11月の新譜
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Rihanna/Rated R
- まあ事件もありましたし、このあたりでアーティストイメージを巻き直しておくというのは正しい戦略なんでしょう。年齢的にはもう少し清純派として引っ張れたかもしれませんが。ビデオやらジャケ写やらかなりこれまでと違った雰囲気になっています。ポップ寄りだった前々作のマーケティングスタッフはもう誰も残っていないかのようであります。(ただしエヴァン・ロジャースはまだ後見人としてクレジットされています。)制作陣はどうなったか確認しますとスターゲート(+曲によってはニーヨ)、トリッキー&ドリーム、ブライアン・ケネディあたりが複数曲を提供しており、(ゲスト参加込みで)ウィル・アイ・アム、(先行シングルがこの人になります)チャック・ハーモニー、(ジャスティンのソングライト込みで)ワイズなどが単曲で寄与、また(UKのチームでファレルなどと繋がりがあるらしい)チェイス&ステータスが2曲を任されていました。ゲストはギターでスラッシュが呼ばれています。路線変更があって違和感ありまくり!なタイプの人ではありませんで、これまでも軌道修正はありましたしそのたびに乗りこなしていましたから今回も案外収まりはいいです。つまりハードな彼女も悪くありません。先行シングルやジガのシングルでの客演がそれなりのチャートアクションなのも納得できます。制作サイドはその器用さを逆に危惧したのか、ウィル参加曲などではこれまでの彼女の路線を通すなど聴く前に予想していたよりはソフトな面もありました。前面変更してセールス惨敗…となったら素材が素材だけに責任を問われるといったプレッシャーもあったのでしょう。ただこのままですとアイドルっぽいドリーミーな彼女の面を見るチャンスは次第に減っていくのは確かなようです。世代交代も近いんですね。成長を実感できるけどデビュー時から見守ったファンにはちょっと寂しい1枚です。
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Lady gaga/Fame monster
- 例の出し直し盤であります。正直こういう商売の形態に手を貸すのは気が進まないのですが、追加が8曲もありますので悪どい…といったレベルにもできず苦しいところです。CDを購入すると今なら二千円超しますけどアイチューンズで購入すれば1曲150円ですし、8曲入りのお皿もありますからこちらがいいでしょう。クレジットを見ますと新規追加された8曲のうち4曲はレッド・ワンによるプロデュースです。ファースト(というのでしょうか)シングルもこの人によるものでやりすぎ感たっぷりのビデオと共に集中投下されています。まあこの人が次に何をやるか楽しみにしている人も多いでしょうからこの路線は当然と思います。またプロデューサーと当人のクリエイティブな関係が変化しつつあるようにも見えます。レッド・ワンによるほかの3曲はエレクトロ要素が多めです。デビュー時にあったような(プッシー・キャット・ドールズに提供した曲のような)ソウル臭さは排除されています。ただ彼女の手癖のようなものも垣間見ることが出来て興味深いです。もうひとつの話題でありますビヨンセとの曲はロドニー・ジャーキンスの制作、時間も無かったでしょうしこれはレーベルのお仕着せなんじゃないかと思ったんですけど意外に彼女っぽいです。このほかにはロン・フェアーが1曲、これはブルース・ロック的ですね。ただこんな曲にキテレツなファッションは組み合わせできません。素の彼女でビデオが持つか心配でもあります。フェルナンド・ギャリヴェィがプロデュースする曲は予想どおり白いもののゴシックな雰囲気もあり彼女にはあっています。ラストはなんとテディ・ライリー、ブラック・ストリート時代のようなBPM高めで相性は悪くありません。リアーナ、レオナ潰しで急遽出されたにしてはかっちりと仕上がっています。勢いがある人は何を演っても聴く側を説得してしまう見本のようです。
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Angie Stone/Unexpected
