未知の国・コロンビアからの便り(75)
消えゆく伝統家屋
読者の皆さん、こんにちは。
ボゴタ市内は最近複数階アパートの建設ラッシュです。国家統計局の数字でも明らかな通り、新築建設面積が年々増加しており、これは特に市内北部などでそれまでの平屋建て住宅を取り壊しています。
供給があるという事は需要もそれだけあり、建てた途端に全ての階が売り切れるというのは昨今常識にもなって
います。当地コロンビアにも「バブル」が来たという事でしょうか。
その一方で歴史を感じる外観を持つ従来の伝統家屋が市内からどんどん消えていくのが目に見えて分かります。
今回はそんなボゴタの「消えゆく伝統家屋」を画像と共にご紹介したいと思います。
これらの画像の家屋もいずれは消え去り、無機質なアパートに変わってしまう事は間違いない筈ですので、将来的には貴重な一コマになる筈です。
画像の全てはボゴタ市北部のいわゆる高級住宅街の中にポツンと存在するものです。
ボゴタは中心部から北に向かって開発が進んでいった町です。一方中心から南側は逆に所得階層の低い人達が居住するようになり、Calle(ストリート)番号の後ろにSouthを意味する"S"が付く一帯に高級住宅街はありません。
そんな中、古くから北に居を構えていた高所得階層住宅の名残とも言えるのが画像の伝統家屋なのでしょう。一般の民家とは明らかに趣が違います。
昨今ではこの土地を有効活用して複数階のアパートに建て替え財を成すケース、若しくは需要に応じて高値で土地を売却したい売主と、買主との思惑が一致してこれら伝統家屋が消えてゆくケースがとても多くなりました。
そして建てられるアパートですが、こちらは以前に投稿した事があり、ボゴタの場合何故か外壁に「レンガ」を使う
ケースが多く、これは超高級アパートにも使用される為、モダンな壁をいざ壊してみると中からレンガが出てくるのが当地の建築スタイルです。
ボゴタでは地震に遭遇するケースが極めて少なく、私自身も明らかに地震を体で感じたケースは1999年1月にコー
ヒー地帯・アルメニアを震源地とする大地震の余波(震度2程度)がボゴタに来た時以来ありません。
そんな土地柄ですから「耐震設計」という概念が全くなく、鉄骨を使用した強固な建築物など市内の全数の1%にも満たないのではと感じられます。建物の基礎柱には鉄筋の束があるだけ、外壁はもろいレンガを基礎にセメントで固めただけのものですので、震度5程度の地震がボゴタを襲った場合、かなりの数の建築物が壊滅すると推測
します。
実際に、先年ボゴタで観測した「ちょっと揺れた」地震で、市内北部にある有名な「ワールドトレードセンター」という、完成当時は市内でもトップクラスだった高級ビルは、現在でも当時の地震のあおりで段差が出来ており、「地震の
爪跡」になっています。このビルはちょうど成田空港第一旅客ターミナルのように変形した建築スタイルになっていますが、その中央棟と右棟とに段差が出来てしまっています。
そんな状況下でアパート建設現場を見るにつけ、従来からの伝統家屋にある縦横に走る肉太の木柱が何本も剥き出しに見える状態に安心感を覚えます。勿論、これだけでも地震に耐えうる事はないのでしょうが。
しかしながら、これら素晴らしい伝統家屋を残して欲しいと考えるのは、実際に住んでいない傍観者の意見かもしれません。昨今では一般犯罪が激増しており、今や「防犯」の面で欠陥がある伝統家屋に住むよりも、集合住宅に住む事を希望する人が大部分というのも事実です。しかしながら、その集合住宅ですら「赤の他人」の集まりである事が逆に災いし、空き巣や強盗に遭うケースが頻発しているのが最近のボゴタ市内の傾向です。
そうなると、一つの敷地に独立した居を構える伝統家屋が良いのか、それでも「皆いれば怖くない」というアパートが良いのか判断が難しいところですが、いずれにしても従来からの家屋はどんどん消えてゆく運命にある事は間違いなさそうです。それは日本でも同じ事でしょう。
次回につづく
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