原料
希土類磁石には原料がコストおよび供給性観点から重要である。特に、希土類およびコバルトは致命的な問題になることが多く、目を離すことはできない。
ここでは、「希土類の資源」、「希土類の生産」、「希土類の消費」および「コバルト原料」について説明する。
希土類の資源
希土類磁石の原料である希土類の資源について説明する。
希土類の存在量
希土類磁石の主たる原料であるネオジム(Nd)やサマリウム(Sm)は、希土類元素(rare-earth element)である。希土類元素は、周期表のランタノイド(La~Lu)の15元素にYとScを含めた17元素の総称である。
クラーク数
希(rare)な元素と名付けられているが、金銀といった貴金属よりは多く存在しており、決して「稀れ」なわけではなく、「希」望の元素と呼びたい。
希土類鉱石の埋蔵量
希土類元素は、鉱石中に共存し化学的性質がよく似ており分離が難しいので、希土類鉱石の埋蔵量や生産量については、一括して希土類酸化物(REO)とみなすことが多い。
希土類鉱石の埋蔵量は、1980年代の中国による埋蔵量公開により急増した後も増加しており、1985年から2005年の20年間で約2.5倍に増えている。
希土類鉱石の埋蔵国
2005年の埋蔵量は1.54億万トン(154Mton)で、中国が58%、独立国家共同体(CIS、旧ソ連)が14%であり、米国の9%、豪州の4%と続き、この上位4番目までで85%を占めており、偏在している。
希土類鉱石の組成例
希土類鉱石の種類としては、バストネサイト、モナザイト、ゼノタイム、イオン吸着鉱がある。鉱石の種類や産地によって組成が大きく異なる。
希土類鉱石を溶媒抽出法により分離精製すると、各鉱石の組成にしたがって15元素が抽出され、特定の元素だけを抽出する技術は開発されていない。つまり、特定の希土類元素の需要が急増するとその他の元素が不要在庫となるため、バランス産業と呼ばれている。
希土類鉱石の組成例(磁石関係)
Nd-Fe-B系磁石のNdは比較的多く存在している方であるが、置換元素のDyやTbの存在量は少なく、ゼノタイムや竜南鉱に比較的多く含まれている。Sm-Co系やSm-Fe-N系磁石のSmの存在量も多い方ではなく、モナザイトや尋烏鉱に比較的多い。
希土類の生産
希土類磁石の原料である希土類の生産について説明する。
希土類鉱石の生産量
希土類鉱石の生産量は、多少の波はあるものの、1994年以降順調に成長していると言える。
特に、中国の生産拡大は著しく、1994年から2005年で約3.2倍、シェアも47%から93%と断トツの一位となっている。一方、埋蔵量はあるものの豪州は1994年までで、米国は2002年までで生産を終えている。また、CIS(旧ソ連)とインドはほぼ一定量を生産している。
希土類鉱石の生産国
生産量的には中国が9割以上を占めており、ほぼ完全独占状態である。中国の圧倒的なシェアはコスト競争力に起因していると考えられる。
中国での希土類鉱石
中国国内でも様々な種類の鉱石が偏在していることが特徴のひとつである。
希土類の可採年数
また、2005年の埋蔵量(154Mton)と生産量(105kton)から単純計算すると寿命は約1470年となるが、可採埋蔵量(87Mton)から算出しても可採年数は約830年となり、個別の希土類元素の議論を無視すれば、すぐに枯渇する心配はないと考えられる。
希土類の消費
希土類磁石の原料である希土類の消費について説明する。
ネオジムの価格推移
中国の圧倒的なシェアはコスト競争力に起因していると考えられる。2003年以降Ndなど一部の希土類の価格は上昇しているが、行き過ぎた価格上昇は他の地域(例えば米国)の生産を再開させる可能性がある。
実際、最近の市場価格はRhodia社が発表している価格に上値を抑えられ、価格上昇傾向はひとまず収まっている。中国政府の意向にも左右される市場価格の今後の推移に注目する必要がある。
ネオジムの価格推移(最新)
別統計であるが最新のネオジムの価格推移であるが、中国政府の採掘/輸出許可量の削減、輸出関税の導入、環境規制の強化などにより、希土類価格の上昇および供給タイト感が増してきている。
希土類の省資源、代替技術の開発および中国以外の希土類鉱石供給源の開発が急がれる。
ディスプロシウムの価格推移
熱安定性に必須な希土類元素であるディスプロシウムは、価格だけでなく、供給不足の心配もあり、最も注視していかなければならない希土類元素である。