- スタックス移籍組の人はどうもレーベルを雨宿りの場所として考えているようで、チャンスがあればあっさり移籍するなどなかなか定着してリリースを続けてくれません。まあ実際に中にいるのと外から見ているのでは仕事のしやすさは違うのかもしれませんが。そんな中この人は新天地を求めずに新作を出しています。前作からの変化はやはり望めないのか?と思ってクレジットを確認したところ確かにスライド登板のスタッフもあります。クレジットを確認しますとプロデューサーにジョナサン・リッチモンド、ソングライティングなどでジュアンティア・ウィンなど前作にもあった名前を見つけることができます。ただ半分以上は入れ替えられていまして、制作陣としてはジャジー・フェイ、(ゴスペル畑で仕事が多い)スティーヴ・ホワイト、(どうやらブルース畑の人?らしい)スライ・ウィリアムス、(マック・ドレなんかの仕事があります)ワン・ドロップ・スコットとウィリー・シェヴァース、(ほかに実績が見つからなかったので新人なのかもしれません)カリム・キングとフィッツロイ・リードなどがクレジットされています。当然ながらゲストもありません。彼女の持ち味であります繊細でありながらぐいぐいと聴く側を引っ張る力は健在でして今回もスピード感のあるミッドや泥臭いバラードを楽しめます。ただスケール感のあるスロウは(意識的にでしょうか)入っておらず、黒さに徹したつくりです。欠点もありまして、各曲がフェードアウトで終わるなど全体的に短く作られていまして、やや食い足りない感じもしました。地方のラジオ局でエアプレイしてもらうにはこうするしかなかったのでしょうかね。アルバム全体でも尺は短く、もう少し堪能したかったと思いました。まあ欠点もありますけど(オートチューンなど流行アイテムの利用率も低いですし)フェイス・エヴァンスあたりの路線がメジャーでほとんどない現状を考えますとシーンにとって在り難いキャラであることには違いありません。待っていた人が見送る理由はありませんのでぜひ試してください。
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Beverley Knight/100%
- 例年リリースラッシュの季節になるとまったくの初対面になります新人アーティストがどさくさでアルバムデビューしていたりするんですけど今年はほとんど見かけません。代わりにマイナー落ちした元メジャー組が時期を見計らったかのように新作を出荷しています。90年代に出てきましたこの人もUKのレーベルからこの秋アルバムを出していました。クレジットは(ジャケに貼ってあるシールにも書いてありますように)なかなかアトラクティブです。ジャム&ルイスが1曲をプロデュース、またこのほかにテリー・ルイスがボーカルプロデュースで単独クレジットされている曲もありました。別々に仕事していても常に2人の表記があるプロデューサーですから実に珍しいですね。ひょっとしてコンビ解消の予定があるのでしょうか。これ以外のプロデューサーは(UKの人でデスチャやローリンと仕事をしたこともあるらしい)DJムンロ、(やはりUK人脈で自身もバンドを持っている)ケヴィン・ベーコン&ジョナサン・クワンビー、ルーラルなる詳細不明の人で恐らくUKでの制作が中心であったと予想されます。またUKポップではよく名前を見かけますガイ・チェンバースの名前がソングライティングクレジットにありました。ゲストにはチャカ・カーンの参加も(ちゃんとデュオで)あります。最近のUKソウルと言えば例のオーディション番組出身の人みたいなポップな楽曲が中心で、キャリアがあるとは言えこの人もその範疇に収まるのでは?と予想してしまいます。しかし楽曲は意外にもUS寄りでゴスペルっぽいコーラスがあったりブルージーなスロウがあったりするなどUSに出荷してもそこそこ枚数が出そうな内容です。本人ののどもまだまだ衰えていませんでした。まあ最近のアラフォーはこれくらい出来て当然なんでしょう。大物による新作に隠れて売れるのか?といった心配はありますけど年末年始には一段落しますからそのときにでも手にとってみたらいいと思います。
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Leona Lewis/Echo
