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ギャルソンの大切な道具、日頃から使い慣れている銀色のトレイをわざわざフランスから持参したというお二人。自慢のマイ・トレイにシャンパンやグラスをのせて軽やかな足取りで現れた彼らは、さすがのなめらかな身のこなし。タブリエと呼ばれる白いエプロンも板についています。
お二人が楽しげにテーブルの間をぬって動き回るだけで、カフェの空気の色が違って見えるよう。胸もとにはそれぞれカタカナで「ジャン」「レーモン」と書かれたネームプレートと、ドゥ マゴのロゴバッジ。
「フランスのギャルソンは長く勤務すると、お店のパトロン…彼らはオーナーのことをそう呼ぶのですが…の仕事にかわる人も多いのですが、この二人はギャルソンという仕事にプライドを持っていて、ずっとギャルソンでいたいと言うんですよ」と広報のかた。
「彼らは来日にあたって、注文をとるための日本語を練習してきたようです。先日は金王祭りに参加して、はっぴを着ておみこしをかついだりもしました(笑)」
にこやかなギャルソンのお二人と通訳の女性にテーブルについていただいて、お話をうかがいました。
サマンサ: このお仕事の秘訣を教えていただけますか?
ジャン氏: ギャルソンはカフェのサービスの専門職です。人と人とをつなぎ、コミュニケーションをはかること。お客さまの人柄に合わせたサービスをすることを楽しむのが秘訣ですね。
レーモン氏: テラス席では直感も必要なんですよ。お客さまがどんな人かを嗅ぎわけられる鼻が大事。中にはお金を払わずに出て行く人もいるのですが、すぐに見抜けるんです(笑) フランスではギャルソンは自分の受け持ちのテーブルのお客さまが無銭飲食をすると、自分の給料から引かれてしまいますからね。
サマンサ:なるほど(笑) 20年以上ギャルソンをしていらした中で、特に印象に残っているエピソードはなんでしょうか?
レーモン氏: 12月31日のことですが、夜8時に一人の男性のお客さまがいらっしゃいました。彼は女性とランデブー(サマンサ註:フランスですね!)の約束をしていたのです。彼はひたすらお酒を飲み続けながらお相手を待ちました。ところが、真夜中の12時を回っても女性は現れません。男性客は私を呼んで尋ねました。
「あなたは結婚してる?」
はい、と私は答えました。するとお客さまは、ちょっと待ってと言って、大きなプレゼントの包みを持ってきたのです。
「あなたにあげよう。奥様にプレゼントするといい」
それはゴージャスな毛皮のコートだったのです! お客さまはそのまま帰ってしまわれました。
サマンサ: そのコートはどうなったのですか?!
レーモン氏: 困って上司に相談したのですが…じつは、その毛皮は本物ではなくてフェイクファーでした(笑)
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