介護入門
しばらく前から父(84歳)がだいぶ弱ってきて、入退院を繰り返し、介護が必要になってきています。それでも、少し前までは4歳下の母が気丈にほとんどすべて対応していたのですが、ここにきて、母の体力も限界で、精神的にも追いつめられて、かえって介護が必要なくらいの状態になりました。電車を使って2時間くらいかかるところですから、こちらもすぐに駆けつけるわけに行きません。近くに弟が住んでいますが、必ずしも十分に対応できる状況ではありません。父が1月からしばらく入院していたのですが、退院ということになってひと騒動でした。
介護保険を使って、ケア・マネージャーが入り、ヘルパーの人はきてくれていますし、その人はいい人でとても気遣ってくれて、いろいろと親切にしてくれていますが、両親ともにわがままで、ぜいたくに生活してきた人たちですから、なかなか満足がいきません。母からは毎日電話がかかってきて、不安を訴えられても、どうにもできません。
もちろん子供としてできるだけのことはしたいと思いますが、離れているし、仕事があるので、毎日というわけにはいかず、せいぜい週1回が限度で、それも難しいときがあります。妻は看護の仕事をしていたので、プロとして頼りになりますし、もちろん彼女にも協力を求め、彼女もそれに快く応じてくれています。けれども、「嫁が義父母の世話をする」というのを当然視するのはおかしいことだと思います。ボクが何もせずに妻に過重な負担をかけるということは、絶対にしてはならないことだと思います。
今後、恐らくかなり長期になるでしょうから、一時的に情にほだされてやっても、続くことではありません。ともかく介護保険プラス有料介護で、できるだけビジネスライクな形で介護の人を頼み、日常的にできないことはやってもらうという方向でしなければならないだろうと思っています。ただ、いまのところ、母が人を頼むことに抵抗感があるようで、できるだけ自分でしようとするので、なかなかすぐにそうはいかず、母が自分の限界を自覚するのを待たなければならないところがあります。
ボクとしては、ともかくさしあたり新しく外から頼まれる仕事はできるだけ断って、職場でもカミングアウトして了解を得、できるだけ同僚に迷惑をかけない範囲で動ける体制を作って、対応しようとしています。それでも、週1回行くだけでも、単に身体的ということだけでなく、いろいろややこしい問題がかかわってくるために、精神的にもぐったり参ります。それに毎日の母の電話は、それだけでも右往左往させられます。なかなかすっきり解決というわけに行きません。そんなわけで、このところ、頼まれていた原稿がすっかり遅れたりして、少々こちらも追いつめられている感じです。
退院の日は、昼は妻に頼み、ボクは夜の会を早く失礼して、泊りに行きました。以前は父の部屋に母も寝ていて対応したのですが、それでは母が十分に休めないというので、母の寝室は別に移し、その晩はボクが父の側で寝ました。
やはり介護で厄介なのは下の世話で、昼はポータブルトイレを使い、夜はオムツを当てるということで、これも母一人の手に余るので、近くに住む弟がある程度手伝うことにしても、外すときもまた厄介で、これは未解決ですが、ヘルパーさんにしてもらう方向にするしかないだろうと思っています。夜は一人で寝かせる方向ですが、とりあえずはわりあい近くに住む従姉が親切で、好意にすがってお願いしています。それも一時的なものですが、それでもそういうネットワークを持つのも必要かなと思います。
でも、とりあえず一晩、母を手伝って一通りそういうこともこなして、それから家事万端をやってみると、けっこうそれ自体はおもしろいなあ、という感じがします。もともと看護とか介護とか、とても興味があったし、細かい技術のひとつひとつがちゃんと相手の身になってよく考えられていて、納得するところが少なくありません。もしかしたら、天職かも、なんて思ったりして。でも、家に帰ってから、やたら何でも食べたくなって、やっぱりそれだけストレスが大きかったのかな、と改めて思いました。
60歳で職を退いて、そうしたらもう大学なんていやらしいところは捨てて、ヘルパーの資格を取るのと、それから、(全然関係ないけれど)アウシュヴィッツには絶対行かなければ、というのがいまの目標です。
上野千鶴子さんも遠距離介護をこなして、いまはケア問題にハマっているようです。上野さんにできることならば、ボクにだってできないはずはない、なんてあんまり突っ張らないほうがいいのかな。
2006.2.11