ディスプロシウムの価格推移(最新)
別統計によるディスプロシウムの価格推移であるが、価格上昇はとどまることを知らない。
現状、中国南部のイオン吸着鉱に大きく依存している一方、HEVなど高保磁力用途が拡大している。Dy使用量低減技術の開発が急がれる。
希土類の生産国と消費国
先に述べたように、希土類の生産の大半は中国に占められており、インドとCISが大きく差を付けられながらも続いている。
一方、希土類の消費量も中国が第一位で約36%、第二位が東南アジアを含む日本で約28%であり、米国の約20%、欧州の14%と続く。
中国での希土類消費量は年間約12%(1994年~2003年)で成長しており、今後も消費量は増大し続けるものと思われ、必要な希土類の確保が課題になる日が来るかもしれない。
希土類の対日輸出国と日本用途別需要
日本では、希土類原料を全量輸入しており、中国からの輸入量は約91%を占めている。フランスなどから輸入される希土類原料も中国産であることを考慮すると、ほとんどを中国に依存していることになる。
日本における用途別の消費量は、希土類磁石(Nd, Sm)とフェライト磁石(La)用が約23%でトップ、液晶パネル用ガラス向けで量を増やしている研磨剤(Ce)用が約22%、携帯電子機器や電気自動車向けなどのニッケル水素二次電池(ミッシュメタル=混合希土類)用が約19%、UVガラス(Ce)、ブラウン管ガラス(Ce)、高屈折低分散の光学ガラス(La)用が約14%と続いている。
コバルト原料
希土類磁石の原料であるコバルトについて説明する。
コバルト鉱石の埋蔵量
コバルトは、Sm-Co系磁石の主原料であり、Nd-Fe-B系磁石の耐熱性向上のための添加元素である。他にも、リチウムイオン二次電池やスーパーアロイ、高速度鋼、耐熱鋼など不可欠な素材であるにもかかわらず、ほとんどを輸入に頼っている。また、銅やニッケル生産の副産物として生産されているため、銅やニッケルの相場に左右されて安定的な供給体制とは言えず、過去に何度も供給障害による価格の高騰や入荷停止が発生していることから、日本ではレアメタルとして国家備蓄されている。
コバルト鉱石の埋蔵国
コバルトの埋蔵量は1995年から2005年で約1.4倍に増えてはいるものの、第一位がコンゴ民主共和国(旧ザイール)で約37%、第二位がキューバで約14%を占めており、この二国で過半数となる。豪州の約13%、米国の約7%、ニューカレドニアの約7%が続く。
コバルト鉱石の生産量
日本や中国を中心とした全世界的なリチウムイオン二次電池の需要増大および米国や欧州でのスーパーアロイの需要復調から、コバルトの生産量も増大している。携帯電子機器や航空機などの需要は今後もさらに増加することが容易に予想される。
コバルト鉱石の生産国
一方供給面からは、コンゴ民主共和国が約15%、ザンビアが約9%、豪州が約6%、カナダとロシアが約5%で、この五カ国で約4割を占めている。
2005年の埋蔵量(12.7Mton)と生産量(105kton)からは約120年、可採埋蔵量(6.8Mton)からは約65年の可採年数となる。
コバルト地金の生産国と消費国
コバルト地金の生産量も増大傾向にあり、2005年のシェアは、フィンランドの約16%、ザンビアとノルウェーの約10%、カナダとロシアの約9%であり、この五カ国で半分を超える。日本では住友金属鉱山が生産しているがその量は1%弱である。
コバルト地金の生産国
政情不安、慢性的資金不足と経営体制混乱のコンゴ民主共和国は、1990年には約46%あったシェアを急速に減らしており、2005年は約1%と大幅に低下した。他にもザンビアでの資本売却やカナダでのストライキなど減産のリスクは他にもある。
一方、消費については、日本が約27%、米国が約22%、中国が約20%、欧州が約14%であるが、今後も中国の旺盛な需要がキーとなる。
コバルトの対日輸出国と日本用途別需要
日本ではコバルトを地金、金属微粉末、酸化物、水酸化物の形態で輸入している。フィンランドからの輸入量が最も多く約30%で、豪州の約17%、カナダの約15%、ザンビアの約9%、ノルウェーの約7%と続き、上位五カ国で8割弱を占める。
日本での用途別の消費量は、二次電池が約66%で断トツ、特殊鋼の約7.2%、超硬工具の約6%と続き、磁石を含む磁性材料は約3%である。

「Mineral Commodity Summaries」