うれしたのし文学史


■古典文学史

第1章
和歌は平安


第2章
中世、和歌から連歌へ


第3章
万葉・古今・新古今


第4章
一〇世紀の物語群


第5章
『源氏物語』とその前後


第6章
日記の流れ


第7章
歴史の変わり目に歴史物語


第8章
説話文学、現(あらは)る

第9章
戦乱の時代を軍記物語が描く


第10章
ここで、随筆を


第11章
能と歌舞伎と浄瑠璃と


第12章
俳諧の人たち


第13章
江戸の小説



■近代文学史

第1章
近代文学、生まれる


第2章
浪漫主義の時代


第3章
自然主義の時代


第4章
漱石と鴎外


第5章
大正は三つの個性


第6章
昭和はいっぱい


第7章
現代の文学


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岩田澄人


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うれしたのし文学史☆>近代文学史>第6章 昭和はいっぱい







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 さて、いよいよ文学史も昭和。終わりに近づいてきました。大正のバブルの繁栄がはじけて、社会の矛盾が浮き彫りになってきて、いろんな問題がでてきます。世界の激動の中に日本も巻き込まれてゆきます。激動の昭和、ってやつです。そーゆー時代になってくると、社会的な問題と対決しようとするやつと芸術の世界に閉じこもろうとするやつが両極端になってくる。

 社会的な問題と対決しようってのが、プロレタリア文学ってやつです。資本主義社会の中でどんどん労働者は貧困になってゆく。資本家はどんどん肥え太ってゆく。万国の労働者よ、団結せよ。資本主義社会を打倒せよ。階級闘争だ!革命だ!プロレタリア(労働者)革命だ!共産主義万歳!ってことになってくる。そーゆーことを書いたのが、プロレタリア文学とゆうものです。まあ、今の君たちが読んでいちばーーん面白くない文学の種類なんじゃないでしょうか。なんといっても、一億総中流社会。みんな、そこそこの幸福。不満もあるけど、誰も革命起こしてまでこの社会を変えようなんて思わない。そんな感じだし。だけど、ニュー・リッチとかニュー・プアーとかいう言葉聞いたことありませんか、ひそかに金持ちと貧乏人の格差がどんどん開き始めているのです。土地持ってるやつとそーでないやつとの差、とか。平成は大正なのです。大正時代のハイカラさんたちだって、まさかそんな時代になってゆくなんて夢にも思わなかったんだから。平成の次の時代が、昭和の初めのような貧困と戦争の暗黒の時代にならないようにと、祈るのみです。で、プロレタリア文学で、まず覚えたいのが、小林多喜二〈こばやしたきじ〉『蟹工船〈かにこうせん〉。オホーツク海で操業する蟹工船で、雇い主からひどい労働条件を強いられる労働者たちが反乱を起こす様子が描かれています。ほかに、宮本百合子〈みやもとゆりこ〉『伸子〈のぶこ〉』『播州平野〈ばんしゅうへいや〉葉山嘉樹〈はやまよしき〉『海に生くる人々〈うみにいくるひとびと〉徳永直〈とくながすなお〉『太陽のない街〈たいようのないまち〉中野重治〈なかのしげはる〉『歌のわかれ〈うたのわかれ〉などがあります。

 そんなプロレタリア文学に対して、ひたすら芸術の世界に走ったのが、新感覚派〈しんかんかくは〉とか新興芸術派〈しんこうげいじゅつは〉とか新心理主義〈しんしんりしゅぎ〉とかの人たちです。まず新感覚派から。横光利一〈よこみつりいち〉って人が、『日輪〈にちりん〉』『春は馬車に乗って〈はるはばしゃにのって〉』『機械〈きかい〉』『旅愁〈りょしゅう〉などを書きました。『純粋小説論〈じゅんすいしょうせつろん〉という評論も、書いてます。横光さん、最近は人気ありませんから、名前も聞いたことないってひとが多そうですが、文学史的にはけっこーメジャーなやつで、よく出ますから覚えておいてください。それから、川端康成〈かわばたやすなり〉。ノーベル賞受賞者ですね。とても繊細な文体で日本的な美を描いた。『伊豆の踊り子〈いずのおどりこ〉』『雪国〈ゆきぐに〉』『禽獣〈きんじゅう〉』『千羽鶴〈せんばづる〉』『山の音〈やまのおと〉です。『千羽鶴』は、別段優れた作品でもないのですが、なぜかよく選択肢として登場してますので、しっかり覚えておいてください。この新感覚派の人たちは『文芸時代〈ぶんげいじだい〉という雑誌を中心にがんばりました。次に、新興芸術派『山椒魚〈さんしょううお〉』『黒い雨〈くろいあめ〉』『屋根の上のサワン〈やねのうえのさわん〉井伏鱒二〈いぶせますじ〉『檸檬〈れもん〉梶井基次郎〈かじいもとじろう〉。そして、新心理主義堀辰雄〈ほりたつお〉。堀辰雄は、『風立ちぬ〈かぜたちぬ〉』『聖家族〈せいかぞく〉』『美しい村〈うつくしいむら〉』『かげろふの日記〈かげろうのにっき〉とか、です。「意識の流れ」ってことをゆってて、人間の心理・意識の変化それ自体をストーリーの流れとして描いてゆくわけです。あと、何派とかには入っていないんですが、中島敦〈なかじまあつし〉も覚えておかなくちゃ。ガッコーでぜったいやるやつ。『山月記〈さんげつき〉。ほら、あの、虎になっちゃうの。プラス『李陵〈りりょう〉

