1.はじめに
2.ガイドラインに照らして
3.不登校・登校拒否・高校中退に関して
   不登校・登校拒否の位置づけ
   不登校の要因・背景に関して
   高校中退に関して
   学びの場の保障の問題
4.いじめ対策について
5.学校運営に関わる意志決定参加
6.その他、気になること
資料 第2回政府報告書(抜粋)

〜〜特に教育分野に関わって

学びの場の保障の問題

高校中退に関して

不登校の要因背景に関して

 高校中退に関しては、「中学における進路指導や高校の入学者選抜のあり方、単位制高校、中高一貫校などの選択の拡大・・・」などを掲げていますが、やはり、差別選別の教育による弊害については全くふれられていません。また、経済的な理由による高校中退の問題も取り上げられていません。
 ここでも解決策として、偏差値教育により何のために学ぶのかがなおざりにされている問題、将来の生き方や人生を考える機会を奪われている問題、基礎学力の不足による学習困難の問題、劣悪な学習環境・厳しい校則の問題などが取り上げられるべきです。
 また、パラグラフ268では、「15才人口の減少に伴い・・・過度の受験競争が緩和されつつある」とありますが、財政難を一つの理由にして高校の間口を減らし、常に一定の競争倍率を保つように細工されているために、受験競争がいっこうに緩和されていないという問題が無視されています。
 不登校の要因・背景に関して、「主として心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により・・・」と並べています。これには、先日文部科学省が発表した「実態調査」が全く反映されていません。調査では@「友人関係(いじめ、けんか)」A「教師との関係」B「学業不振」C「クラブ・部活動」D「学校の決まり」・・・と、「学校と学校生活に関わる問題」が圧倒的に多いことを示しています。ここの部分の分析がなおざりにされているので、以下の解決策も通り一遍のものにしかなりません。
 解決策については、「@わかる授業Aスクールカウンセラーの配置B適応指導教室の充実C中卒認定資格、大検の拡大、高校入試での配慮」を掲げています。けれども、最終所見が示した「競争的な教育制度が発達障害を起こしている」という懸念に全く答えていません。
 本来この部分では、学習指導要領による学力競争の強制の問題、競争的な雰囲気の中で豊かな友人関係が結べていない問題、成績で輪切りされている子どもたちの苦しさ、内申で態度までしばられている不自由さ、多人数クラスにより一人一人の子どもが生き生きとした学校生活を送れない問題、子どもの生活・生理を無視した激しいクラブ・部活動のあり方、髪の長さまでがんじがらめにしばられる校則等の問題に関して、子どもの権利条約に照らしてどうなのかということが取り上げられるべきです。
 はじめから、不登校・高校中退を「児童生徒の問題行動」としてくくっているところが問題です。日本政府が、不登校という現象を「子どもたちに敬遠されている学校の問題」としてではなくて、相変わらず「学校に行きたがらない子どもたちの問題」ととらえていることがよくわかります。この視点に立つ限り、子ども達に拒否され続ける学校という現状は、変わらないのではないかと思います。
 不登校の実態に関して、パラグラフ268の方の「小学校で0.1%、中学校で2.5%であるが、不登校児童生徒数の増加は続いている」という表現は、全体からすれば大した人数ではないというニュアンスが含まれています。実数にすれば、13万4千人(小学校2万6千人、中学校10万8千人)。しかも、「30日以上連続して欠席」に当てはまらないさみだれ登校や保健室登校の子どもたちを含まない数字であることが明らかになっていません。また、高校中退に関して、そもそも具体的な数字を引用していません。これだけの人数の子ども達が、学校に行っていないという事態に対して、政府はもっと深刻に受け止めるべきです。「国連子どもの権利委員会」からの「最終所見」では、「本委員会は、さらに、学校嫌いの数が看過できない数に上っていることを懸念する」という表現でした。この所見にきちんと向き合おうとしない日本政府の不誠実な姿勢が浮き彫りになっています。

1.はじめに

不登校・高校中退の位置づけ

資料122 学校)学校教育法を改悪し、児童生徒の出席停止への要件・手続きを明確化したことを、あたかも子どもの意見表明権を尊重したかのような書き方をしている。

資料163 学校における体罰)「学校教育法で厳に禁止されている」「教員の研修において取り上げている」「懲戒を与えるときには、児童生徒から事情や意見を良く聞く機会を持つように指導している」というが、現実に体罰は存在している。今までの方策では不十分であることがわかっているのにそのことに関する記載がない。