- 年末商戦の重要商材第1弾といったところでしょう。デビュー作はUKでは一定数が見込めていたものの、USではどれだけ数が出るか未知数でしたから(しっかり戦略を立てれば)レーベル側も新作でもう1段高いレベルが狙えると踏んでいるんじゃないかと思います。制作陣は意外にもばらばらです。ライアン・テダー(+ゲストとしてワン・リパブリック)が2曲、(ジェニファー・ロペスや白人ボーカルグループの楽曲制作を手がけていた)アンサーが2曲、(ジャスティンの曲制作関与込みで)ワイズ。このほか(ギター参加込みで)ケヴィン・ルドルフ、(シェリル・クロウの仕事が多かった)ジョン・シャンクス、(これまたヒラリー・ダフなど白人ボーカルの仕事がメインであります)ジュリアン・ブネッタ、(バックストリート・ボーイズなどに曲を提供していました)クリスティアン・ルンディン、(マイリー・サイラスもボンジョビも手がける)ジェフ・ロスズチャイルド、マックス・マーティンなどが曲を寄せています。やっぱり公募して曲を集めたあとに会議にかけたりしてるんでしょうかね。それにこうやって考えると全然黒くないですね。ヒップホップからのゲストなども皆無です。ただ前作からの大ヒット曲にあった彼女の声域(特に高音寄り)を堪能できる曲が多くなっています。壮大なメロディ主体で(バックの音がすっと消えて)独唱に近い部分が挿入、ゴスペルっぽい大団円など2作目にして曲展開もパターン化してきました。いやけなしているのでなくけっして悪くありません。やはり試行錯誤があった前作に比べるとずいぶん練れたな〜と思います。それにどこか欲が感じられない彼女の素の部分も同時に感じられます。大ヒットが続いてもセリーヌ・ディオンのようには(いい意味で)ならないような気もしてきました。ファーストシングルの動きが今ひとつですが2作目としては非常に良い出来ですし今回も結果的にいい線行くんじゃないかと思います。贈答用にもおすすめです。
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Pretty ricky
- 待望の復活!といったところでしょうか。新作が出せてよかったですね。ところでペアレンタル〜印がえらく大きくてバランスが悪いと思ったらなんとどマイナーの配給になっています。やっぱり大手にしてみればリスクが大きいだけで配給協力には至らない存在なんでしょうか。残念であります。クレジットを確認してみましょう。すると全曲がメンバーのベイビー・ブルーによるプロデュースと表記されていました。アトランティックから出る予定だったお皿と比較すると曲名で同一のものがありませんし、グループの自主制作は本当なのかもしれません。なおソングライティングクレジットにはメンバー以外にエマニュエル・デ・アンダなる人がクレジットされていました。どうも過去にネリーなどの楽曲に関与があったみたいですが詳細情報が見つかりません。新加入のリンジリーと苗字が同じですので身内の可能性もありそうです。ゲストも別にありませんで、セールスアピールの少ない1枚になってしまっています。早速聴いてみますと前作に比べてラップのテンションが高めになっていまして、合唱フックも増加しています。ヤングの皆さんがリルジョンを真似たようなフロウが多めです。ただバックはあくまでメロウに徹しており、ハードなトラックはありません。メロディを乗せればそのままR&Bとして成立しそうな曲ばかりです。結果ちぐはぐなんですけどなんでこうなったかと考えるにやはりプレジャーの脱退がそうさせてしまったのかな…とも思えます。現在のボーカルもナヨな歌声は悪くないんですが前任者に比較するとやはりパンチが足りない気がしました。また彼らも既に少年ではありませんから年齢相応なイメージを携える必要があり、結果ハードコア要素を増やしたのでしょう。ジョデシィやH・タウンを継ぐのはまさしく彼らですから、部分部分ではこういった選択は正しいと思います。あとはセンスやバランス感覚の問題ですかね。ぜひメジャーのバックアップを受けて育って欲しいように思います。ありそうでないタイプですし、初めての人は試聴してからの購入がいいかもしれません。
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Jay Sean/All or nothing
- いまや国際的レーベルとなりましたキャッシュ・マネーとディールを新規締結しました人です。といっても日本ではニーヨフォロワーとしてマイナー皿を購入する人にはおなじみでしょう。まさかのチャート1位獲得で単なるマネの人としても扱われなくなっています。リリースラッシュの発売を別にしても、今後の彼の人生を左右する1枚ともできそうです。クレジットは別にユニヴァーサルのてこ入れがあるわけでもないです。昨年のマイナーリリースと同じスタッフでして、(プロデュース経験はそれほどでないもののブリトニーなどのリミックスも手がけたことがあるらしい)J・レミー&ボビー・ベースが全体の8割強を担当しています。これ以外ですと(恐らく00年代前半のヴァージン所属時代からの付き合いであると思われます)アラン・サンプソンが2曲を担当しています。