 詩もさっとやっておきましょう。超現実派〈ちょうげんじつは〉三好達治〈みよしたつじ〉『測量船〈そくりょうせん〉。彼の「あはれ花びら流れ、おみなごに花びら流れ」だったかな、『甃の上〈いしのうえ〉という詩は、教科書かなんかで読んだことがあるのではないでしょうか。と西脇順三郎〈にしわきじゅんざぶろう〉『あむばるわりあ』四季派〈しきは〉中原中也〈なかはらちゅうや〉『山羊の歌〈やぎのうた〉』『在りし日の歌〈ありしひのうた〉。中也の「汚れっちまった悲しみに 今日も小雪の降りかかる」〔ぼくの汚れた悲しみに純白の雪が降りかかってるね〕っていう『汚れっちまった悲しみ〈よごれっちまったかなしみ〉』なんて詩はユーメーです。なんか、現代の雰囲気にもぴったりきて、今でもファンがいっぱいいます。立原道造〈たちはらみちぞう〉『萓草に寄す〈わすれぐさによす〉伊東静雄〈いとうしずお〉『わがひとに与ふる哀歌〈わがひとにあたうるあいか〉歴程派〈れきてい〉草野心平〈くさのしんぺい〉『蛙〈かえる〉。以上。

 で、第二次世界大戦。敗戦。すべての価値は崩壊し、社会は大混乱。そんな混乱の時代に活躍したのが、無頼派〈ぶらいは〉とか新戯作派〈しんげさくは〉とか呼ばれる人たちです。まず太宰治〈だざいおさむ〉『晩年〈ばんねん〉』『道化の華〈どうけのはな〉』『富嶽百景〈ふがくひゃっけい〉』『走れメロス〈はしれめろす〉』『斜陽〈しゃよう〉』『人間失格〈にんげんしっかく〉とか書いて、戦後すべての価値観がひっくり返ってしまって、「大人なんて信じられない」ってゆー虚無感に悩む若者に熱狂的に読まれました。純粋であるがゆえに世間についてゆけず苦悩する尾崎豊的人間像を描き、今でもけっこー太宰ファンは多いのです。「生まれて、すみません」なんて書いてある。めちゃくちゃ暗いけれど、心がめちゃブルーに染まってるときには、ちょっと魅〈ひ〉かれちゃうぞ。それから、坂口安吾〈さかぐちあんご〉『白痴〈はくち〉。評論には『堕落論〈だらくろん〉』『日本文化私観〈にほんぶんかしかん〉があります。織田作之助〈おださくのすけ〉には、『夫婦善哉〈めおとぜんざい〉があります。ダメ男の夫としっかり者の妻という典型的な浪速〈なにわ〉の夫婦の話です。大阪の難波〈なんば〉に自由軒というカレー屋さんがあって、織田作之助が通った店で、私も昔よく行ったものです。カレーとご飯が最初から混ぜてあって、その上に生卵がぽっかりとのっかってるカレーが名物なのです。

 それから、戦後派〈せんごは〉と呼ばれる人たちも出てきました。『俘虜記〈ふりょき〉』『野火〈のび〉』『武蔵野夫人〈むさしのふじん〉大岡昇平〈おおおかしょうへい〉『仮面の告白〈かめんのこくはく〉』『潮騒〈しおさい〉』『金閣寺〈きんかくじ〉』『豊饒の海〈ほうじょうのうみ〉三島由紀夫〈みしまゆきお〉。『潮騒』は、よく映画でアイドルがやってるやつです。山口百恵とか堀ちえみとか……、私の時代のアイドルですが、……。三島由紀夫は、ボディービルをやって自分のヌード写真集を出したり、かなり過激な人だったのです。自衛隊基地に乗り込んで、割腹自殺しました。他に、『桜島〈さくらじま〉梅崎春生〈うめざきはるお〉『暗い絵〈くらいえ〉』『真空地帯〈しんくうちたい〉野間宏〈のまひろし〉『ひかりごけ』『風媒花〈ふうばいか〉武田泰淳〈たけだたいじゅん〉『深夜の酒宴〈しんやのしゅえん〉』『永遠なる序章〈えいえんなるじょしょう〉椎名麟三〈しいなりんぞう〉などがいます。

 あ、最後に小林秀雄〈こばやしひでお〉をやっておかなくては……。評論家です。『無常といふこと〈むじょうということ〉』『様々なる意匠〈さまざまなるいしょう〉』『考へるヒント〈かんがえるひんと〉』『本居宣長〈もとおりのりなが〉など、覚えておいてください。


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