあと光る竹が一本あったそうな。不思議に思って、近寄ってみた。竹の中が光っておる。お爺さんが、そおっとなかをのぞくと、どうじゃ、十センチくらいのかわいい女の子がちょこりと座っておる。


 こう、『竹取物語』は、はじまっている。