SHOZO COFFEE MD
栃木県那須郡那須町高久甲3978-3
TEL 0287-62-6004 OPEN 11:00〜17:00
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エスプレッソベースのドリンクを提供し、テイクアウトも可能なのが那須街道沿いに建つSHOZO COFFEE MD。ここで調達したカプチーノやカフェモカを道連れに、那須の山々へドライブを続ければ、親しい友人を助手席に乗せているような気分になるかもしれません。
BGMに有線が選ばれた店内はカジュアルで軽快な空気。それでもやはり、どんな小さな片隅にもSHOZOならではの美しさが溢れていました。白い柱にふぞろいに押印してある「CASH」のアルファベット。その下に綴られた紅茶やフルーツティーのメニュー。そんな何気ないディテールにセンスを感じます。
大きな鏡の前で輝くエスプレッソマシンはイタリア製の
ラマゾッコ
。それも「最もおいしく抽出できる温度」=203.5度を実現するデヴィッド・ショマー版でした。
高性能マシンから抽出されるエスプレッソの豊かな香り。スイーツやお酒のメニューも豊富で、全種類試したくなるような魅惑のケーキ、色とりどりの果実を贅沢にのせたホットケーキ、屋外でのランチにも良さそうなピタパン、それにギネスビールにペルノーと、いずれも魅力的で迷ってしまいます。
最初に訪れた日は、「空飛ぶカプチーノ」とリンゴのタルトをオーダー。通常のカプチーノより多いというフォームミルクは、こんもりと雲のように盛り上がってカップから溢れんばかり。タルトの上にはリンゴのスライスがぎっしり並び、甘みと酸味がほどよく調和した美味しさでした。
翌朝の一杯は、エスプレッソに浮かぶレモンの香りが爽やかな「ロマーノ」と小さな焼き菓子。「すでに砂糖一杯分が入っていますので、味見をしてからお砂糖を加えてください」と、カップを席に運んできた店長さんが言葉を添えてくれました。
ひとつの場所から次の場所へと移動する途中で飲むコーヒーは、なぜこんなにも心を落ちつかせてくれるのでしょう。自分を取り戻したり、自然を飲みこむような気持ちを体験させてくれたりする<外のコーヒー>は、家で淹れるいつもの<部屋のコーヒー>とはまた異なる作用を及ぼします。
旅にコーヒーが登場するシーンの傑作のひとつが、
片岡義男の短編集
に収められています。カリフォルニアめざしてピックアップ・トラックで走り続ける男が、夕闇のなか、高原の羊飼いを訪ねていく場面。羊飼いが男に差しだしたカップはひどく汚れていたけれど、そこに満たされたコーヒーは奇蹟のような美味しさでした。
「彼の周囲にある自然のすべてが、一杯の熱いコーヒーに凝縮されていた。そのコーヒーが体の内部へ流れこんでいく。深いスリルに鳥肌の立つような、魔法の瞬間だった」
見慣れた部屋を遠く離れて、その時、その場所を旅していなければ味わえないコーヒー。この短編集の中にはまた、オートバイで風を切り裂きながら旅する男の物語も収められていました。
「ライダーの視覚が空間に向けられるだけで、ライダーの感覚はその空間いっぱいに広がった。…彼の視線の届くあらゆるところが、彼自身だった。彼の目には複雑に連続する山なみが見えていた。だから彼は、ライダーであると同時に山なみでもあった」
これは自然の中を疾走するライダーしか知ることのない、至福の時間なのでしょう。そんな体験のあとで飲むコーヒーは、どれだけ心身に沁みわたることか。
「MDはカウンターで注文を受ける形ですし、立ち飲みのスペースもあるので、他の2つのカフェよりもお客さまとの距離を近く感じます」と店長。旅行者に道を聞かれたり、おすすめレストランを尋ねられたりすることも多いけれど、それもまた楽しみのひとつだと言います。
そう、SHOZO COFFEE MDは、立ち寄るさまざまな旅行者に等しく「いい旅を」と、片手を上げてくれる場所。道路に向けたカウンターに並ぶ椅子たちも、エスプレッソマシンの快い蒸気音も、笑顔で合図を送ってくれるようです――「いい旅を」。
(2004年12月)
SHOZO COFFEE + mountain drive
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