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 21,Fevereiro,2004

 サッカーの試合を見に行きました。マラカナンスタジアムで。1950年にブラジルで開催されたWカップ
会場となった、収容人数20万人を誇る、確か今でも世界一の大サッカースタジアム。リオ州カップの優勝
決定戦。フラメンゴ(Flamengo)とフルミネンセ(Fluminense)の伝統の一戦。この組み合わせはあまりなく
野球で言えば、阪神巨人、早慶戦といった、一般的に有名な宿命のライバルだそう。

 タクシーで会場を降りた瞬間に「なんか嫌な感じ」というのが正直な感想。すごい人数がビールを片手に
大声で叫んでるのね。誰かが歌いはじめた応援歌が、どんどん大合唱になり、地面が揺れるという感じで。
ホームの駅弁売りのような箱を持ち、ビールを売る人たちや小さな屋台など。けっこう強くオシッコ臭気が
あちこちに漂って。一緒に行ったブラジル人、男性のほうは熱狂的なフラメンゴファン、ハリウッド女優の
サンドラ・ブロックに似ている彼女はフルミネンセファン。フラメンゴのチームカラーは赤に黒の横縞で、
フルミネンセはエンジに緑。チームカラーに身を包んだ人達が歌い踊るけど、試合前、会場の外では乱闘を
見なかった。みんな仲良く歌って叫んで。でも、治安が悪い雰囲気は漂うので、周囲には警戒して下さい。
入るとき、チケットの色によって入口が違うので、まずはそれを確認。入口は混乱してるから落ち着いて。

 敵同士のカップルと一緒だったので、私が座ったのは、たぶん内野自由席。周りにも各ファンが混ざって
座っていて、勢いはあるけどおとなしい。私の正面は、もっと静かな内野指定席、おそらくとても高い席が
あり、バックネット裏のような雰囲気。そこから右がフラメンゴ、左がフルミネンセの外野。完全に色分け
されてるので、パッと見てわかる。すでに発煙筒の煙や爆竹の音が響く。なにせ伝統のカード、しかも優勝
決定戦。盛り上がらないわけないよね。殺気だった外野は知らないけど、私の座った場所ではビールを飲め
るのね。あんまり飲むとトイレに行きたくなるので、じっと我慢。女性は絶対にひとりでトイレに行っては
いけません。ブラジル女性も必ず男性の連れと一緒に行ってたので、私はなおさらね。

 フィールドをグルッと囲む円形の堀。幅は約2メートル、深さは下手すると5メートルくらいあるんじゃ
ないかな。スタンドから乱入する人達を芝に入れないため。動物園かい、と思う。
試合が始まったら、もう隣の人とも話ができない。一喜一憂、歓声にブーイング。淡々と試合をみるのでは
もちろんなく、かといってファンがそろった応援をするわけでもない。みんな思い思いに叫んで飛び上がり
近場の人と肩を組んで歌う。ちょっとでもボールをディフェンスが長くまわしてると、あちこちから、低い
「ブーブー」の声。審判のファウル判定にもうるさい。私はサッカーに疎いのですが、フルミネンセの方が
好き。ただ、私が住んでるのはフラメンゴ。悩ましく思いながら、どっちつかずの応援をしていました。

 終了15分前になると、早めに帰る人がチラホラ。試合は3対2という、サッカーにしては大量の得点で
フラメンゴが優勝。ただ見て興奮していた私は別として、周りの評価も「なかなかいい試合」だったそう。
行きもそうだったけれど、チームのユニフォームを着て立っていると、走ってる普通の車やタクシーからも
声がかかる。思ったよりも友好な雰囲気が漂ってました。カリオカ・チャンピオンリーグの、他の2チーム
アメリカーノ(Americano)は赤に白、バスコ(Vasco)は白と黒。観戦に行くとき、席によっては洋服の色に
気をつけて下さい。そこそこいい席という、私が座った内野自由席(?)は15R$、600円くらいでした。


 1〜7,Fevereiro,2004

 スポーツ選手好きな女性、ミュージシャン好きな女性、またはモデル好きのスポーツ選手など、日本でも
けっこう話題になることがある。某サッカー選手の恋人は常にモデルだとか、大物ミュージシャンの恋人が
また別のミュージシャンと結婚などなど。ブラジルでも同じなよう。

