ノブコです!
読んでってね!
ちょっとおもろい、つれづれ話

53.つくる

 グラフィックデザインの仕事をはじめて、もう20年が経つ。

 腕があがったかどうかは、自分ではわからないが、「慣れてきた」ということはわかる。どんな職種の人でも、慣れた仕事なら早い段階で全体像をつかむことができると思う。デザインも、多くの場合、依頼主との打ち合わせの段階で、ほぼ、仕上がりのイメージが出来る。ただ、コンペなどもそうらしいが、依頼主に提案するときには、何点かつくって並べ、検討の上で決定するのが恒例なので、はじめのイメージ通りに出来上がるとは限らない。本人にすれば、パッと思い浮かんだイマジネーションが、もっとも新鮮かつ的を得ているのとは思うけれども。

 この仕事に慣れてきたところで、ひとつ気が付いたのだが、「きれいなもの」というのは、案外、つくりやすい。コツは、青系の色を使うこと。どんな色や雰囲気を好むか、国や民族によって一定の傾向があって、それはその文化や歴史、風土といったものと密接につながっている。日本人の場合、湿度の多い気候のゆえであろう、青を好む傾向が強い。ひと口に青といってもさまざまな色があるが、スカイブルーのようなさわやかな青ではなく、藍に向かっていく深めの青である。ちなみに、イタリアなど乾燥した気候の国の方々は、からりとした明るい色、どちらかというと赤か黄を好む。ゴッホの「ひまわり」の色だ。

 この青と合う緑や紫を混ぜて、輪郭をぼやかした、つかみどころのない画像をつくる。ちょっとアクセントになる茶やピンクなどを入れてもいい。濃淡をつけたり、全体の上半分または横半分はスーッと白か黒に消してもいい。その辺はセンス良く。すると、誰が見てもとてもきれいな画像が出来る。濁りのない深い深い水と深緑、のような。ここに、必要な要素、つまり文字をバランスよく配置すれば、なかなか「きれい」に仕上がる。

 ちなみに、赤は、目立つのだけれど、うまくやらないと、品がなく、ウルサイだけになってしまう。もっとも、赤といってもさまざまな赤があり、一般的に「赤」とされている、ハッキリした赤は、印刷の場合、金赤(きんあか)と呼ばれる。金赤と組あわせる無難な色は、黒。カルメンの色だ。金赤と黒ならまず失敗はないが、やや見慣れすぎている感じもする。金赤と緑はクリスマス色。金赤と本物の金もよく馴染む。他の色だと、ちょっとセンスと工夫が要る。

 さて、「きれいなもの」というのは、割とつくりやすいし、見た感じも落ち着いていてソツがない。けれども、「おもしろいもの」や「すごいもの」というのは、なかなか出来ない。目をひく、興味深い、滑稽、驚く、心ひかれる、新鮮、など、人が見て「おおっ」と思うようなもの。ただ整っているだけではなく、普通ではない何かが加わっているもの。

 これには、ちょっとセンスがいいくらいではダメ、一定レベル以上の才能がないと出来ない。デザインに限らず、絵画や小説、音楽といった無から有を生み出す、創造力の要るもの、みんなそうだと思うけれども。岡本太郎、棟方志功、相田みつお、アンディ・ウォーホールなどは、わかりやすい、「おもしろい」の代表。昔のウィーンでは、モーツァルトやベートーヴェンの音楽に、世間の人々は「おおっ」と思ったにちがいない。卓抜した高い技術を駆使した創造物なども「すごい」し、おそろしく美しいものなどもめったになく「すごい」。

 わたしも、自分が見ても「おおっ」と思うものをつくってみたい。(2008.9.24)


54.つくる人の隣

 芸のためなら女房も泣かす、という歌の文句があった。

 芸に人生を捧げる男と、影で支える女房の話。

 売れない芸人だか芸術家だかの亭主を持った奥さんで、亭主の分まで働いて、生活し、子どもも育てあげてしまう、えらーい女性が本当にいるらしい。

 中には、下積み時代、さんざんそうして助けてもらっておきながら、世間に売れたとたんに、美人とくっついて古女房を捨てる不埒者もたまにいるらしいけれど。

 これ、男女が逆だったら、どうだろう。

 素晴らしく「創造する才能」があるのだが、世間的には無名な女性が、普通の男性と結婚する。女性の方はライフワークとして創作活動に没頭する。家事はやらない。やってる余裕はない。子どもも望まない。もしくは子どもがいても、育児はしない。その女性の作品は、その道の一部の方たちには大絶賛されているものの、一般受けせず、売れてない。
 
あなたが、旦那さんだったら、芸のためなら亭主も泣かす、この女性に一生仕えますか?

 自分には出来ないことが出来る、彼女の能力と熱意に敬意を抱いているのは確か。この才能は非凡だと感じる。いや、もしかしたら、作品の良し悪しなんてわからないのだが、とりあえず一緒にいる以上は応援しよう、しなければ、と思っている。もちろん好きで結婚した相手だし、時々はやさしい奥さん。あなたは、家事と、場合によっては育児、場合によっては親の介護、町内会もPTAもいっさい引き受けて、もちろん生活費も稼いで、生涯、彼女を支え、添い遂げますか? 素晴らしい作品が出来たら、自分のことのように喜んで、スランプのときに不機嫌な彼女にあたられても耐えて、励まし続けますか?

 現実にいるのだろうか、そんな旦那さん。あまり見たことはないのだが。

 才能に惚れる、という言い回しがある。女性の間では、男性の才能も魅力として評価するのは常だが、男性にとって女性の才能は愛情の対象になるのか、それとも別モノなのか。

 あ、その奥さんが美人かどうかですか?そうか、それが大きいか…。(2008.9.24)


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