資料252 十分な教員の確保)現在の40人学級が、子どもの学習と成長・発達のために十分であるとは言えないがそのことに対する記述がない。

資料258 中等教育の発展)中高一貫教育の制度化を選択の枠が広まったと評価しているが、中学入学段階でのあらたな競争の激化が心配される。
 
 以上、細かいところも含めて、今の政府報告書には、多くの問題点があります。今後、市民の立場から、日本の子どもの権利の実態を調査し、様々な形で国民に広く知らせ、「子どもの権利条約の完全実施」を強く政府に訴えていく運動を広げていく必要を感じました。

6.その他に気になること

まずは、当の子ども達に対する条約の周知が不徹底です。パラグラフ43によると、条約の広報は、「学習指導要領においても、児童の権利条約にも留意し・・・人権に配慮した教育を・・・推進する」「教職員を対象とする研修においても、児童の権利に関する条約に関する口座を含む・・・充実に努めている」とうたわれていますが、実際には、子どもたちには、「子どもの権利条約」があることさえ周知されていません。
子どもの意志決定参加に関しては、「学習指導要領では、・・・学級活動・ホームルーム活動や児童会活動・生徒会活動を実施する事を定めており、各学校において、児童生徒が意思決定に参加している」(パラグラフ130)の一文だけで片づけています。
 子ども達の主体的な参加による校則の改廃、教育課程の編成、学校行事の運営が、いったいどれだけ行われているというのでしょうか?児童会・生徒会が、子ども達の自治活動を促進しているという積極面はあるものの、実際には、校則の改廃ですら、学校側の横やりよりほとんど実現できていないのが現状です。ましてや、教育課程や学校行事に子どもたちの意見が反映されるようなシステムにはほど遠いのが現状です。
 校則については、驚くべき事に「児童生徒の実態、保護者の考え方をふまえて絶えず見直しを行い、教育的に見て適切なものとする」(パラグラフ143)と書かれ、「児童生徒の意見を聞く」という条約の基本的な立場が全く無視されるという重大な問題があります。
 子どもの権利条約は、今まで保護の対象でしかなかった子どもを意志決定の主体者とみなし、その発現として第12条意見表明権を掲げました。学校現場でも、徹底的に子どもの意見表明権が認められ、すべての場面で子ども達が意志決定に参加する保障がとられなくてはなりません。これだけ多くの子ども達に学校が敬遠されているという事実の背景に、今の学校には、子どもの主体的な参加が無く、上から与えられたレールをただ走らされているだけという側面もあります。第12条子どもの意見表明権の行使が、学校現場の隅々に実現されたなら、学校教育の競争的側面もうすまり、校則や体罰などの抑圧的な雰囲気が無くなり、子ども達の自己肯定感(セルフエスティーム)が高められ、子ども同士の協力共同の意識も高まり、学校を見限る子ども達も減少するものと考えています。

5.子どもの学校運営に関する意志決定参加について    (資料43、 130, 143

まず、いじめの実態についての具体的な報告がありません。また、いじめが起きる背景について、心理学的・社会学的な考察がなされていません。「1996年に、・・・専門家会議が報告をとりまとめ、・・・教育現場に徹底した」と言われていますが、その方策がいじめ問題の解決に有効であったのかどうかの検証がなされていません。
 パラグラフ249では、いきなり「警察の対応」から書き起こしています。政府は、いじめを犯罪、もしく犯罪に準じたものとして、「矯正」の対象にしていることがわかります。この間の「少年法の改正」と軌を一にした厳罰による封じ込めに向かうおそれを感じます。警察権力による「いじめ事案の真相究明」や「解明した事案の関係方面への提供(これはプライバシーの侵害にあたるおそれがある)」よりも、「いじめにいたった心の軌跡」が大事にされ、学校の民主的な運営にフィードバックされるシステムに力を入れるべきです。
 いじめの心理学的・社会学的背景としては、@他者に対する痛みを共感する力の欠如(認知的な側面)、A教師の体罰や生徒の品位を傷つける言葉の横行の影響(モデル的側面)、B競争教育と管理的・抑圧的な学校生活からくる自己不全感による攻撃行動の増加(情緒的な側面)が考えられています。
 いじめ対策として、パラグラフ263(2)は「「心の教育」の充実、教育相談体制の充実、教員の資質の向上、家庭・学校・地域社会の連携の推進」が掲げられています。ここでも、「過度の競争的な教育制度の問題」に触れられていません。
 いじめの背景を考えると@人権を中心に据えた教育カリキュラムの充実、A学校の抑圧的・権力的性格を払拭し、教師自身が自己肯定感を増すような民主的な集団運営、B教育制度の抜本的な改善による過度の競争性の解決が求められています。