ゲストはリルジョン&ショーン・ポール、ウィージー、(アメリカン・アイドル出身でメジャーと契約があったようですが今はインディで演っているようです)ジェラルド・カーターが参加、やはり素の状態だとUSっぽく聴けないところをレーベル側も危惧しているように見えます。実際この人はオリエンタルな雰囲気もあり、同時に軽さも持っています。リズムを刻んで入れたがるあたり、クレイグ・デヴィッドに近いところもUSっぽく聴こえない原因でしょう。ただバードマンはそれらすべて納得ずくで契約したと思われ、ウィージーのアルバムで出したR&Bレーベルとしては使い切れないくらいの儲けをロック方面やこの人のようなジャンルに(あえて弄らず)使ってみようと思ったに違いありません。そう考えて聴くと(実際ヒットも出てますし)彼やコルビー・オドニスのような人たちが今後マーケ戦略に乗っかってジャンル化するのかな…とも思ってしまいます。正直マイナーから出した分を持っている人は買う必要ないですし、濃いR&Bを求めている人も様子見でいいと思います。この人のフォロワーが出て、1年、2年とジャンルとして定着すればさきがけとなるわけで、その意味ではチェックしてもいいでしょう。
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Esme Denters/Outta here
- ジャスティン・ティンバーレイクが自身のレーベルを持つことになったということで、このほど第1弾の女性ボーカルがEUでデビューしています。当然ながら白人の人です。なんでもホームページで自作曲を公開していたところをフックアップされたそうですが(ヤラセとかじゃなくて)本当でしょうか。登場の経緯はともかくどれくらいの黒さがあるか確認してみましょう。確かに集められたスタッフはR&B寄りです。スターゲート(ただしニーヨは含まれず)、デンジャ、ポロウ・ダ・ドン、(ネリー・ファタードやダニティ・ケインのお皿に曲を寄せていました)ジム・ビーンズが1〜2曲単位でトラックを提供しています。しかしなんといってもメインで製作総指揮をとっていますのはジャスティンでして、ライアン・テダーなどの協力を受けながら半分以上の曲にプロデューサーの筆頭としてクレジットされています。ちなみに本人もソングライティングには関与していまして多くの曲に名前が入っています。声は確かにソウルを含んでいましてキーは高いものの太さがあります。言われなければ黒人ボーカルと思う人もありそうです。レンジの高低に係わらず声質が一定なのも白人らしくありません。ブラックミュージックのバッキングにも十分起用できるでしょう。ただジャスティンの手癖は本作にもかなりの割合で含有されています。ティンバの音をよりノーブルに振ったようなメロディーは本作も中盤以降に多く含まれていました。まあジャスティンの曲が好きな人には悪くないとは思います。彼のレーベルですし、そこを期待する層は非常に多いでしょう。ただR&Bの棚に置いて売ろうと思った場合、他の商品に比べると薄味に聴けるようにも思いました。ネリー・ファタードも英語アルバムを出してないですし、どうせならティンバから3曲くらいもらって吹っ切れて欲しかったようにも思います。来月にかけてリリースがたんまり控えていますのでお好みで挑戦してみてください。
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Amerie/In love & war
- 最後にソニー系レーベルから出されたシングルはおざなりな扱いでしたから、これはもう完全にマイナー落ちだろうと思っていましたらなんとデフジャムから再出発となりました。しかも後見はLAリードです。実力が相当に評価されているということなんでしょう。移籍第一弾ですし、それなりに力も入っているんじゃないかと思います。早速クレジットを確認しますとなんとテディ・ライリーが1曲を担当、ウォルター・スコットの助太刀もありまして90年代にタイムスリップした気分になります(ただし出来は孫弟子のリッチ・ハリスン似でNJSではありません)。これ以外にはブライアン・マイケル・コックス、エリック・ハドソン、ジム・ジョンシン、ウォーレン・キャンペル、(プッシーキャット・ドールズなどを手がけていました)ジョナス・ジェバーグ、(少年R&Bの人であります)デルロイ・ピアゾン、(彼女の過去作にもA&Rなど様々に関与していました)レン・ニコルソンなどが楽曲を提供しています。