 サッカー選手が好きでたまらず、付き合う彼氏は次々とサッカー選手という女性のことをマリア・シュテ
イラ(Maria Chuteira)と呼びます。これはけっこう根付いている愛称(?)みたいで、ブラジルのバンドにも
マリア・シュテイラという名前のグループがいるほど。ブラジルは野球の文化があまりないので、野球選手
好きの女性に対する呼び名はないそうです。やっぱりサッカー。ファベーラという名のスラム街の壁にも、
ロナウドやロナウジーニョの似顔絵が描かれていて、貧しい人々の星になってる。一攫千金の才能を持った
成功者としてね。それにあやかる女性も、ブラジルではたくさんいるようで。

 もっと身近な呼び名はマリア・ガソリーナ(Maria Gasolina)。これは想像つく人がいることだろうと思う
けれど、ガソリーナです。ガソリンです。つまり、車を持ってる男性以外は相手にしない女性のことです。
昔々、アッシー君とかミツグ君とかいう呼び名が日本でもあったけれど、それと同じ感覚なんだと思うの。

 地球の反対側でも、そうした呼び方や見方は同じなんだなと。これも昔よく言われた「3高」というのは
ブラジルではないみたい。これから生まれるのかもしれない。ちなみに、ブラジルではまだ、日本の女性を
妻にするにふさわしい、三歩さがって夫に従う、無口で従順な存在と思う人が多いです。うんうん。


 24〜31,Janeiro,2004

 やっぱりね、というか何というか。1月20日頃には納車されるはずの車が来ない。言い訳は色々とね。
そんなもんなんだろうね。よっぽどのトラブルというわけではないみたい。どこまで信じていいのかも全く
わからないしね。「3月に来るかもしれません」だと。「かも」だって。いいんだ別に。
4月に私は日本に帰るので、車を見られないままブラジルを発つ可能性が高いようです。

 サンパウロの奥地にある刑務所から、149人の囚人が脱走しました。31日。40人が捕まり、5人が射殺
されたけれど、104人は未だ逃走中。うーん。スケールが大きい。でも、その刑務所は90人が定員だけど
脱走事件が起こったときには、その刑務所に449人も詰め込まれていたらしい。うーん。これもまたかなり
スケールが大きい。なんか、根本的に考えを変えないといけないんだろうな。

 ポル語の先生がダイエットプログラムをやっていて、それぞれ一定グラムに、カロリーに基づいた数値が
ついていて、一日21ポイントまで食べるという仕組み。野菜は根菜類の一部を除いて0ポイント。そして
果物や野菜など、それぞれのカテゴリーで必ず摂取するポイントも決まってる、けっこうちゃんとした減量
プログラム。だから一日かならず果物やタンパク質、油も摂る仕組み。ポル語だけの説明だから、ちゃんと
私が把握してるか不安だけどね。ビールは350mlで4ポイント。恐るべし。一日21ポイントだとすると、
5本飲んだら一日が終わってしまう。けっこうショック。考え直さないといけない。
 その先生が「一週間で1キロ痩せて、次の一週間でまた1キロ痩せたの。考えてみて。そしたら4週間で
4キロ、10週間続けたら、10キロも痩せるのよ!素晴らしいでしょ!」って。それはいくらなんでも無理
じゃないかと。そういう楽天的な考え方。見習わないといけません。


 17〜23,Janeiro,2004

 私がよく行くスーパーには鉢植えも売られていて、ハーブ類やサボテンなど10〜20鉢が並んでいます。
箱に入った小さな木。私は植木の知識が全くないので、何の木かはわからないけれど、すでに瀕死の状態で
並んでいて、箱には「bonsai」と書いてあります。先日、レジで並んでいたら、恰幅のいいブラジルの中年
女性に「日本人か?ボンサイとはなんぞや」と質問されました。どうやら購入したいと思ってるようです。