4.「いじめ対策」について(資料249、 263(3)

 さらに、学校に行かないで成長することを選んだ子どもたちに対する「学習権の保障」の問題に触れられていません。「適応指導教室」に関する記載は、あくまで「学校復帰を支援する」ものとされています。日本では、学校教育法によって、義務教育は普通教育学校に通わせる事に限定されています。
 学び、成長する権利の主体は子ども達です。どこで、どういう方法で学び成長するのかを選ぶ権利は子ども達にあります。子どもの成長にふさわしい場所として、用意されている今の学校が、必ずしも子ども達の要求に見合っていません。子どもを学校に合わせるのではなく、学校を子どもに合わせるべきです。既存の学校以外に、あらたな「学びの場」を用意する必要があります。

3.「不登校・登校拒否・高校中退」に関して。(資料263(1)、(2) 268

 報告書を作るにあたってのガイドラインによれば、「前回報告書を調査して委員会が加盟国に対して行った提言及び勧告に対するフォーアップとして採用された方策」を報告し、「委員会によって確認された懸念領域、及びこうした提言及び勧告の実現に影響した可能性のある困難」について記載するよう求めています。
 1998年の最終所見で示された課題の多くは、全く取り組みのなされないまま、また一部では、子どもの権利条約に逆行する様な政策(たとえば教育三法案の改正)が採られたりしています。しかし、そのことに関しての政府からの説明が一言もありません。
 たとえば、最終所見では、【最終所見22】「高度に競争的な教育制度によるストレスにさらされ、かつ、その結果として余暇、身体活動及び休息を欠くにいたっており、子どもたちが発達障害に陥っていることを懸念する。本委員会は、さらに、学校嫌いの数が看過できない数に上っていることを懸念する」【最終所見13】「社会のあらゆる部分において、特に、学校制度の中において、その参加に関する権利(第12条)を行使する際に直面している困難に、特別の懸念を表明する」のように明確に述べられています。
 今回の報告書では、これらの懸念に対して全く答えていません。なぜ十分な方策が採られなかったのか、もし方策が採られなかったとしたらそこにはどんな困難があったのかを説明する責任があるにもかかわらず、大変ずさんな報告書となっています。

2.ガイドラインに照らして

 「子どもの権利条約」を批准した日本は、条約第44条に基づき、日本における子どもの権利実現の進捗状況を定期的に国連に報告する義務を負うことになりました。1996年に「第1回報告書」が提出されました。きわめて表面的な内容のものでしたが、市民・NGOの努力で政府報告書を補完する「代替報告書」がまとめられ、国連子どもの権利委員会に報告されました。これらに基づいて審査された結果、日本の子どもの置かれている状況に対するいくつかの重要な懸念・勧告を含んだ「最終所見」が、1998年に出されました。
 この11月に、第2回目の「政府報告書」がまとめられました。あいかわらず日本の子どもの実態をとらえていない表面的な内容で、しかも「国連子どもの権利委員会」の「最終所見」の懸念・勧告に全く応えてない内容となっています。一通り目を通す機会があったので、特に学校教育に関係する部分に注目して、いくつかの意見と感想を述べたいと思います。

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高柳滋治(ネットワーク運営委員)
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「児童の権利に関する条約」
第2回政府報告書を読む

目次
子どもの権利条約(児童の権利に関する条約)
国連子どもの権利委員会の日本政府への最終所見
第2回政府報告書全文
以下の資料は、外務省のHPで手に入ります。

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