また本人が多くの曲にソングライティングクレジットされていまして、プロデュースも一部で担当していました。ゲストはトレイ・ソングズやファボラス、リミックスでウィージーが呼ばれています。前作でありましたハイエナジーでBPM高めの曲が今回も多く、序盤は酸欠になりそうな彼女のキレ具合を楽しめます。これはソロデビュー当時のビヨンセにも近く、カッティングエッジで出来は悪くありません。中盤以降は彼女ならではのメロウネスを織り込んだミッドもありました。曲が白くなりすぎにも思えます近年のビヨに不満な人にはこっちのアルバム構成がいいかもしれません。デビュー当時の爽やかな透明感はやはり歳が歳ですから望むべくもありませんが正しく成長したともできるでしょう。ヒットが出ればハイテンションなだけでなく遊びも出てくるんじゃないかと思います。せっかくの大プッシュですしリリースラッシュになんとか勝ち残ってもらいたいものです。
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Joss Stone/Colour me free
- 今週はUKシーンで女性ボーカルのリリース対決があります。元々相手となるアレクサンドラ・バークを番組中で破ったのがこの人だそうで浅からぬ因縁を感じます。ただ十代で先行してデビューした割には人気がUKシーンに限定してますので彼女も安心してはいられないでしょう。今回もプロデューサーにはラファエルの名前があります。ただし寄与度はぐっと減っていまして、プロデュースクレジットにラファエルの名前があるのは1曲だけです。ベースで参加しているのに演奏者としてしか名前が入っていない曲もありました。ひょっとしたら前作のテイクを再利用しただけで、新作向けにスタジオ入りしてもらったわけではないのかもしれません。代わりに筆頭としてクレジットされていますのは本人で、ほぼ全曲をプロデュースしたとの記載になっています。アシスタントプロデューサーには(カルチャー・クラブの時代からUKシーンに裏方として居ました)ジョナサン・ショーテン、(これまたティナ・ターナーの時代からバックボーカルとしていろいろに参加していた)コーナ・リーブスらが関与しています。ゲストはシーラ・E、ナズ、ジェフ・ベック、デヴィッド・サンボーンなど。なるほどセルフプロデュースするだけあって音楽経験値は相当に上がっています。フェイクの入れ方などさぞかし色々な人の曲を聴いて自分の声に合うものを探したんだろうと感じました。デビュー当時のやらされてる感はもうありません。ただエイミー以降のUKシーンはどうしても過剰なレトロ感を求めますので本作もその影響が数曲にありました。前述のゲストが関与した現代R&B寄りの曲がいい仕上がりな一方、トレンドとするのにはもう古いのでは?とも思えます曲もあります。まあそれらも含めて彼女のキャリア中一番の傑作になっているのは確実でしょう。何より白さを徹底的に消してあります。これまで気になりながら素通りしていた人も今回は買っていいと思います。
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Alexandra Burke/Overcome
- またもや出てきましたオーディション番組出身の新人です。といっても英国のそれでして、近く新作が出ますレオナ・ルイスと同門になります。レオナに比べるとダークスキンですし小柄にみえますね。どんな感じになるでしょうか。制作陣はUS寄りでして、スターゲート(+ニーヨ)で2曲、レッドワンで3曲、(マライアの過去作にミュージシャン兼ソングライターとして参加していました)ルイス・ビアンカニーロ(+ジム・ジョンシン)が2曲、(シアラやリアーナなんかにも楽曲提供したことがあります)ブライアン・ケネディ、(そもそもは東モノのラッパーにビートを提供している)ファントム・ボーイズがそれぞれ1曲を提供しています。ただUKの人も数曲に起用されていまして、(カイリー・ミノーグやレオナに楽曲提供していました)ウェイン・ウィルキンスも名前がありました。ゲストは(いかにも形式的な客演になっています)フロー・ライダ、前述のニーヨ、シックス・フィート・アンダーなる女性グループ?が呼ばれています。本人の声は張りもそこそこ、荒れ具合もそこそこな感じでよく言えばバランス型の人です。何か突出したところが欲しい気もしますけどUKで番組中セレクションを行うとこういった人が勝ち残るのは納得できます。一方与えられる曲はUSっぽい制作陣の割にはBPMも高くメロディ主導でポップス寄りの仕上がりでした。USシーンで例えるならプッシーキャット・ドールズのアルバムが近いと思います。しかし複数の曲を提出してもらってその中からUKウケしそうなのを選んだってことなんでしょうかね。意外です。まあレオナっぽい壮大系バラードを久しぶりに聴いてみると80年代のUKポップスからの系譜が保たれておりやっぱりフィットするもんだな…とも思いました。クレジットよりもポップですけど聴いたら別な意味で良かったと思う人もいそうなので試してみてください。