 拙いにすら遠く及ばないポル語で説明しようと思ったのですが、ポル語がどうこうよりも、日本語ですら
盆栽の説明ができない自分がいました。「小さなまま育てる大人の木。写真にとると、大きな木のような、
生きているミニチュア」。いやいや違う。「日本は家が小さいから、小さい木なのね」と言われると、また
それも違うだろうと。ベランダ栽培のために、盆栽はできたわけじゃない。じゃあ、何のために?ポル語の
問題ではなく、日本語であっても、盆栽について話す言葉を持っていないのです。

 ブジオスで泊まった、全10室のホテルは、少しアジアっぽい雰囲気につくられていて、入口には大きな
仏像があったり、私の部屋にも仏像の大きな写真が、額に入れて飾られていました。この写真には、確かに
覚えがある。学生時代に勉強し、もしかしたら京都に行ったときに見たこともあるかもしれない。だけども
名前すら浮かばない。ナントカ弥勒菩薩。ホテルの人に尋ねられたらどうしようと、少し緊張しました。

 日本と言えば、寿司、天ぷら、歌舞伎、芸者、能に狂言、そして着物。寿司と天ぷらはまだ一般的には。
でも、それ以外の知識がほとんどない。尋ねられても何もわからない。着物の着方なんてお太鼓ですらウロ
オボエ。NHKの「ウイークエンド・ジャパノロジー」という番組は、外人向けらしく、日本の観光名所から
それこそ能、狂言なども紹介していて、これがけっこうためになる。ブラジルにいて、初めて日本の文化に
向き合ってる感じです。ポル語がどうこうより、日本の文化を言葉にできないのは、私のなかに、そうした
知識や考えがないからなので。白地図の都道府県を埋めることも、私にはできない。

 ブラジルでは今「ウルチモ・サムライ」ラストサムライが公開されています。ブラジル人に「見たか?」
と聞かれることも多い。気を引き締めないと。そうしていたら先日「ウルトラマンの歌を知ってるか?」と
アッパーカットをくらいました。ウルトラマンの歌。奥が深すぎる。気を引き締めないと。


 9〜16,Janeiro,2004

 リオの動物園の有名チンパンジー。ブラジルで生まれ、飼育係の手によって育ち、飼育事務所の電話など
おもちゃにして過ごしました。名前はセバスチャンからもらい「tiao(aの上に〜という記号が付く)」。
この発音がね、説明するのが難しいのだけれど、「ao」の部分をを鼻で抜くので「チィアオ」ではなくて
「チャオン」という感じ。猿は「macaco」。ものすごく日本寄りに発音したら「マカコチャン」。

 人間だけに囲まれて育ったので、どうも猿っぽくないと評判が立ち、サンバステップの基本動作の意味の
「ginga」の雰囲気漂う、ファンキーな歩き方で、リオっ子カリオカの人気をさらいました。かといって
人なつっこいかというと、機嫌が悪いときや、子供の団体が来てうるさいときなどは、フンや果物、土など
投げつけるというアクティブな部分もあり、リオでは知らない人がいない、スター猿になったのです。

 さらに、動物園のスターだけでは終わらず、80〜90年にかけての選挙では、毎回「マカコチャン」が、
かなりの票数を集めることになり。なかでも有名なのは、88年にリオで行われた県知事選挙。トップの
31%には及ばないものの、全投票数の10%を叩き上げ善戦。それ以外でも、大統領選ですら、リオからは
「マカコチャン」への根強い支持率を保ったそう。ただ、90年代に入って導入された電子投票のために、
その後は政界から姿を消し、誰も「マカコチャン」に投票できなくなってしまいました。

 32歳の「マカコチャン」が、おそらく糖尿病の合併症で亡くなったとき、動物園は喪に服し、その姿は
フランスの新聞『ル・モンド』の一面を飾りました。今は動物園に銅像が建てられているそうです。

 ブラジルのこういうところ、私は大好きなのです。もちろん選挙はちゃんと投票しないといけないけれど
「この人たちに投票するなら、あの猿のほうがマシ」という、しかもそれを多くの人がやってしまう部分。
本人は真剣だけども、まわりから見ておちゃらけた立候補者が当選すると「あれは『マカコチャン』と同じ
扱いだね」という話になったり。日本で言えばなんでしょうか。昔のパンダくらいかしら。

来週、動物園に行って、その経歴と銅像を見てくる予定です。


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