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Ryan Leslie/Transition
- 前作の売れ行きはどうかな?と思いましたけど1年も経たずに新作がモータウンからリリースされています。やっぱり世の中学閥なんでしょうかね。アーティストにエリート枠があったりするのもイヤな感じであります。ジャケ裏を見ますとなんと本作のテーマが記載されていまして、なんでもひと夏の秘めた恋に影響を受けたとあります。ということは他アーティストに提供予定であったアウトテイクは少ない?とも思えます。実際プロデュースは今回も全曲が本人によるもので、プログラミングも全て自身で行っているようです。ただし楽器関連は(弾けない人ですし)これまで同様外部の人を起用しています。ゲストはなぜかプッシャ・Tが1曲に参加。女性ボーカルによるバッキングもありませんで、ボーカル面での広がりが出せるのか?とこの時点でやや不安になってきました。聴いてみますと前作同様弱めのファルセットをうまく生かしてしなやかな印象の声に仕上げてあります。ただミュージックをさらに声量不足にしたようなこの人の声だけでアルバム1枚ってのは少し物足りない感もあります。さすがに2作目ですし。トラックは前作に比べると(夏の恋のせいでしょうか)叙情派に寄っていまして雰囲気が出てきました。カニエっぽいヒップホップ要素が減少したともできそうです。一方ネプチューンズの影響はそこはかとなく残っていまして、NERDの曲をもっとメロウにした印象の曲がいくつかありました。ところで前述のテーマに沿ってリリックも書かれている?のかと確認してみますと別にストーリー仕立てにはなっていません。秘めた恋なので終わり(=オチ)がアルバム中にあるのかと歌詞カードを確認してもそれらしい内容はありませんでした。結局夏の恋はどうなったんでしょうかね。テーマ付けした割には消化不良であります。前作が好きだった人には今回も失敗にはなりませんのでどうぞ。
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Shakira/She wolf
- 米国では先月中旬のリリースだそうで、輸入盤はえらく経ってから見かけるようになったように思います。販売店の系列化の影響でしょうか、最近はこういうのが多いですね。ネリー・ファタードなんかはラテン寄りの新作を出していましたし、この人もR&Bよりはそっち系と思っていましたらあっさり予想を覆してくれました。今回は1曲をワイクリフに任せており、6曲をネプチューンズにプロデュースしてもらうなどヒップホップ系からの人材登用が目立ちます。ただ白人ポップ方面のスタッフ参加もありまして、先行シングルほか3曲を制作したのは(ナターシャ・ベディングフィールドやジェニファー・ロペスの曲を手がけた経験があります)ジョン・ヒルです。また(本人もミュージシャンでビヨンセやオール・セインツなどに楽曲提供していました)アマンダ・ゴーストも1曲を寄せていました。先行シングルほどオートチューンをがっつり使っている曲は少なく、メロディラインによっては普通のラテンポップスとして聴ける曲やいかにもなネプの関連作として聴けます。本人の歌唱力も(ライブはともかく)レコーディングにおいてはほぼ解決されたと考えてよさそうです。問題点があるとすればネプの制作能力がやや落ちているように感じるところでしょうか。全盛期のような音圧もロッキッシュな個性も見られないのが気がかりです。一方そのほかのプロデューサーはそれぞれの個性を出しながら彼女の良さを引き出していました。しかしレオタードに腰ベルトってのはシーナ・イーストンですし、裏声フック歌唱ってのはブロンディを想起させられますね。現代は彼女がそういった役割を果たすのだ…という制作側の確信が伺えます。いやパクりって言ってしまえば簡単ですけど、そう見えるのも才能のひとつだと思います。まあその割には歌詞カードの間に入るカットに衣装や構図など冒険が無いのは残念ですが。